妄想研究所 しっかり者の妹シリーズ・スピンオフ  『しっかり者の妹と過ごす性的な一ヶ月』  普段はしっかり者だけど、夜になり、二人っきりになると甘えん坊になる妹。  何ともない日常に突如として生まれた性的な雰囲気。  ベッドの中で淡々と行われる性処理は徐々にエスカレートしていく。 ◆1  一日目 「いつもの二人」  部屋に優衣が訪ねてきていた。  パジャマ着の格好で一人、机に向かっている。 【優衣】 「『重心の座標を求める公式は以下のようである。また、これを理解  するに当たっては、力のモーメントを用いると良い』……」 【優衣】 「ふうん……」  カリカリ…… 【兄】 「……」  カリカリ……  黙々と勉強をする優衣の後姿を眺める。  ペンが方眼紙の上を走る音を聞きながら携帯を弄る。  そろそろ飽きてきた。 【優衣】 「にーいさーん」  抑揚のない間延びした声。 【兄】 「んー?」 【優衣】 「ドップラー効果っていうのは結構有名な単語で、どんなものなのか  兄さんも知っているでしょう?」 【兄】 「ああ」  音源が移動すると、発する音と聴き取る音が微妙に違うアレだ。 【優衣】 「じゃあ、遠心力っていうのは、どんなものだと思う?」 【兄】 「そりゃおめえ、ぐるぐる回ると外側に働くヘンテコな力だ」 【優衣】 「うん、そうね。軸から向かって外側に働く力よね」 【優衣】 「とーころがどっこい! 兄さん、きてきて。これを見て」 【兄】 「んー?」  立ち上がり、机の側まで寄る。 【優衣】 「ここ、ここ。遠心力の解説が書いているでしょう」 【兄】 「おう」 【優衣】 「読んでみるわね。んんっ」 【優衣】 「『遠心力は、系に関係する“回転軸”および“回転する物体”を観  測者とした場合に発生する見かけの力である』……」 【兄】 「ほうほう」  ……。 【兄】 「わけわからん」 【優衣】 「要は、『遠心力は“回している側”または“回される側”が勝手に  感じているだけの、実際には存在しない力』っていうことなのよ!」 【兄】 「ほーん」  で? 【優衣】 「ただの慣性力でしかないのね……いやあ、驚きだわ。  物理は奥が深いわね……はぁ~専攻してよかった~」  幸せそうな表情。 【兄】 「なんなん。兄を放っておいてなんなん」 【優衣】 「あ、ごめんなさい。少し頭を使うような話、兄さんにはまだ早かっ  たかーしらー?」 【兄】 「おんどりゃおめえ好き勝手言わせておけば」 【優衣】 「きゃー、冴えない兄さんが襲ってきたーっ。犯されるわー、きゃー、  きゃー」 【兄】 「そうか。おやすみ」 【優衣】 「あー、ごめんごめん! もう……。待って、私ももう寝るから」  教科書類を仕舞い始める優衣に声を掛ける。 【兄】 「お前、また一緒に寝ようとか言うつもりか?」 【優衣】 「え? あ……うん、そうだけど」 【兄】 「あのなぁ、いい加減にもう一人で寝たらどうだ?」 【優衣】 「……駄目?」 【兄】 「駄目というか……」 【優衣】 「別にいま始まったことじゃないでしょう? 昨日だって一緒に寝た  じゃない」 【兄】 「二連荘じゃねーか!」 【優衣】 「それにその前は、なん週間も前でしょう? つべこべ文句を言わな  いの。冴えないだけじゃなくてせこい兄さん?」 【兄】 「変な呼び方すんな」 【優衣】 「ふふっ。あら~……? まさか……年頃の女の子に添い寝されるの  に戸惑っちゃうのー? あらあらー、ウブな兄さんでちゅねー」 【兄】 「くっ……」  相変わらず人を小馬鹿にしおって! 【優衣】 「ふふっ。はーい、言い淀んだ兄さんの負けー! 敗者は潔く布団に  潜るべーし!」 【兄】 「えー」 【優衣】 「ほーらっ、さっさと布団に潜って?  兄さんは壁側が特等席でしょー?」  決めつけで特等扱いにするな。 【兄】 「くそ、わーったわーった。潜りゃいいんだろ潜りゃ」  埒が明かない。  抗弁は止めて、布団に潜り込む。  ひんやりとした物に全身を包み込まれる感覚。  寒い日はこれが辛いんだ。  きっとこいつも、これが嫌だから添い寝というイベントで気を紛ら  わせようとしているのかもしれない。  その優衣はと言えば、順当に事が進んだことにご満悦な様子だ。 【優衣】 「うん、よしよし。お利口ーお利口ー」  言いながら布団を捲って、息を吐きながら横に寝転ぶ。 【優衣】 「っ、うぅ~。はぁぁ、んもー面倒なお小言のせいでちょっと冷えち  ゃったじゃない。うぅ、さぶさぶー、兄さんの足で暖を取ろうっと」 【兄】 「つめた!」  布団の中で足先を絡ませてきた。 【優衣】 「うわ、兄さんってば靴下穿いてる!」 【優衣】 「…………。まさか……毎日穿いて寝てるの!?」 【兄】 「そうだが、知らなかったのか?」 【優衣】 「全っ然、知らなかった……。  あんなに一緒に寝てるのに……不覚だわ」 【兄】 「そういえばお前はずっと素足だな」  毎夜の姿を思い出してみる。  うん、確かに素足だ。  靴下を穿けばいいのに、しょっちゅう足を摺り合わせていた。 【優衣】 「ふぅ……まったく、兄さん?」  お小言が来そうな予感がプンプンする。 【優衣】 「いくら寒いからといって、寝るときは靴下を脱がないと健康に悪い  わよー?」 【兄】 「そうなのか?」 【優衣】 「えぇ、本当よ。嘘はつかないわ」 【優衣】 「確かに、手足を温めることは副交感神経の働きを促して体をリラッ  クスさせることに繋がるわ」 【優衣】 「眠くなり始めると手足の温度が二度近く上昇すると言うし、擬似的  ではあるけれど、入眠まで導くことには繋がると思う」 【優衣】 「でも、眠りについてからは話が別よ」 【優衣】 「睡眠時は副交感神経系が優位で、血圧も脈拍も低下するの」 【優衣】 「代わりに末梢の血管が拡張するんだけど、そこで靴下を穿いていた  ら……どうかしら?」 【優衣】 「私たちが思っている以上に末梢神経は敏感よ。いま兄さんが穿いて  いる、こんなぴっちりとした靴下じゃ、血管は縮んでるわ」 【優衣】 「それでいて、睡眠時は深部体温を下げるために汗を搔いているの。  主に手の甲と胸部にね」 【優衣】 「布団の中は汗による蒸気でムレムレ」 【優衣】 「……もし、靴下がその湿気を吸い込んでしまったら、どうなるかし  ら?」 【優衣】 「水は温度を奪う作用があるの。……となると、末梢神経が縮んでし  まってうまく血液が循環しない足先から体温を奪うことになるわ」 【優衣】 「あら大変、温めるつもりがもっと足先を冷やしてしまうことになっ  ちゃった」 【優衣】 「こういった体の部分的変化は身体的に悪影響を及ぼすわ。脳の意図  しない体温の変化は自律神経を乱れさせる原因にもなる」 【優衣】 「冷え症が悪化することだってあるわ」 【優衣】 「どう? なかなか勉強になる話だったでしょ?」  微笑みながら言った。 【兄】 「そうだな……」 【兄】 「まあまあ興味深い話だった」  だからと言って靴下を脱ぐ気はないが。  だって冷たいんだもん。  寒いんだもん。  体に悪いと言われても、こればっかりは止める気にはならないね。 【優衣】 「私から言わせてみれば、靴下を穿くことは、冷え切った布団に潜り  込む際の、あの『冷たいっ』って感覚から逃げるためのもの」 【優衣】 「布団が温まれば、布団が靴下代わりになるわ。靴下なんて逆に鬱陶  しいことこの上ない、ってねー」  言いながら、足先が冷えるのか布団の奥のほうでもぞもぞと足を動  かしている。 【優衣】 「う、ぅ~……さむさむぅ……。ん、ほら兄さん? 私の話聴いてた  でしょ? さっさとっ、靴下を、脱ーぐ、っ」  足首の当たりを優衣の足指が蠢き、靴下の縁から指が差し込まれる。  そのまま器用にぐいぐいとずらし始める。 【兄】 「ちょ、痛い、痛い! 爪がえぐってる! いてえっての!」 【優衣】 「もー暴れないのーっ、足で靴下を脱がすの難しいんだから……。  んっ、爪が刺さるのくらい我慢してちょーだい、っ」  両の足を上手く使い、靴下を脱がしていく。  抵抗する気も失せて好きなようにさせていると、あっという間に両  足分を脱がされてしまっていた。 【優衣】 「ふう、脱げた」 【兄】 「シクシク、脱がされた」 【優衣】 「もう、ほんっと……手間の掛かる兄さん。いつまでも子供みたいな  んだから」  【兄】 「うるさいよ」  暗がりで顔色は正確に窺えない。  兄を小馬鹿にする優衣は、きっといつものように妙に嬉しそうな顔  をしながら悪態を吐いているだろう。 【優衣】 「……ん……そう、ね」  思案をするような声。  【優衣】 「靴下を穿かなきゃ駄目なくらい寒がりな兄ーさーん」 【兄】 「どうした、理屈屋のコテコテ理系妹ー」 【優衣】 「んー……すりすり」  足先に添えられる肌の感触。 【優衣】 「ふふっ、冷え切った足を温めるのは人肌が一番だと思わなーい?  すりすり~、すりすり~」 【兄】 「ちょ、ちょっと待って下さる?」 【優衣】 「んー? なに、どうして敬語なのよ」  笑いながら訊いてきた。 【兄】 「足を摺り寄せられるのは、さすがになんかむず痒い」 【優衣】 「ん。むず痒い? なあにその感想。よくわからないんだけど。どう  してむず痒いの~?」 【兄】 「どうしてと言われても」 【兄】 「……俺からもやってみようか?」 【優衣】 「ふうん? くす、どーぞ。次は兄さんから動かしてみて」 【優衣】 「寒いときに自分の両足で摩擦熱を引き起こすときのように、私の足  を使っていいわよー」  すぐそばにある優衣の素足。  片方の足を両足で挟み、転がすようにして摩擦する。  露出して乾燥した肌は、すりすりと滑らかに滑る。  堪らず優衣が鼻で息づく。 【優衣】 「ん、っ、ふっ。……あ、あぁ、兄さんの言いたいこと、なんとなく  解ったわ……。なるほど、確かにむず痒いわね……」 【兄】 「だろう?」 【優衣】 「あまり足を使って人を触るっていう動作はしないものね。足を使わ  れているっていう事実に変な違和感を覚えるし……」 【優衣】 「あと、何より足をすり寄せられるっていうのに慣れてないみたい。  純粋に、ふふっ、くすぐったいっていう感覚も兼ね備えてる」 【優衣】 「でも、なんか……あれね」  楽しそうな声色で優衣は言う。 【優衣】 「ちょっと……ふふ、くすくすっ、くす」 【兄】 「なんだ、唐突に」  堪え切れないといった様子でくつくつと笑っている。 【優衣】 「あぁ、ごめんなさい。ふふっ」 【優衣】 「……こうやって、足先だけを使って子供のようなじゃれ合いをする  の……嫌いじゃないわーって思ってね」 【優衣】 「童心に返ってみたーってところかしら」  言いたいことはなんとなく解る。  意味もないじゃれ合いや突き合いをする子供の行動に近しいものを  俺も感じていた。  無邪気な子供の遊び。  そう考えると、こうしてする添い寝も、昔から続く言わば子供の頃  の習慣の名残と思えるわけで。  別段、緊張することはない。  俺たち兄妹の子供っぽい一面ということだ。  うむ、心が落ち着いてきた。 【優衣】 「んふふー、にーいさーん。ぎゅーう」  ぎゅむ 【兄】 「……なんで抱き付く」 【優衣】 「んー……? ん、なんか今日は……甘えたい気分?」 【兄】 「いままでそんな日なかっただろう」 【優衣】 「うん、そうね。今までこんなに甘えたいって思ったことないかも」 【優衣】 「まあ、場の流れというか、雰囲気というか」 【優衣】 「童心に返って、兄さんに甘えたいー……クスッ。  そういう理由じゃあ、駄目?」 【兄】 「駄目というか……」  胸の柔らかさが駄目というか。  やっていることは子供っぽいかもしれないけど、感触は子供じゃな  いというか。  くそ、どうして落ち着いてきていた心をわざわざ乱れさせるんだ! 【優衣】 「ん~?」 【兄】 「だ、駄目だ駄目だ! 離れなさい!」  肩を掴んで強引に引き剥がしにかかる。 【優衣】 「っ、うわ! なに、なんで肩を押してくるのっ、――ぐむ。  ちょっと、顔まで押さなくたっていいじゃない!」 【兄】 「うるせーやい! 向こうむいてろくそったれ!」 【優衣】 「ん、なにをそんなに怒ってるのよ……。  はいはい、向こうをむいてればいいのねー、はーいはい」  素直に背中を向ける。  よ、よし。これで平常心を取り戻せるはずだ。  くそ、今日はいつも以上に疲れるやり合いだったな。 【優衣】 「……」 【兄】 「……」  急な静けさ。  寝る前の盛り上がりから落ち着いていく一連の流れは、妙な寂しさ  を感じる。  まだまだ話し続けたいと思ってても、もしかしたらもう眠りたいの  かもしれないという気が立ちはだかる。  話し掛けてくれればすぐに声を返してやるのにーと思いながら目を  閉じて……  そのままいつの間には自分も…… 【優衣】 「――兄さん?」 【兄】 「ん……?」 【優衣】 「背中、くっつけてもいい?」  まだ甘えたいモードは継続中なのだろうか。  背中か……。  背中なら、まあ大丈夫だろう。  柔らかい部位はないしな、女性は感じない。 【兄】 「ん」  どっちとも取れる適当な返事をした。 【優衣】 「ありがと」  声色のニュアンスから肯定と判断したらしい。  セミダブルのベッドは二人で寝るには少々キツい。  片方が寝返りを打てば、もう片方に被害が及ぶ。  妹との距離は人一人分も離れていない。  ずりずりとこちらに寄れば、あっという間に背中は到達する。 【兄】 「まだ甘えたいモードか?」 【優衣】 「ぇ……? ……あぁ、そうね。  うん、まだ甘えたいモードかも」 【兄】 「そうか」  仕方ないやつだ。  腕を優衣の腹に回す。 【優衣】 「ぁ……」  うん、心が冷静だと妹想いな良き兄として振舞える。  いつもと違って兄を慕ってくれているモード全開の妹を、無碍には  できないだろう?  少しくらいは寛大な心を持ってして、受け止めてやらんとな。 【優衣】 「……ふふっ、兄さんも甘えたいモード?」 【兄】 「お兄ちゃんモードだ」 【優衣】 「お兄ちゃんモード……。ふうん、おにいちゃん、ね……」  もぞもぞと身動ぎをする。  腕を回している腰がずりずりとこちらに寄ってきた。  腰回りに押し付けられる柔らかさ。  瞬間に察した。 【兄】 「なぜお尻を押し付けてくる」 【優衣】 「え? お尻?」 【優衣】 「んー、だって、兄さんったら私の腰に手を回してるでしょう?」 【優衣】 「抱き寄せたいなら、寄せてあげようかなーと」  違うよ! なんでよ! 【兄】 「あ」  やばい。  反応してきた。  腰を引かないと……! 【兄】 「……」  壁だ。  押すことはできても引くことはできない。  いつの間にここまで後退していたんだ。  優衣を押し返したときか? 【兄】 「待て、動くな……!」  お尻がふるふると揺れる。  この動きは危険だ。  とにかく動きを阻害しないと……! 【優衣】 「ん、っ……あ……。な、なに? きつく抱きしめて……」 【兄】 「……えーっと」 【兄】 「動けないようにしようと思ってな」 【優衣】 「?」  動きが止まった。  よし、これで落ち着こう……すーはー、すーはー。  鼻腔をくすぐるシャンプーの香り。  抱き締める腕に覚える胸の柔らかさ。  腰に押し付けられたままのお尻。  状況は悪化していた。 【優衣】 「っ、……あ」  何かに気付いた。 【優衣】 「あの、兄さん」 【兄】 「待て。喋るな」 【優衣】 「お尻に当たってるのって……」 【兄】 「Don't thinking!」  優衣の軽く動く刺激にびくびくと反応させてしまう。  誤魔化しきれん。 【優衣】 「ちょ、ちょっと、なに硬くしてるのよっ」 【兄】 「は、はははっ、ははー」 【優衣】 「はははーじゃなくて……!」  時間を考えてだろう、声を潜めて怒っている。 【兄】 「いや……うん。お前も成長したな。もう子供じゃないな、うんうん」 【優衣】 「……なにその言い訳。子供の体じゃないなって言うの、それセクハ  ラ?」 【兄】 「素直に言葉を受け取って!」 【優衣】 「褒め言葉として受け取ってほしいなら受け取る」 【優衣】 「でも、だからと言って……反応していい理由にはならないわよ、ば  か」 【兄】 「ご尤も」  ここは素直に謝ろう。 【兄】 「すまん」 【兄】 「色んな理由があって、な」 【兄】 「やましい理由じゃないんだ。お前はやましいと思うかもしれないが、  そんなことはないんだ」 【兄】 「たぶん」 【優衣】 「……」 【兄】 「……」  なにか言ってくれ。 【優衣】 「……辛いの?」  切り返し文句がそれだった。 【兄】 「へ?」 【優衣】 「ペニスが勃起したままっていうのは、男の人は……兄さんは、辛い  の?」 【兄】 「あ、いや。そういうわけじゃ」 【優衣】 「だって……さっきからずっと、お尻に押し付けてきてるわよ……?」 【兄】 「あ……」 【優衣】 「気付いてない振りをしたほうが……よかった?」  上体を捻って、脇目でこちらを見遣る。  暗がりで、その顔は困ったようにも楽しそうにも見えた。 【兄】 「そ、それは、お前がその位置から動かないから」 【優衣】 「……そりゃ、私が押し付けた位置から動かないことも理由かもしれ  ない」 【優衣】 「けど、兄さん……無意識かもしれないけど、微妙に腰……動いてる」 【兄】 「……」 【優衣】 「……興奮しちゃった?」 【優衣】 「妹のお尻なんかで……?」 【兄】 「ち、ちが……これは生理現象で」 【優衣】 「くすっ、生理現象? 生理現象だったら、妹の身体に反応しても仕  方ないっていうのかしら~?」  おどけるように語尾を上げた。 【兄】 「……溜まってるから」 【優衣】 「ふうん……『溜まってるから』。……性欲が? 欲求不満なの、兄  さん?」 【兄】 「……お前が」 【優衣】 「? ……私が?」 【兄】 「お前が、毎晩毎晩ベッドに潜りこんでくるからだろう」 【兄】 「だから、発散しようがないんだよ」 【優衣】 「毎晩毎晩ベッドに潜り込むから、発散ができないの。ふうん、そう  なんだ……」  笑いながら言った。 【優衣】 「兄さん? それってどっちにしろ、私のせいだーって言いたいんじ  ゃない?」 【兄】 「いや、……そうか?」 【優衣】 「まあ、責任の拠り所は両者の言い合うところに有り。客観的観点か  らしても、どちらに加担するかで意見が別れそうね」 【優衣】 「一般論では、倫理観から兄さんの責任になるでしょうけれど」  何も言い返せることはない。  弁明という名の言い訳を続けたが、非はこちらにあるだろう。  だが、まだ引き返せる。  鎮まるまで待てばいい。  反応してしまっただけで罪になるなんて、それこそ人間の生理学を  敵に回すことになるだろう。  こればっかりは制御できないんだから。 【兄】 「すまんな」 【兄】 「じゃあ、離れて……」 【優衣】 「くす……、……ていっ。すりすりすり~っ」 【兄】 「う、あッ」 【優衣】 「ぁっ……。ふふっ、動いてるー。  これ、すっごく硬いわよ? 兄さーん?」 【兄】 「何してるんだバカ、離れなさい!」 【優衣】 「こんなに硬いもの、一体どうするつもりなの?」 【兄】 「そんなの、放っておけばどうせ……」 【優衣】 「ふうん? 放っておけば治まるの……へえ?」  口の端を釣り上げて、可笑しそうに笑う。 【優衣】 「嘘ばっかり」 【兄】 「嘘なんかじゃ――」 【優衣】 「兄さんは」  割って入ってきた優衣の言葉。 【優衣】 「いま……何がしたいの?」 【優衣】 「私のお尻に、ペニスを擦りつけたいの?」 【兄】 「はっ……? ち、違う」 【優衣】 「じゃあ、なに? どうしたいの?」 【優衣】 「兄さんは、性欲の処理がしたい……そうなんでしょう?」 【兄】 「それは……うむ」  一人遊びは随分久しい。  溜まりに溜まったものは、今の状態を表している。 【優衣】 「くす。じゃあ、遠慮しないで」 【優衣】 「私がいることが責任だっていうなら、私の存在は気にしないで」 【優衣】 「好きなようにして。ね? それでいいでしょう?」 【兄】 「いや、う、ううん」  それは、どうなんだろう。  していいことなんだろうか。  いくら許しを得たとしても、他人の――ましてや妹の――目の前で、  性処理をするなど。 【優衣】 「私を気にしないで性欲処理を行えるようにならないと、兄さんはず  っと辛いまま……」 【優衣】 「さすがに兄さんを苦しめるのは、罪悪感があるわ」 【優衣】 「だから……。ん……、私は気にしないから……兄さんの言う性欲の  発散を、ここでしていいから」 【優衣】 「兄さんが、……だらしなく精液を飛ばすところ……見せて?」  こいつ、観察するつもりだったのか。  道理であまり傍から離れないわけだ。 【兄】 「……」  優衣の催促に、逸物が飛び跳ねて喜ぶ。  どんなに頭で考えてみても、体は素直だ。 ◆1.1 「初めてのオナニー観賞」  …  ……  … 【兄】 「本当に、しても……いいか?」 【優衣】 「……うん。どうぞ? 私は兄さんの隣で寝てるから、だから兄さん  は一人で……いつもしてるみたいにして……」  意を決した。  優衣が腰を引くと同時に、布団を捲る。  露出させようとパジャマに手を伸ばしたところで、その様子を見守  っていた優衣から声を掛けられる。 【優衣】 「…………ぁ、あのっ。その……兄さん?」 【優衣】 「えっと……今さらこんなこと言うのはあれだけど、  ……私が見ても、いいの?」 【優衣】 「局部を見られるのは、男の人でも恥ずかしいんでしょ?」  場の緊張が高まってきて、優衣はなあなあで事を運んでいることに  危機感を覚えたようだ。  無理強いしていないかと不安がっている。 【兄】 「逆に訊くが、見せてもいいのか?」 【優衣】 「う、ん。見るのは、別に……兄さんのなら平気」 【優衣】 「というか、いますっごくわくわくしてるもの」 【兄】 「そ、そうか」  幸福感。  自分だけ許された、その特別扱いに心が揺れる。 【優衣】 「あ……そっか。兄さんは見られたいの。見て、ほしいの……ね」 【兄】 「いや、別にそういうわけじゃ」  ……。 【兄】 「いや……そうですネ」 【優衣】 「クスッ、素直で宜しい」 【優衣】 「……ほら、じゃあ……続けて?」  催促を皮切りに、手を掛ける。  腰を一周するゴム紐を伸ばし、奥へ下ろした。 【優衣】 「……ぁ」  同時に、肩に頬を乗せる優衣が息を漏らした。  視線の先には硬直して脈動を続ける陰茎がある。 【優衣】 「それが……、……」  言葉に詰まるようすを見せると、生唾を飲み込む。 【優衣】 「ね、ねぇ。本当の本当に、見ても大丈夫なの……よね?」  不安そうに囁くような声で訊く。 【優衣】 「兄さんの……、……ペニス。兄さんの、してる……ところ。  本当に見ても……」 【兄】 「あぁ」 【兄】 「……見ててくれ」  もう自棄だ。  ここまで恥を晒してるんだ、思いの丈をぶちまけてしまおう。 【優衣】 「ぁ……。ふっ、くすくすっ。……そぉ?  見ててほしいなら、見ててあげるわねー」  子供を甘やかすように言うと、俺の腕をぎゅっと抱き締めた。  我慢の限界だ。  そっと逸物を握る。 【優衣】 「…………」  関心するように息づく。  首元を生暖かい息が撫でていく。 【優衣】 「手で握って……、……へえ、そうやって動かして……。  うわ、暴れてる……」 【優衣】 「兄さん……? それ、勝手に動いちゃうの……?  わざと動かしてるわけじゃ……ふふっ、ないわよね?」 【兄】 「自分の意思に反してってわけじゃないが……」 【兄】 「思わず動かしてしまうんだ」 【優衣】 「ふんふん……脊髄反射、ってところかしら……?  刺激されると反応しちゃうのかしらね」 【兄】 「いや、えっと」 【兄】 「気持ちいいと反応する……」 【優衣】 「え……? ぁ……気持ちいいと、反応するんだ。  …………へぇ」 【優衣】 「てっきり、気持ちいいのは射精だけかと思ってたわ。  ……射精までの途中行程も、快感が伴うのね」 【優衣】 「……ふふっ」  優しく笑った。 【優衣】 「なんだか……気持ちいいから反応してるっていうのを聞くと、くす  っ」 【優衣】 「兄さんのペニスが……悦んでるように見えてきた」 【兄】 「っ」  優衣の感想に逸物が執拗に反応する。 【優衣】 「あ……。なに……? いまの……」 【優衣】 「私の言葉に反応した?」  どう答えたものだろう。  素直に答えると気持ち悪がられやしないだろうか?  言葉責めに性的反応を示す変態だと。 【優衣】 「……兄さん?」  優衣の顔がやや上向きになり、やおら視線を向けられる。  視線に応えることはできない。 【優衣】 「……」  優衣は二つ呼吸を挟むと、息を吸った。 【優衣】 「チンポ」 【兄】 「っ!!」 【優衣】 「うわ、わ」  優衣の口から飛び出た卑猥な単語に、逸物の奥から歓喜の渦が巻く。  危うくこれだけでイクところだった……。 【優衣】 「へえ……」  それを見た優衣は厭らしく微笑んだ。 【優衣】 「私にこんな言葉を囁かれるだけで、チンポは反応しちゃうんだ……」 【優衣】 「反応しちゃうのは、気持ちいいからって言ってたわよね……?  てことはぁ……兄さんは、私の言葉で気持ちよくなっちゃったの?」 【優衣】 「うわあー……兄さんってば、やーらしー……ふふふっ」  冗談よ、とばかりに頬を肩に擦りつける。  顎元を髪が撫で、ふわりとシャンプーの香りがする。  風呂上りの優衣の匂い。  いつもの、しかしながら昔とは違う少し大人びてき始めた香り。  自分の知る妹であり、知らない妹の姿でもある。  そんな複雑な心境を察するように、甘い香りが鼻腔を抜けるたび逸  物が反応する。  優衣はじっとその様子を見つめていた。  表情は頭部に隠れて窺い知れない。 【優衣】 「あの……兄さん? ついでだから訊きたいんだけど」 【兄】 「ん……?」 【優衣】 「男の人って、自分でするときは……オカズを用意するって聞いたこ  とがあるんだけど……」 【優衣】 「兄さんのオカズって、どんなものなの?」 【兄】 「えーっと……」 【優衣】 「一度、興味本位で家探ししたことがあるけど、見つけられなくて…  …」  ちょっと。 【兄】 「……あまり性癖の話は、な」 【優衣】 「うん? 恥ずかしいの? ……もう、ここまでさらけ出しておいて、  何を恥ずかしがってるのよー」  そうは言うが、俺にも守らねばならない牙城があるわけで。 【優衣】 「まあ、いいわ。……代わりに、いま何を考えてるのか教えて?」 【兄】 「……?」 【優衣】 「だって、いまはオカズを用意してないじゃない? なら、兄さんを  興奮させてるのは想像力」 【優衣】 「何を考えてる? いま、何をオカズに……兄さんは“おちんぽ”を  擦ってるのー?」 【兄】 「っ……」  ……わかってるくせに。  わかってるからこそ、そうやって俺を苛めてるくせに。 【兄】 「……確信が欲しいだけか」 【優衣】 「?」  おどけるように喉を鳴らす。 【兄】 「……お前だよ」 【兄】 「お前の声と、体の感触を……オカズにしてる」 【優衣】 「ぇ……わたし?」  素の声。  予想だにしない返答を受けたときの声だ。 【兄】 「何を驚いてる……?」 【優衣】 「あ、いや……てっきり、卑猥な言葉に興奮するだけだと思ってたか  ら……」 【優衣】 「まさか、私の囁き声と……密着してる体をオカズにしてるとか……  思わなかった……」  恥ずかしそうに声を萎めていく。  とんだ勘違いだ。  自分がオカズにされてると解っていながら、俺に囁いてきたり擦り  寄ってきているわけじゃなかった。  囁いていたのはただのシチュエーションによるもので、擦り寄って  いたのはただの妹としての自然な行動によるものだ。 【兄】 「……」 【優衣】 「……」  気まずい雰囲気が続く。  それでも手は止まらない。  すりすりと聞こえる衣擦れ音と、優衣の息遣い。  時おり、優衣がきゅっと軽く腕を握ってくる。  その度に肘に当たる胸の柔らかな感触。  嫌な沈黙と、背徳感が混ざる甘美な感覚に酔うように手が動いてい  く。 【優衣】 「ぁ…………音が」  指に絡まるぬめりとした液体。  カリ首を弾くと水音が響くようになってきた。 【優衣】 「兄さん……? にちゅにちゅ……って、すごい音がしてるわよ……?」 【優衣】 「…………ふふ、気持ちいいの? 妹に見られながら、ペニ――……  ううん、……チンポ……シゴくの」 【優衣】 「ほら、答えて? ……それって、興奮すると漏れてくるんでしょ?  ……兄さんの涎……だらしなーく垂れてくるよーだーれ。ふふっ」 【兄】 「っ、ぁ……」  答えられるわけがない。  惨めで、辱めを被ることなどできるわけがない。 【優衣】 「……エッチな音……。……抱き付いてると、解る。兄さんの体がビ  クってするたびに、小さく『ぁっ』って息を漏らすの」  じっと見つめられる。 【優衣】 「兄さんの顔……、……見たことない顔……」 【優衣】 「嬉しそうな、苦しそうな顔……。……なんか、すごく……エッチな  顔してる」 【兄】 「見る、なっ」 【優衣】 「やだ。見る」  こいつ……っ! 【優衣】 「凄く切なそう……。なんだろう……兄さんの顔、よく解らない。  怯えてる子供みたいな顔にも見えるし……」 【優衣】 「……くす、大丈夫。大丈夫だよー。私がちゃんと見ててあげるから。  寂しくないから……ね。……ほら、手……握ってあげる」  抱えられている腕を伝い、優衣の手が俺の手を握る。  何度も握り返しながら、指の間に指を絡めていく。 【優衣】 「ふふっ。……どお? 安心した? これで心置きなく、おちんちん  をいじれまちゅねー」  俺を小馬鹿にするいつもの妹だ。  年下なのに、人を見下すような言葉遣いをする。  普段と変わらない……変わらないはず。  でも、性的に興奮しているいまの心理状態では、受け止め方が変わ  ってしまう。  被虐心は、腰を跳ねさせるくらいの快感に変換されていく。 【優衣】 「っ、ぁ……。……どうしたの? そんなに息を荒げて……腰まで震  わせて」 【優衣】 「もしかして、兄さんは……赤ちゃんプレイが好きなのかしら……」 【兄】 「違う、っ!」 【優衣】 「違うなら、いいけど……」  言うと、またぎゅっと手を握ってくる。  身体が震える。 【優衣】 「……」  また握る。  跳ねる。 【優衣】 「……兄さんってば」 【優衣】 「手を握られるのが、そんなに嬉しいの……?」 【兄】 「……」 【優衣】 「私が、こうやって……ぎゅって握ってあげたら……ぁっ、ほらっ…  …腰が震えた」 【優衣】 「そっか。赤ちゃん言葉とかじゃなくて、私に手を握られたから嬉し  そうにしてたんだ……? こんな、単純なことで……」 【優衣】 「……なんか……、なんか……変よ、今日の兄さん……。私の知って  る兄さんと、なんか違う……」 【優衣】 「妹のお尻で反応したり、囁き声とか体に触れてる感触とか、手を握  るだけで……性的興奮なんてしないはず……」 【優衣】 「だって……そんなことでエッチな気分になってたら……兄さんと過  ごしてる普段の日常が……」  俺の性的な反応に戸惑い、困ったような声を出す優衣。  優衣を困らせている。  しかも、性的な方法で。  その事実に、優衣の様子に背筋に電気が走った。 【兄】 「っ、やば……!」 【優衣】 「ぁ……。ど、どうしたの?」 【兄】 「裾っ、裾捲って……!」 【優衣】 「裾を捲る……? は、はい、わかったっ。……っ、……ん、これく  らい?」 【兄】 「それじゃ汚れる、もっとっ」 【優衣】 「もっと? わかった、じゃあパジャマのボタン外すから。じっとし  てて……」  腹の上を華奢な指先が踊る。  ゆっくりとボタンが外されていく間、俺の右手は上下している。  優衣に握られた左手はいまだ自由の利かない状態だ。 【優衣】 「……これで、いい?」 【兄】 「あぁ、ありがと……」 【優衣】 「……どういたしまして」   浮かせていた上半身が俺に預けられる。  さらけ出された素肌に優衣の頬が触れる。  さらさらとした柔肌。  吐息が胸に直接あてられて、心地いい。 【優衣】 「もう……出るの?」 【兄】 「あぁ……」 【優衣】 「パジャマのボタン、全部外さなきゃいけないほど……飛んでくるの?」 【兄】 「普段はそうでもないけど……」 【優衣】 「普段はそうでもない……? え……じゃあどうして……」 【兄】 「今日は、たぶん滅茶苦茶飛ぶと思う」 【兄】 「お前に見られてるから。……興奮度もやばいし」 【優衣】 「っ……、また……」  困ったように熱のこもった息をつく。 【優衣】 「私に見られて……興奮してるからとか……。だから、めちゃくちゃ  飛ぶとか……」 【優衣】 「兄さん、さっきからおかしい……。私を辱めようとしてる……?」 【兄】 「……いいから、見てて」 【優衣】 「ん、ぅぅ……。……ん、わかった」 【優衣】 「……ちゃんと最後まで見てるから。だから……兄さんのチンポ、  ぴゅっぴゅって射精するところ……見せて……?」  射精をおねだりしているような甘えた声。  脳髄まで犯す甘美な音色に、促されるように精液が管を上ってくる。 【兄】 「くっ、ぅあ……ッ!」  びゅっ、びゅるる!! びゅく! ビューッ!!  聞かすまいとしても漏れてしまった声も厭わず、優衣の前で精液を  撒く。  腰が浮き上がり、空中で何度も震え暴れる。  浮いた腰の脈動に合わせるように宙で暴れ回る逸物は、暗闇でも分  かるほどに白く濃厚そうな精液を多量に飛び散らす。 【優衣】 「ぁ……ぁ、ぁ……、――っ、ぁっ! ぅあっ! んっ! っ……!  はぁっ、でた、でたぁ……。せーえき…………にーさんの……」  【優衣】 「はぁぁ…………すごぉ……。兄さんの射精……はぁぁ……」  兄の射精を見つめ、肩口で熱い息を吐く。  胸にまで散ってきた精液の熱さと同じくらい熱を持った吐息をつき、  優衣はおずおずと口を開く。 【優衣】 「あの……兄さん……?」 【優衣】 「手、放してもいい?」 【兄】 「え……」  射精の快感に思わず優衣の手を握り締めていた。  恋人繋ぎでは、思うように振りほどけないのだろう。  若干の惜しみから握った手を緩められずにいると、続けて言う。 【優衣】 「このままじゃ、顔に散った精液が口に入りそう……」 【兄】 「あ……っ」  慌てて放す。 【優衣】 「……ありがと」  優衣は特に慌てたようすはなく、落ち着いた所作で顔を拭う。 【優衣】 「ぬるってしてる……」  指先で弄ぶ音。  手を拭くものがなく持て余しているようだ。  ベッドの横にあるティッシュに手を伸ばす。 【優衣】 「……………………すんすん」 【兄】 「こら……!」 【優衣】 「っ、あ。ご、ごめんなさい」 【兄】 「なんで嗅ごうとするの……!」 【優衣】 「ちょっと、興味本位で。たはは」  たははじゃないでしょ……。 【優衣】 「あー……兄さん? ティッシュもらえる?」 【兄】 「あぁ」 【優衣】 「……ありがと」  指先を拭う。 【優衣】 「……こっちは」  視線を下げる。 【兄】 「あっ、自分でやる」 【優衣】 「あ、ぁ、そう。……安心した」 【優衣】 「ついでに拭いてくれとか言われたら、どうしようかと思った……」 【兄】 「い、言わないって」  いそいそと胸に散った精液を拭く。  一枚じゃ到底足りず何枚も続けて消費する。  陰茎に散った残骸も、ティッシュが残らないように慎重に処理して  いく。 【兄】 「ゴミ箱……」  優衣が占領する向かい側のそばにゴミ箱は置いてある。 【優衣】 「あ、ごみなら私が……」 【兄】 「い、いや、いいです」 【優衣】 「いいから。私なら手を伸ばすだけだし、兄さんはじっと……ぁ」  無視して体を動かす。  向こう側に手を伸ばすため、優衣を抱きしめるような形になった。  小さく反応する優衣をよそに、ごみ箱へ投げ入れる。  反転して元の体勢に戻ると、優衣が呟く。 【優衣】 「……お腹に当たった……」  小さすぎるが確かにそう聞こえた。  いつまでも晒している理由はない、さっさと仕舞っておこう。  下ろしたパンツを上げ、開けたパジャマを着直す。  膝元まで追いやっていた布団を手に取り、お互いの肩まで持ち上げ  る。  終始、無言の状況が続いた。  胸に残る後悔の念。  それと同居する快楽の余韻。  それがまた罪悪感を助長して、気分を下げる。  いままでに感じたことのない圧倒的な快楽。  それが故、快楽に負けてしまったという罪悪感。  言葉にできない。  早く眠ってしまいたい。 【優衣】 「……兄さん」  か細く聞こえた声。 【優衣】 「あの、………………どう、だった?」  感想を求められているのだろうか。 【優衣】 「気持ちよかった?」 【兄】 「それは……まあ」 【優衣】 「そう……。てことは、ちゃんと性欲の処理になったのね」 【兄】 「……でも」 【優衣】 「……? でも……?」 【兄】 「……凄い罪悪感」 【優衣】 「……罪悪感?」 【兄】 「こんなところを妹に見せるとか、あまつさえオナニーを見せるとか  ……はぁぁ……やっちまったなあ」 【優衣】 「罪悪感……。……ざいあくかん」  俺の言葉を反芻するように繰り返し呟く。 【優衣】 「……これは、罪じゃないわ」 【兄】 「そりゃ、犯罪かって言われると悩ましいところだが」 【優衣】 「そうじゃない。犯罪かどうかって問題じゃないの」 【優衣】 「兄さんのしたことは、別に罪じゃないわ。だって、誰も苦しめてな  いもの」 【優衣】 「兄さんは私がいつもベッドにいるから性欲の発散ができずにいた」 【優衣】 「それなら、ベッドにいようがいまいが発散できるようにしましょう、  っていうのが今回の趣旨」 【優衣】 「私は嫌じゃなかったし、……興味もあった。兄さんも……戸惑いは  あったけど、私がいいと言うならと承諾した」 【優衣】 「兄さんの意思は、私の意思ありきのもの。私が嫌と言えば駄目で、  良いと言えばオッケー」 【優衣】 「なら、兄さんの罪は私の気持ち次第のはず」 【兄】 「あのな……俺はそういうんじゃなくて、道徳的な――」 【優衣】 「いい? 兄さん」  言葉に割って入って制してきた。 【優衣】 「道徳は人との生活の上で守らなければならいないもののこと。  万人と接する上で、社会を生きていく上で必要なものよ」 【優衣】 「別に、私と兄さんの間を縛るものじゃないわ」 【優衣】 「誰彼と……っていうのは問題でしょうけど、私と兄さんとだけなら  ……特に問題はないんじゃないかしら?」  また小難しい理論を展開し始めた。 【優衣】 「道徳に反するとしても……秘密にしておけば……くすっ、もーまん  たいっ。……でしょ?」  少しおどける優衣。  これが我が優衣の常套手段だ。  少々凝ったような話をして、反論しにくい場を展開して俺を言いく  るめる。  これは俺を手なずけるのが目的で、話の結論はどうでもいいのだ。  彼女も本気では言っていない。  道徳とはなんぞや、とか。  罪とはなんぞや、とか。  そんなことはどうでもいいのだ。  優衣が言いたいのは、『気にすんな』ってことだろう。  だからだろう、念を押すように優衣は続ける。 【優衣】 「これだけはお願いがあるの。有耶無耶にしてギクシャクしてしまう  のが嫌だから言っておく」 【優衣】 「今日したのは、私が無理にお願いしたからよ。いつもみたいに、兄  さんを言いくるめただけ」 【優衣】 「だから……私に負い目を感じないで。罪悪感を覚えないで」 【優衣】 「今日寝て、起きて……また日が昇ったら、ちゃんといつもみたいに  接してほしいの」 【優衣】 「今日までの私と兄さんの関係を、ね」 【優衣】 「ちょっとは変になっちゃうかもしれないけど、これだけは守ってほ  しいの」 【優衣】 「負い目を感じて、いままでの生活に支障を来たさないで。  ……ね? オーケー、兄さん?」  優衣も、きっと俺と同じ心境だ。  とんでもないことをしてしまったという罪悪感を覚えている。  けど、そこで踏みとどまってはいられない。  人生は坂道だ。登り続けなければならない。  立ち止まっては、下手すれば滑り落ちてしまう。  優衣は怖かったんだろう。  ちょっと興味本位で脇道に反れただけで、氷のような表面の坂道に  変わってしまうのが。  私生活に否が応でも関わる、兄妹という関係の破綻が。  だからこそ、あえて杭を打った。  登るのが困難になっても、それでも滑り落ちることだけはしまいと  した。  優衣の言葉にはそういう意味合いが込められていた。  たった一人の妹であり、たった一人の兄。  長い年月の内のたった数十分で、兄妹間に大きな亀裂を生む可能性  に恐れ戦いたのだ。  さりとて、それは俺も同じこと。  相互理解を得られたのならば、行動も易しってことだ。 【兄】 「……わかった」 【優衣】 「……うん、ありがと」 【兄】 「こちらこそ」  ……夜は更けていく。  異常な夜も、明ければ終わる。  妙な夜だったという思い出だけが残る。  そのはずだ。 ◆2  二日目 「ベッドでの二人」  その日の夜のこと。 【優衣】 「あ、兄さん」 【兄】 「んー」 【優衣】 「歯磨きの途中? ――あ、いいのいいの。兄さんを探してたわけじ  ゃなくて……これこれ」  洗面台の棚に置かれていた櫛を手に取った。 【優衣】 「まい・ぶらーし。忘れてたから取りに来ただけよ」 【兄】 「ん」  鏡越しに優衣へ返事をして、歯磨きに集中する。 【優衣】 「ふー……む。……ほ~ぉ」 【兄】 「ん?」 【優衣】 「こうして兄さんと並んで立つ姿を鏡越しに見てみると……ふんふん。  遜色ないわね」 【優衣】 「前までは、並んで立つと私のほうが一方的に幼い感じに映って見え  たけど、さすがにこの歳までになると歳の差と見た目の差は朧気ね」 【優衣】 「はっきりと解るのは身長差だけ。くすっ、服装を気に掛ければ、も  しかすれば私のほうが年上に見られたりもするかも?」  調子に乗ってるな。  なにが遜色ない、だ。  お前から見れば、外見的差は縮まったように感じるのかもしれん。  だが俺から見れば昔も今も、なにも変わらない。  大人びていると錯覚しているようだが、言うほど……  ……まあ、胸はアレだが。 【優衣】 「うん、やっぱり髪を伸ばし続けてるのがいいわね。少し落ち着いた  大人な雰囲気が……」 【優衣】 「あ、いやでも、ストレートヘアはちょっと子供っぽいかしら?」  鏡を見ながらぶつぶつと独り言を言っている。  理屈屋の妹も、所詮は女の子か。  容姿を気にするお年頃ってな。  櫛で髪を梳いている優衣を鏡越しに眺める間に、歯磨きが終わる。 【兄】 「がららら……」  水を吐く。 【優衣】 「終わった? んーどれどれ、ちゃんと磨けてるか確認してみるわ。  ほら、口開けてー……あーん」 【兄】 「いらん」 【優衣】 「くすくすっ、はいはい。いつもの冗談よ」 【優衣】 「それじゃ、行きましょうか」  部屋の電気を消して、優衣と前後して洗面台を後にした。  ……  舞台は変わって俺の部屋だ。 【優衣】 「んっ! んん~~ぅっ!! っはあ、……ふう。あとは寝るだけね」 【優衣】 「お先にお布団失礼しまーす。――とーう!」  ぼふっ 【兄】 「待たれい待たれい!」 【優衣】 「ん、んんぅ……人のベッドに寝るのって、例えようのない特別な感  覚があるのよねー……」 【優衣】 「人が普段使っているベッドを使用するっていう行為が、略奪の快感  を芽生えさせるのかしら」 【優衣】 「妙なドキドキがあるのよねー。特別なイベントって感じ」 【兄】 「お前ちょくちょく俺のこと無視するよな」  もう慣れたけど。 【兄】 「なに自然な体で部屋に入って布団に潜りこんでんだよおいこらさっ  さと出てこいや!」 【優衣】 「にーさん、お小言はなーしっ」  布団を捲る。 【優衣】 「ほら」  ぽんぽんっ 【優衣】 「……おいで?」 【兄】 「……」  あ、やっべーわこれ。  いまのは凄い、我が妹ながらなかなか胸にグッとくるジェスチャー  だっだぜ。  とまあ感心は置いといて。 【兄】 「ったくもー、しかたないなーお前はー」  俺のあからさまの演技に優衣は噴き出していた。 【優衣】 「ん、……っ……ふぅ、は……」  俺の潜り込むスペースを作るために奥へ後ずさっていく。  開けた場へ体を滑り込ませた。 【兄】 「電気消すぞー」  手元のリモコンを操作して、消灯。 【優衣】 「流れで私のほうが壁側にいってるけど、平気? 兄さんの特等席で  しょう」 【兄】 「違うがな」 【優衣】 「ふうーん? ……まあ、たまには違ったスタイルも有りか」 【優衣】 「ふふっ、兄さん? 今日は妙に素直だったんじゃなーい? 本当に  お小言を止めて、布団に潜り込んできたけど?」 【兄】 「寒かっただけだ」 【優衣】 「くすっ。あら、そう? 寒かったのなら仕方ないわねー」 【優衣】 「てっきり私は、布団に誘う所作に魔法を掛けられたのかと思ったわ」 【兄】 「そー、そんなことあるはずがあるまいー」 【優衣】 「ふうん?」  いかがわしいことを考えているような語尾の上がり方。 【優衣】 「そんなに体が寒いって言うんだったら……」 【優衣】 「今日は、抱き合って寝てみない?」 【兄】 「は」 【兄】 「お前、なに言ってんの?」 【優衣】 「だって、そうしたほうが温かいでしょう? たまにはそういうのも  ……ね?」 【優衣】 「毎回同じ寝方じゃつまらないわー。ときにはこういう刺激も必要よ」 【優衣】 「スパイスね、スパイス」 【兄】 「なにがスパイスだ馬鹿」 【優衣】 「辛いのが苦手な兄さんも、こういうスパイスは好きじゃない?  ふふっ、……“甘いスパイス”、でしょう?」  甘いスパイス……。  前回の夜が脳裏に浮かぶ。 【優衣】 「彼女のいない兄さんへの、ちょっとしたお試し~。くすくす、彼女  との添い寝はこんなもんじゃないでしょう? ん~……そりゃーっ」 【兄】 「う、わあ」  思わず変な声が出た。 【優衣】 「ん、ふっ。なに、どうしたの変な声出して」 【兄】 「い、いや、なんでもないなんでもない」  鎮まれ! なにをどきどきしているんだ!  これは妹これは妹これは妹。  なにを焦る必要がある、ただの柔らかくて人肌を持った抱き枕と思  えばいいんだーはっははー。  いかん、人肌とか言ってると温もりを意識してしまう。 【優衣】 「んー、ほーぉら、兄さんも。背中に腕を回して。  背中がさーむーいー」 【兄】 「あ、あぁ」  ペット、ペットだ、これはペット。  ペットを抱き締める感じだ、そうだ、人間じゃない、そうだ。  ……いかん、自分だけの奴隷の認識になってきた。  奴隷という響きに妙な興奮を覚えるのはなぜだろう。  目の前にいる物体に腕を回す。  ぎゅっと抱き寄せる。 【優衣】 「んっ、フ。ぅぅんっ」  嬉しそうに喉を鳴らしている。  あー、なんだこれ。おかしい。  なんでこんなに可愛いんだちくしょうめ。 【優衣】 「ん、……ふ、はぁ。……すぅ、…………はぁぁ」  吐息の生暖かさががパジャマを越えて胸の表面に広がっていく。  は、ははっ。そうか、これが彼女との添い寝なんだな!  なるほどぉ。  身が持たん。 【優衣】 「ぁ……こうして抱きついてみると、すごいわ」 【兄】 「なにがだ……?」 【優衣】 「すん、すん。……濃厚な、兄さんの匂いがする」  うひゃー、なにいっとるんだお主はー。 【優衣】 「人間の鼻って、犬と比べられたりして嗅覚に劣っているみたいに言  われるけど、実際の性能は高性能でね」 【優衣】 「匂いを嗅ぎ分けられるし、同じ匂いを嗅いでいるとその匂いに慣れ  て反応しなくなったりするの」 【優衣】 「……まあ、これは嗅覚じゃなくて脳の問題でもあるんだけど」 【優衣】 「兄さんはもう慣れて、全然気付いていないと思うけど、兄さんの部  屋って独特な匂いに塗れているのよ?」  それってどんな匂いなんだろうか。  気になったが、訊くのは止めておいた。 【優衣】 「すぅ……、ん。兄さんの体からする匂いは、部屋の香りを濃縮した  みたい……」 【兄】 「俺って、そんなに臭いのか?」 【優衣】 「あ、うぅん。臭いとかって言うんじゃないの」 【優衣】 「あー……いや、どうかな。人によっては臭いっていうかも」 【兄】 「どっちだよ」  臭いってことになると、結構胸に刺さるものがあるんですが。 【優衣】 「私は小さい頃から嗅ぎ慣れてるから、そう思わないだけかもしれな  いわ」 【優衣】 「こればっかりは、人に訊いてみないと解らないわねー、くすくす」  ひとたび笑ったかと思うと、胸に顔を埋めて深呼吸を始める。 【優衣】 「すぅぅ……、……ん」 【優衣】 「私は……むしろ」 【優衣】 「安心する、かな」  心臓が跳ねる。 【兄】 「……」  優衣よ、あまりそういう健気なことを言わないでくれるか。  普段は人を小馬鹿にしてるくせに、どうして添い寝のときだけはこ  うも可愛げのあることを言うのか。  俺をからかっているのか。  新手のいじめなのか。  体の奥からふつふつと沸き起こる感情。  これがいじめだとしたら、いじめに喜んでいる俺は相当な変質者だ。 【優衣】 「んー……」  腕の中にいる優衣がもぞもぞと動く。  足の周りに覚える違和感。 【優衣】 「そりゃー。ふふふー、脚絡めちゃったーあ」 【兄】 「『ちゃったー☆』じゃない」 【優衣】 「んんー、だってこうしたほうがあったかいでしょう?」 【優衣】 「熱の伝わりは、空気を介するよりも肌と肌との直接的な触れ合いの  ほうが効率良いわ」 【優衣】 「触れ合う面積が増えれば増えるほど……んふふっ。あったかい……」  身体的接触が増えれば増えるほど温かくなるのは概ね同意しよう。  でもそれは熱を共有していることだけが理由じゃない。  心臓が活発化して血液を循環させていっていることも理由だ。  それは俗に、火照るとも言う。  優衣が匂いを嗅ぐように深呼吸をするたびにパジャマを通して温か  い息が胸をくすぐる。  それが何とも言えない適度な快感で、俺は優衣を制せずにいた。  しばらくして、しなやかに腕に収まっていた優衣の動きが固まった。 【優衣】 「…………。ねえ、兄さん」 【兄】 「ん……?」 【優衣】 「気付かないフリをしたほうが……いい?」 【兄】 「……え」 【兄】 「な、なにに?」 【優衣】 「なににって……、……それは」 【兄】 「……」 【優衣】 「……」  沈黙。  言葉は返さずに、俺はぴくりと反応させた。  馬鹿なことをしてると思う。  口ではしらばっくれながら、自分の意思ではないとばかりに優衣の  腹を押し返しているのだ。  そんな態度に、優衣は腰を押し付けてくることで対抗する。 【兄】 「っ、……」 【優衣】 「ほら……こんなにかちかち」 【優衣】 「私のお腹に触れて、ビクビクさせてるのに……まだとぼける気?」 【兄】 「……認める」  優衣はやれやれと言ったようすだ。 【優衣】 「まったく……。いくら『恋人の真似事』で抱き合ってると言っても、  身体は妹なのよ? 興奮しちゃダメでしょーが……」  胸の辺りを指で非難される。 【優衣】 「抱き付いただけで大きくさせたり、手を握るだけで悦ばせたり……。  純情なんだか、初心なんだか変態なんだか……兄さんってば」 【兄】 「怒ってる?」 【優衣】 「怒ってるんじゃないの。……戸惑ってるだけ」 【優衣】 「兄さんのこういう……変態事情、というか、興奮材料について今ま  で知らなかったから」 【優衣】 「想像以上に単純で……私と兄さんとの私生活にもあるような簡単な  ことを興奮材料にしてるから……なんか、おかしくなりそう」 【優衣】 「全部、兄さんにとっては……って考えると……、何もかも変態に思  えてくる……」  萎んでいく声には、優衣が混乱してる様子がうかがえた。  兄の性癖など、普通は知る由もないだろう。  そして、その単純さに驚き呆れているだろう。  俺でも今まで知らなかったことだ、戸惑っても無理はない。  これで、お互いが性癖について理解をしてしまったわけだ。  私生活に支障が出るだろう。  しかし、昨日の優衣の言葉……  優衣は、俺の性癖がどうであれ日常の不変を望んでいた。  見て見ぬふり、気付いて気付かぬふり。  そうして、上辺だけでもいいから普段どおりに過ごす。  これからはそうしていけばいい。  そうやって心の整理をしたというのに、 【優衣】 「……また……する?」  それなのに、優衣から甘い言葉を掛けられる。 【兄】 「……いや、駄目だろう」  普段どおり宣言を心で誓った以上、そう易々と異常を引き起こして  はならない。 【優衣】 「私は……いい。全然気にしないわ」  俺が気にするっての。 【優衣】 「私がいいって言うなら……兄さんも、いいんでしょ?」 【兄】 「……なんなのその理屈」 【優衣】 「だって、兄さんがしたくない理由って、私を困らせてしまうかもっ  て遠慮でしょ? 見られるのが恥ずかしいとかじゃなくて」 【優衣】 「そういう優しさは有り難い。けど……押しつけがましいのはやめて」 【優衣】 「私の真意は兄さんがはかり知るところじゃない。私の本当の気持ち  は、私が知ってる」 【優衣】 「だから、あとは兄さん次第なのだけど…………どう?」 【優衣】 「妹の前で性欲処理を行う許可を得られても、兄さんは行使しない?」 【優衣】 「我慢して……眠れる?」 【優衣】 「どうするの? ……兄さん」 【兄】 「……」  優衣は許可を出した。  『普段どおり』を要求した優衣が、ベッドの中でのみ『異常』を許  可した。  結局はそうだ、すべて優衣のために固辞していたに過ぎない。  その優衣が代案を出したなら、俺は須らく意見に乗るべしだろう。 【兄】 「……わかった」  身体は正直だ。  心の整理がつく前から、意志表示していた。 ◆2.1 「唾垂らし」 【優衣】 「っ……わ……。…………びくびくしてる」  もはや恥じらいも見せず、優衣は目新しいものを見るように隆々と  した陰茎を直視する。 【優衣】 「もっと近くで見てもいい?」 【兄】 「え」 【優衣】 「……具体的には、太ももに頭を預けるぐらいの距離で……。  ……どう?」 【兄】 「……ま、まあ、いいけども」 【優衣】 「……それじゃ、失礼して」  ずりずりと足のほうへ後退していく。  脚の付け根までくると、宣言通り太腿に頭を預けてきた。  人に触れられることの少ない箇所だ。  それに……距離も近い。  気が昂る。 【優衣】 「うわー……、へぇ……。まるで生き物みたい……ふぅん」  吐息がかかる。 【兄】 「お前、ちょっと近すぎないか……?」 【優衣】 「え? あぁ、大丈夫。当たらないように気を付けるから」  いや、それならむしろ当たってほしいような……。 【優衣】 「……始めていいわよ?」  懇願するように促されて、俺は手を伸ばした。 【優衣】 「……」  眠たげで興味のなさそうな目。  それでも、月明かりに照らされた顔は上下する手を追っていた。  動きに合わせて目が動き、じっと焦点を合わせている。  興味がないような薄い態度だが、真剣そのものだ。  それに応えるように逸物が反応する。  吐息のかかる距離に優衣の顔がある。  根元に下がったときに、ちょっと角度を変えてやれば唇に触れる…  …そんな距離。  ……これはオナニーだ、優衣に当ててはならない。 【優衣】 「不思議な形……」 【優衣】 「男女の外見だけでは特に大差ないけど、ここだけはやっぱり………  …はふ。……全然違う……」 【優衣】 「私にはなくて……兄さんだけが持ってるもの」  ほう、と息を吐きながら呟くからたまらない。  わざとやってるのか……? 【優衣】 「……ちょっとごめん」  上下する右手を制する。  そのまま顔を亀頭へと向かわせる。 【兄】 「ちょ」  まさか、と思ったが、顔は触れるか触れないかの位置で止まった。 【優衣】 「すぅぅ…………っ、……っはぁぁ…………」 【優衣】 「ん……あまりにおわないわね」 【兄】 「それは……まあ、風呂上りだし」 【優衣】 「あ、そっか。お風呂上りだしね、納得だわ」  そう言ってまた太腿に頭を置く。 【兄】 「なんだったんだ……?」  訊きながら手を動かす。 【優衣】 「……ちょっと、気になって」 【優衣】 「さっき、兄さんのにおいを嗅いだとき……なんとも言えない感覚に  なったの。不思議な感覚……」 【優衣】 「ペニスのにおいを嗅いでもそうなるのか気になったから、ちょっと  ね」 【優衣】 「残念……また、お風呂に入る前に嗅ぎましょ」 【兄】 「えっ」  それって、また今度もあるってことじゃ。  しかも、風呂前ってことになると……寝る前じゃなくなるんだが。  どういう状況で嗅ぐつもりなんだ。 【優衣】 「……言葉の綾」 【優衣】 「深くは考えない」  俺の様子に気付いたのか、即座に補足される。  てっきりタガが外れて、私生活においても異常な兄妹関係を築きた  いってことかと思った。  思惑が外れて、嬉しいような残念なような。  結局、これは就寝前にだけ行わなれるもの。  人間活動を終え、就寝するその一歩手前でだけ俺たちは異常となる。  それ以外では、普段どおりの日常を送るんだ。  そうしなければならない。 【兄】 「わかってる」 【優衣】 「……どうだか。期待したような嬉しそうな顔してたくせに。  ……すけべ」 【兄】 「ぐっ」 【優衣】 「……さすがに駄目よ、私生活にまで及んじゃ。  これは……寝る前の、ベッドの上でだけ許されるの」 【優衣】 「絶対に……駄目なんだから」 【兄】 「わかってるって」  そんな普通の会話をしていても、萎える気配は全くない。  陰茎を見せている。他人に、しかも実の妹に反り返った本気の逸物  を見せている。  こんな状況じゃ、いくら心を落ち着かせようとしてもこちらは落ち  着かないだろう。  会話していても話など集中できるはずもなく、動く唇、吐息、声…  …それらをすべて性的興奮に変えていった。  下腹部の奥から疼くような心地いい感覚。  見られながらの行為は、たった一度きりだったが完全に嵌ってしま  っていた。  背徳感を伴う自慰は、まるで麻薬だ。  じっと逸物を見つめていた優衣が、ふっとこちらを見た。 【優衣】 「……」  なぜか口角を上げてはにかんだ。  その表情に体に電気が走る。  優衣の笑顔に精液をぶちまけたい衝動に駆られる。 【優衣】 「……兄さん? ……今日のオカズはなに?」 【優衣】 「どんな妄想をしてる……?」  ……このタイミングで訊いてくるのか。  このまま素直に思いの丈をぶちまけてはマズい。  前回はこれで墓穴を掘った。 【兄】 「お前の唇」 【兄】 「唇を見てる」  ここは部位だけを述べておく。  その唇を使ってどんな妄想を巡らせているのかは隠して。 【優衣】 「わたしの唇をオカズ……?」 【優衣】 「なにそれ」  照れているのがわかった。  表情を隠すようにフイと顔を逸らし、頬を太腿に乗せる。 【優衣】 「……変態」  優衣は俺のことを純情だの初心だのと評していたが、それは自分の  ことでもある。  彼女は自分の想定していない角度からの目線に弱い。  普段は軸のブレない性格をしているにも関わらず、布団の中ではこ  んな具合だ。  内心、嬉しくもある。  親ばかならぬ、兄ばかと言ったところか。 【優衣】 「あ……出てきた」  優衣が逸物の変化を目敏く見つける。 【優衣】 「兄さんのよだれ」  茶化すように言った。 【優衣】 「この前はこれを使って……根元から滑るようにしてた……わよね。  ストロークを大きくできる……潤滑油?」 【兄】 「そうだな……」 【優衣】 「ふうん」  そっけなく返事をして、先走りが漏れる鈴口を見つめた。 【優衣】 「じゃあ……唾でもいいのかしら……」  ドクン……とした。 【兄】 「……垂らして、くれるのか……?」 【優衣】 「え……? ぁ…………。  ……垂らして……ほしいの?」  頷く。 【優衣】 「でも、もうえっちなお汁が垂れてきてる」 【兄】 「いいから」 【優衣】 「……」  言葉に窮した。 【優衣】 「……わかった」  渋々、といった様子で答えた。 【優衣】 「兄さんってば、汚いのが好きなのかしら」  違うよ。 【優衣】 「……」  もごもごと口を動かす。  適量が口内に溜まるまで待ってくれる健気な行為に少々感動する。  こちらを見た。  ほんとにいいの?という目だ。  俺は根元を押して、先端を向ける。  優衣はそれを受けて、舌を出しながら唾液を垂らした。  その一連の流れが日常から逸脱した淫猥なものに思えて、体がぞく  ぞくと震える。  唾液が亀頭の上に落ちてくる感覚だけで背筋が反りそうだ。  枝分かれしながらカリ首や裏筋を撫でて、根元を握っている指に落  ちてくる。  逸物全体が優衣の唾液塗れ。  その事実が俺を興奮させた。 【優衣】 「――ぇぅ……、ん……はぅふ」  舌先から糸を引いていた唾液が切れて、優衣は息をついた。 【優衣】 「……ほら、続けて」  待ってましたとばかりに手を動かす。  唾液が亀頭に垂れた瞬間から下腹部の緊張はピークを迎えていた。  じっくり優衣の唾液を堪能したいが、そうも言っていられない。  指を持ち上げて、優衣の唾液でカリ首を弾くだけで視界がチカチカ  してくる。  中途半端に味わっていたら満足できずに終わってしまう。 【優衣】 「ぅ、あ」  先ほどまでとは違う手の動きと激しい水音に目を丸くする優衣。  もしかしたら弾き飛んだ汁が優衣にも掛かってしまっているかもし  れない。  暗闇で確かめるすべはないが、その可能性を考えるだけでも気が昂  る。 【優衣】 「そんなに嬉しそうに動かして……。  ぁっ……凄い音……」 【優衣】 「……ふふっ。……兄さんったら、気持ちよさそうな顔しちゃって…  …」 【優衣】 「そんなに妹の唾液がいいの? 妹の唾を使っておちんちんシゴくの  が、そんなに気持ちいい?」 【優衣】 「こんなに反り立たせちゃってぇ…………あんっ。ふふっ、体ごとお  ちんちんびくびくーって震わせた」 【兄】 「っ、く……!」  優衣の聞き慣れない単語に一つ一つ敏感に反応してしまう。 【優衣】 「……兄さんの手が私の唾液を使って……ぅぁ、カリ首を弾くたびに  『ぷちゅっ、ぷちゅっ』って……エッチな音」  優衣の実況の相乗効果で逸物が敏感に跳ね回る。 【優衣】 「…………兄さんのおちんぽ……気持ちよさそ……」  純粋無垢な感想。  甘美な音色に聞こえて、脳が溶けてしまうそうになる。 【兄】 「っ、は……! くっ……、もう……!」 【優衣】 「あ……、……イく? もう出る?」 【兄】 「あぁっ……!」  肯定とも喘ぎとも取れる返事をして、優衣は微笑む。 【優衣】 「そか。……うん、いいわよ」 【優衣】 「それじゃあ……兄さん。  リラックスしながら、気持ちよくなりましょう?」 【優衣】 「まあ……女の子の体に、妹に……抱き付かれるだけで興奮しちゃう  兄さんが、リラックスできるとは思えないけど」 【優衣】 「でも、心を満たされながら、幸せな気持ちで……なおかつ興奮しな  がら性欲を処理できるんだから……それって贅沢で、恵まれてない?」 【優衣】 「恋人がいれば万事解決だけど……兄さんには無理だものね」 【優衣】 「自分で自分を慰めることしかできない……。……だから、代わりに  私が……兄さんの心を満たしてあげるから……だから、存分に」 【優衣】 「おちんぽ……ぴゅっぴゅって、しゃせーしてみせて?」  まるで兄の一芸を披露してほしいような表情。  太腿の付け根に絹のような肌をすり寄せ、優衣が射精の芸をせがむ。  あがらえない。 【兄】 「っ、で――っ!」  ――ぶちまけたい。  ビュッ! ビュルッビュッ! ビューッ!! ビュゥーッ!! 【優衣】 「っ、ひゃ、ぅ……ぁ、ぁっ、あ、あっ……」  体を反って、腰を突きだしながらの射精。  身体の髄から精を吐き出しているような錯覚。  浮いた腰に体を持ち上げられて可愛らしい声を上げている。  その声を上書きするように、ひとつまたひとつと白濁の穢れを吐き  出す。  悦ぶ逸物を搾り、精管に残る最後の一滴まで完全に漏らしていく。  性感にふわふわとした体の感覚。  ぼんやりとした意識の中、逸物を押す親指に異常に力の入っていた  手を体に置いた。 【優衣】 「……また顔に掛けたぁ」 【兄】 「あ……」  射精の瞬間、咄嗟に先端を優衣に向けていた。  俺の考えよりも先に身体が動いていた。 【兄】 「す、すまんっ!」  余韻を味わうのも忘れてティッシュ箱を差し出す。  優衣は『ぅーぅー』唸りながら顔や髪についた精液を取っていく。  その光景に一瞬胸がズキンとするような感覚に襲われる。  これは嗜虐心? それとも支配欲によるものか……。  考えるのは後にしよう。  あらぬ方向に向けたせいで被害は布団やシーツにまで及んでいた。  理性と異なる判断を犯すと大抵後悔する結果になる。 【優衣】 「……なんで射精するとき、私に向けてきたの……?」 【兄】 「えっと」  髪に飛んだ精液の処理に手間取っている優衣が俺を恨めしそうに睨  んでくる。 【優衣】 「お陰でぬるぬるよ……、もぉ……」 【兄】 「すまん……」 【優衣】 「……なんとなく、した理由はわかるけど」 【優衣】 「今度からは……気を付けて」 【兄】 「あ、うん」  今度、という言葉に思わず適当な返事をしてしまった。  そう、これはもはや恒例行事となるのは確定していた。  今日は許すけど、次からは許さない。  それは優衣からのお情けであり、チャンスである。  ……それを俺は、またぶっかけられる“チャンス”という風に捉え  てしまうのだから、もう引き下がれない。  このまま禁断の沼地に足を踏み入れてしまうのか。  ……いや、すでに片足は突っ込んでいる。  もう……ズブズブと沈んでいくだけに思えた。 ◆3  五日目 「期待するベッドの中」  風呂上りに部屋でのんびりしていると、扉が鳴った。 【兄】 「はい」  …… 【兄】 「どーぞ?」  ……  返事はない。  扉を開けにいく。  がちゃ 【優衣】 「ばあ」 【兄】 「……なにしてんの」 【優衣】 「ちょっと通らせていただきますよー」 【兄】 「ホントなにしてんの?」  脇を抜けて部屋に入り込んだ優衣はベッドの上に座った。 【優衣】 「んふふー、もう夜だもーん。私は甘えモードですっ」  なにか言ってる。 【優衣】 「ほら、兄さん? 一緒に寝ましょ?」 【優衣】 「今日はちゃんと」  持っている枕をぼふぼふと叩く。 【優衣】 「枕も持参してきたし。準備万端ばんたんっ」 【兄】 「一人で寝なさい、我が儘小娘が」 【優衣】 「えー、別にいいでしょー? 前から数えてもう三日も経ったのよ?  そろそろ兄さんの匂いが恋しくなってきたわー」 【兄】 「匂いて……」 【優衣】 「……はあ、仕方ないわね」  手招きをする。 【優衣】 「私の前に立って」 【兄】 「はあ」  深く考えずに従う。 【兄】 「きたぞ」 【優衣】 「ん」  枕を脇に置き、優衣が立ち上がる。 【優衣】 「抱き付いて」  ひしっ 【優衣】 「引き倒すっ」  ぐいいっ  なすがままにベッドに倒れ掛かる。 【優衣】 「きゃー、兄さんに押し倒されたーっ」 【兄】 「引き倒されたんだ!」 【優衣】 「どっちでもいいわ」 【優衣】 「ほら、寝ましょ寝ましょ。電気も消して……」  自分の部屋のように慣れた様子で電気を消す。  リモコンの定位置もばっちり把握してるようだ。 【優衣】 「御就寝、っと」 【優衣】 「それじゃ、おやすみなさーい」  そのまま持参の枕を頭にこてりと寝てしまう。  寝地蔵め。 【兄】 「……勝手にしろ」  投げやりに言いながらも、声色は悪くない。  意外と嫌いじゃなかったりするこのうんざりするような展開。  自分が努力せずに手に入る幸福は心地いいものだ。  穏やかな気持ちのまま、布団へ潜る。  すると、隣でもぞもぞと動いて腕を抱きしめてきた。  そのまま腕を伝って手を握ってくる。  優衣は何も言ってこない。  まるでこうするのが当然かのような動き。  以前まではこんなことは有り得なかった。  ベッドの中でのみ、俺たちの仲は変化していた。  それを悪いようには思わなかった。  なにしろ嬉しい気持ちが強いからだ。  だが、良いようにも思わない。  俺たちの心が近づいてきたキッカケがキッカケだからだ。  あんなことはしてはならない。  けど、忘れられない甘美な心地。  悪魔に取りつかれたように背徳を追い求めてしまう。 【兄】 「……」  今日は特に何も起こりそうにない。  今までなら、いつの間にか肥大化したモノを優衣に押し付けてバレ  るという構図だった。  大丈夫だ、過度な接触はしていないし、妙な雰囲気も出来あがって  いない。  こういう日もある。  いや、そもそもこれが普通なのだ。  今までが異常だったわけで。  自慰行為を鑑賞してもらうなんて、なかなかに馬鹿げている。  そうだ、これが普通だ。  何も起こらない。  なんのアクションも起こさない限り、今日も―― 【優衣】 「兄さん」 【優衣】 「今日は、しなくても……いいの?」 【兄】 「……」  なんてこった。 【兄】 「な、なんのことだ?」 【優衣】 「なんのことって……だから」 【優衣】 「性欲の、処理」 【兄】 「きょ、今日は大丈夫だ」 【優衣】 「平気なの? 本当に? 無理してないわよね?」 【兄】 「ほんとほんと。へーきへーき」 【優衣】 「……嘘っぽい」 【優衣】 「確かめてみるわ。――えい」  股間部に突然伝わる鈍痛のような感覚。 【兄】 「あ……」 【優衣】 「普通に、勃起してるんだけど……?」 【兄】 「あ、あれー? おっかしいなあ、全然興奮はしてないんだけどなあ?」 【優衣】 「興奮はしてないの? じゃあ、なに? 兄さんは惰性でペニスを勃  起させるの?」  惰性で勃起ってなんだ。 【優衣】 「それとも……」 【優衣】 「期待、しちゃってた?」 【兄】 「え」  “期待”――  なるほど、そうか。  俺は期待していたのだ。  身体的接触も甘美な雰囲気もない状況下で安心していたのではない。  期待に膨らませていたのだ。 【優衣】 「あ」 【優衣】 「……くすくすっ、こっちで返事してきた。……ふうん、そう。  期待しちゃってたの」 【優衣】 「私から許可をもらえるのを、待ってたのねー?」  楽しそうに笑う。 【優衣】 「いいわよ。ほら……兄さん」 【優衣】 「いつもみたいに……してみせて?」 ◆3.1 「お手伝い」 【優衣】 「あ……♪ 出てきた……」  喉を鳴らして喜んだ声を出す。 【優衣】 「ほら、はやくー。扱きたいように、おちんちん扱いてみせて?」  優衣の許可も出ている。  これ以上の我慢はできないと自己主張する逸物に手を伸ばす。  いつものように手を動かし、いつもとは違う状況下を味わう。  肩に頭を預ける優衣は、その様子を見てまた一つ溜息のような声を  吐いた。 【兄】 「見てて楽しいか?」 【優衣】 「え……? あぁ……(ぅぅんと)……見てて楽しいかって言われる  と……微妙ね」 【優衣】 「楽しいとかじゃないの。なんていうんだろ……癒し、とは違うし…  …」 【優衣】 「あはは、よくわからない」 【兄】 「なんだそりゃ」 【優衣】 「わからないけど……どうしてか、じっと見ちゃうの。兄さんの本能  のままに動く手のうごき……」 【優衣】 「心の底から湧き出るような快感を、必死に表に出さまいとする顔」 【優衣】 「それでも、ちょっとだけ漏れてしまう声」 【優衣】 「全部兄さんで、……兄さんなのに、私の知らない兄さんで」 【優衣】 「ずっと……ずっと……」 【優衣】 「手を……」  そう言って、じっと股座のほうを見つめる。  優衣の熱視線を受けて、手の動きにも一層力が入る。  段々と逸物が痺れてきた。  これが最大限まで高まると、精をぶちまけることになる。 【優衣】 「……ねぇ」 【優衣】 「触っても……いい?」 【兄】 「は、……は?」 【優衣】 「……だめ?」 【兄】 「そりゃ……」  触って欲しい。 【兄】 「……駄目に決まって……」  優衣の手に触れられたい。 【優衣】 「……じゃあ、兄さんの手の上から。上下に動かす、兄さんの手に合  わせるだけ……それなら、いい?」 【兄】 「……それなら、まあ」 【優衣】 「ん」  曖昧な返事に相槌を打って、手を伸ばしてくる。  少しひんやりとした手のひら。  陰茎に触れないように、俺の手の一段上に添えるように握ってくる。  優衣に軽く力を加えられて、動きを再開した。 【優衣】 「結構……力が入ってるのね。そんなに圧迫して、痛くないの?」 【兄】 「痛いってことは……まあ、ない」 【兄】 「こうしないと、暴れて手から離れるから」 【優衣】 「あ、なるほどね。……確かに、兄さんの……ひどく暴れて……。  びくつくの、私の手にも伝わってくる……」 【優衣】 「そうやって押さえてないと、逃げちゃうんだ」 【優衣】 「……くすくすっ。素直じゃない兄さんと違って、素直な子なのね。  だから、兄さんとは反りが合わない。思うように留まってくれない」 【優衣】 「……しょうがないよねー、気持ちいいんだもんねー。おちんちんし  こしこーってされたら、びくびくするの我慢できないもんねー」 【優衣】 「……あれだ、君もご主人様には困ってるんじゃないかな。……うん  うん、私も君のご主人様には困ってるんだ」 【優衣】 「見え見えの態度を取るくせに、絶対に口では認めないのよ?  そうやって、本心を語らずに本心を察してもらおうとしてるの」 【優衣】 「ねー。せこくて生意気よねー」 【兄】 「……こら」 【優衣】 「いまは、君が代わりに兄さんの意思表示をしてくれてるのかしら?」 【優衣】 「……いい子ね。兄さんと違って」  優衣の手が上方にずれる。 【兄】 「ちょ」 【優衣】 「……いいから」  熱っぽい息を吐きながら制される。  先走りに塗れる亀頭を未知のものに包まれる。  少し冷たいそれは粘り気を持つ我慢汁を絡めながら亀頭を滑る。  俺の手の上方にずれた形で、手の動きに合わせて上下する。  自分で扱いているのに、他人に扱いてもらっている感覚。  その微妙な体験も、優衣の一言で終わりを迎える。 【優衣】 「手、どけて……?」  断れなかった。  返事もせずに、逸物を握っている手を離す。  そのまま何も掴むことはなく、ベッドに落とす。  ペニスを握っているのは優衣の手。  自分ではない誰かに握ってもらっている感覚。  それが妹というだけで体が戦慄してしまう。  優衣は何の合図もなしに手を動かし始めた。 【兄】 「あっ……!」  声を上げて体を跳ねさせる俺を見て何も言わない。  ただ、ちらりとこちらの表情を見て、薄く笑う。  作り飾りのない無邪気な笑顔。  中々お目に掛かれない優衣の心からの笑みが、兄の陰茎を扱く際に  生まれた。 【優衣】 「……こんな感じ?」  酔ったような表情。  雰囲気に酔わされた俺もまた、勝手に言葉を返す。 【兄】 「もっと強っ、く……」 【優衣】 「うん、わかった」  はにかみながら答えた。  淫靡に見える優衣の表情。  呼吸のたびに胸が持ち上げられ、柔らかな感触が腕に押し付けられ  る。  優衣のすべてが魅力的で、もう我慢などできなかった。 【優衣】 「気持ちぃ……? にいさ……」 【兄】 「あ、ぁっ! ごめ――っ」 【優衣】 「え――」  ぴゅっ! ぴゅっ、ぴゅぅーっ! ぴゅる、ぴゅくっ。 【優衣】 「あっ」  優衣の感触を味わいながら射精する。  華奢で繊細な指に包まれながらの射精は至高だった。  射精が始まっても気の抜けたようすで上下する手の動きが拙さを演  出して、精液を余計に吐き出させる。  無垢で幼さを感じさせる手。  そんな手で射精を促されて、お返しとばかりに欲望に塗れた汁で穢  す。  その行為が堪らなく快感だった。 【優衣】 「兄さん、早すぎ……」  射精の余韻を味わうために、また羞恥心から返事を拒んだ。 【優衣】 「そんなに気持ちよかったの?」 【優衣】 「私の手が?」 【優衣】 「妹の……手が?」  答えに窮する。  もしそうだと答えた場合、軽蔑はされないだろうか。  いや、もしされなくとも俺の自尊心は汚される。  ……いや、もうとうの昔に俺の自尊心などないようなものか。  それでもやはり、兄は兄として毅然と振舞わねばならない。 【兄】 「……そろそろイきそうだったから」  俺の返答に、優衣は笑う。 【優衣】 「……くすっ。素直に答えられないのは兄さんらしい」 【優衣】 「チンポはこんなに素直なのにねぇ……どうしてだろうねぇ」  そういって精液を揉み込む。 【兄】 「ぅ、うっ……!」 【優衣】 「うん? どうしたの? まだ気持ちー?」 【兄】 「ちがっ……イッたばかりで敏感なの!」 【優衣】 「へぇ……。射精した直後って敏感なんだ……ふうん」  そう答えながらも手を止めることはしない。  精液みどろなのも厭わず、丹精な動作でこねる。  上下には動かさず、未だに反応するペニスと精液の粘度を楽しんで  いるかのようだ。  指一本一本が蜘蛛の足のように動く。  時々、ぶちゅっと音を立てて握ってくるのが堪らなく気持ちいい。 【優衣】 「出したのに、まだビンビン……」 【優衣】 「……もしかして、まだ出るの?」  手首のスナップを利かせる。 【兄】 「ぅあ……!」  途端に始まった丹念な動きに声が出た。 【優衣】 「あ、兄さんの声……。甘えた、可愛い声……」 【優衣】 「いつもと違う兄さんだ……。ってことは、裏表のないホントの声…  …気持ちいいっていう兄さんの意思表示……」  スリスリと胸に頬擦りをしてくる。  甘えるような態度に反して、優衣は熱心に逸物を扱きあげる。  甘えられることの幸福感と妹にシゴいてもらうことの背徳感。  それらが混ざり合い、今までに感じたことのない圧倒的な快感が全  身を駆け巡る。 【優衣】 「……ん、わかった。……もう一回……出させてあげる。  私が……兄さんの性欲の処理を……行ってあげる」 【優衣】 「兄さんは何もしなくていいから……全部、私に任せて?」  俺を虜にさせる優衣の言葉。  もう駄目だ、逆らえない。  だらしなく腰を突きだして続きを要求することしかできない。  それに応えるようにして、優衣は指を窄めて搾り上げる。  簡単な要領ならすでに心得ているようだ。  それでも少々探り探りな感じが否めない。  足りないピースを見つけようとしている。  幹のほうを重点的に扱いていた優衣の手が、カリ首を持ち上げる。 【優衣】 「あ、跳ねた……」  目を見開いて声を上げた。  そのまま顔を上げて、こちらを見遣ってニコリと笑う。 【優衣】 「ふふっ……兄さんの弱いトコ、みつけた」  ぞくぞくする視線。  優衣がずっと探していたのは、俺の弱い箇所だったようだ。  嬉しそうな表情は、やっと現れた獲物を前にしてのものか。  それとも、素直な反応を示したことに対してのものか。  手が動く。  可動域は明らかに変わっていた。  すでに狙い目はカリ首へと移行している。  指で作った輪が執拗に肉棒の窪みを責めたてる。  上がりそうになる声を必死に堪えて、腰を跳ねさせる。  その度に優衣は嬉しそうに笑った。  小さな笑い声がまた俺のモノを大きくさせる。 【優衣】 「……気持ちー? ねぇ……にーさん? 気持ちー?  私……ちゃんと兄さんのこと、気持ちよくできてる……?」  どうしてわざわざ訊くんだろう。  一度射精したし、腰もこんなに跳ねさせてる。  充分に俺を満足させていることは、こいつにもわかってるはずだ。  どうせ口で言わせたいだけなんだろう。  きっとそうだ。  ……だから、そんな不安そうな顔をしないでくれ。  安心させたくなるだろう。 【兄】 「っ……あ、あぁ」 【兄】 「普通に気持ち、い……っ」 【優衣】 「……そう」  素っ気なく答えた。 【優衣】 「そっか……」  俺の言葉を噛みしめるように時間をかけて、もう一度言った。  顔を俺の胸に埋め、表情を隠す。  胸に吐息を掛けながら、ぽつりと呟く。 【優衣】 「……よかった」  心からの安堵。  どんなに体が素直に反応したとしても、優衣は心からは信じていな  かったんだ。  身体の反応は所詮脊髄反射とか思ってるのかもしれない。  だからこそ、本心は口から聞くしかないと思ったんだろう。  今度、訂正しておかなきゃならないな。  こういうことに関しては、体の反応と気持ちは同調していると。 【優衣】 「……」  確信を得て自信を持ったのか、手の動きに大胆さが加わった。  最初よりも力強く握ってきているし、搾り方にも強弱をつけてきて  いる。  明らかにイかせようとしている。 【優衣】 「こうすると…………イく?」  やっぱり。  返事はせずに、好きになようにさせてみる。  どのようにせよ、長くはもたないだろう。 【優衣】 「兄さんの弱いトコ……ぐちゅぐちゅって搾ったら……もう我慢でき  ない? しゃせーする?」 【優衣】 「ぁっ……すご……。手の中でビクビク暴れてる……。  しゃせーしたい、しゃせーしたいーって言ってる……」 【優衣】 「くす、相変わらず兄さんのおちんぽは……素直ないい子」 【優衣】 「そんなに甘えられたら、応えたくなっちゃう」  水音を部屋中に響かせてイかせにかかる。  俺が普段そうして射精まで導いているからだろう、優衣は迷いなく  執拗に逸物をシゴく。  堰を切って奥から精液が昇ってくるのを感じた。  いくら堪えても、もうどうしようもない。 【優衣】 「ほら、っ……我慢しないでっ」 【優衣】 「私の手の中に……妹の手の中で、またしゃせーしましょ?  濃厚なせーえき……たくさん出して……?」 【優衣】 「おちんちん、ぴゅっぴゅって……して……っ」  ビュッ、びゅるるっ! ビューッ!! びゅっ、ビュルッビュッ!  優衣のキツい手の動きに合わせて射精する。  先ほどとは違い、優衣も射精の脈動に合わせて手を動かしてくれる。  不意の射精もそれはそれで気持ちよかったが、優衣に射精を促され  ながら達するのは格別だった。  逸物の芯から根こそぎ精を奪われていく初めての感覚に酔いしれる  こと数秒。  ビクビクと余韻に浸るペニスに合わせてぐちゅぐちゅと精液に塗れ  た手でシゴいてくれる優衣が、ゆっくりと手を止めた。 【優衣】 「たくさん出たわねー……? にぃさーん?」 【優衣】 「くすっ、気持ちよかったの?」 【兄】 「あぁ……サイコーだった」 【優衣】 「わ、おだてようとしてる。私をいい気にさせて、またしてもらおう  って魂胆?」 【兄】 「いやっ! そんなんじゃ」 【優衣】 「ふふっ、冗談よ、冗談。  兄さんの本心だって、ちゃーんとわかってる」 【優衣】 「私の手を、こーんなに汚すくらい遠慮なしに吐き出したんだもの。  気持ちよくならないと、こうはならないんでしょ?」 【兄】 「それは……まあ」 【優衣】 「あー、照れてる照れてる」  射精後で気疲れしてるときにからかうのは勘弁してほしい。 【優衣】 「……兄さんの声、すごかった。……腰の突きあげ方も、ペニスの痙  攣も……見てるときよりもすごい動きしてた」 【優衣】 「私に触ってもらうのが……気持ちよかったんだ」 【優衣】 「私に扱かれて、射精まで導いてもらうのが……そんなに気持ちよか  ったんだ」 【優衣】 「……嬉しかったんだ」 【兄】 「ち、ちが」 【優衣】 「――私が『触ってもいい?』って訊いたとき、兄さんは『駄目だ』  って言ったけど……」 【優衣】 「……兄さんの顔、嬉しそうにしてたの」 【優衣】 「だから、ホントは触って欲しいんだってわかってた」  そんな馬鹿な! 俺は至ってポーカーフェースだぞ!  と答えたら、きっと優衣は冗談を受けたように笑って否定するだろ  う。  俺自身は包み隠しているつもりでも、優衣からしてみればバレバレ  なのだ。  昔から変わらない。  優衣は人の心を読み取るのがうまい。  いや、俺の心を読み取るのがうまいだけか……はたまた俺が読まれ  やすいだけか。 【優衣】 「……ねえ、兄さん?」 【兄】 「ん……?」 【優衣】 「今度からは我慢しないで……ね。したくなったら遠慮なく言って?」 【優衣】 「兄さんが満足するまで……『して』あげるから……ね」 【兄】 「え、あ……あぁ」  あからさまに動揺してしまう。  また『言葉の綾』とか言われるかと思ったが、そんなことはない。  つまりそこには、『言葉の綾』じゃなくて『本心』が込められてい  たということ。  『見て』あげるではなく、『して』あげる。  俺はこの瞬間、禁断の沼へ両足を突っ込んでいることを確信した。 ◆4  六日目 「ベッドの中にて」  ――寝入りばな。  扉が薄く開くのを感じた。  浅い眠りのなか、気のせいのようにも思えて俺は再び目を閉じた。  微かな足音。  覚醒までこぎ着けるほどの不穏な音には聞こえず、俺は警戒心を解  いた。  布団が捲られる。  そいつはゆっくりとした所作で布団の中に潜り込むと、何のためら  いもなく腕に絡みついてきた。 【兄】 「……こら」 【優衣】 「あ」 【兄】 「いい子はもう寝てる時間だぞ……」 【優衣】 「ごめんなさい。起こしちゃった?」 【兄】 「いんや」 【優衣】 「そう」  じゃあ遠慮なく、とでも言うようにぎゅっと腕を抱いてくる。  そのまま前回の調子で手のひらを握る。  もはや恒例化としていた。 【優衣】 「……いい子はもう寝てる時間、というなら、私と兄さんは悪い子だ」 【兄】 「……言葉の綾だ」 【優衣】 「あら~? じゃあなに、兄さんは悪い子じゃないのかしら~」 【兄】 「うるせえもう黙ってろ」 【優衣】 「くすっ、はーい。黙りまーす」  そうは言っても、この流れから黙するってのも無理な相談だ。  添い寝には軽いトークが付き物。  ベッドの中ってのは何かと秘密話が繰り広げられるものだ。 【兄】 「……今日はもうこないかと思ってた」 【優衣】 「ん……?」  話し掛けられるとは思わなかったような音色。 【優衣】 「あぁ……。そうね……私自身も今日はここに来るつもりはなかった  の」 【優衣】 「まあ、色々と理由があって」 【兄】 「へえ」  少し優衣の側へ頭を傾ける。 【優衣】 「……聞きたそうね」 【兄】 「まあ、興味本位がてら」 【優衣】 「そんな大した理由じゃないわ。……そう、一つ一つの理由は大した  ことじゃない」 【優衣】 「でも、その理由がたくさんあったから、総合的に判断してここに  やってきたの」 【兄】 「ほー」 【優衣】 「一つに、ちょっと今日は肌寒いなって思ったこと」 【優衣】 「一つに、あれちょっと今日は眠れないなって思ったこと」 【兄】 「うんうん」 【優衣】 「一つに、もしかしたら兄さんも寒がってるかなって思ったこと」 【兄】 「……まあ、それはね」 【優衣】 「一つに、もしかしたら兄さんがひと肌恋しくなってるかなって思っ  たこと」 【兄】 「俺メインになっちゃったよ」 【優衣】 「一つに、兄さんが……」  そこから少し黙る。  待ってみるが、続きはない。 【優衣】 「私がいないと……」  優衣の手がパジャマの上に乗る。 【優衣】 「性処理のお願いができないかなって……思ったこと」  手は俺の腹部を滑り、局部に達する。  頂を確かめた瞬間、小さく声を上げた。  そして、やっぱりとばかりに小さく微笑んだ。 【優衣】 「……これ」 【優衣】 「期待してたんだ?」  返事はできない。  返事をする必要もない。  黙っていても、優衣は俺の真意を汲み取れる。 【優衣】 「……ん、しょうがないわ」 【優衣】 「人にしてもらうのって、気持ちいいから」 【優衣】 「昨日、私でイかせてもらって……初めてしてもらった感覚を、我慢  できるはずないわ」 【優衣】 「……しょうがないの」 【優衣】 「だから、ほら……」  ゴム紐を引っ張ってくる。 【優衣】 「パジャマ……脱いで?」 ◆4.1 「言葉責め」 【優衣】 「……ビンビン」  小さく呟いた。  意気込んでいたものの、優衣は大きく隆起した逸物を見て軽く尻込  みしていた。  少し躊躇いがちに手を伸ばし、根元から掬うように優しく握る。  たったそれだけ。  それだけでも俺は腰が浮きそうになる。  必死にそれを抑え込むと、代わりにと逸物が何度も痙攣した。  それを優衣が感じ取り、息を呑む。  そして、ふっと微笑んだ。  こんな単純なものに怖気づいていた自分を笑うような感じ。  あと、少し俺を馬鹿にするような感じ。 【優衣】 「私に握ってもらえるだけで嬉しいのー? 兄さんってば単純」 【優衣】 「……これで、動かしたら……どうなるのかしら……」  握られている箇所がじんわりとした痺れに包まれる。  ……早く。  早くしてくれ。 【優衣】 「……くすっ」 【優衣】 「えい」  可愛らしい掛け声と共に手が動かされる。 【兄】 「ぅぐっ……!」  慌てて手を押さえる。  腰は好き勝手に跳ね、逸物は歓喜に湧く。 【優衣】 「ぅあー……」  なんとも言えない声を出す優衣。 【優衣】 「腰ごとビクビク震わせて……そんなに気持ちいいの?  妹の手でしこしこされるのが、そんなに堪らない?」  いま口を開けば情けない声と共になる。  逸物をわざと大きく震わせて、優衣に伝える。 【優衣】 「へぇ……そうなの……」 【優衣】 「……妹におちんぽ擦られて、精液を吐き出させてもらうのが……  そんなに気持ちいいんだぁ」  優衣の俺を小馬鹿にするいつもの調子。 【優衣】 「くすっ……ふぅ~ん? こんな不慣れな動きでもいいの……。  拙くても、兄さんは興奮する……ううん、拙いからこそ、かしら?」 【優衣】 「妹の初めてを、兄である自分で行わせたっていう独占欲が……兄さ  んのここを昂らせてる理由」 【優衣】 「あ~ぁ、私ってば……兄さんなんかのチンポを触ってるのねー。  兄さんのチンポで……私の手が穢されちゃった」  大袈裟に悲観そうなことを言う。  本気で言ってるわけじゃない、からかっている口調だ。  それにしても、今日は一段と言葉にトゲがある。  いつもは怖気づいていたり、不安そうな顔をしているというのに。 【優衣】 「くすくすっ……。……でーも、まだまだよね?」  手の平をゆっくりと圧縮する。 【優衣】 「これから、兄さんは精液をぴゅっぴゅぅってしちゃう」 【優衣】 「我慢できずにお漏らししちゃう」 【優衣】 「ううん、我慢なんてする気はない。だって兄さんは……私の手を穢  したいんだもの」 【優衣】 「今よりももっと……もっと」 【優衣】 「だから、精液をわざと吐き出して、妹の私の手を汚したいのよね?」 【優衣】 「……ホント、兄さんってば……サイっテー」  普段から、優衣は俺を小馬鹿回しにするところがある。  軽く貶し、見下し、呆れた言動を取る。  別にそこに厭味は感じない。  今もそう。優衣は俺をからかうように言っている。  本心からではない。  それでも、俺は心臓を鷲掴みされたような苦しさを覚えていた。  『優衣を穢している』――  兄の自分が、守るべき妹を穢している……その事実を優衣から直接、  口にされた。  罪悪感。  後悔。  それらから来る度し難い苦しさに反して、俺は……  優衣に擦られている逸物をそれまで以上にビクビクと跳ねさせてい  た。 【優衣】 「ふふっ。くすくすっ」 【優衣】 「どうしたの? 否定しないの? 怒らないの? 認めちゃうの?」  否定するだけなら簡単だ。  口から出まかせを言えばいい。  しかし、基本的に俺は口よりも体が正直な人間だ。  優衣による現実の指摘を受けて、俺は罪悪感からくる背徳感に体を  蝕まれていた。  背筋がぞくぞくと震え、優衣の手に導かれるまま腰を突きだす。 【優衣】 「ふふっ、どうしようとムダ。……だって兄さんは、私に心の内を代  弁してもらってから、嬉しそうにビクビク震わせてるんだもの」 【優衣】 「ウソなんて言っちゃやーだ」  優衣に嘘は通じない。  かと言って、否定しないのも躊躇われた。  だが、結局のところ俺は……嘘を吐いてバレるのを恐れて口を閉ざ  した。  無言のまま否定も肯定もしないほうがマシだと思った。  そんな俺の態度に、優衣はテンポを変えずに扱きながら顔を寄せて  くる。 【優衣】 「……私の声が興奮するって言ってたものね?」 【優衣】 「罵られても、馬鹿にされても……いじられても。私の言うことなら  なんでも気持ちいい、興奮しちゃうん……でしょ?」  そ、そこまで変態じゃ――! 【優衣】 「ほら、手の中で暴れ回ってる……」 【兄】 「ぐ……っ!」 【優衣】 「私が囁くだけで、兄さんはぞくぞくしちゃう。  それでもって、妹の手を使って性欲の処理をしてもらってるの」 【優衣】 「イケないことよね? だって、性処理は自分で行わないと駄目なん  だもの。人に……ましや妹に行わせるなんて……誰にも言えない」 【優衣】 「彼女がいれば、こういうこともしてもらえるんだろうけど……  兄さんにはいないものね」 【優衣】 「くすっ、ふふふっ。早くできればいいわね~……兄さん?」 【兄】 「うる、さい……っ!」  俺が声を潜めながら反論しても、優衣は顔色変えずに顔を見つめて  くる。  じっ……、と。  感慨深げに、だ。  視線が吸い込まれそうになるものの、指の輪っかに亀頭を弾かれて  意識が飛ぶ。 【優衣】 「……兄さんのそういうところ」  ポツリと呟く。 【優衣】 「口で強く否定して、でも見え見えな態度のところ……」 【優衣】 「ずっと暮らしてきた家族だから兄さんの伝えようとしてることはわ  かるけど、他の女性にはどうかしら?」 【優衣】 「そういうちょっと無愛想なところが、兄さんがずーっと独り身だっ  た所以じゃないの?」  突然、一体なんの話だ……? 【優衣】 「……(溜息)。ちょっと甘やかし過ぎちゃったのかしらね……」  甘やかす?  俺はお前に育てられた記憶などないぞ! 【優衣】 「もう、仕方ないわねー……」  手の動きが穏やかになる。  抱いた腕をぎゅっと寄せ、胸に頬を擦り合わせる。  さっきまでと打って変わって甘える調子だ。  なんだろう。 【優衣】 「可哀想だから、私が代わりにしてあげる」  少し演技がかっていた。 【優衣】 「兄さんに彼女ができるまで……私が兄さんの要求を解消してあげる」 【優衣】 「……感謝してよね? 妹にお手伝いをさせる変態にーさん」  それはどういう……?  口を開く前に、逸物への奉仕が再開される。  俺はそれだけで出掛かった言葉を簡単に飲み込んでしまう。  それほど、他人による……優衣による奉仕は俺を魅了させていた。 【優衣】 「ほら、どこをどうすれば満足できる?  兄さんの好きなところ……全部私に教えて?」  口で説明すれば、俺が望む最高峰の快楽を与えてくれるのだろう。  しかし、これ以上特に望むものはない。  普通に極上の逸楽を味わっている最中だ。 【優衣】 「……んふふ。  こう……すれば、っ……」  中指と親指で作られた輪を亀頭に這わせてクルクルと回転される。 【兄】 「ぁ……っ、あ……!」  腰が抜けてしまいそうになる。  まさか、こんな技があるとは……!  俺の正直な反応に優衣は喉を鳴らす。 【優衣】 「……♪ ……うん、気持ちいいわね。おちんちん気持ちいいわね。  妹にくちゅくちゅってされて、おちんぽ……たっくさん悦んでる」  甘やかすような声色。 【優衣】 「……しょうがないわよ。自分の手じゃなくて、妹の手でしてもらっ  てるんだもの……ね」  自分のものとは明らかに違う繊細で華奢な指。  想定外の動きをする優衣の手。  腕を抱かれ、押し付けられた胸の感触。  吐息。  声。  妹にしてもらうということは、あまりにも大きすぎる快感で。  次第に脳が痺れるくらいに悦楽に支配されていた。 【優衣】 「こんなに大きくさせて……強く握ってもビクともしないくらい硬く  て、ビンビンに反り返らせてる」 【優衣】 「興奮して興奮して、どうしようもないくらい興奮して……快感に蕩  けきってるって……簡単にわかる」 【優衣】 「……兄さんが私に興奮してるって、すぐに……わかっちゃうもの」  嬉しそうに微笑む。  淫靡な笑みだ。  優衣とは思えない、俺の知らない女の色香。  堪らない。  息が荒くなり、絶頂を回避しながら下腹部をへこませたりして腰を  くねらせる俺の様子を見て、優衣は顔を見上げた。 【優衣】 「……いいわよ。早く見せて? 兄さんが妹にお手伝いされて、射精  まで導かれちゃうトコ、見せて?」 【優衣】 「ほらっ、くすくすっ。私の声に合わせて……しゃせーしましょー?」 【優衣】 「ほら、っ……ぴゅっ♪ ぴゅっ♪ ぴゅぅっ♪」  掛け声と共に動かさせる手。  射精を連想する刺激に、奥で疼いていた精が促される。 【兄】 「あっ――!!」  びゅっ! ぴゅるるっ! ビューッ、ビュッ、ビュッ!! 【優衣】 「っ、ぁっ♪ ぴゅ、ぴゅ♪ ぴゅく、ぴゅ、どぴゅ、どぴゅーっ♪」  深夜、親に聞こえてしまうかもという懸念も払拭してしまうほどの  快感。  何も考えられずに声を上げて精液を撒く。  射精に合わせて優衣が声を上げ、手を動かす。  竿から耳からと射精を色濃く連想させられて、何度も精を吐き出す。  脚が震えるほどの快感。  いつまでも続く気がした。 【優衣】 「ぁ…………くすっ。……ぴゅく、ぴゅくぅー。  ……ぴゅっ、ぴゅっ♪」  おまけとばかりに手を動かされ、だらしなく残り滓を吐出する。  幸せという一言に尽きていた。  こんな快感が、こんな幸福感の溢れる射精が今まであっただろうか。  骨の髄までしゃぶりつくされたにも関わらず、ゆらゆらと幸せな心  地で宙を漂っている気分。  ……妹の手コキ、最高。 【優衣】 「わぁ~……。くすっ、たくさん出たね……おにーちゃん?」 【兄】 「え……」  なんだ、いまのは。  なにを言った。 【優衣】 「……くす」 【優衣】 「くすくすっ」  あれ……? 【優衣】 「……兄さん」 【優衣】 「兄さん?」 【兄】 「あ……あ……?」 【優衣】 「どうしたの? ぼうっとして」 【兄】 「いや、その……気持ちよくて」 【優衣】 「ふぅん? ……確かに、凄い量が出たものね。ほら……こんなに」  優衣が指を動かすと、ぶちゅぐちゅと音が鳴った。  顎を引いてみると、腹やら胸やらに飛散していた。  優衣は大丈夫だろうか。  勢いよく飛ばしているときは、大方、優衣まで被害を及ばしている  が。 【優衣】 「……私に射精させられるのが、そんなに気持ちよかったんだ?」  さっきも言っただろうに。何度言わせるつもりだ。  二度も答えるつもりはない。 【優衣】 「……仕方ないわねー」  何も仕方なくなさそうな声。 【優衣】 「冗談のつもりだったけど……。兄さんに彼女ができるまでは、……  私が代わりにしてあげるわ」 【優衣】 「……所謂、代替彼女。みたいな感じで」 【兄】 「……大体彼女?」  大体、っていうことはほとんど彼女ってことか。  ……話の流れ的に可笑しい。きっと違うニュアンスの漢字だろう。 【優衣】 「……ていうことで」  話を無理やり続けたいようだ。 【優衣】 「またしたくなったら……遠慮なく言ってね。……兄さん」 【兄】 「あ、あぁ」  俺は取りあえず返事をするしかなかった。 ◆5  八日目 「ベッドでの二人」  風呂から上がって部屋に戻る。  灯りは点いてない。  そこはいい。元々つけてなかったし。  問題点はそこじゃない。 【兄】 「……」  布団の盛り上がりはなんだ。 【兄】 「おい」  蹴る。 【優衣】 「いたっ、いたっ。蹴るな、踏むな」  布団が喋る。  構わず蹴る。  観念したのか、もぞもぞと中から這い出てきた。 【優衣】 「……蹴るこたないでしょぉ」 【兄】 「なんのようだ」 【優衣】 「……別に。今日にすることはもう終わったし、兄さんの布団に潜り  込んでただけ」 【兄】 「連日だな」 【優衣】 「そう? 連荘ってわけじゃないじゃない。  昨日は別々だったでしょう?」 【兄】 「それは、まあな」  しかし、最近は入り浸りだ。  前までは一週間に一度あるかないかくらいだったはず。 【優衣】 「兄さん、歯は磨いた?」 【兄】 「ん」 【優衣】 「ん。じゃあ」  布団を捲る。 【優衣】 「おいで?」  ぽんぽんと叩く。  ……それセコい。  断れねーっての。 【兄】 「電気消せ」 【優衣】 「ふふっ、はーい」  間延びした返事をして、リモコンを操作する。  消灯した部屋の中は鳥目でもない限りはおぼろげだ。  記憶を頼りに布団に潜り込む。  多少、相手を触れすぎてしまってもご愛嬌。  ベッドの中で自然と向かい合う……形になっているだろうと思う。  吐息の角度、それと少しだけ見える顔の輪郭から判断して、だ。  布団に潜るために必然的に体が横になっただけだ、仰向けに戻そう。 【優衣】 「……子守唄代わりに、お話してあげようか?」 【兄】 「なぜに」 【優衣】 「ちょっと兄さんには小難しいかもしれないお話。でも、少し不思議  で面白いお話」  まあ、気まぐれにはいいかもしれない。  子守唄代わりにさせてもらおうじゃないの。 【兄】 「どうぞ」 【優衣】 「シュレディンガーの猫、っていう思考実験を兄さんは知ってる?」 【兄】 「結構有名だよな」 【優衣】 「あら、意外。兄さんも博識になってきたのかしら」 【兄】 「ふはは」 【兄】 「蓋を開けるまで中がどうなってるのかわからないってやつだっけ?」  箱の中の猫が毒ガスで死んでいるかどうか……とかなんとか。 【優衣】 「箱の中に入った猫。その猫が毒ガスによって死んでいるかどうかは、  蓋を開けて見ないと解らない……というのがシュレディンガーの猫」 【優衣】 「……って、なぜか誤解されて広まっているのよね」 【兄】 「うそん。違うの?」 【優衣】 「そもそも、シュレディンガーの猫っていうのは『目で見るまで、結  果がどうなっているのかは実際のところ解らない』……なんていう  哲学の問題じゃないの」 【優衣】 「量子力学っていう学問の思考実験よ」  量子力学。  どこかで聞いたことのある単語だ。 【優衣】 「量子力学は、電子とか原子とか、分子とか……そういう小さな粒子  の世界に起こる物理を研究する学問よ」 【優衣】 「量子力学には、一つの解釈があるの。それが、『人間が観測するま  で、粒子の位置は確率で決まる』っていうもの」 【優衣】 「これだけ聞くとただの確率論みたいに思えるけど、そうじゃない」 【優衣】 「この解釈のおかしなところは、『粒子は、観測するまでは粒子では  ない』ってところなのよ」 【優衣】 「一粒の粒子ではなく、波のような原型を持たないふわふわとした存  在。まるで幽霊みたいな感じ」 【優衣】 「それが、人間に見つかった瞬間……途端に粒子へと姿を変える。形  をもった物体へと変化する」 【優衣】 「まるで認識論みたいだけど、量子力学は本気でこう考えたの。  そうすれば、量子力学における問題がすべて解決するから」 【優衣】 「不思議な話よね。目には見えないミクロの世界では、そんな常識外  れな現象が起きているなんて……」 【優衣】 「かの有名な、コンピュータを作ったフォン・ノイマンはこの解釈に  ついて、こう付け加えたの」 【優衣】 「人間の意思には、意識には、心には……『可能性』を選択する力を  持っている」 【優衣】 「だから、われわれが観測した瞬間に、ふわふわとしていた存在が粒  子としてそこに表れるのだ、と」 【優衣】 「まるで、人間は得てして超能力者だったのだ……とでも言わんばか  りの解釈だった」 【優衣】 「シュレディンガーの猫は、その解釈の異常さを指摘するために生ま  れたものなの」 【優衣】 「ミクロの世界だけの話として生まれた解釈を、マクロの世界でも適  用されることをシュレディンガーの猫では明らかにした」 【優衣】 「箱の中には確実に『猫』がいる」 【優衣】 「けど、その『猫』は死んでる状態で入っているわけでも、生きてい  る状態で入っているわけでもない」 【優衣】 「猫の生死は、蓋を開けて初めて確立するの」 【優衣】 「蓋を開けるまでは猫は生きてもいないし死んでもいない。その両方  の状態で、本当に、実際に、存在している」 【優衣】 「生きている状態と死んでいる状態……という『可能性』だけが重ね  合わせ状態で存在しているの」 【優衣】 「それっておかしくない?」 【優衣】 「だって箱の中には確実に『猫』がいるわけだから、死んでいる『猫』  か生きている『猫』のどちらかが存在しているはずよ」 【優衣】 「『猫』の存在が『可能性』に転換されるなんて有り得ない……。  現実的な了見で、シュレディンガーは量子力学の解釈を否定したの」 【優衣】 「そんなの、普通に考えて可笑しいじゃない? ……と唱えるのが、  このシュレディンガーの猫の本当の意図」 【優衣】 「蓋を開けるまで解らない……そんなのはおかしい、蓋を開ける前か  ら生きているか死んでいるかは決まっていて、われわれは蓋を開け  たとき、決定した結果を見ているに過ぎないはずだって、シュレデ  ィンガーは言いたかったのよ」 【優衣】 「別に決定論を唱えたわけじゃない。観測していないからといって、  存在自体を『可能性』なんてものに変換する強引さを嘆いただけ」 【優衣】 「……彼は、シュレディンガー方程式っていう量子力学において必要  不可欠な基礎方程式を導き出したまでの人よ」 【優衣】 「それでも、彼はこの解釈が気に食わなかったのね」 【優衣】 「シュレディンガーの猫を残して、のちに彼は物理学者をやめたわ」 【優衣】 「愚かな解釈を作る要因を担ったことを後悔したのね」 【優衣】 「かのアインシュタインは、量子力学の解釈については否定的だった。  けれど、彼のお陰で量子力学は分野として発展していったの」 【優衣】 「アインシュタインが量子力学の矛盾点を指摘するたび、学者たちは  血眼になって反論を導きだす」 【優衣】 「アインシュタインは量子力学を破綻させたかったのだけれど……  皮肉なものね」 【優衣】 「結果的に、彼の指摘は量子力学に秘められた可能性を引き出すきっ  かけとなったの」 【優衣】 「有り得ないという指摘を、有り得ると返すことができたんだもの。  常識を超えた世界を持つことをことごとく証明していったのよ」 【優衣】 「その一つが、量子テレポートっていうもの」 【優衣】 「これは、対になった粒子が情報を共有するってものなの」 【優衣】 「簡単に言えば、一つの粒子をコマのように回すともう片方も回るっ  ていう仕組み」 【優衣】 「これはどんなに離れていたって成立するの。たとえ地球と銀河の果  ての距離でも、この情報は共有する」 【優衣】 「人間が作った機械ならば、これら二つの対は何らかの方法をもって  して情報を伝える必要があるの」 【優衣】 「けど、量子テレポートは違う」 【優衣】 「これらのやり取りには、そういった目に見えるやり取りは存在しな  い」 【優衣】 「量子力学の解釈って、ある意味言葉遊びみたいなところがあるのよ」 【優衣】 「観測するまで、振る舞いは決まらない。観測した瞬間、可能性は収  束する」 【優衣】 「ならば、対になった粒子は片方を観測すればもう片方の振る舞いも  自然に決まるんじゃないのか」 【優衣】 「……まるでとんちみたいね」 【優衣】 「一休さんもビックリな、科学者同士の本気の言い合いだったんじゃ  ないかしら」 【兄】 「……」 【優衣】 「……やっぱり、ちょっと難しかった?」 【兄】 「……」 【優衣】 「? ……兄さん」  ゆさゆさ 【優衣】 「……寝ちゃった?」 【兄】 「ぐうぐう」  寝息を立てる。  まあホントは起きてるんですけどね。 【優衣】 「……そ」  特に怒るような素振りもなく、揺さぶる手を止めた。 【優衣】 「おやすみなさい、兄さん」  今日は何事もなく眠ることになりそうだ。 ◆5.1 「乳首責め」  ……なんてことを思っていたのだが。  優衣の手は体の上からどくことはなく、すすす……と下っていく。  パジャマの上から体を撫で、下腹部を撫でた辺りで股間に期待する  電気が走った。  その期待に応えるように、優衣の手は躊躇なく股に到達する。  優衣は何も言わない。  無言のままふにふにと触ってくる。  壊れやすいものを扱うように、ふわふわと揉む。  刺激としては大したことはないだろう。  それでも、優衣に触られているとなれば反応してしまうのも仕方な  いわけで。 【優衣】 「……固くなってきた」  肩口でボソリと呟き、布の上からでも輪郭を帯びてきた逸物を鷲掴  みにする。  そこから軽く上下され、ただ興味本位で触る動きと違うことに気付  く。  優衣の目的を悟って少しもしない間に、腰のゴム紐を掴み下ろされ  る。  股座が晒され、少しひんやりとした。  感嘆詞のような溜息を吐かれる。 【優衣】 「……寝ててもおっきくさせちゃうのねー……」  まあ起きてるんですけどね。  そんなことは知る由もない優衣は、勝手に逸物に触れる。  ピクンと跳ねるのは優衣に直で触られたから。  別に起きているからとかは関係ない……はず。 【優衣】 「太くて、こんなにおっきい……男の人ってみんなこうなのかしら。  それとも、兄さんだけ……?」  みんなそうじゃないかと思うんですけど。 【優衣】 「まあ、別にいっか。……誰かと比べられるわけじゃないし」  いや、将来的には比べる日がくるんじゃないですか?  比べられる日が……。  ……。  妹の相手と比べられるとか、なんか複雑だな。 【優衣】 「ふふっ、……相変わらず元気ねー。そんなに妹の手でしてもらうの  が嬉しいのかなー……?」  寝ているということもあり、試しに逸物で返事をしてみる。 【優衣】 「……ん。言葉が解るのかしら」  ぴこぴこ 【優衣】 「……」  真剣そうな声。  この調子で行けば、チンコと対話できると思い込む優衣が出来あが  る。 【優衣】 「ちんちんさーん。おちんぽさーん」  ぴくぴく 【優衣】 「……」  いけるか。 【優衣】 「まさかね」  無理だったか。 【優衣】 「気持ちよくて跳ねてるだけ、言葉が解るわけないか」  まあそうなんですけどね。  でも意図的に動かすことも可能なわけで。  たとえば、何の意味もなしに常時跳ねさせることもできるわけよ。  こう、ピコピコピコピコ! ……と。  やってみたが、優衣は動き回るペニスを可笑しそうにするだけだっ  た。  面白くない。  ここはもう素直に身を任せることにするか。 【優衣】 「……寝てても、気持ちいいなら射精をするのかしら」  射精……するんじゃないか。  夢精って言葉があるくらいだし。 【優衣】 「兄さんの声とか動きを見る限り……自分で射精を完全にコントロー  ルできている様子ではなかったし」 【優衣】 「脊髄反射のような構造ならば、身体的快感が高まれば射精まで至る  はずよね」  射精のメカニズムは保健体育で習ったような、習わなかったような。 【優衣】 「……ふふっ、兄さんには申し訳ないけど……こういう方法で性処理  を行えば、意図せず性欲の発散に繋がるってことにも成り得るかも」 【優衣】 「心は満足していないけれど、体は適度に発散して~……ってね。  兄さんも恥ずかしい思いもしないし、一石二鳥……?」  それは……あまり嬉しくないような。  今は寝たふりをしているわけだが、もし熟睡している間にそんなこ  とをされていたとすれば……何か勿体なく感じる。  そう思ってしまう自分に嫌気も差すが、どうしようもない。 【優衣】 「くすくすっ。……まあ、兄さんはもう恥ずかしいなんて思っていな  いみたいだけど」  そ、それは、まあ。 【優衣】 「妹の手を使って……恋人みたいに精を絞ってもらうことに……幸福  感を抱いているみたいだし」 【優衣】 「……ね。にーさん」  ……まさか、起きてるのに気付かれたか。  意識して息を潜める。  冷静に、冷静に……呼吸を整えて、感覚を研ぎ澄ませて……。  そうしていくと、逸物への刺激を素直に受け止める形になった。  下腹部が過度の快楽を嫌がって、自然とうねる。  不自然な動きと捉えられてしまうかと思ったが、優衣は気にしてい  ないみたいだ。  関心の矛先は別の個所に向けられていた。 【優衣】 「ぁ……エッチなお汁がでてきた」  我慢汁が湧き出始めたことを目敏く見つける。 【優衣】 「これは……気持ちよくなっている証拠……――あ、そうだ。  パジャマを肌蹴させておかないと」  ぷちぷちとボタンを外していく。  暗闇の中でも目が慣れているのだろう、特に苦戦することはなく俺  のパジャマは開けられた。 【優衣】 「兄さんってば、すごく飛ばすんだもの。……いつもはそんなに飛ば  ないって言うけど、そんなの有り得るのかしら」 【優衣】 「私を使って射精をするだけで……いくら興奮するからと言って、精  液の飛ばし方まで変わるものなの……?」 【優衣】 「……ふふ、どうなの? ねえ、にーさん?」 【兄】 「……」  あ、あれ? やっぱり……バレてる? 【優衣】 「……頬っぺた」  つんつん 【優衣】 「ぷにぷに」 【優衣】 「つんつーん」 【兄】 「……」  どういう反応を取ればいいんだろう。  少し口元がピクピク動くくらいなら、セーフ? 【優衣】 「ん~……」 【優衣】 「兄さんの……胸板」 【優衣】 「……くすっ、板ってほどでもないわね。  あー、いやでも……女性と比べれば板みたいものか」 【優衣】 「ふふっ、乳首もこんなに小さい……。一体なんのためについてるの  かしらね……つんつん」 【兄】 「っ……」 【優衣】 「?」  指の腹で乳首を転がされる。  乳首を始点に、断続的な電気が体を巡る。 【優衣】 「体が……びく、びくって震えてる」 【優衣】 「……くに……くに」 【兄】 「ぅっ……」 【優衣】 「ぁ」  しまった、声が出た。 【優衣】 「いま、声が……」 【優衣】 「兄さん……?」  今さら起きれるわけがない。  『寝てふりしてましたー、ごめんちー☆』とか無理がある。 【優衣】 「寝て……る……?」  また頬を突かれる。  冷静に、表情は固めたまま。  いや、逆に頬を突かれたことによる反応を示したほうが自然だろう  か。  よし、反応を示そう。  むにゃむにゃ。 【優衣】 「……ふうん」  なにか収穫を得たような声を出す。 【優衣】 「男性に乳首がある理由って、こういうことだったのね」 【優衣】 「そっか……」  得心がいったのか、心の声を反芻するように口に出した。  そこから何やら不敵に微笑むと、もぞもぞと動き始めた。  わざわざ横になっていた体を起こし、四つん這いになる。  そのまま何を思ったか、胸元に顔を寄せた。 【優衣】 「ん……」  柔らかな唇が当てられる。  上唇と下唇に乳頭が挟まれ、軽く転がされる。  ぞわぞわとした感覚。  見計らったように、ちう……と吸われた。  ほんの軽く吸われただけ、音もそんなにしなかった。  それでも、上体をびくりと震わせてしまう。  その様子を見てクスリと笑うと、右手を再び逸物へ伸ばした。  こちらも軽く上下される。  しかし、続けざまに乳首を吸われ、俺はだらしなく息を吐いた。  暗い視界の中で、優衣がちらりとこちらを見上げたかと思うと再び  目を閉じて乳首への口づけを始めた。  二度、三度と乳首を吸われる。  何かを吸い出そうとするほどの強さはなく、指先についたソースを  取るときのような優しいタッチ。  その優しさに微睡んでいたところで、乳首の周りをくるりと何かが  這った。  『舌だ』と思ったころには、もう優衣の口の動きは変わっていた。 【優衣】 「ん、える……れろれろ……ちゅ、ちゅる……  ……ん、はぁぅ、ぅえるぅ……」  乳輪に付着した自身の唾液を戻すために、口を今まで以上に開いて  吸い付いてくる。  唇の表面ではなく内側の粘膜で乳首全体を口に含まれ、そして先ほ  どよりも強い力で乳首を吸われる。  堪らず声を上げてしまう。 【優衣】 「ちゅ、ん……? ……くすっ」   優衣は何も言ってこない。  ただ微笑むだけ。  代わりに、しっかりとした手つきで逸物をシゴき始めた。  乳首に与えられた刺激は電気のように体を駆け巡り、それが陰茎に  到達した途端にすべて快感へと変換されていく。  俺は戸惑っていた。  逸物と同時に乳首を責められるのがこんなに気持ちいいものとは…  …。 【優衣】 「ちゅ……ちぅ、ちぅちぅ……ちゅ、ぴ……。  ……んひ、立ってきたー……」  あー……と口を開けながら舌先を震わせて乳首を弾いてくる。  控え目な水音とともに芯から疼いてくる快感。  鋭い快楽信号が肩を震わせ、声を絞り出させる。  堪えようとしてもわずかに漏れてしまう。  逆に声を出すほうが、どうしてか快感が増すのだ。  どういうロジックか解らないが、快楽とともに声を出すことが相乗  効果を生むらしい。  いまさら口を噤んで声を堪えても変に思われるだけ。  睡眠時なら、体の異常を素直に受け止めるはずだ。 【兄】 「くっ……ぅ、ぁ」 【優衣】 「んー……?」  吸い付きながら喉を鳴らしている。  声帯を震わせる微妙な振動が伝わってきて、なんとも気持ちいい。 【優衣】 「ちゅ、ちゅぴ……んぇろ、ぇろれろれろぉ…………ちゅるる、  ちゅっ、ちゅッ……」  熱いとさえ思う優衣の舌が、ぬめりをもって乳輪を描くように回る。  舌を固くしてピンっと乳首を弾かれると、堪らず息を吸った。 【優衣】 「んふふー……乳首がそぉんなに気持ちいいの? んふ。  ……可愛い。女の子みたいね……」 【優衣】 「はぁぅむ……」 【兄】 「ぅ、くぁ……っ」  視界が暗いなか、声を出されながら咥えられると今からされる行為  を色濃く連想してしまって……駄目だ。  頭が溶けそうになる。  もともと微睡みのなかにいたんだ、ぼやけた意識のなかでこんな甘  ったるい行為をされると自我を保つので精いっぱいになる。 【優衣】 「にいふぁ……ん、ちゅ……ちゅ、はぅむ、ちゅ……ぁむ、  んれぇるれろぉ…………にぃふぁ……んんむ、ん」 【優衣】 「ちゅ、っ、ちゅッ……ぴちゅ、ぴちゃ…………ちゅ、ぁ……。  おちんひん……きもひぃ……?」  俺に直接訊いてきているんだろうか……?  寝てるのに? 【優衣】 「んふ、ひ……。  んん~…………えるれろぇろ……ぁぁ……ぴちゃぴちゃぴちゃ……」  優衣の舌の裏からぴちゃぴちゃと音が鳴る。  柔らかくした舌の腹が乳首の右に左に動き、捏ねられる。  連続する堪らない刺激に肩が強張ってくる。  喉で声を押し殺すが構わず優衣は弾いてきた。 【優衣】 「ちゅる、ちゅぅぅ……っ、ン……。きもひぃ……?  おひんぽ……ん、んんぅっ……んふふー、びくびくひたぁー……♪」 【優衣】 「にぃふぁんお……ひんぽ……きもひぃーんだあ……。  んふ、ぇへへ…………ぇろ、れぇろぉぉお……ちゅ、ちゅぴちゅ」  “気持ちいい”  そう口にされると、気持ちよさを自覚してしまう。  悦楽の深みにハマっていく感じ。  同時に陰茎を扱かれ、奥で煮えたぎる精液が飛び出すのを促されて  いく。  我慢できない……! 【優衣】 「ちゅ、んん……ちゅ、ちゅ……ン。……ひんぽぉ……ちゅ、ちゅぅ  ……おひんぽ、ン……ぇろるぅ……ん、にいふぁーの、ちんぽ……」 【兄】 「あっ……! ぁ、く、ぅ……はぁッ……!」 【優衣】 「ん……ん……ちゅるちゅる……っ、ちゅ、ぷっ」  口を放すと、少し乱れた息が胸元を撫でる。  冷静そうな様子に反して、優衣の手は絶頂を迎えさせようと素早く  動いていた。  優衣は耳元に口を寄せると、囁く。 【優衣】 「にぃさあん」 【兄】 「っ……!」  ぞわりとした。  囁き声が脳髄まで心地よく響く。 【優衣】 「せぇし……出して?」  脳へ直接、射精を促される。 【優衣】 「妹の手でシゴかれながらぁ……どぴゅっ、どぴゅっ♪ って……  して?」 【優衣】 「ほら、……どぴゅっ♪ どぴゅーっ♪ って」 【優衣】 「どぴゅっ♪ ぴゅっ♪ ぴゅぅーっ♪ ぴゅっ、ぴゅっ♪ あっ♪  ぁっ、ぁっ……♪」              ビュッ! ぴゅるるるっ! ぴゅる、ビュッ! ビュッ!! 【優衣】 「ぴゅっ、ぴゅっ♪ どぴゅーっ、どぴゅ、ぴゅぅーっ♪  ぴゅぅぅ~っ♪」  声に導かれるままに精液を優衣の手に掛けていく。  俺が自分でしているところを見ていたからだろう、射精のタイミン  グに合わせて手を細かく動かしてくれる。  絶頂の脈動の一つ一つが快感で、幸福だった。 【優衣】 「ぁ……」  手元をチラリと見て、嬉しそうに口角を上げた。 【優衣】 「たくさん出たぁ……。えへへ……気持ちよかった?」  な、なんだ? 優衣の様子がなんかおかしい。  こんな子供っぽい笑い方をするやつだったか?  語尾も上げて、嬉しげに……まるで猫撫で声だ。 【優衣】 「……兄さぁん」 【優衣】 「大好き……」 【兄】 「ぇ」  いま……なんて……。 【優衣】 「……くす。くすくすっ」 【兄】 「ぁ?」 【優衣】 「ほら、やっぱり起きてた」 【優衣】 「狸寝入りするだなんて、いい度胸ね」 【兄】 「お前……気付いてて」 【優衣】 「気付いてる。寝ていると見せかけるために、自然を装ってむにゃむ  にゃーって言ったところらへんから」  結構前! 【兄】 「あ……。ってことはさっきのわざとか! 策士め……!」 【優衣】 「え~? さっきの?」 【優衣】 「くすくすっ、それは……まあ……そうね」 【優衣】 「あー、いや。……くすっ、どうかしらー?」  殴りたい。 【優衣】 「寝たふりをして、黙ったまま私にしてもらおうとした兄さんが悪い  の」 【優衣】 「反省したら?」 【兄】 「そんなに悪いことじゃないだろう……」 【優衣】 「からかった私も、そこまで悪いことをしたわけじゃないでしょう?」 【優衣】 「お相子よ、おあいこ」 【優衣】 「それよりも……」  精液の付着した手を動かす。  まだ優衣の手には逸物が握られていた。  俺の陰茎は未だそばだったまま。 【優衣】 「こんなに出したのに、まだビンビン……」 【優衣】 「そんなに乳首を舐められながらされるのが気持ちよかったの?」 【兄】 「それは……」 【優衣】 「ん、いい。返事は聞かなくてもわかってる」  それは楽ちんだな。 【優衣】 「……まったく、仕方ない兄さん」 【優衣】 「それじゃあ……もう一回だけ」 【兄】 「え」 【優衣】 「もう一回……してあげるから。今度は……ちゃんと声を出して?  気持ちよさそうな声……聞かせて。……ね?」  そんなに声が聞きたかったのか。  狸寝入りに対して怒っていたのは、楽して性処理をしてもらおうと  したことに対してではなく、もしや……声を出さなかったことか?  あまり声を出すのは気が引けるが……。  黙っててわかったが、声を出すと快感が増すみたいだった。  優衣も望むなら……次は声を堪えずに出すのもいいかもしれない。  羞恥心はあるが、少し恥ずかしいほうが俺には向いているみたいだ  し……。 【兄】 「じゃあ……」 【兄】 「頼む」 【優衣】 「……うん」  その後、だらしなく声を出して射精まで導いてもらった。  とんでもなく恥ずかしくて死にたくなったが、快感の大きさは言わ  ずもがな。  自分の変態性に、ちょっと嫌気が差した夜だった。 ◆6  九日目 「ただの日常:ニオイ」  翌朝のこと。 【優衣】 「あ。おはよう、兄さん」  例によって、階下に向かうと優衣がいた。 【優衣】 「今日はちょっと遅起き?」 【兄】 「ちょっとな」  まだ欠伸が出る。 【優衣】 「昨日夜更かししすぎちゃったからかしら……」 【兄】 「あー……」  日中にベッドでの行為に触れたことは一度もない。  優衣はどうか知らないが、俺としては日常には紛らせたくない一件  だからだ。  今のは微妙なライン、一寸の差でセーフ。 【優衣】 「何か飲む?」 【兄】 「もらおう」 【優衣】 「兄さんのルーティンなら、コーヒー?」 【兄】 「コンポタは」 【優衣】 「ポタージュは全部飲んじゃった。たは」  “たは”、て。 【優衣】 「いつもと違うのがいいなら、お茶にする?  お父さんが持って帰った、お土産の玉露があるわよ」 【優衣】 「美味しくない紅茶もある」 【兄】 「なにその『美味しくない紅茶』て」 【優衣】 「美味しくないのよ。安いからって買ってきたみたいで、これがまあ  本当に美味しくないの」 【兄】 「飲んでみたい」 【優衣】 「……本気?」 【兄】 「誰も飲まないんだろう? 勿体ないし、試しに一つくらい」 【優衣】 「まあ、止めはしないわ。飲むのは兄さんだし」 【優衣】 「じゃあ、ちょっと待ってて」  寝起きの辛いときにテキパキと動いてくれる優衣はなんと輝いて見  えることか。  感謝の言葉もない。  すでにストーブは点火されていた。  当分前に優衣が起きていることは確かなようだ、部屋も暖かい。  ストーブの前を陣取って寝起きの体を温めていると、優衣が近寄っ  てくる。 【優衣】 「はい、どうぞ」  熱いところに触れないように慎重に受け取る。 【兄】 「ふむ」  香りは問題なさそうだ。  カップから垂れた紐をくいくいしていると、紐のつまみのところに  目がいった。  リ○トンだ。  そこそこ有名メーカーじゃないか。 【兄】 「不味いのか」 【優衣】 「ときどき紅茶嫌いの人を見かけるけど、たぶん常にこういう味を感  じてるんだろうなっていう不味さよ」 【優衣】 「きっと紅茶嫌いが憤死するわね」 【兄】 「アンチ紅茶殺しだな」  一口飲んでみる。 【優衣】 「……どう?」 【兄】 「……」  少し口の中を巡らせて、喉を通らす。 【兄】 「変な味」 【優衣】 「ふふっ、だから言ったでしょー? 美味しくないって」 【兄】 「……なんで嬉しそうなんですかね」 【優衣】 「共通理解を得られれば、誰だって嬉しくなるものよ。  異端じゃないって思えるでしょ?」 【優衣】 「たとえ、私と兄さんだけが『変な味』って思っていたとしても、  兄さんも仲間なわけだし。孤独感は紛れるわ」  みんなで渡れば怖くない精神か。 【優衣】 「どうする? 別の淹れる?」 【兄】 「……いや、案外クセになるかもしれんし」  香りだけはいいからな。 【優衣】 「そう。……ちなみに私は一口飲んですぐに流し台だったわ」 【兄】 「耐性ひっく!」 【優衣】 「……兄さんは、誤飲をしたことがないからそう思えるのよ」 【優衣】 「兄さんにはわかるかしら? ウチに帰ってきた喉がカラカラの状態  で、キンキンに冷えた麦茶かと思って飲んでみたらめんつゆだった  ときの衝撃が」 【兄】 「すっごく限定的」 【優衣】 「口の中はもう麦茶になってるのよ? そこにめんつゆが流し込まれ  ても単に麦茶が腐ってるって思うしかない」 【優衣】 「身を守るためには、すぐに吐き出すしかないのよ」 【兄】 「そもそもめんつゆは飲み物じゃないからね?」 【優衣】 「私もこの紅茶を飲んだとき、真っ先に賞味期限を疑ったわ。安価で  買ってきたみたいだし、絶対的に問題があるはずよ」 【優衣】 「けど、そうじゃなかったみたい。純粋に美味しくないから売れなく  て、安売りされてるだけだったのよ」  賞味期限も切れていないのにこの味を出す商品。  はっきり言って、異常だ。 【優衣】 「香りはいいんだけど」 【兄】 「わかる。すっごくわかる」 【優衣】 「ね。香りだけはいいのよね」 【兄】 「“だけは”て。……いや、そう思うけども」 【優衣】 「……もしかしたら、この香りを良いと思っているのも、私と兄さん  だけなのかも」 【兄】 「いや、少なくとも発売元は良い香りって思ってるんじゃないか?」 【優衣】 「それもそうね、無駄な考察だったわ」  淹れたての紅茶を呷ることはできない。火傷してしまう。  なるべく味わわずに、少量を口の中に入れてさっと流し込む。  喉を通る際に匂いが鼻を抜けて……うむ、こうすれば悪くないかも  しれん。  酒かて最初はそうだった、味は悪いし匂いも好かんしで受け付けな  かった。  いつの間にか『酒はそういうもんだ』って思うようになって、あと  は何も思わず飲めるようになった。  そんなもんだ。 【優衣】 「兄さんって、好きな匂いとかあるの?」 【兄】 「とか、ってなんだ」 【優衣】 「匂いにも種類があるでしょう? 単に芳香剤として売られているよ  うな万人向けの良い香りと、好き嫌いの別れる独特な香り」 【優衣】 「そういう意味で『とか』ってつけたの。……まあただの揚げ足取り  でしょうけど」  全くもって身も蓋もない言い草だ。  正解だが。 【兄】 「好みが分かれるってんなら、ガソリンのニオイか」 【優衣】 「石油系のニオイ? あれが好きなの」 【兄】 「小学校の通学路の途中にあるだろう? ガソリンスタンド」  頷く。 【兄】 「毎日あそこの前を通るのが密かな楽しみだったりしたわけ」 【優衣】 「へぇ……確かに、石油系のニオイが好きっていう人は一定数存在す  るわね」 【兄】 「お前は違うのか?」 【優衣】 「私はどっちでもないわ。特別、嫌ってほどでもないけど、好きでも  ないわね」 【兄】 「そうか……」  男は基本的にあのニオイが好きなやつが多いと思う。  少なくとも、俺の周りでは。  やはり、車に使う燃料という意味で、幼心から大人の憧れみたいな  ものがあったのだろうか。  引火性が高いというのも男子心をくすぐるポイントでもある。  なんか、ちょっと扱いを間違えると大惨事になるようなものに惹か  れてしまうところがあるのだ。  得てして男とはスリルを求めるものなり、ってな。 【優衣】 「……どうして人によって好き嫌いが分かれるニオイが存在するのか  しらね」 【兄】 「というと?」 【優衣】 「普通の芳香剤は科学的に良い香りと評されていて……例えば、香木  を使ったアロマなんていうのは、香りとともに効能も存在している」 【優衣】 「リラックス効果があるーっていうでしょ?」 【兄】 「言うな」 【優衣】 「じゃあ、さっきのガソリンの話になるけど。ガソリンは『好き』っ  て言う人もいれば『そうでもない』って人もいる」 【優衣】 「それって要は、科学的に『良い香り』とは評されていないっていう  ことよ」 【兄】 「なるほろ」  科学的、医学的に『人間にとって良い香り』とされているものがア  ロマテラピーに使われるわけだ。  良い香りを嗅げばリラックス効果がある。効能として、それは当た  り前だろう。  では、ガソリンなどの好き嫌いが分かれるものはどうか。  あれを決して良い匂いとは認めない者もいれば、そうでない者もい  る。  両者両様に分かれるのは、科学的に『人間が好きとされるニオイ』  だとされていないからだろう。 【優衣】 「じゃあどうして、好きな人は好きで、嫌いな人は嫌いな『匂い』が  存在するのかしら」 【兄】 「簡単に言えば、好みっていう話に帰結するんじゃないか」 【優衣】 「好み、ね」  落胆する顔つき。 【兄】 「んだよ」 【優衣】 「それを言っちゃったら、全部が終わっちゃうわ。人それぞれってい  う言葉は、話し合いをあっという間に終結させちゃう禁句よ」 【兄】 「そうボロカスに言わんでも……」 【優衣】 「でも、真理と言えば真理なのよね」 【兄】 「お前から折れるんかい」 【優衣】 「それがただの詭弁なら『屁理屈だ』って言って話し合いを続ければ  いいわけだし」 【優衣】 「まあだからこその禁句なのよね」 【優衣】 「……結局、そのニオイが好きなのかどうかは、その人が過ごした環  境による部分が強いのでしょうね」 【優衣】 「普通、人が嫌う匂いでも、慣れてしまえばそれが当たり前になるわ  けで」 【優衣】 「母親の匂いに安心感を覚える人間が多いのは、それだけ幼少期に母  親から与えられる影響が強いってことなんでしょうね」 【優衣】 「私も……たぶん……」  一度言葉を切ると、そのまま黙ってしまった。  ただの妹の思い出話だ、あまり興味はない。  深く追求するのはやめた。  そのまま続く沈黙を肴に紅茶を啜るというなんとも度し難い行為を  していると、優衣の視線に気付いた。  横目で覗く感じ。  無視していても視線を逸らす様子もないので、こちらも目を向ける。  逸らすことはない。  何か言いたいことでもあるのだろう。 【優衣】 「兄さんは……私のニオイ、好き?」  紅茶を飲み込む喉が慌てた。  なんとか飲み干して言葉を返す。 【兄】 「……におい?」  眉を顰める。 【兄】 「そもそも人にニオイってあるもんなのか」 【優衣】 「質問を質問で返さないで」 【優衣】 「……そりゃあ、あれでしょうよ。人のニオイっていうのは……体臭  ってこと?」 【兄】 「お前に体臭があると」 【優衣】 「あ……いや。ぅー……そっか、私に体臭があるっていうことになる  と……ちょっとショックね」 【兄】 「そうだろう。だからお前にニオイなど存在しないのだ。ふはは」  よし、言い逃れできたぞ。  新たな変態性をほじくり出されるところだった。 【優衣】 「……私って、体臭ある?」 【兄】 「え? いや、ないと思うぞ」 【優衣】 「憶測で言ってない? ちゃんと嗅いだことある?」  妹の体臭をちゃんと嗅ぐってなんだ。  変態か。 【兄】 「添い寝してるとき、大して匂ったことは……」 【優衣】 「添い寝するときは、いっつも兄さんのベッドでしょ?  つまりは兄さんの牙城よ。兄さんの体臭で上書きされてるわ」 【兄】 「人のことを体臭塗れみたいに言いやがってこんにゃろう……」 【優衣】 「自分が体臭塗れかどうかは、やっぱり気になるもの。こんなことは  他人には聞けないし……」 【優衣】 「兄さんがこれだけ体臭塗れなら、遺伝子情報上、私にもその可能性  はあるわけだし」 【兄】 「朝っぱらから兄への貶しがきついです」 【優衣】 「……もう。兄さんを貶してるつもりはないわよ。  この前も言ったでしょ? 兄さんのニオイは臭くないって」 【優衣】 「まあ、他人がどう思うかは知らないけれど?」 【兄】 「そこ重要! 一番重要よ!?」 【優衣】 「くすっ、まったく……我が儘ね」 【優衣】 「まあ兄さんの話は置いといて。いまは私の話」  自分至上主義者め。 【優衣】 「耳の裏とかってよく聞かない? ……まあ実際は耳の裏は体臭の元  じゃないんだけど……とにかく嗅いでみて」 【優衣】 「何かの手掛かりになるかも」 【兄】 「そんな曖昧な」 【優衣】 「ほら、はやく」  目を瞑って首を傾ける。  吸血鬼に血を提供するような恰好だ。  白い首筋の奥にうなじがちらりと見える。  あそこを嗅ぐのか……。 【兄】 「……し」 【兄】 「しかたない」  なにが仕方ないのかわからんが、仕方ないのだ。  こいつの懸念を払拭するためには、思い通りの行動を起こして結論  を出す他ないのだ。  仕方ないな。  両肩を掴んで、顔を寄せる。  肩の前に流れる後ろ髪を背中に流してやる。  眼下に表れたうなじに鼻を寄せて……一息。 【優衣】 「ひゃぅ」 【兄】 「こ、こら」 【優衣】 「ご、ごめんなさい。息がくすぐったくて」  苦笑いをしている。  妙な雰囲気が出来あがっていた。 【優衣】 「……どう? におう?」 【兄】 「まだなんとも……」 【優衣】 「そう。……じゃあ、わかるまで待ってる」  つまり、いつまで嗅ぐかは俺の裁量による。  長くこの体勢を続ける理由はない、さっさと終わらせてしまおう。 【兄】 「……」  すんすん、と嗅ぐ。 【優衣】 「……」  優衣はじっとしている。  息遣いから察するに、すでに落ち着いているようだ。  それでも、少しばかり不安そうでもある。  構わず息を吸う。  細微まで嗅ぎ取ろうと息継ぎ早に嗅いでみる。  ふむ……。  仕上げにとばかり深呼吸。  優衣の肩が少しだけピクリとした。 【兄】 「ん……」  ニオイはしない。  ニオイはしないが、鼻腔をくすぐる何かがある。  無臭の何かが呼吸のたびに俺の体内に入り込んでくる。  そして、その何かが俺の脳髄を巡り、何かをしている。  何かをしているから、こんな気持ちになるんだ。  優衣の首筋、うなじ……髪、息遣い。  至近距離でそれを感ぜられて、俺は自然と……優衣の首元に唇を添  えた。 【優衣】 「ふひゃ」  優衣は驚いたように声を上げた。 【優衣】 「な、なんで首にキスしてるっ、の?」  言われて考える。  どうしてだろう?  特に理由はない気がする。  特に理由がないのだから、釈明のしようがない。 【兄】 「……えーと」 【兄】 「特に理由はない、すまん」 【優衣】 「理由がないのにしたのっ?」 【優衣】 「じゃあなに? 兄さんは人の首をみたら何も考えずにキスしちゃう  ような人なのっ?」 【兄】 「すまん」 【優衣】 「『すまん』じゃなくてぇ……」 【兄】 「すまない」 【優衣】 「ぅ……いや、もういいです。別に謝ってほしいんじゃないもの」 【優衣】 「……それで、ニオイのことなのだけれど」 【兄】 「あ、あぁ……」  ニオイは……しただろうか。 【兄】 「ニオイは……しなかった」 【優衣】 「……そう。ニオイはしなかったの」 【兄】 「ただ……」 【優衣】 「? ただ?」 【兄】 「無臭の……何かがあった」 【優衣】 「無臭の、なにか? ……窒素とか酸素とか?」  それは空気だ。 【兄】 「何なのかはわからんが、でも確かにあった」 【兄】 「それがあったから、あんなことをしたんだと思う」 【優衣】 「……」  少し考える仕草。  俺は、もう嗅ぐ必要もなくなったので優衣から離れることにした。  優衣の顔は赤く染まっている。  ストーブに当たり過ぎたのだろう。 【優衣】 「ま……まあ、よくわからないけれども、その何らかのニオイが兄さ  んを……大胆――いや、変にさせたのね」 【優衣】 「なるほど……。  ……全くっ、見当がつかないわねっ」 【兄】 「……何を焦ってる」 【優衣】 「焦ってない。……いや、焦ってるけど、でも……  いや焦ってない焦ってない。違う、違うの……」 【兄】 「はあ?」 【優衣】 「はぁぁー、もうナニこれぇ……。ぅぅ~、心がわさわさするぅ……。  変よ、絶対ヘン……」 【兄】 「……お前、心当たりあるだろう」 【優衣】 「へ。え!? な、なにが?」 【兄】 「だから、無臭の元」 【優衣】 「あ、ああ~~~~そうね~~~~」  視線があっちこっちに向いている。  優衣のこんな様子は初めて見る。 【優衣】 「無臭の出処は、まあ、うん。一つだけ……思い浮かばないこともな  いわ」 【兄】 「ほほう、さすがだな」 【兄】 「それで? なんだ」 【優衣】 「……」  チラチラとこちらを窺っている。  なんだ、全然わからん。  何を恥ずかしがってる。 【優衣】 「……たぶん」 【優衣】 「たぶん…………フ……ふ、ふぇろもん……だと……おも、ぅ」  語尾は萎んでしまって聞き取れなかった。 【兄】 「ふぇろ?」 【優衣】 「……もん」 【兄】 「ふぇろもん」 【優衣】 「そう。ふぇろもん」 【兄】 「フェロモン?」 【優衣】 「何回も訊かないでえ。フェロモンっ、フェロモンです!」  はっはあ~、フェロモン?  なるほど、フェロモンか。  ……で、フェロモンってなんだっけ。 【兄】 「フェロモンは知ってる」 【兄】 「けど、よくは知らない。どういうものなんだ?」 【優衣】 「……わ、私だってっ、よく知らないわよっ」  どうして今日は一段と嘘が下手くそなんだ。  戸惑い過ぎて自分を失い過ぎだろう。 【兄】 「そうか」 【兄】 「で? フェロモンってなんだ?」 【優衣】 「だからぁ……知らないってば……」 【兄】 「なんでそんなに今日は嘘がへったくそなんだ」 【優衣】 「う。……う。ううぅぅぅー……」  勢いよく立ち上がる。 【優衣】 「く、詳しく知りたいならっ、自分で調べれば!? 変態!!」  逃げた。 【兄】 「変態いうな」  変態だけど。  それにしても、優衣のあの様子……。  何か大きな獲物を釣り上げてしまったらしい。  それがどういうものなのかはまだわからないが……。  時間があるときに図書館にでも行ってみるか。 ◆7  十日目 「初めてのニオイ」  我が家は夕食の後に風呂を入るしきたりだ。  そういうこともあって、食事を終えると、入浴する者は風呂支度、  そうでない者はリビングや自室に篭る。  小さい頃は自室に篭ってもすることはなく、テレビのある居間に居  座ることが多かった。  大きくなると、自室にテレビを設置されるようになり、環境上、居  間にいる必然性はなくなったのだ。  それでも、案外居間にいることが多いのは、俺の『実は家族団らん  を楽しんでいる』という意思表示なのかもしれない。  そんなわけで、することがあったために食事後に自室へ帰ってきた  のである。  ネットを開いて資料を探し始めて間もなくして、扉が叩かれる。 【兄】 「はい」 【優衣】 「私です。入ってもいい?」  優衣か。  『ちょっといい?』ではなく『入ってもいい?』ということは、時  間を食う要件なのだろう。  PC画面を睨む。  まあ、後でもいいだろう。 【兄】 「いいぞ」  優衣が入ってきた。 【優衣】 「お邪魔しまーす……」  妙によそよそしい感じがある。  変だなと思った。 【兄】 「風呂じゃなかったのか?」 【優衣】 「え。あぁ、一番風呂はお母さんに譲ってきたから」 【優衣】 「それはそうとして……ね。  …………あー」  何か言いにくそうにしている。 【兄】 「それで?」 【優衣】 「あぁ。だから、一時間くらいは時間があるわけなのよ」 【兄】 「だからなんだ」 【優衣】 「……だから、今なら時間もあるしお風呂前だから……ちょうどいい  かな、と思うわけなのよ」  言葉を濁し続ける。  わざとしてるのか?  煮え切らない返事に、俺も少し語気を強めて問いただす。 【兄】 「だから、なんなんだ」 【優衣】 「……だから」  手元は落ち着きなく裾を握ったり放したりしている。  途端、ぎゅっと強く握ったかと思うと、言葉が返ってきた。 【優衣】 「においを嗅ぎたいなー……って」  『におい』。  はっきりとそう聞こえた。  一体なんの匂いをだ、ここにはアロマテラピーに使えるような香料  はないぞ。  問いかける前に考えてみる。  さっきこいつは『風呂に入る前だから』というようなことを言って  いた。  つまり……だ。  つまりはそういうことだ。 【兄】 「なんの」  一応訊いてみた。  外してたら恥ずかしい。 【優衣】 「そこの」  指をさされる。 【優衣】 「……駄目?」  指した先には、俺の体。  それも俺の顔を指しているのではなく、俺の体の一部を選択してい  る。 【兄】 「……本気か?」  確かに、いつだったか嗅ぎたいと言っていた。  嗅ぐには、風呂前に嗅ぐしかないとも結論付けていた。  それに対して『それは駄目だ』と釘を刺したのも優衣自身だ。  それをなぜ今さら、自分自身で破ろうとする? 【優衣】 「無理なのよ……」 【優衣】 「好奇心がもうピークなのよ。これ以上は我慢できない……」 【優衣】 「だから、お願い」 【優衣】 「兄さんの……ペニスの匂い、嗅がせて……」 【兄】 「……」  性に魅了されたような言葉。  いつもいつもしっかりしていて小生意気な口を利く優衣が、俺のチ  ンポの匂いを嗅ぎたいと言っているのだ。  ぞくぞくとするこの感覚はなんだろう。  興奮しているんだろうか。  わからない。  わからないが、この感覚は手放しがたい魔性の魅力があった。  だから、俺はその感覚に導かれるように優衣の手を引いた。  逃がしたくなかった。 ◆7.1 「初めての……」  ベッドに腰を掛けると、手を引かれた優衣は促されるように床に座  る。  まるで借りてきた猫だ。  別に、俺のモノを見るのは初めてじゃないんだ。生娘のような反応  を示すのはおかしい。 【優衣】 「電気は消さなくてもいい?」  思わず笑ってしまう。 【兄】 「お前から訊くのか」 【優衣】 「だって、恥ずかしい思いをするのは兄さんのほうでしょ?  明るい場所で見せるのも……初めてでしょうし」 【優衣】 「……兄さんが、羞恥心を興奮剤にしているのは知っているけども、  一応、確認」  なるほど、明るい場所だからか。 【兄】 「緊張してるのか?」 【優衣】 「え……?」  思いもよらない言葉だったのだろう、吐息みたいな気の抜けた言葉  が出た。 【兄】 「明るい場所でするの、初めてだろう?」 【優衣】 「す……る……?」  見る見るうちに赤面する。 【優衣】 「あ、ぁ。ち、違うっ! 今日は、匂いを嗅ぐ……だけ。それだけ」 【兄】 「そうなのか?」 【優衣】 「そうよ。  ……でも、確かに緊張はしてる」 【優衣】 「明るい場所で……見ているところを見られるの……。  は、ははは……どういう顔をすればいいのかちょっとわからない」  まるで初めての夜のときのよう。  不安がって、自信なさげに、幼い少女のような態度で床に座ってい  る優衣は小さく見えた。 【優衣】 「じゃあ……脱がすから」 【兄】 「……あぁ」  手が伸びてくる。  恐る恐るといったようすで、何度も躊躇うように止まる手は見様に  よっては震えているようにも見えた。  細かい言葉の掛け合いはしない。  指が腰紐に引っ掛けられたタイミングで、腰を浮かせる。  部屋中が白熱灯で照らされた中で優衣にズボンをずらされるのは、  官能的な雰囲気を醸し出す。  あの夜、初めて優衣に曝け出したときよりも、その一刻一刻が長く  感じた。  ずるりとズボンが下りると、優衣が小さく声を上げた。  逸物にも冷たい空気に晒された感覚がある。  逸物が見えたことで一度止まっていた手が再び動き出し、全貌が露  出するラインまで下げられる。 【優衣】 「……小さい」 【兄】 「そりゃ……な」 【優衣】 「下を向いてるのね。これが普段の姿?」  案の定、好奇心旺盛な優衣は質問攻めを行う。 【兄】 「そういうこと」 【優衣】 「ふうん……保健の教科書に乗ってるイラストと同じね」  参考が教科書っていうのが可愛らしい。 【優衣】 「……」  じっと見つめている。  まだ力を注がれていないジュニアは、その視線に応えようにもまだ  応えられない。  少しだけ跳ねさせることはできるが……あまり感動はないだろう。  しばらくの間、じっと見続けていた優衣はおもむろに手を伸ばして  くる。 【優衣】 「柔らかい……」  ぷにぷにと指先で弄ぶ。 【優衣】 「まだ興奮してないんだ?」 【兄】 「“まだ”て」 【優衣】 「あ。ぃぃ、いまのは、言葉の……ぁゃ」  今のを言葉の綾と捉えるのは無理があるだろう。  それも優衣はわかっているから、語気が弱いのかもしれない。 【優衣】 「……興奮しなくていいから」  おどおどした小さい声。  ここで不躾に言葉の意味について追及したら泣いてしまうかもしれ  ない。  取りあえずはスルーしておこう。 【優衣】 「……じゃあ」  優衣の顔が寄る。  呼吸音。 【優衣】 「っ…………ふはぁぁ……」  吐いた息が逸物を包む。  優衣の体内の一部だったものが俺へと降りかけられる。 【優衣】 「……におい……兄さんの……、これが……。  すぅぅ…………はぁぁ……」  俺の知らない、か弱い少女がそこにいた。  何か、そんな優衣を前にすると……自分の男としての強さを見せた  くなってくる。  そう思った途端、体内を循環する血液の流れが変わった。  優衣の指を押し返すように、ドクンドクンと脈動が強くなる。 【優衣】 「あ、ちょ、ちょっと」 【優衣】 「どうしておっきくさせちゃうのよぉ……っ」 【兄】 「あー……」 【兄】 「勝手になった」 【優衣】 「勝手にとか、絶対嘘だ……」 【優衣】 「んもう……。変な気、起こしちゃダメだから……ね?」  それは無理があると思いませんかね、妹よ。  こんなに明るい視界の中で、己の逸物に優衣が顔を寄せてるんだ。  童貞には刺激が強すぎます。 【優衣】 「すぅ…………はぁぁ……。……この匂い……兄さんの匂いだ。  いつもの、嗅ぎ慣れた兄さんの……すぅぅ……」 【優衣】 「っ……ふはぁぁ……。……でも、違う……いつもとは違う……。  この匂いは……兄さんのペニスの匂いは……」 【優衣】 「すぅぅ……はぁ……ぁ……、ん……すぅぅ……フ、はあぁ……。  ふぁ……はぁ……ぁ……」  しっかり者の妹が瓦解していく。  ペニスの匂いに当てられて表情がトロンとしている。  そんな優衣の前で怒張を放置されては、お預けを食らわされた気分  になるわけで。 【兄】 「そろそろ……」  逸物に向けて、優衣の肩をそっと引く。 【優衣】 「だめっ。もうちょっと……もうちょっとだけ」  おもちゃを奪われるような拒絶。  そうじゃなくて、もう我慢できないって意味なんですけどね……。  反り返った逸物の根元を親指で押し、曝け出された裏筋に鼻を寄せ  る。  親指で精道を外側から押され、性感を覚える。  ぞくぞくとした痺れが下半身に広がり、ビクビクとした痙攣を誘う。  根元に起こる軽い動きは先端では大きな動きになり、亀頭は前後に  大きく動き、さもすれば優衣の唇に触れてしまいそうだ。  その光景にまた一段と大きく逸物を震わせてしまうが、根元を押さ  えた親指のせいでどうしても唇には届かない。  吐息はこんなにも体温を感じられるほど近いというのに。  折角、目を瞑って匂いに浸って周囲の状況に散漫になっているとこ  ろだというのに。  優衣の手だけではなく、唇も味わえるかもしれないというのに。  もどかしさだけが募る。 【優衣】 「っ、はぁぁ…………はぁ……」  一呼吸ごとにふやけた顔になっていく。  閉じられた瞳は開くたびに潤んで見えた。 【優衣】 「はぁぁ……すぅ…………っ、ふぁ、ぁ……」  熱っぽい息はどんどん色を増していく。  一呼吸にかかる所要時間は深呼吸と同じ。  異様な雰囲気に、俺は手を伸ばす。  さらりと髪を撫でる。  触れた瞬間にぴくりと動いたが、拒絶はしない。  艶やかな髪質。  さらさらと指の間を抜けていく。  明らかに男性とは違う、女性特有の質感だ。  そのまま頬に触れて、きめ細やかな肌を撫でる。  少し火照ってる感じを受けた。  もみ上げをかき上げながら耳元に触れてみる。  優衣は何も言ってこない。  気付いたときには、優衣の呼吸が変わっていた。  匂いを嗅ぐ鼻呼吸ではなく、熱っぽい口呼吸。  まるで、発情しているように見えて…… 【優衣】 「……兄さん……」  潤んだ目で見つめられ、逸物を優衣の手の中でびくりと震わせた。  温かい吐息が亀頭にかけられ、先走りが鈴口から垂れるのが見えた  ……。  ――……が、それは優衣の唇に覆い隠される。 【優衣】 「……ぁぅむ……」 【兄】 「ぅっ……あ」  まさかだった。  期待はしていたが、本当にされるとは思っていなかった。 【優衣】 「んんン……ちゅ、ちゅッ……ちゅぷ、ぅ……にいは、ン……  ……ちゅッ……ちゅぅぅ……っ」  唇の奥から唾液が染み出してきて、亀頭に塗り込まれる。  鈴口に被せられた唇が狭まり、先走りに吸い付いていく。 【優衣】 「ちゅ、ん……ちゅ、ちゅっ、ちゅ……ん、ぷ、ぅぁ……。  ……きもひぃ……? ん、ちゅるる……ちゅ、ぅ……」 【兄】 「っ……舌、使ってっ」 【優衣】 「ちゅ、ん……? ……ひた……? ちゅぅぅ……ん、……こぉ……?  ん……んぇえるれろぉぉ……」 【兄】 「う、ぁ……」  艶やかで熱っぽい舌が柔らかく亀頭を襲う。  亀頭に沿ってくるりと回る舌が、咥え込まれた唇の端からチラリと  覗く。  腔内で行われている淫猥な舌のようすが視覚から伝えられて、俺は  背筋を震わせた。  逸物が感じているこの感覚は、本当に優衣の舌なんだ。  紛れもなく、実の妹に亀頭を舐めてもらっている。  幸せ。  罪悪感や背徳感よりも先に、その感情が脳を占領していた。 【優衣】 「える……れろ、ぺろ……ちゅ、ちゅるぅ……ン、んちゅ……  ちゅ、ぷ……んにゅ、ぷ……ちゅぅぅ……っ、んぇえれるぅ……」 【兄】 「っ、ぁ……はっ……す、吸ってっ」 【優衣】 「ちゅ、ン……、……ん……?」 【兄】 「先っぽの穴からさ、出てるやつ……舐めながら吸い取って……っ」 【優衣】 「……はひばひり……?」  すでに先走りという単語は記憶済みらしい。 【優衣】 「ちゅっ、ちゅ……ちゅ。……吸って……ほひぃの? ……ぅん。  ……ん……んんん~~~~ッ」  喉を震わせながら鈴口に吸い付いてくる。  一点集中の吸引は亀頭肉を震わせるような低い音ではなく、ちうち  うといった小さな高い音がする。 【優衣】 「ン……ちゅ、ちゅぴ……れろぉ、ぇえるぅ……ちゅっ、ちゅっ……  んん……んんん~~~……っ」  尿道口から中を吸い出そうとしてくる刺激にぞわぞわする痺れが拡  がっていく。 【兄】 「っ、どう……旨いかっ……?」  訊いてしまう自分に呆れる。  味もしないだろう、旨いはずがない。 【優衣】 「ちゅ、っ、ちゅぴ……ちゅぅぅ……、ンぇる……れろぉ……  ちゅっ、ちゅっ…………ぅン…………おいひ……」  はにかみながら答えた。  脳がチリチリする。  冷静に考えれば冗談に乗ってくれたんだろうと思う。  けど、どうにもそうは思えない自分もいる。  冗談を言うときは、こんな照れたような顔はしない。  いつもの優衣ならば、むしろこれは、隠しておきたい本音を言うと  きの顔……。 【優衣】 「ん、ン……ちゅ、ぴ……ちゅ、ちゅ……ちゅぷぁ……硬い……。  ぁむん……ちゅるるるぅ……」 【兄】 「っ、あ……! も、もっかい言って……?」 【優衣】 「ちゅぅ……んぅ?」  可愛らしく首を傾げる優衣。 【兄】 「俺のチンポが……美味しいって、もっかい……っ」 【優衣】 「ちうちう……んん~~……」  不思議そうな顔をして吸い付きながら喉を鳴らした。 【優衣】 「ちゅ、ぷっ……ぁ……。  ……んふへっ、……にーさんのちんぽ、おいひぃ……」  屈託のない笑顔だ。 【兄】 「ぁあっ……」  だらしない声が出てしまう。  優衣がペニスの匂いに当てられてしまえば、俺は妹の何気ない言葉  に当てられてしまう。 【優衣】 「ン、んんむ、ぅ……ちゅぅぅ……っ」 【兄】 「ぅっ、くぁ……っ」 【優衣】 「……んむぉぁ……へるぅン、ちゅるる、ちゅっぷ……フ……。  にいふぁー……? んふ、ひもひ……?」 【兄】 「あ、あぁっ……」 【優衣】 「んン、んちゅぅぅ……ちゅ、ぴ、ン……んふひ、……うれひぃ……  んむぉぁむぅ……ん、んんむ、ぶ……ン……ププ……」  顔の角度を変えて逸物を奥へ誘っていく。  唇の端や鼻から、ペニスに押された空気の漏れる音がする。 【優衣】 「ちゅ、ぴ……ちゅる、ン……じゃぁ、にいはん……もっほらひへ…  …? はひばひりじぅ……ぜんぅ、なめとっへあげぅはら……」  言うと、厚ぼったい舌の腹を尿道口に被せてくる。 【優衣】 「んゥン……れぇる……レロレロ……ちゅっ、ちゅっ……ちゅぅ……。  んふぁ……はぁ…………はぁむ……はむ、ぁむっ……ぷちゅん」 【優衣】 「ぷちゅっ、ちゅぷっ……ん、ぇるん……れる、ン……ぷちゅ、  ぷちゅ、ぷちゅっ……ちゅ、ぴ……ちゅぅっ」  亀頭に占められた腔内を舌が動くと、追いやられた腔内の空気が唇  の狭い隙間から洩れ、ぷちゅっぷちゅっと卑猥な音を響かす。  執拗に鈴口を舐め取られているというのに、断続的にちうちうと吸  い付いてもくる。 【優衣】 「ちゅ、ちゅぅぅ……っ。ん……っ、く……ゴクッ……っ。  んフ……! フー……、フーっ……、ん……ちゅぅ、ちゅっ、ちゅ」  腔内に溜まっていく先走りを躊躇いなく飲み干してしまう。 【優衣】 「ん、あむン……はぁむっ、はぷぅ……っ、ちゅっぷ……ぷちゅ、  ぷちゅっ……ン……くぷ……くぽ……プ、ぎゅぷっ……」  指示したわけでもなく、優衣は何度も逸物を喉奥まで押し込んでい  く。  逸物全体を味わおうとしたり、俺の排泄器官から出るものを厭わず  体内に入れ込む優衣の姿。  俺の体は優衣への愛おしさでいっぱいになってきていた。 【優衣】 「ん、ぐ……んぉ、ぁぐ、む……んン……フ……」  狭い喉奥をペニスに塞がれ、押しくぐもった声が漏れてくる。  それでも決して苦しそうな声は出さず、優衣は終始穏やかな表情で  咥え込んでいく。 【優衣】 「ン、ちゅっ……ぷちゅっ、ちゅっ♪ ん、くぷ、ぐぽっ……じゅる  るっ、ちゅるちゅるるぅ……っ、ぷちゅ、ぷちゅん、ン♪」 【優衣】 「ちゅ、ぷぷぷ……っ、プ……ん、はぁぅむぅ……っ。  ん……ご、ゥ……ん、ぷ……ぶ……ぶっ、プ……ぎゅプ……くぷっ」 【兄】 「くっ、ぅぅ……!」  息が上がり、腰が浮いてきた。 【兄】 「やばっ……!」  俺の声に、喉の奥深くまで咥え込んでいた優衣が、逸物の先端が見  えるまで吸い上げながら唇を引き上げる。 【優衣】 「ちゅ、ン……んぅ? ぬろるるるるぅ……っちゅ、ぷっ。  フーッ……フぅー……ろうひはの? イク? いひほう?」 【兄】 「ああ、いく……イクっ……!」 【優衣】 「んんン、ムぅ、ちゅぅぅぅぅ……っ、ちゅっちゅっ♪」 【兄】 「く、うぁっ!」  亀頭の肉を唇で押し潰してきながら、嬉しそうに喉を鳴らして吸い  付いてきた。 【優衣】 「んふふ、……いいの……がまんひないれ、……だひへ?  にいはんのせーし……ちょーらい?」 【兄】 「っ、あぁ……出す、からっ……早く、咥えて……っ」  自分勝手に急かすと、優衣は膨れ上がった亀頭にねっとりと舌を這  わせる。 【優衣】 「ぇぇるぅン……はぷっ、ぷちゅっ……んちゅ、ちゅ……れるん……  れる、れろ……ちゅぷ、ぷちゅんっ……ちゅ、ぷちゅっ♪」  優衣に咥え込まれた亀頭が、唇の奥でめちゃくちゃに舐め回される  のを感じる。  吸い付き、空気が抜かれた狭い腔内を熱を持った舌が這い回る。 【優衣】 「ちゅ、ゥ……ん、フ……んぉ、ぁ……にいふぁ……ぁむん……ン、  ……らひへ……、はむ……ちゅッ……んぇぇえるれろえろるぅ……」 【優衣】 「ちゅ、ン……にいひゃぁむん、ちゅぷ……プ……ちゅるるるぅ……  ん、んくっ……ごく、っ、フ……」  唾液と先走りが混ざり合ったエキスをごくごくと飲み込んでいく。  これが、いまから精液に変わる――。  濃厚な俺の子種が優衣の喉を犯す――。  連想される展開に背筋を逸らして腔内の味を求める。 【優衣】 「らふへ……にいふぁ、ぁはむ……ン……ぷちゅっ、プッ……んム…  …にぃふぁあむン……ぐプっ……」 【優衣】 「ん、ぐっプ……ちゅぶっ、プ……ぷちゅんっ、ン……ぇろる、ろる  ……ちゅ、プル……くぷ、くぽっ、ちゅぷ、じゅるるるっ……ぷっ」  頭を回転させながら上下に動く口唇。  カリ首に沿う唇がくるくると動き、鈴口を舐め吸われたところで下  腹部の疼きが限界点を超えた。 【兄】 「っ、ぁ……あっ、ああ――っ!」  ――口に出すのは駄目だ。  一瞬、頭をよぎった気持ちが腰を引かせた。 【優衣】 「じゅぷ、んっ、プっ――」  ビュッ! ビューッ! びゅるっ、びゅっびゅっ! ぴゅっ!  先端を小鼻の横に押し当てて、眉や目に向けて射精する。  射精の一回一回が明るい室内でよく映えて見えた。 【優衣】 「へう、ぶえ、ぶぁ……わ、あっ」  唾液や先走りに塗れた唇から発する優衣の声は粘り気を持っていた。  目を閉じ、眉を顰めながらも顔を逸らすことはなく、ただじっと我  慢するように精液を顔に浴びる。  優衣の外見を穢すことを鮮明に視界に捉えることで、一段と射精の  勢いが増していく。  ただ、優衣の顔を汚すために……。ただ、優衣に俺の子種を振りか  けるために……一心となって精を吐き出す。 【優衣】 「んっ、っ……っ、はァ……っ、ぁ……ふ、ぅぁ……っ」  熱い液体を掛けられるたびに小さく声を漏らす優衣。  射精の勢いが弱まり、頬に押し付けられる逸物の力も弱まったこと  で、優衣はやっと息を吐き始めた。   呼吸をするために開いた口を、頬を伝い落ちてきた精液が覆い、優  衣が途端にへの字口を取った。 【優衣】 「っ……ぶぇぇ……。  なんでまた顔に掛けるのよぉぉ……」 【兄】 「あ……す、すまん」 【優衣】 「ぅぅぅぅ……」  相当、唸ってる。 【優衣】 「まあ、お風呂に入る前だからいいケド……。  変な趣味持ってるわよね……兄さんって」 【兄】 「……趣味じゃない」  成り行きだ。  優衣は不貞腐れたような顔をしていたが、すぐに柔らかい表情に戻  った。 【優衣】 「……汚れちゃったわね」  精液でコーティングされた優衣は、どこかぽーっとした様子で逸物  を見つめていた。  きゅっと根元を掴むと、吐息をかける。 【優衣】 「……動かないで……? じっと……してへ……ぇえるぅ」 【兄】 「っ……」  精液で塗れた亀頭に舌を這わせていく。 【優衣】 「れる、ちゅ……じゅるるる…………っ、っ……ん……  ぢゅる、ちゅ……ちゅぅぅ……、ちゅっ、ン……っん、ぅ……」  自分の顔に付着した精液には厭わず、逸物についた精液だけを丁寧  に舐め取っていく。  俺に尽くしてくれている優衣の様子に慄くばかりだ。 【兄】 「なんでこんなことっ」 【優衣】 「ちゅ、っ……ん……? ……ぇと……こぉふると……うれひぃっへ  ……れるんんぅ、む……ぢゅるぢゅるるる……っ」 【兄】 「ッ……! だ、誰が? 俺が言ったか?」 【優衣】 「じゅず、ずず……っ、ぢゅるっ……ン、ふ……。  ……ひらえは」 【兄】 「……は?」  聞こえない。 【優衣】 「……自分で…………しらべた」 【兄】 「……」  自分で調べたのか。  どうすれば男が嬉しがるのかを。  いや……どうすれば“俺が”嬉しがるのかを。  ただの性欲処理にそこまでする必要はない。  嫌がりながらも好奇心が勝って、仕方なく手伝ってくれる体でよか  ったのに。  健気なのか、献身的とでも呼ぶべきか。  それとも、意外と優衣はエロい方の好奇心もバリバリ強いのかもし  れない。  しっかり者だが、その実、考えていることは『どうすれば兄が気持  ちよく悦んでくれるか』、なのだ。  人のことは言えない。  こいつもこいつで『スケベ』だ。 【優衣】 「『お掃除……』? ……なんとかっていう、んでしょ。  よくわからないけど……兄さんなら喜んでくれるかなって。えへ」  精液で汚された顔が照れたように笑った。  ずきりと胸が痛む。  同時に陰茎にも、ずしんと重たい疼きが生まれる。  ……まったく、最低な兄だ。  穢れても健気な姿を見せてくれる優衣に、興奮するなんて。 【優衣】 「……だから、じっとしてて……? ……ぁ……ぁぁ、ぅむん……」 【兄】 「うあ」  亀頭が温かい粘膜に包まれる。  敏感になっているのをわかっているかのように、優衣の舌が優しく  回される。  文句のつけようのない口淫だった。  優衣の兄に対する信愛が込められている気がした。 【優衣】 「ン、ん……ちゅ、ちゅぅぅ……っ、ぉぁ……ンむ……ぢゅ、じゅる  るるっ……ちゅるじゅるるぅ……っ、ちゅッ」 【優衣】 「じゅるっ、ずずずっ……、っ……っ、ん……ごくっ……こくっ……」 【兄】 「うぁ……」  飲んでる。  優衣が俺の精液を飲んでる。  なんて扇情的な光景だろうか。 【優衣】 「ちゅ、ちゅぅぅ……っ、ん……く。……ちゅ、ぷぁ、フ……ん……  フはぅ……ふぅ……ふぁ…………はふ……」  少し苦しそうに息をつき、見つめられる。  潤んだ瞳の上目遣いは、俺にはないはずの加虐心をくすぐってくる。 【優衣】 「綺麗に……ふ、はあ…………なった……、はフ……」  『もういい、ありがとう』、なんていう言葉は出てこない。  ただ、見つめてくる瞳を見つめ返すだけ。  無言のやり取りのなか、優衣は俺を意を汲んだのか軽くはにかんだ。 【優衣】 「……んぇえれるぅ」  精液の付着していない亀頭へむしゃぶりついた。 【兄】 「くっ、ぅ……っ!」 【優衣】 「れる、れろ……ちゅぅ、……ちゅっ、ちゅ、ちゅる……  ちゅぴ、ちゅ……ちゅぅぅ……っ」  綺麗になり艶やかに光る亀頭にキスを浴びせた。  慈しみを込めるように、喉を鳴らしながらのキス。  ペニスを甘やかされながら愛でられ、悦びに跳ね回る。  それに喉を鳴らして応える優衣。  喜んでいるのか、困っているのかわからない。  どちらにしても、そんな優衣の様子を可愛らしいと思ってしまう。 【優衣】 「ん~……。……ん、はぁむ」  静止を聞かないペニスに痺れを切らしたのか、先端を腔内に迎え入  れた。 【優衣】 「ちゅ、ン……ちゅぷぷ、プ……ぐぷ……クプ、ちゅぽ……ン……。  ちゅぴ……くぽっ……、じゅるる……ちゅるぅ……」  上下する顔の動きは明らかに掃除ではない。  この行為は『二度目』に繋がるもの。  もう一度、精子を喉で味わいたいという意思表示だ。  俺は優衣の変貌ぶりに驚くしかない。  いつの間に、こんなにエロい娘に育っていたんだ……っ。  階下にいるであろう両親に気付かれないよう声を堪える。  部屋には逸物を啜る音と優衣が時折漏らす小さな声、そして腔内か  ら響く『くぽっ……ぎゅぽっ』という篭った音。  そのすべてが俺の知らなかったフェラにおける効果音で、俺の気持  ちをどんどん昂らせていく。  優衣もぼんやりと蕩けた様子で口を窄めていく。 【優衣】 「にぃひゃ、ぁむん、ン、っ……ちゅ、ちゅぽっ、くぽ……ん、フ…  …ちゅ、ぅン……にぃは、ぅむん、ちゅる、くぷ……にぃ、っ、は」  コンコン 【優衣】 「――っぷあ!」  扉の音に心臓が飛び出そうになる。  優衣も度肝を抜かれた様子で口を放した。 【母】 「あれ? そこにいたの?」  母さんの声だ。 【優衣】 「ぁ、しまった……声上げちゃ駄目だったっ」 【母】 「お風呂空いたわよー。どっちでもいいから入りなさーい」  目配せする。  どうせいるのはバレてるんだ、自然を装ったほうがいい。 【優衣】 「……はーい。じゃあ私が先に入るー」 【母】 「りょーかい」  扉は……開けられない。  足音も離れていく。  大丈夫、危険は去った。  二人してほっと息をつく。 【優衣】 「……危なかった」 【優衣】 「兄さんの精液塗れな顔、どう頑張っても誤魔化しようがなかったわ」 【兄】 「ホントにな……」  静寂。  さっきまでの行為が嘘のように部屋はしん……としていた。  それでも、目下に広がる扇情的な光景は嘘でないと証明していて…  …。 【優衣】 「じゃあ……、先に入るわね?」  どうしようもない空気を切り裂いたのは優衣の声だった。 【兄】 「あ、あぁ」  髪に精液が付いていることを言ったほうがいいだろうか。  いや、たぶん自室に戻ってから拭き直すだろう。  着替えを取りに一旦寄るはずだ。 【優衣】 「……あ、の」  扉を半開にした状態で、優衣が向き直った。 【優衣】 「お風呂から上がったら、……兄さんの部屋で待ってるから」 【兄】 「え?」 【優衣】 「じゃっ」  顔を逸らしてしまった優衣の表情は窺えないまま、扉が閉まった。  いまのはどういうことだ?  また部屋にやってくるということか。  なんでまた、俺の部屋に来るんだ。  何の用事で……? 【兄】 「いや、ねえ」  惚けたふりをして自問してみる。  けど、いや……まさか、ねえ。  続きがある……のか。  確かに、母さんがノックをしなければあのまま二発目に向けて優衣  の唇を味わうつもりだったが。  まさか……いや。  ねえ。 ◆8  十五日目 「妹の口にハマってしまう兄」  ベッドの布団の奥。  優衣は可愛らしく喉を鳴らしながら、俺のペニスを口づけをする。  あれからというもの、毎晩のように優衣の舌で射精まで導いてもら  っていた。  俺の匂いに対して何らかのスイッチが入ってしまうのか、口で愛撫  するときの優衣は子猫のように喉を鳴らす。  好物を与えられた喜びを表現するかのような様子に、優衣の本質を  垣間見た気分だ。  恋人ができたら、案外優衣は甘えん坊なのかもしれない。 【優衣】 「ん……ちゅ……ちゅッ……ふ、ン……ちゅ、……ぁむ、ンぁあむぅ  ……んちゅ、る……、ン……ひもひぃ……?」  優衣は必ず俺に具合を訊く。  多分、口にさせたいんだろう。  最初は答えるのは恥ずかしかったが、言ってやると優衣が嬉しがる  ことと俺が口にすることで快感を増すこともあり、今は答えている。 【兄】 「あぁ……気持ちいいぞ、っ」 【優衣】 「ちゅぅぅ……ん、ん……んふ、ひ、ふふっ♪」  口が塞がっていることもあって、口角を上げた微笑み声はちょっと  ヘンである。  それも、なんか可愛いなと思ってしまうから兄馬鹿な話だ。  ベッドでの行為中は、優衣への気持ちが変化しているような気がし  てならない。  愛おしさが俺の心身を強く締め付ける。 【優衣】 「ん、んゥ……ぷちゅ、ぷちゅっ、ぷちゅっちゅっ、ちゅ……。  んろるれるぅ……れるん、ちゅぷぅ……フー……ん、っ……ん♪」 【優衣】 「んふ、ン……ん……ちゅ、チュ……ふ、フー……んちゅぅぅ、  ちゅっ……は、ぅ……んっ……ちゅむっ……チュ……チュ……♪」 【優衣】 「ちゅ、ちゅン……んっ、っ……ちゅぷっ……ちゅ……んふっ。  ん~……ちゅ、ちゅ……ちゅ、ちゅッ……ぺろぺろ……っちゅぅ」 【兄】 「っ、く……ぅ……はっ」  丹念な舌の動きに激しさはなくても逸物がピクピクと反応する。 【優衣】 「ちゅ、ちゅぅぅ……ん……んふっ♪ ちゅっ、ちゅ……ちう……」  優衣の視界にも快感を逃がそうとうねる下腹部が見えてるだろう。  朗らかに笑いながらちゅうっと吸ってくる。 【兄】 「あっ、っ……そこ、裏のとこ……っ」 【優衣】 「ちゅ、れるるぅ……ちゅ、むン……んぅー?  はむ、あむ、ぁむ……ちゅ、……こにょ、みじょにょとこぉ……?」 【優衣】 「ぇる、へぇえる、れる……れろぉ……れぅ、ちゅ、ちゅぱっ……  はフ、ちゅ、んっ……♪」 【兄】 「うわ、はっ……ぁっ……!」  裏筋を口に含みながら、唇からはみ出た舌を回り込ませながらカリ  首を舐めずっていく。 【優衣】 「ちゅ、ちゅぅぅ……っん、はぅむ……ぁむ、はむ、ンむ……  ちゅるるぅぅ……ン、ちゅぅ……ちうちう……んへぇる、れろ……」 【優衣】 「ンちゅぅ……ちゅ、ぴ……ンぇる、れろぺろ……ちゅ、ちゅッ……  ん、ン……ちゅ、ん……っ……フ……れるれるぅ……っ」 【優衣】 「ちゅっ……ちゅ……ちゅるるぅぅ……。ちゅちゅ……ちぅぅ……。  ん、フぁ……ふ、ぁ……え、ぇぇえる……ペロ、ペロ……」  丁寧に裏筋やカリ首に舌を這わせていく。  くすぐったいような快楽に夢心地だ。  ぼうっとした意識の中、時折体を震わせるくらいの悦楽が全身に走  るのが麻薬のように心地いい。  ふと気づくと。幸せそうに息をつく俺の様子を上目遣いで見てきて  いた。 【優衣】 「ちゅ、む……にぃはんったら、ンっむぅぅ……あきないの?  ちゅ、ちゅぴ……ちゅ、ぅ……毎日、おクチでひてもらっへ……」 【兄】 「え、っと……飽きる以前というか……っ」  虜というか。 【優衣】 「ちゅ、れる……ぺろえろ……フ、はむぅん、ぅン……  ぷちゅ、ぷちゅっ♪ んん~……れるれるれう……」 【兄】 「は……っ! あぁっ……!」  ねっとりと亀頭全体を咥えこむように舐められる。  淡々とした舌遣いからいきなりあだっぽく責められると声を堪える  ことができない。 【優衣】 「ちゅ、ぷちゅ、ぷちゅっ……フー……ん、ちゅるるぅぅ……っ、ん。  ちゅるぷぁ、あふ……ふぁ……ふふふっ、知ってる」 【優衣】 「だって、兄さんってば……私が学校から帰ってきてから、  ずーっとそわそわしてるんだもの」 【兄】 「え……」  そんなにそわそわしてたか、俺。 【優衣】 「わたひのくちびぅ、ずーっとみへ、ぅンんちゅぅぅぅ……♪  んふふひ、……ソーゾーひてるんだぁ?」 【兄】 「してな、っ……はぁっ……」  俺の言葉を抑え込むように亀頭肉を唇で潰しながら吸い付いてきた。 【優衣】 「ンちゅぅっ……ちゅ、ちゅッ……んふ、ほれがわかっひゃうから…  …ぅんンむぅ、ちゅぅぅ……っ、フ……期待ひへるっへ、わかうか  ら……」 【優衣】 「わたひも、毎晩こーひへ……ちゅる、ぅむン……んん……、  にーはんの部屋に来へるわけだし……」  前までは一週間に一度、多くて四度がデフォルトだった優衣との添  い寝。  それが、あの夜から……優衣のフェラチオを味わったあの日から、  毎晩へと変わっていた。  それはお互いに話し合って決めたことではなく、そもそも添い寝は  優衣の強引な押し付けで仕方なくしていたことだ。  優衣が毎晩来るようになってもその理由は聞かず、俺も内心嬉しく  思っていたわけだが……。 【兄】 「俺は別に、期待なんてしてな……っ、あ!」 【優衣】 「んン、む……っ、ちゅぅぅ……っ、ちゅっ、ちゅるぅ……っ」  またしても、俺の言葉を遮るように逸物への吸い付きを強めてくる。  この不意の攻撃が気持ちよくて、俺は無理に反論しようとしていた。 【優衣】 「こぅひへ……すいだひへほひーんだもんね? いもーほのおくひに、  せぇしを……ピュッピュッ♪ って出ひへ……、んン……ちゅ……」 【優衣】 「ちゅむ……っ、ぷはぅ、……ごく、ごくっ❤  って……飲み干ひへ……ほひーんだもんね?」  それは、ここの最近毎晩のように行っている儀式。  優衣の体温を感じながらの腔内射精。  拒絶されるかもしれないと思いながらも出した最初の腔内射精は感  動的だった。  イクと言っても奥深くまで咥えた口を放すことはなく、そのまま身  を委ねるように最奥に解き放った。  直接、精液を飲むあの光景は忘れもしない。  今日もまた、優衣に精液を飲んでもらうんだろう。  ただ性欲を処理してもらうだけにも関わらず、俺は優衣の口だけに  怠らず喉奥までをも穢していく……。  最高の背徳感だった。 【優衣】 「んふふ……ちゅぷぁ、フ……ふあ、はぁ……はふ……はー……。  ……わかってる」  ここに出すんだと示すように唇でふにふにと鈴口を開いてくる。 【優衣】 「……いいわよ。兄さんの白い赤ちゃん、お口に注いで……?  昨日みたいに……ううん、一昨日も、その前の夜も、その前も……」 【優衣】 「くすくすっ、一杯出したもんねー?  だから、今日も……妹のお口に、たくさん出して……?」 【兄】 「っ、はぁ……はぁ……。早くっ、咥えて……っ」  そう言って腰を突き出す。  優衣は何も言わずに、そっと口を開いて亀頭を含む。 【優衣】 「あ……はぁあむん、んン……ちゅぷ、くぷぅ……ん……っ、ん……  ぷちゅ、ぷちゅるっ……れる、れるん……れるれるっ♪」  顔の動きとは全く異なる動作を見せる舌。  視覚外で行われる行為は予想だにしない動きをするから、心の準備  ができない。  腔内でちろりと舐められた後に吸引されれば、思わぬダブルコンボ  を食らい腰を浮かせてしまう。 【優衣】 「ぷちゅ、ちゅ、ぷぅ……ん、ン……ぷ、ぅ……ん……ちゅる、  ちゅぷ……くぷ、ぷぷぷ……っ」  奥へ誘った逸物に押されて唇の端から空気が漏れていく。  腔内から響く唾液と空気がごちゃ混ぜになったような音。 【優衣】 「ん、も゛……ンん、ぷ……ちゅるぷっ、くぷ……くぷっ、じゅぷ…  …ん、ちゅ、るるっ……くぽっ♪」 【兄】 「っ、はああぁぁ……っ、は、ぁぁ、ぁぁぁ……」  絶頂へと向かう快感をより長く味わうため、呼吸が長引いていく。 【優衣】 「クプ、ぷ……ん? ん……ちゅるぅぅ……っ、ん……。  ……んー……ん、んん……ちゅ……ちう……ちうちう……」  イク予兆を視認したのか、優衣は鈴口を唇と舌で器用に開く。 【優衣】 「んん……もう限界? 息が深くなってきは……んちゅぅ……ちゅ、  ……ちゅぷはぁ♪ くすっ……にぃはんのおちんぽ、わたひのおク  チにピュッピュッ♪ ってするの?」 【兄】 「あぁ……だから、早くっ……」 【優衣】 「はぁむ、ちゅっ、ちゅ……。うん、わかっはぁ……ぁむ、ちゅ、  むむン……ん……あぐ、ぁぐ、む……グ……ん、ちゅぷ……  ちゅるる、ぷ……」 【兄】 「ぁ、ぁ……」 【優衣】 「……らひへ、わたひのおクチのなかに……ちゅ、ちゅぷ……ちゅ、  ちゅるる、ちゅぅ……ん、くぷ……ちゅぷ、ぷぷっ……ちゅっ♪」 【優衣】 「ちゅ、ぴ……ン、んふ、んふふっ♪ 吸いだひへあげぅ……。  はぁむ……ちゅ、ちゅるっ、ちゅるるぅぅ……んクプ、ちゅ、  ちゅるっ、ちゅるるぅぅ……ちゅるっるるるるりゅ……っ♪」 【兄】 「っ、――あ……ッッ!!!」  びゅっ! びゅくくっ!! びゅーっ!! びゅっ、びゅるる!! 【優衣】 「っ、ん……♪ ゴクッ……っ、ちゅ……ちゅるるぅぅ……ン、  ゴクッ……っ❤ ん、フーっ……フー……ッ、ふーっ❤」 【優衣】 「ん、っ、ゴクッ……ちゅ、ちゅぅ……ちゅ、ちゅ……ちゅるるぅぅ  ……ちゅ、ン……ん、んんっ……ごく、ゴクッ……❤」  腔内に受け取った精液をそのまま唾液で薄めることもなく飲み込ん  でいく。  粘度の濃い精液を飲むのは簡単ではないだろう、時折喉に引っ掛か  るように詰まらしている。  それでも構わず飲み込み、貪欲に尿道に残ったものも吸い出そうと  してくる。 【優衣】 「ん、フ……フーッ……フー……っ、ふ……ん、ちゅる、じゅずずっ  ……ちゅるるぅぅ……ン、ちゅる、ちゅっ、ちゅぴ、ちゅ……ぴ」  零れないよう気を付けながら亀頭から唇を浮かし、口をもごもごし  始めた。  唾液と精液を混ぜているみたいだ。 【優衣】 「ん、フー……フー……ん、ん……んんー……ん、……ん。  っ、ぐ、っ、んっ……んく、こくっ、ゴクッ、ゴクッ……❤」  飲み干した。 【優衣】 「んはぁっ、……はふ……はぁ……はぁ……、……は……。  いつもいつも、濃厚で飲みにくい……わざとこんなの作ってる?」 【兄】 「そんなわけがないだろ……」  まだ喉がイガイガするのか何度が嚥下を繰り返して、ふっと息を吐  く。 【優衣】 「どうだか……。私が飲み込むところ、嬉しそうにじっと見てきて。  苦労して飲むのがそんなに滑稽?」 【兄】 「ひねくれ過ぎだ」  変な誤解を与えてしまっては今後に悪影響を及ぼすかもしれない。  次からは飲まないとか言われたら困る。  しかし、冗談で言ってる可能性もある。 【兄】 「……ホントに俺がそう思ってると?」  訊いてみた。 【優衣】 「……冗談に決まってるじゃない」 【兄】 「だよなーそうだと思った!」 【優衣】 「くす、もう……なにその顔。ほっとし過ぎよ」 【兄】 「そりゃあ、な」 【優衣】 「……もうしてあげないって言われるかと思った?  兄さんの精液なんて、もう絶対飲まないーって言われるかと思った?」 【兄】 「あー……」  直接、口にするのは躊躇われる内容の質問だ。  誤魔化すために頭を撫でてやる。 【優衣】 「……ん、もう」 【優衣】 「頭を撫でればいいとか思ってるんでしょ……」  こうするだけで、仕方ないなとばかりに相好が崩れるから困りもの  だ。  ……いつか優衣に彼氏ができたとき、きっとこんな具合に頭を撫で  たりキスをしたりして簡単に許してしまうんだろう。  別に俺にだけの態度じゃない。  俺だけが特別じゃないんだ。 【優衣】 「……もう、本当に兄さんってばわかりやすいんだから」 【優衣】 「そういうあからさまな態度で『私のおクチで性処理してほしい』っ  てアピールしてるんだもの。無碍にしたら、なんだか私のほうが悪  い気分になる」 【兄】 「それは言い過ぎだろう……」 【兄】 「そんなこと言われたら、お前に気を遣わせてしまってる俺のほうが  悪い気分になる」 【優衣】 「……いいの、気にしないで。  兄さんはいつも通り、したいようにすればいいわ」 【優衣】 「妹のおクチの体温を奪って、お返しにあったかい精液を吐き出すの」 【優衣】 「それが兄さんのしたいことでしょ? 誰かにしてもらえるなら、妹  にだって欲情しちゃう……変態兄さんのしたいこと」 【兄】 「……変態変態うるさいよ」 【優衣】 「ふふっ、……まったく。節操なしなんだから」  聞いちゃいない。 【優衣】 「仕方ないから……兄さんに彼女ができるまで、我慢するわ」 【優衣】 「それまでは、妹の口を堪能して……ね」 【優衣】 「くすくすっ、早く彼女ができるといいわねー。変態にーさん?」 ◆9  十七日目 「妹の部屋」  風呂上り。  歯を磨いて私室に戻る途中、廊下の角に人影が見えた。  人影とか言っても、所詮は実家の中。人物は決まってる。 【優衣】 「あ」  手を上げてくる。 【兄】 「どうした」 【優衣】 「歯磨きしてたの?」 【兄】 「お前はいつもそれを聞くな」 【優衣】 「えー? くすっ、だって兄さん、昔は全然歯磨きをしようとしなか  ったじゃない? だから、確認するのがクセになってるの」 【兄】 「何がくるしゅうて妹に歯磨きの確認をされにゃあかんのだ」 【優衣】 「まあまあ。誰のお陰で習慣付いたと思ってるの?」  それはそうだが。 【優衣】 「リビング?」 【兄】 「いんや」 【優衣】 「じゃあ……寝る?」  一緒に、ということだろう。 【兄】 「……寝る」 【優衣】 「……くす、はーい」  廊下は肩を並べて歩けるほど広くはない。  俺と前後して、優衣がついてくる。  会話はない。  言葉を交わさなくとも、気の合った者同士では気まずさは生まれな  い。  生まれないが、これからのことを思うと心は落ち着かない。  期待感、だろうか。  部屋の前についた。  目配せをする必要はない、部屋に入ろう。 【優衣】 「じゃあ、私は部屋で寝るから」 【兄】 「え」  素の声が出た。  数歩先に進む優衣に目を向ける。  ぴたりと止まると、肩に掛かる髪をなびかせて踵を返した。  その顔。  優衣の顔。  それを見たとき、俺は自分が作っている表情に後悔した。 【優衣】 「んふふっ」 【兄】 「くそ」 【優衣】 「あらら~? どうしたの? そーぉんな顔をして」 【兄】 「してない」  今はね、と返される。 【優衣】 「私が添い寝しないって言ったのことに、ショックを受けちゃった?」 【優衣】 「期待してたのを裏切られて、くすっ……残念だって思っちゃった?」 【兄】 「……知らん」  勝手に入ろうとする。 【優衣】 「あー、待ってっ。もう、勝手に部屋に帰ろうとしないで」  急いで俺の許に駆け寄ると、袖を握ってきた。 【優衣】 「まだ話の途中」 【兄】 「俺はもう終わった」 【優衣】 「なに拗ねてるのよ……」 【兄】 「拗ねてねえ」 【優衣】 「……ほら、こっち。中に入らないで」  まだ何の話があるというんだか。  仕方なく、半身で入っていた部屋の扉を閉める。 【兄】 「……」 【優衣】 「……」 【兄】 「なんだ」 【優衣】 「……兄さん?」 【優衣】 「今日は、私の部屋で寝ない?」 【兄】 「……」  意味が分からなくて変な声が出た。 【兄】 「……なんでお前の部屋で寝なきゃならんのだ?」 【優衣】 「またには気分転換に。くすっ、思えば、あまり兄さんを部屋に招い  たことなかったし」  それは……そうだ。  用事があっても、優衣の部屋の中には入らない。  リビングで待ち伏せする策を取っていた。  優衣が小さいころは気にせずにずかずかと入ってたものだが、成長  してからは……なんというか、入りづらくなっていた。  なんていうか、もう子供の部屋じゃなくなってるんだよな……。 【優衣】 「ね? いいでしょ?」 【兄】 「……」  まあ、こいつから招かれたなら仕方ないか。  別に拒否をする理由はない。 【兄】 「……わかった」 【優衣】 「……」  なにかほっとするような顔。  断られるとでも思っていたのだろうか。 【優衣】 「じゃあ、こっちに」  そのまま手を引かれていく。  ……  扉を開けて部屋に入っても、優衣は電気を点けずに足早に進んでいく。  何か隠したいものでもあるんだろうか。  こいつは平気かもしれんが、俺は足元が気になって仕方ない。  部屋の端までつくと、優衣は布団を捲ってぽんぽんと叩いた。  ここがベッドですと言うように。  そしてパジャマの裾を握ったままベッドへ登り、ぐいぐいと引かれ  るままに後追いでベッドに乗った。  ベッドには大量の枕があり、いくら寝返りを打っても大丈夫そうな  環境だ。  適当な位置に頭を下ろすと、ぼふっと枕が潰れて空気が洩れた。  その空気を嗅いだとき、俺は部屋の雰囲気を強烈に覚えることにな  る。 【兄】 「……これは」  心臓がどくどくと跳ねる。  なんだこの香り。  よくよく鼻を利かせてみれば、部屋中から匂ってくるじゃないか。 【優衣】 「どう? 枕の高さは合ってる?」  能天気なことを訊いてくる。 【兄】 「……まあ、大丈夫だ」  適当に答えた。  高さなど考えてられない、この匂いをどうにかしたい。  優衣は『人間の鼻は匂いになれて無臭と錯覚するようになる』と言  っていた。  ならば早くその段階になってくれ。股間に響く。  ――まさか、媚薬!?  なわけないわな。 【優衣】 「ん……。どうしたの?」 【兄】 「……なにがだ」 【優衣】 「そわそわしてる」  目敏い。 【優衣】 「……緊張してる?」  一瞬微笑んだかと思うと、そんなことを訊いてくる。 【兄】 「……そんなはずがあるまい」 【優衣】 「んふふー……そっか」  あまり深くは聞かまい、ってスタンスだ。  有り難い。 【優衣】 「兄さんが私の部屋にきたのって、いつぶりかしら」  話題を振ってくれる。  気を紛らわすのには丁度いい。えっと……いつぶりいつぶり……。 【兄】 「中…………小までは遡らないか」 【優衣】 「あー、そのくらいかあ。中学のころって言われると、  もう何年も前……ふふっ、遠い昔みたいに聞こえる」 【兄】 「そんなに昔じゃないだろう」 【優衣】 「学校生活という意味ではそんなに昔じゃないわ。  ……でも、兄さんとの思い出って意味では、すっごく遠い」 【優衣】 「っていうか、憶えてないってだけね。  毎日、些細なことから大きなことまで色々あったから」 【兄】 「そういうもんか」 【優衣】 「そういうもんよ」 【優衣】 「子供のころの話なんて、あまり憶えていないものでしょう?」 【兄】 「現時点で子供だ」 【優衣】 「私を子供扱いすなっ」  胸を突かれる。 【優衣】 「……もう結婚だってできるし、子供だって産めるんだから」  な、生々しいことを。 【優衣】 「私が子供だっていうなら、兄さんも子供ねー。二十歳超えた子供。  うわー、恥ずかしいー」 【兄】 「俺は社会的観点から見ても大人だ。お前には敵うまい」 【優衣】 「……ふん、よく言うわ」 【優衣】 「私に甘えてるくせに」 【兄】 「……甘えて……ないデスよ?」  甘えてない……よな。  自立してるし。  それとも、優衣と俺で『甘える』という概念についての齟齬でもあ  るのか。  うむ、そうとしか考えれんな。 【優衣】 「兄さんさ」 【優衣】 「ずっと、私の部屋に入るの敬遠してるみたいだけど、どうして?」 【兄】 「あー、気付いてた?」 【優衣】 「気付いてるわよ。私に用事があっても、絶対に部屋には来ないじゃ  ない」 【優衣】 「リビングのソファに座ってたのに、私が下りてきたら用件を言うな  りさっさと上がってくんだもの。バレバレよ」 【兄】 「……」  洞察力が鋭すぎる。 【優衣】 「ねえ、どうして? なにか嫌な思いでもさせた?」 【兄】 「あ、いや……そうじゃない」 【優衣】 「違うなら、なに」 【兄】 「……」 【兄】 「雰囲気が、な」 【優衣】 「雰囲気? 部屋の雰囲気?」 【兄】 「そう、それが……な」 【兄】 「あるときから、もう子供のそれじゃなくなっててさ」 【優衣】 「……よくわからない」 【兄】 「だから、あー」  流石に全部は読み取れないか。  直接的に言うしかない。 【兄】 「お前が成長して、もうガキじゃなくなったって思った境に、部屋そ  のものも子供じゃなく、女性の部屋って感じがしてな」 【兄】 「入りづらかった」 【優衣】 「え……」  大きな目を見開いた。 【優衣】 「な、なによ、それ」 【優衣】 「私のことを子供と見れなくなったから、女性の部屋に入るのを躊躇  ったって……」 【優衣】 「それって、兄さんは、心の奥では私のこと子供なんて思ってないっ  てことじゃない……」 【兄】 「あー、まあ、そうっすね」 【優衣】 「なんでそんなくだらない嘘ついたのよー……」 【兄】 「出来心?」  呆れた目で見られた。 【優衣】 「……まあ、本当に子供って思ってたらあんなことしないわよね。  ロリコンってことになっちゃうし……」 【優衣】 「まあ、わざわざそんなこと言われなくても、なんとなくはわかって  たけど……でも、……そっか」 【優衣】 「私のこと、女性だって思ってくれてたんだ……」 【兄】 「そりゃそうだろう。男なんて思っちゃいない」 【優衣】 「そういうことを言ってるんじゃないのっ。当たり前でしょ、男じゃ  なくて女と思ってるなんてのはっ。そうじゃなくてっ……」 【優衣】 「……もういい。たぶん、兄さんにはわからないと思うから」  顔半分を枕に埋めてしまった。  俺にはわからない、優衣なりの事情があるのだろう。  知りたいような気もしたが、どうせわからないと突き放されては仕  方ない。 【優衣】 「……私が女性らしくなったからって、どうして部屋に入ろうとしな  かったの?」 【兄】 「あー……」  どうしてだろうか。  子供なら大丈夫で、女性なら駄目。  どういう理由かって言われても、感覚的な部分だから説明し辛い。  言いあぐねていると、優衣が口を切る。 【優衣】 「フェロモンを感じるから……?」 【兄】 「は」 【優衣】 「むらむら……するから?」 【兄】 「な、なにを仰るのかな」 【優衣】 「……むらむら、してるの?」 【兄】 「……してないです」 【優衣】 「ふうん……してないの?」  念を押すように訊かれる。  黙ることにした。 【優衣】 「……」 【優衣】 「確かめちゃおっかなー……」  息が掛かるほどの耳元で囁かれる。  ズキンとした甘い痛み。  やばい、普通に勃った。  思い出したように鼻腔をくすぐる甘い香り。  体内に入り込んで思考を鈍らせ、逸物をさらに肥大化させる。  びくびくと震えるたびに布に擦れて、甘い痺れをまとわせる。  優衣はさらに近づき腕に抱き付くと、すぅぅ……息を吸って、 【優衣】 「ふーっ」 【兄】 「っッ」 【優衣】 「くす、びくってしたー」  遊んでやがる。 【兄】 「ガキか」 【優衣】 「んー……んふふ」 【兄】 「……何が楽しいんだか」 【優衣】 「ん~ぅ? 別に楽しくないわー。……くすくす」 【兄】 「笑ってるのに?」 【優衣】 「そうよ。ぜんっぜん楽しくないわー」 【兄】 「あっそ」  触れてもいないのに酷く勃起したものに気付かれるという無様なマ  ネはごめんだ。  確かめられないために、優衣には興味などないようにあしらう。 【優衣】 「……」  唸りながらもぞもぞとしている。 【優衣】 「そりゃ、くすぐり攻撃~っ」 【兄】 「ちょ、な、なに、なになに」  腕を極められて抵抗しようにもできない。  というか胸! 胸の感触やばいっす! 【優衣】 「ん~~? なんでもないわよ~~? そりゃそりゃ、うりゃ~あ」 【兄】 「聞けっ、聞けっ、でかい声でたらどうすんだお前っ……!」 【優衣】 「ん~、ん~? くすくすっ、兄さんは脇腹が弱いのかしら~?  こしょこしょ~っ、こしょこしょこしょ~っ」 【兄】 「どっせい!」 【優衣】 「うぁ。あらら、両手奪われちゃった」 【兄】 「……今日は一段と悪い子みたいだな」 【優衣】 「えー? くすっ、悪い子なら……どうなの?  …………お仕置きしちゃう?」 【兄】 「そんな歳じゃないだろ、馬鹿」 【優衣】 「くす、ふふふっ」  何がおかしいのか優衣は笑った。 【優衣】 「……どうしたの?」 【兄】 「なにが」 【優衣】 「じっと人の顔見てる」 【兄】 「向き合ってるだけだろ」 【優衣】 「そう? ……それにしては、手を離してくれないわけだけど」  返事に窮す。 【優衣】 「……なにか、私に……言いたいことでもあるのかしら?」 【兄】 「……言わなくてもわかるだろ」 【優衣】 「ううん、私はなーんにもわからない。  ……兄さんが、ずぅーっと……私の唇を見てること以外は」  調子に乗ってるな。  確かに、この微妙な関係は常に優衣が上位に立っている。  日常生活と同じで、俺をからかって手駒に取るのを楽しんでいる。  今さら過ぎて、それに対して腹を立てるってことはない。 【優衣】 「……ん? ……どうしたの、兄さん」 【優衣】 「言ってくれなきゃ、したくてもできない……」 【優衣】 「兄さん……? 私に……なにをしてほしいの?  私と……なにをしたいの?」 【優衣】 「ほら、言って?」 【兄】 「……口で」 【優衣】 「んー? 口で?」 【兄】 「口でしてくれ」 【優衣】 「…………くすっ。はーい、わかった」 【優衣】 「じゃあ……パジャマ脱いで?」 ◆9.1 「連続射精」  上を向いたペニスに引っ張られてパジャマのゴム紐が音を立てる。 【優衣】 「ぅあ」  その音にびっくりしたように声を洩らすと、笑った。 【優衣】 「もう大きくさせてたんだぁ?」 【兄】 「うるさいよ」 【優衣】 「やっぱりむらむらしてたのねー……。  兄さんってば、わかりやすいんだから」  もぞもぞと体勢を整えて、そっと逸物を握る。 【優衣】 「……カチカチ」  はふっと息を吐いて、顔を寄せる。 【優衣】 「……すんすん。ん……やっぱり、あまり匂いがしない。  ……どうやってあんな匂いになるのかしら……すん、すん」 【兄】 「っ……はぁ」  微妙に力加減が変わり、じんわりとした疼きが逸物を跳ねさせる。  焦らされてる気分になって息が荒れてきた。 【優衣】 「……早くしてほしい?」 【兄】 「まあ……」 【優衣】 「じゃあ、おクチに咥えてーってお願いしてみて?」  また面倒なことを言い出した。 【優衣】 「そうしたら……ぱくって咥えてあげるー……♪」 【兄】 「……」  じっと目を見てくる。  少しでも腰を突き出せば唇に触れる距離。  俺の気を急かすように、温かい息を亀頭に浴びせ続ける。  熱に浮かされた気分になって、声を絞り出す。 【兄】 「……口に、咥えて……くれ」 【優衣】 「……ふふっ」  ほうっと亀頭へ息をはいたかと思うと、微笑んだ。 【優衣】 「しょうがないわねぇ……。ふ、ぅ……すぅぅ……は、ぁぁ……ぁ」  わざと見せるようにして口を開く。  そして、先端に熱っぽい唇の柔らかさを覚える。 【優衣】 「ちゅ……ん、……ちゅっ、ちゅっ……ちゅ……」 【兄】 「ぁっ」 【優衣】 「ちゅ、ちゅ……ん、……んぅ~? どうひたのー、にぃひゃーん?」  優衣の口淫への悦びに震える亀頭へ慈しむようにキスを続ける。 【優衣】 「ちゅ……ちゅ、ちう……んふふー、……ちゅ、ちゅぴ……ちゅ……  ん…………ぁぅむ。……ん……ちゅるっるるる……」  亀頭を唇に咥えられると、奥から待ち構えていたように舌が出迎え  てくれる。  充分に準備をしていたのだろう、舌は唾液に塗れてねっとりと絡ん  でくる。 【優衣】 「ん、ちゅぅ……ちゅぴ……、ちゅ……ンぇる、れぇろる……、  ンろるろぉ……ちゅ、ちゅぷ……ちゅ、っ……ん……ん……」 【優衣】 「ちゅっ、ちゅぅ……あぅむ……ちゅぅ……ちゅ、ちゅ……はむ、  あむ……ちゅる……ちゅぴ……ン、ぷちゅ、ぷちゅっ……ちゅ……」 【優衣】 「ん、フ……んふふっ、きもひぃ? んもぉ……そんなうっとりひた  顔ひへ……いもうとの唇が好き? んふ、ちゅる……ん、フ……」 【兄】 「っ、……ぅ、は……っ」 【優衣】 「ちゅ、ちゅぅ……っ、ん、はぁむ……っ、ちゅ、ぷ……ん……  ぷちゅ、ぷちゅっ……ちゅる……ん……ンぇる……れろぉ……」 【優衣】 「ちゅ、んふ……、んん……隠そぉとひへも駄目ぇっ。にいはんの気  持ちくらい、顔を見なくても……チンポの反応を見ればわかるもの」 【優衣】 「素直なチンポぉ……ちゅ、むんン……ぷちゅっ、ちゅぷ……んふ、  にぃふぁあの、ンちゅぅ……ちん、ぷぉ……むんン……」  恥ずかしげもなく淫語を使い、大胆に唇を被せてくる。 【優衣】 「んんむぅ……ちゅぅ、ちゅる……ンぇる……れろぉ……ちゅ、  ちゅぴ……ちゅぷ……ん、っ……ちゅ、ぷぁむ……んはぁ、ぁむ」 【優衣】 「ちゅ、ぴ……ちゅ、ちゅぅ……ん……ん、ちゅ……ちう、ちう……  ちゅ、ちゅっ……ちゅぅぅ、ぅむ……ン……ちゅぅ……」  亀頭ばかりを重点的に責められ、自然と腰が持ち上がってくる。  唇を押された優衣が、優しい目をして微笑む。 【優衣】 「んフ、ふ……ふふっ……しょんなにこひを突きだはなくても……。  ……わかってる、もぉ……」  根元を握って先端を位置を調整すると、顎を引いて顔の角度を変え  た。  期待感にひくひくと動く逸物を見て、上目遣いで俺の顔を窺う。 【優衣】 「……ビクビクさせないでよ?  ……奥まで咥えてあげるから、大人しくさせてて……」 【兄】 「……努力する」  肛門の奥辺りに意識を向けて、あらゆる刺激に対して寡少の反応に  なるように努める。  でもこれをやると、堪えられる量の快感を超えたら堰を切って動き  出すんだよな。  まあ……そのときは優衣に素直に怒られよう。 【優衣】 「……ん、はぁ……。  っ、あ……ぁぁ……、ぁ……ンむぅ……んっ」 【兄】 「っ……く」  よし、堪えたぞ。  大丈夫、ちょっと腰を跳ねさせただけだ。 【優衣】 「ん、グっ……ご、……ん……フー……フー……っ、ッ」  ……睨まれた。  頭を撫でてご機嫌を取る。  恨めしそうな目を閉じたので、ほっと一安心。 【優衣】 「ん、んん……っ、ん…………ん、んぇる……ん……れるん……。  っん……んフ……フー……ちゅ、ちゅるっ、ちゅるる……」  鼻から声を洩らしながら腔内で亀頭全体を舐め回される。  敏感な部分を丹念にしゃぶられ、またしても腰が跳ねそうになるが  堪える。 【兄】 「っ、く……ぁ、はっ!」  代償に声が大きく漏れた。 【優衣】 「ちゅぷ、ちゅ……んもぁ……ぅむん……ん、んっ……  ん、ちゅぅぅ……ちゅ、ぷ……ン、ぷちゅ……ぷちゅっ、ちゅっ」 【優衣】 「ちゅもっ、む……ちゅ、ぷ……ちゅる、ちゅぅぅ……っ、んむぉぁ  ……ぁ、むん……もごもご……じゅ、ぐちゅ……ぢゅる、る……」 【優衣】 「んちゅ、むン……むぉぁ……。にぃはんは……んむぉ、ン……くぼ  みが、きもひぃーん……ちゅ、っ……らったわよね……?」 【優衣】 「ん、じゃぁ……ぁぅむ……ちゅ、……くひびぅをふぼめへ……ン、  んんぶ、ん……んン……、ちぅぅぅっ」  赤く腫れた先端がみるみるうちに唇の奥に消えていく。 【優衣】 「ん、む……ぷ、ちゅ……くぷっ……ちゅる、ぷ……ちゅく、ぷ……  んじゅぷ……ちゅるっぷ……ちゅぷ……きゅぷっ……」  口腔の空気を抜いて腔内粘膜をまとわりつかせ、きゅっと閉じた唇  で幹をシゴかれる。  引き上げる際にカリ首にきゅっとされるのがたまらない。 【兄】 「あっ、それ、続けてっ」  思わずお願いをしてしまう。  あまりない俺からの懇願に気をよくしたのか、喉を鳴らして顔を上  下に動かし始めた。 【優衣】 「ん、んっ……♪ んん……ちゅぷ……くっぷ……ぐぷ、くぽっ……  クプ……ちゅ、チュプッ……ん……っ……っ……ん、ちゅ……」 【優衣】 「んクぽぁ、んぽっ、ちゅぽっ……ちゅぷっ、くぷっ……ん……ん、  ちゅ、ぷ……ぷちゅっ、……っ……ん、んフ♪ ん、んんっ……」 【優衣】 「ちゅ、ちゅるぷっ、ちゅ……ん……っ、ン……くぷっ、クポ……  じゅっ……じゅぷ、ぷっ……ぶちゅっ……ちゅぶっ……ン……」 【優衣】 「ちゅるっるるぅ……ン、っ……ぷちゅ、ン……んもぉ、  にいはんったら、ぜーはく……ぅんむぅ、ぷ……ぷちゅぅ……」 【優衣】 「んンゥ……ん……いもぉほのおくひれ、せーよくしょりをひへもら  ふなんへ……ん、ぷっ、くぷ、くぽっ……ちゅ、ぅぅ……」 【兄】 「は、く……っ! ぅ……っ、言うな……っ」 【優衣】 「んー……? んふふっ……ろうひへ? ほんとのことでしょ?  きもちよさほーな声も出ひへ……んふ、かわひぃ……」 【優衣】 「ちゅ、ぷちゅっ、ぷちゅんっ……フー……ふ、んふふ……。んむあ  ……、はぁ……ふふっ。そう……そんなに妹のおクチまんこが気に  いっはの?」 【兄】 「なっ……! ぅあ……っ」  お、おクチまんこ? 一体どこでそんな言葉を覚えたんだ? 【優衣】 「はぷぅ……ちゅぅ……ン、……んん~ぅ? ろうひはの?  にーぃはーぁぁぅむンぅ……れる、れろん……ぷちゅんっ♪」  優衣の艶やかな唇が竿をなぞり、妹のねっとりとした舌が赤く腫れ  た部分をねぶる。  優衣の口の中に逸物が入っている光景。  そして最後には、子供を孕ませるための子種を中へぶちまける……。  優衣の言う通り、それはさながらお口の女性器みたいなもの。  いま俺は、優衣のもう一つの女性器を犯しているのか……っ。 【優衣】 「ぷちゅ、ぶちゅっ……ン、くぷぅッ……ちゅ、ぽっ……ぐぶっ、  くぷっ……」 【優衣】 「ちゅ、ちゅぅぅ……っ、んっンぅ……っ♪ ……ちゅ、むぉぁ……。  ……はぁ、……はぁふ…………もぉ、おっきくさせすぎ……っ」 【優衣】 「こんなに反り返らせたら、おクチで咥えにくいれしょぉ……ぉぁ、  あぁむン……むぐ、あぐ……ん……ぎゅ、ぷ……ぷプ……ちゅっ」 【兄】 「ぁっ! あぁっ!」  腹部まで反り返りそうな逸物に向けて顎を引いて迎え入れてくれる。  前髪はさらりと腹を撫でて顔を沈めれば、前額が下腹部と合わさっ  た。 【優衣】 「ん、んん……ぶ、ッ……クププ……んも゛……ごっ……ン、ぷっ」 【兄】 「っ……そこっまで……!」 【優衣】 「フー……フー……ふ、んン、ん……ちゅる……ちゅるるろるるぅ…  …っ」 【兄】 「ふっ……クッ、はぁぁぁ……っ」  ゆっくりじっくりと引き抜かれ、溜息のような声が漏れてしまう。 【優衣】 「ん、フ……フぅ……。ん……ちゅるっ、ちゅっぷ……ぷちゅっ、  くぷっ……くぽ、くぷっ……ンんっ……ちゅ、ぷ……くぷぅッ……」  頭が上下に動き、亀頭を腔内粘膜で扱いていく。  中へ飲み込めば厚ぼったい舌が迎え入れ、引き抜けば逃がさまいと  腔内全体が締め付けてくる。 【優衣】 「んちゅ、ちゅくぽぁっ……ンむぅ……ちゅ、れる……ちゅ、れろ  ……える……ちゅ、んンぅ……しゅごぉ……」 【優衣】 「おくひまんこのなはれ、ンちゅるるぅぅ……っ、ン……  ……びゅく、びくっへ、うごいへ……んふっ♪ ちゅぅぅ……っ」 【優衣】 「ちゅ、むン……っ、……らひはぃ?  いもーほのおくちのナカれ……ぴゅぅっ♪ ぴゅぅーっ♪ って」 【優衣】 「んフ、ぅ……ちゅぽ、ぷちゅっ、ン……ん、っ……ぷちゅ、くぷっ  ……んンぅ♪ っ、んふ、……いいはよー?」 【優衣】 「いもぉとのおくひまんこに……にぃふぁあの白いあかひゃん、  そほいで……? ん、ンん……む、ぉぁ……ご、ぅ……んン……っ」  狭く熱い喉頭へ向かい入れられて、喉でぎゅうぎゅうと吸い付かれ  る。  何日もしているお陰で優衣のフェラの技術は目に見えて上達していた。  俺はすでに、まるで性に出会ったばかりの子供のように優衣の業の  虜だ。 【優衣】 「じゅぷ、ぢゅぷっ……ちゅぷ、ぷちゅっ、ぶちゅっ……んぷ、ンむ、  ん……ちゅる、ちゅぅぅ……っ、ちゅるぷっちゅるるるっ……っ」  胴震いをして、だらしなく口を開いて声を漏らしながら精をも洩ら  す。 【兄】 「ぅ――ああっっ!!」  ビュルッ!! ビューッ!! びゅるるっ、びゅくっ!! 【優衣】 「――っ、んーぅ♪ れはっ♪ ぴゅっ♪ ぴゅぅーっ♪  ぅん、グ……っ、……っ、ごくっ、ゴクッ……っ❤  んっん、フ……んん――っ❤ んん……っ」  腰を突きあげながら喉奥へ自分勝手に射精をしても、声を荒げるこ  とはない。  喉を鳴らして歓喜を表現しながら、ぎゅっぎゅっと喉を上下して精  液を下していく。 【優衣】 「んフ……っ、ん……♪ ん……ふ、……フー……フー……フゥー、  ……フ、んんっ……」  陰茎で口に栓をされている優衣は鼻で呼吸を整えると、舌を揺らし  ながら吸引してペニスを引き抜いていく。 【優衣】 「じゅる、ずずずッ……ぢゅッ……ん、んフ……ぅ……ごく……ん」 【優衣】 「ちぅ……ン、くぷぅッ……っ、フーッ……フー……  ちゅ、ぅ……っ…………ちゅぽっあ♪」  熱い吐息と共に逸物が腔内から解放された。  優衣の体温を宿した陰茎は、むわっとした空気がこちらまで匂いそ  うなほど温められていた。 【優衣】 「へる、ちゅるぅ……ん……ちゅっ、ちゅっ……ちゅ……ん……」  残骸の浮く鈴口に優しく口づけをしてくれる。 【優衣】 「ちゅ、ちゅ……。ん……ふ、ぅ…………はぁ……はぁ……」  静かに息を吐きながら根元を握る手をくいくいと動かし、こちらを  上目遣いで見てくる。 【優衣】 「毎晩毎晩、こんなにたくさん出して……」 【優衣】 「……妹のお口を孕ませる気?」  そう言って、先端に軽く口づけをする。  何気ない仕草一つが性的魅力に感じられてならない。 【優衣】 「嬉しそうにビクビクさせちゃって……『そうだー』って言ってるみ  たい」 【優衣】 「……くす、まあそうね」 【優衣】 「おクチまんこなら……いくら濃厚な精液を注ぎ込んでも赤ちゃんは  できないものね」 【優衣】 「兄さんは安心して、ただただ妹のお口の気持ちよさに浸っていられ  る」 【優衣】 「ふふん、……手でしてあげてたときは毎日なんてしなかったのに…  …お口でしてもらうようになってからは、毎晩になっちゃったわね」 【優衣】 「そんなに妹のお口が気持ちいい? 毎晩、恥ずかしげもなく頼んじ  ゃうくらい……虜になっちゃった?」 【兄】 「……そういうんじゃ」 【優衣】 「ふぅん……こういうときでもそうやって否定するの。  おちんちんはこんなに正直なのにねー?」  軽く上下にシゴかれる。 【兄】 「く、ぅっ……」 【優衣】 「おちんちんは兄さんの気持ちを代弁してくれてるのよねー?  くすくすっ。……さあ、おちんちんはどうしてほしいのかしら~?」  優衣は俺の顔を見ず、ペニスに話しかけている。  だか、応えるのは俺だ。  優衣もそれをわかっている。  声で答えるのが恥ずかしいなら、こっちで返事をくれ、と。  俺の性をよく知っている優衣だからこそできることだ。  こんなに気が休まるような性処理のやり取り……止められるわけが  ない。 【優衣】 「うんー? ……ふんふん。…………へえ」  怒張をビクビクと跳ねさせ、腰を浮かせて唇に押し付けるようにす  ると、優衣は察したようにニコリと笑う。 【優衣】 「……妹のおクチまんこが孕むまで続けてほしいんだ」 【兄】 「っ……」 【優衣】 「……もう。しょうがないわねー」  素肌を晒した太ももをさすってくる。 【優衣】 「ほら、してあげるから。  ……腰浮かせたままじゃ、咥えてあげられないじゃない」 【兄】 「……わかった」 【優衣】 「くすっ。……兄さんらしい、可愛い意思表示だこと」 【優衣】 「……ほら、妹のおクチに甘えましょうねー…………ぁ、ぁぅむ……」  甘やかすように唇の内側で亀頭をねぶり、優しくちゅっと吸われる。 【優衣】 「ん、んん……♪ ンちゅぅ……ちゅぅ……ちゅ、ちゅっ……ちゅぴ、  んふひ、出ひたばかりだからぁ、やさーしく……ちゅぅ、ん……」 【優衣】 「ちゅっ、ちゅッ……んふ、敏感さんになっちゃってるものねー……。  甘やかしてあげるから……私のおクチをたっぷり味わって……♪」  射精後のペニスを労わるような甘い口づけ。  亀頭に付着した唾液を求めて、時折ちゅっと吸われるのが堪らない  刺激になって体に走る。 【優衣】 「ちゅ、ちゅ……ぁ……、はふ……ふ……んん……ちゅ、ちゅぅ……  ちゅ、ちゅぅ……ちうちう……ん、ちゅ……ちゅぅ……」 【優衣】 「ちゅぅ……ちゅ、ちゅぅ……ん……んふっ。  んふぁ……はふ……♪ ふふっ……ん~……ちゅ、ちゅぅ……」  まるで陰茎への子守唄のようなキスの音。  まどろむようにビクビクと脈動し、永遠に引き延ばされた淫楽の中  に浸っていく。 【優衣】 「ちゅ、ぁ……ちゅ、ちゅっ……♪ んん……ちゅ、ちゅぅ……、  ちゅ、ちうぅぅ……ん、んんんちゅぅぅ……っ、ん、ふ……」 【優衣】 「ちゅぅ……ちゅう……ちうちう……ちゅっ、ん……ちゅ、ちゅッ…  ………ん……はぅむ、ちゅ……ちゅぅぅ……んフ、ふふっ」  口づけの中で、唇の内側でも亀頭をねぶられる。  舌は決して使ってこない。  少ない唾液で行われる口づけは、控え目な水音を室内に響かせる。 【優衣】 「ちゅ、ちゅぅ……はぅみゅ、ちゅぅ……んちゅぁ……んへへ、ふ…  …ちゅ、ちゅぅ……ん、んー♪ ちゅっ、ちゅっ、ちゅッ♪」 【優衣】 「んふふっ……お利口さんねー。甘えて甘えてーって、控え目にピク  ピクしてる。……可愛いおちんちん」  うわー、駄目だ、頭がとろけそう。  骨の髄まで甘やかされちゃ、何も言い返すことができない。  深く息を吸う。  いつまで経っても部屋の甘い匂いは消えない。  おかしいな、優衣曰く、人間は匂いに慣れるはずなのに……。  この匂いを堪能している限り、怒張は収まりそうもない。  なにか香でも焚いてるのか……? 【優衣】 「くすくす……。……はふぅー…………ぁっ♪  おちんちんのお口から涎が垂れてきたっ」 【優衣】 「んふふっ、甘やかされて眠たくなったのかしら?  こんなにだらしなく、たらーってお漏らししちゃうなんて……❤」  優衣の声が嬉しそうに上擦る度、俺もなんだか幸せな気分になって  いく。 【優衣】 「もー、世話が焼けるわねー。  ……私が、ぜーんぶ吸い取ってあげる。……はぅむ、ちゅ、ちゅぅ」 【兄】 「う、あ」  尿道口が優衣の口の中に消えた。 【優衣】 「ちゅ、ちゅぅ……ちゅ、ん……んっ……ん……ちゅう、ちゅっちゅ、  ん……トロトロしてう……ちゅぅ、んフ……おいひ……♪」  先走りを腔内へ向かい入れると、喉を上下させて飲み込んだ。  尿道の奥からどんどん吸われていく。 【優衣】 「ちゅ、ん……ちゅぅ、ちゅ……ちゅぅっ……ん……おくはらどんど  んれてくる……ちゅぅっ……ん、ちゅ、ちゅぴ……ちゅ……」 【優衣】 「ん、ふ……ちゅ、ん……ちゅっ、ちゅぅ……ん、ちゅ……。  ちゅ、ちゅっ、ちゅ……ん、ん……ん、ちゅぅん、ん……」 【優衣】 「んん……もぉ、出ひすぎっ♪ どれだけ食べさせれば気が済むの?  ん、ちゅっちゅぅ……おちんちんのお口がふやけちゃうわよ……?」 【兄】 「だって、勝手に出るから……」 【優衣】 「ちゅぅ、ん……甘えてくれてる証拠だもの。可愛いおちんちんの、  健気な意思表示……くすっ。そういうことだもんねー?」 【優衣】 「でも、これって……私のお口に甘えて気持ちよくなりたいー、甘え  ながら……お口にぴゅっぴゅって出したいーってことなのよね?」 【優衣】 「……そろそろ、キスだけじゃ……やだ? 先っぽちゅるちゅる吸っ  て、可愛い声漏らしながらびゅくびゅくって射精したい?」 【優衣】 「……したい、わよね? 兄さん……?」 【優衣】 「兄さん……」  甘えた声で何度も呼ばれる。  ベッドの中でしか聞けない優衣の猫撫で声。  発情した優衣の声だ。  返事を期待しているが、答えなくてもいい。  発情した優衣はきっと、俺がお願いしなくても我慢できずに自ら―  ― 【優衣】 「はぁぅむぅ」 【兄】 「やっぱ、りっ……」 【優衣】 「む、ちゅ、ちゅぴ……ん、はむ、ぁぁむ……ちゅぅぅ、ん……。  ひたをふかっへあげぅね……? ぅん、んぇる、れりゅ、ちゅるっ  ……ぇえろれろえろぉ……」 【兄】 「っ、あっ……!」  先ほどぶりに味わう優衣の舌。  待ってましたとばかりに震える逸物に俺は声を漏らして応えた。  比較的大きく出た声を恥じても遅い。  声を出しながら奉仕される気持ちよさは、もう身に染みて実感して  いるんだ。 【優衣】 「れりゅ、ちゅるぷっ、ちゅぅっ……んんりゅぅ……ぷちゅ、ちゅっ、  んにゅ……ぷちゅぅぅ……ちゅぅっ……ン、ふ……抗わないで……  素直にわたしの唇と舌の柔らかさに甘えて……?  にぃさ……ぁむン、んふ……ちゅるるるぅ……」 【優衣】 「ちゅ、れるれろ……ちゅるぅ……っ、ん……はぷっ、ン……。  ぁぐ、あぐ……もごもご……ん、っ……ぉ、ぁっむ……ンぐ、む」 【兄】 「ぁ、っ……は……っ」  ズププと奥まで消えていく。  先端には喉頭の柔らかさを感じ、優しく締め付けられる。 【優衣】 「ん゛、んッふ……フーッ……フー……フー……ぅ、フー……ふぅー」  息を整え、ゆっくりと頭が動き始める。 【優衣】 「っ、ちゅ、ぷ……ちゅっぷ、ぷちゅ……ちゅ、クプッ……くぷっ、  くぽっ……っ、ん……ふ……っ、くちゅ……っ、ぷっ……プっ……」 【優衣】 「ちゅぷっ、ぷ……ププ……ぷっ、ちゅ……ん、フー……。  ふ、んちゅ……ちゅ、ぷ……っ、っ、ん、ごぁ、ぁぉ、ぅンん……」  優衣がえずくように声を出すと肉棹に触れた喉壁が震える。  優衣の口を奥まで犯しているのだと実感させられて、息を呑んだ。 【優衣】 「ん、ちゅ、ぷちゅっ……くちゅぅ……くぷ、くぷッ……くぽっ……。  っ、ん……フ……ふっ、っ……んぷ、くぽっ……ぎゅぽっ……」 【優衣】 「くぷ、っ、っ……ンちゅぅ……ちゅ、ぷちゅ……ぷちゅんっ。  ……クプ、プッ、ぷ……っ、っ……ぷっ……くぷっ……んっ……」 【優衣】 「ちゅるろぉ、ぉぁむン……んン、んんん~~ぷぷぷ……っ。  プっ……ちゅぷっ、ちゅ、……ちゅる、るるっるるぅ……んフ、  ふ、……フーっ……ん、ちゅぽっ、くぷっ……くぽっ……」  部屋には吸い上げる音と優衣の漏らす『んっ……んっ』という声が  響く。  頬肉で肉棹を圧迫して顔を上下し、ぬめりを持った温かい舌が先端  をねろねろとねぶってくる。  決して激しさはない。  単調そうな見た目に反して、逸物への刺激は甘美そのものだ。  腰回りにじんわりと広がっていた疼きが一気に陰茎に集中してきた。  一度出していることもあって余裕を持っていたつもりだが、イきそ  うなるのは唐突だ。 【兄】 「っ、はぁっ……ふ、っぁ……はぁぁぁ……っ」  間延びした息に優衣が気付く。 【優衣】 「ぐぷっ、ぐぽっ……っ、ん……ぷちゅ、ぷちゅっ……ん、んぅ?  んふふー♪ んん~ぅ、ちゅるるるぅ……ちゅぷっ、ちゅぅっ……」 【優衣】 「ちゅぷっ、くぷっ……くぽっ、ぎゅぽっ……ぐプっ、ちゅ、ぷ、ん?  ん、ん……ちうちう……んふっ❤ もうムリ? イふ? ちゅるむぅ  ……ちゅ、んフ……うれひ……❤ あむん、ちゅ、ぷっ……んっ」 【兄】 「そのままっ、口でピストンしてっ……」 【優衣】 「ちゅるるるぅ……ん、っ……いいはよ、ちょぅらい? 我慢ひない  れ……へぇる、ちゅ、ぷっ……にぃひゃんのあかちゃんミルふ……  ちゅぷ、ぁ、フ……ふぅ……くすっ♪  ……妹のおクチまんこに、……出して?」  引き下がれないラインは突破している。  もう、最大限の快感を求めて射精まで向かうしかない。 【兄】 「あっ、ああ……出す、だすっぞ……! い、く……っ」 【優衣】 「ぁっ、はぅンむ……ちゅるぷっ……ちゅる、ちゅぶっ……ぷちゅっ  ……ぷちゅ……くぷ、ぐぷ……くぽっ、きゅぽっ、っ……ん、っ…  …っ……っ……ン、ん……ぅ、ちゅ、……ちゅるっ、ちゅるる、  ちゅっ……ちゅぅぅぅぅ…………ん~~~、んんっ❤」  腔内で優しく、そしてキツく締め付けられながらのピストンに堪ら  ず声を上げて射精の予兆に身を委ねた。 【兄】 「あっ――!!!」  びゅっ、びゅるる!! ビューッ!! びゅくくっ!! 【優衣】 「んっ♪ ぴゅっ❤ ぴゅっ❤ ……ぴゅッ❤  ん、ゴクッ……❤ んぅ、ちゅるるるぅ……っ、ごく、ゴクッ……❤  ッ、ん……んフ、ぅ……ふー、ん、ちゅるっ……じゅるるっる……」  優衣の腔内の温かさに甘えながら射精を行う。  二発目ということを忘れるくらい体の芯から快感の渦が巻いていた。  優衣はぶちまけられる精液を直接飲み干していく。  跳ねる腰に喉奥を突きあげられても拒むことはせず、咽頭を絞って  いく。 【優衣】 「ん、ん……フ、ん……ちゅ、ちゅぅぅ……っ。ちう、じゅるぅ……、  ちゅっちゅ、ぅ……ンちゅぅ、んっ、おいひ……❤ ちゅ、ちゅぅ  ……じゅ、ずずずっ……ん、ゴクッ……ゴクッ❤」 【優衣】 「ちゅ、ちゅっ……んぅ、ちゅぅ、ちゅ、ン……ちゅっちゅぅ……。  ちゅるるっる……ちゅ、ちゅぅッ……ん、ちゅぶっ! っ、あふ♪」  逸物は音を立てて唇から解放された。  優衣の唇を味わって二度射精したにも関わらず未だ硬度を保った陰  茎を潤んだ目で見つめ、優衣は荒い息をついく。 【優衣】 「っ、はぁ……はぁ……は、ぁ……はふ、ふぅ……ん……んへ、へへ。  すっごい勢い……二回目なのに、喉の奥にどぴゅどぴゅってかけて  きたぁ……くすくすっ」 【優衣】 「腰を押し込みながら、可愛い声を漏らしながら射精して……ふふっ。  妹のお口に甘えるのがそんなに気持ちよかったの?」 【兄】 「あぁ……最高だった……」 【優衣】 「ん~? ふふっ、やけに素直ね。……おちんちんを甘やしてあげる  と、兄さん自身も私に甘えてくれるようになるのかしら」 【兄】 「あー……えー……どうだろ。そうなんかな……」  ふわふわとした夢心地で、地に足つかない感覚。  あまり余計なことを考えずに、思ったことを素直に口に出してしま  うようだ。  甘やかされた原因か、それともこの部屋の空気のせいか。 【優衣】 「……まだ元気ね」  つんつんとされる。 【優衣】 「でも、もう充分に性欲の処理は行ったものね。  今日はこれで打ち止めー……ってことにしましょうか」 【優衣】 「これ以上続けると、兄さんが本当に一切声を我慢できなくなりそう  だし。下に聞こえちゃうものね」  それは……ある。  これ以上この雰囲気で続けられたら、何も考えずに快楽の声を上げ  てしまいそうだ。  別に無理に続ける理由はない。  また明日があるのだから。 【優衣】 「……お疲れ様」  最後に優しくキスをして、手を放した。 ◆9.2 「その後……」  パジャマを整えた俺は、再び布団を被る。  隣に横になる優衣は楽しそうに話をする。 【優衣】 「どうだった? 気持ちよかった?」 【兄】 「……気持ちよかったから出したんですが」 【優衣】 「あら、もういつものぶっきらぼうな兄さんに戻っちゃった」  いつまでも醜態を晒す気はない。  もっとも、逸物が落ち着いて熱が冷めれば、気持ちも自然と落ち着  いてくるわけだが。 【優衣】 「なーんだ、つまんないわねー。  せっかく素直で従順な兄さんを見れたっていうのに」 【優衣】 「もうちょっと感謝の言葉を述べてもいいんじゃない?  私がいてあげるお陰で、恋人同士のようなことができてるのよ?」 【優衣】 「私がその気になれば、もう添い寝もしてあげないんだから」 【兄】 「……それは俺の要求じゃないよな」 【優衣】 「えー?」  おどけるような声を出して、もぞもぞと上体を近づけてくる。 【優衣】 「……くすっ、ウソツキ」 【優衣】 「添い寝だって、兄さんにとっては嬉しいくせに」 【兄】 「そんなこと言ったか?」 【優衣】 「恋人のような行為は、ぜーんぶ嬉しいんでしょ?  たとえ相手が妹であっても、肉体が女性なら……ね」 【優衣】 「してるのを見てあげるのだって、手でしてあげるのだって……口で  してあげるのだって。全部恋人のすることじゃない?」 【優衣】 「添い寝だって……普通は恋人同士でしかしないものでしょう?」 【兄】 「……兄妹ならするんじゃないか?」 【優衣】 「え。……あー……確かに、そうね。  兄妹なら添い寝くらいする……かしら」 【兄】 「ほらみろ。別に恋人ごっこの行為じゃない」 【優衣】 「んふふー♪ じゃあ、私が兄さんと添い寝しちゃいけない理由はな  いってことねー」 【兄】 「あ? 全然違う」 【優衣】 「違わないわー。自分で言ったことを否定しなーいのっ」 【兄】 「歳! 歳が問題なの」 【優衣】 「ごちゃごちゃ難癖付けないで。……もうしてあげないゾ?」 【兄】 「……ハイ」 【優衣】 「ん、よろしい」  ピロートークは終了とばかりに、腕に抱き付いてくる。  半ば習慣付いてしまったな。  前までの添い寝は、本当にただ隣で寝るだけだったのに。  こうして腕に抱き付かれては、兄妹の添い寝じゃなくて恋人同士の  添い寝っていうのを否定できない。 【優衣】 「……あまり、深く考えないほうがいいわ」 【兄】 「……何をだ」 【優衣】 「今の関係。私たちのしてること」 【兄】 「あー……」 【優衣】 「倫理観とか道徳観とか……前にも言ったけど、それは公に対しての  ものだから」 【優衣】 「内輪……、……二人だけの秘密ってことにすれば、なにも問題はな  いの」 【優衣】 「誰にも迷惑を掛けなければいいの。誰かに迷惑を掛けないための、  倫理や道徳なんだから」 【兄】 「……お前はさ」 【優衣】 「……」 【兄】 「お前は、どういう気持ちでしてくれてるんだ?」 【兄】 「お前は賢い。俺の妹とは思えないくらい、聡明で頭が回る」  それはどうも、と軽く流される。 【優衣】 「……私は」  しばしの間。 【優衣】 「私は……最初は好奇心からだったの」 【優衣】 「人間って、同じ種であるのに男女という違う肉体を持ってる。  それぞれに異なる特徴があって、異なる事情を持ってる」 【優衣】 「私にとって、その……男性の象徴っていうのは……未知なる部分だ  ったから」 【優衣】 「いくら授業で習っても、机上の空論のような気がして……ね」 【優衣】 「でも、体験してる友達は当たり前のようにいて……自分も将来的に  は経験するんだろうと思っても……絵空事のように思えて……」 【優衣】 「いつかは自分にも好きな人ができて、恋人ができて……否が応でも  真実を知る日が来るのだろうと思っていたけど……」 【優衣】 「やっぱり、あまりその未来を想像できなかったの」 【優衣】 「そんなのときに、兄さんが……私に、……反応しちゃったときに」 【優衣】 「すっごく遠い存在だったと思ってたものが、すっごく身近にあった  ことに気付いて」 【優衣】 「これは……チャンスかもしれない、って。  ……最初は、そういう好奇心からだった」  こいつは昔から興味を持ったことに対しては一直線だった。  小さいころは、その猪突猛進っぷりが勝り、自分自身を蔑ろにする  傾向もあったくらいだ。  その危なっかしさが故に、家の中では俺がずっと傍にいた。  優衣が大きくなって取捨選択ができるようになってからは、持ち前  の好奇心を振りかざしてどんどんと知恵を蓄えていった。  考えることを始めた優衣は、それはもう自慢の妹と呼べるものに成  長していた。  しかし、充分に成長した女の子になっても、優衣には異性の影が全  くなかった。  物の分別がつく前まで俺が付きっきりで面倒を見ていたせいかもし  れない。  あれがなければ、優衣は異性への興味に突っ走り、公園の裏にでも  男児を連れ込んでズボンをひん剥いていたかもしれなかった。  そう思うと、俺のしたことは悪いことではないとも思えるが、優衣  としてはどうだろう。  異性の体への興味は、幼いころにすでに失っているべきだったのか  もしれない。  そうすれば、大きく成長した今になって、異性への衝動的な好奇心  に駆られることもなかったろう。 【優衣】 「でも、いまは……」  考えをまとめようとしているのか、幾ばくか唸った。 【優衣】 「……いまは、好奇心…………だけじゃ、ない」 【兄】 「それは……つまり?」 【優衣】 「……よくわからない」  わからない、ときたか。 【優衣】 「わからないけど、兄さんの傍にいると安心する……というか。  ……私、兄さんの匂いが好きだから、たぶんそのせいだと思う」 【優衣】 「あと、兄さんの気持ちよさそうな……余裕がなくなった顔を見るの  が、実は好きで……。なんか、手玉を取った気になれるじゃない?  兄さんってば、何かと自分のほうが歳が上だからーって偉そうな態  度取ってるから……上位に立てる感じがあるし」 【優衣】 「代替彼女とか言って、独り身の兄さんのために彼女の代わりをして  あげようってしたのも……本当はちょっとした出来心、っていうか  ……。ちょっと私も楽しんでたから、罪悪感を覚えてるみたいな兄  さんの気持ちが和らげばいいなと思って、ね」 【優衣】 「あと、…………あぁ、説明しづらいっ。一番重要な理由があるんだ  けど……なんていうか……これがよくわからないって言った理由で  もあるんだけど」 【優衣】 「……してるとき、兄さんの顔を見てると……なんでかわからない、  なんでかはわからないんだけどっ! ……胸の奥がぐぐ~って痛む  の」 【優衣】 「痛いんだけど、なんかクセになる感覚……? で、痛くなるタイミ  ングがまだ分析し切れていないんだけど……、痛くなったら……す  ごく……うわぁ、もうよくわからないんだけどっ、……兄さんを抱  き締めたくなってっ」 【優衣】 「よくわからないのっ! よくわからないけど……兄さんとしてると  きに決まって起こるから、何かの病気? ってことはないと思う。  ……たぶん。……医者じゃないからよくわからないけれど」 【優衣】 「はぁぁ……もう全然わからない。何なのかしら、これ……。  今まで生きてきてこんな感覚を持ったことないし、みんなも『昨日  胸が痛くなってー』みたいな話はしてたことないし……」 【優衣】 「物理的に心臓が鷲掴みにされたみたいな感覚なのよね。あと、ちょ  っと泣きそうにもなる……。うぅ~……なにかの精神病かしら……」 【優衣】 「……兄さんならわかる?」  息継ぎ早に言い終えると、質問してきた。 【兄】 「えー……っと」  何て答えたものだろう。  まず知っているかどうか答えるべきだろう。  じゃあ『知っている』と答えた場合、どうなる?  優衣のことだ、教えるまで絶対に寝かせないはずだ。  だが、教えることは絶対的にできない。  絶対に。  となると、俺にできることは一つだけで。 【兄】 「……わからん」 【優衣】 「……そう。……もしかしたら、兄さんならわかるかもって思ったん  だけど……。やっぱり駄目、か」 【兄】 「……」  優衣は俺の表情や仕草から気持ちを読み取る。  絶対に顔には出してはならない。  声も出すべきじゃないだろう。  どこから俺の真意を読み取ろうとするかわからない。  下手すると、心拍から嘘かどうか見抜くこともしでかしそうだ。 【優衣】 「……病院に行ったほうがいいと思う?」 【兄】 「は、病院?」 【優衣】 「体の不調はやっぱりお医者さんでしょ。……それか、お母さんに一  度相談してみようかしら」 【兄】 「いやいや……」 【兄】 「第一、なんて相談するんだ?」 【優衣】 「え。……そりゃ、『胸が痛むんだけど』って」 【兄】 「どんなときに、って訊かれたら?」 【優衣】 「どんなときにって訊かれたら、……えぇと」  思案する。 【優衣】 「兄さんと……」 【兄】 「……言うのか」 【優衣】 「う、ぐ」 【兄】 「無理だろ?」 【優衣】 「……大丈夫、兄さんのことや、兄さんとしてることは隠して相談す  る」 【兄】 「まあ、それなら……」  いや、待て。  そこで母さんが馬鹿正直に『まあ! それはめでたいわ!』と答え  を教えてしまうかもしれん。  それだけは駄目だ。優衣が実の兄を……す、好……。 【兄】 「ぐあぁぁぁあ……」 【優衣】 「ど、どうしたの。いきなり悶えて」  考えるだけでおかしくなりそうだ。  なんでまた、俺なんかを……。  しかも、論理的に考えて好意を持ったわけじゃなく、心の奥底で勝  手に芽生えた恋心。  感情が先行するなんて、全くもって優衣らしくない。  だからこそ、優衣は戸惑っている。  頭よりも心が心身を占領していることに底知れぬ不安を覚えている  んだ。  もし自分の気持ちに気付いたら、こいつはどうするんだろうか。  見てみたくもあるが、叶わせてはならない願いだろう。  ホント……なんでよりによって俺なんだ……。 【兄】 「母さんに相談するのはやめとけ」 【優衣】 「……? お母さんに相談しちゃ駄目なの?」 【兄】 「母親とは総じて勘が良い」 【兄】 「お前の詐欺師としての素質を疑うわけじゃないが、わざわざ危険な  橋を渡る必要はない」 【優衣】 「う……。それもそうね」 【優衣】 「お母さんの勘の良さは末恐ろしいものがあるわ。  あれも一つの神秘ね」 【兄】 「それには同意する」 【兄】 「……実は、心当たりがないわけじゃない」 【優衣】 「えっ、心当たりがある……って、胸の痛みについて?」  頷く。 【兄】 「俺の友人に似たようなことを言ってたやつがいた」 【優衣】 「兄さんの友達に……。じゃ、じゃあっ、その人と会わせて!  詳しく聞きたいの!」  行動派過ぎる! 【兄】 「い、いや、待て。そいつは女性恐怖症でな」 【優衣】 「女性恐怖症……? そんな人、現実にいるのね……」 【兄】 「まあというわけで、俺が聞いてくるから」 【兄】 「違う学校に通ってるし、なかなか時間も取れないみたいだが……気  長に待っててくれ」 【優衣】 「うん、わかった。話を聞くのは兄さんに任せる」 【優衣】 「返事を貰ったらすぐに教えてよ?  夜も眠れないくらい困ってるんだから」  そんなに悩んでたのか。  初めての感情なら無理もないかもしれない。  感情を説明する言葉は知っていても、その感情とリンクすることが  できるかは人生経験次第だ。  優衣には、リンクさせるほどの知恵と経験がないんだろう。  有り難くも思えるし、可哀想だなとも思う。  優衣は視線をあらぬ方向に向けながら、ううむと唸っていた。 【優衣】 「女性恐怖症で、兄さんの友達……ってことは、  ……ゲイ仲間?」 【兄】 「返し言葉の角度がえぐ過ぎてついていけんわ」 【優衣】 「だって、兄さんはゲイ……」 【兄】 「じゃないです」 【優衣】 「でも、今まで彼女を作ったこと……」 【兄】 「あります」 【優衣】 「え」 【兄】 「……あ」 【優衣】 「あるの……?」 【兄】 「い、いや、嘘。思わず口走っただけ」 【優衣】 「彼女……? 嘘……私、そんなの聞いてない」 【兄】 「冗談だって。イッツァ・ジョーク、HAHAH――」  愛想笑いをしながら視線を外そうとして、肩を掴まれる。 【優衣】 「兄さんっ! …………ちゃんと答えて」 【優衣】 「彼女……いたこと、あるの……?」 【兄】 「だから、ただの冗談で――」 【優衣】 「兄さんっ!!」 【兄】 「ちょ、声でか」  きつく眉を寄せてるのが暗闇でもよく解った。  見たことがないくらいに真剣な顔。  どうしたんだ。こんな冗談、いつもなら軽く受け流してくれるはず。  優衣は俺の本意を汲み取るのがずば抜けて上手い。  俺の考えていることなんて、お見通しのはずなのに。  どうしてだ。  どうして、泣いてるんだ。 【優衣】 「……あ」  お互いに生じた微妙な空気の違いに気付いたのか、ぱっと手を放し  た。 【優衣】 「ご、ごめんなさい。大きな声を出して」  優衣が一つ瞬きをすると、ついっと涙が溢れた。 【優衣】 「あ、あれ? なんで……。欠伸したかな……。  あはは、は……涙が出るとか、おっかしー」  目を擦りながら笑う。 【兄】 「……もう寝よう」 【兄】 「疲れてるんだ。夜も遅いし」 【優衣】 「…………そ、そうね……。うん、わかった。もう寝ましょうか」  もう夜も遅い。  優衣も俺の提案を拒むことはなく、むしろ放っておいてくれたこと  を感謝してるかのようだった。  天井を向こうとして、やめた。  ちゃんと眠るのか不安だったからだ。  暗闇の中で優衣は、目を瞑るのと薄く開くのを繰り返し、なかなか  寝ようとしない。  瞳をクリクリと動かし、視点も定まっていない。 【優衣】 「あの……兄さん」  不安そうに口を開く。  胸の内を語るように。 【優衣】 「いま……いまね……。兄さんが……彼女のことを言ったとき、  また、胸がきゅぅーって……」 【兄】 「わかった」 【兄】 「……わかったから」  頭を撫でる。 【兄】 「もう寝よう?」 【優衣】 「ぁ……」 【優衣】 「う、うん……」  今度こそ、優衣は目を閉じた。 【優衣】 「おやすみなさい……兄さん」  不安そうな顔で目蓋を閉じる優衣を見つめる。  優衣には何も悩まずに過ごしてほしい。  好意という感情に対して無知にさせてしまったのは、異性から離し  すぎた俺の原因でもある。  悩むのは俺だけでいい。  こうなってしまったからには、優衣にはずっと無知のままでいても  らうしかない。  今の感情と好意とを結びつける『きっかけ』と、彼女が出会うまで。  それまでに、この問題は解決しなくてはならない。  優衣の寝顔を見つめる。  少しは大人びてきたが、まだ無邪気さの残る顔付き。  ふと視線は唇に止まる。  つい先ほどまで、この唇は俺の……。 【兄】 「……」  理性ではわかっている。  優衣の感情を落ち着かせる方法は、もう二度とこんな関係を絶ち、  普通の兄妹に戻ることしかない。  しかし、優衣の唇を見るだけで疼く身体……  そして何より……優衣の感情を思うと、止めるに止められない。  優衣のことを思えば思うほど、優衣のために関係を絶とうと意気込  む心を引き留めてしまう。  ……面倒なことになってしまった。  ただただ快感に耽るだけでは終わらせてくれないようだ。  道徳に反した者には、それ相応の報いでもあるんだろうか。  ……罰は、受けないといけないな。  END