はぁ。やっと着きましたね……。 いえいえとんでもないです。 高速、ちゃんと乗り降りできて、よかったです……。 長距離運転って、こんなに疲れるんですね。 改めて、あなたってすごいなって思いました……。 ありがとうございます。 ふふ。とうとう来られましたね。 すずらん市パノラマ展望台。 覚えてますか? 初めてゆっくりお話しした日も、ここに座って……ご飯を食べましたよね。 はい。書きました。 サイン、そんなに書く事ないから、緊張したなぁ。 あの時、私、全然あなたとうまく話せなくて。ずっとおどおどしてて。 やっと話振れたと思ったら、声が被っちゃって。 そうだ。箸落としちゃったんですよね。あなた。 そっか。あなたも緊張してたんですね。 全然そんな風に見えませんでした。 そっか……そうですよね。 あのね。あの頃……片想いしてた頃。 私、あなたの事が、すごく大きく、立派な人に思えてたんです。 今思うと、ちょっと重すぎるんですけど。 あなたになりたいって、本気で思ってました。 だって。 初めてお会いした時から素敵でしたし。 お話したら、すぐ大好きになりました。 正直『こんなの早すぎる。変かもしれない』って思ったけど。 どれだけ一緒に過ごしても、ますます好きになるばかりでした。 知れば知るほど憧れて。 もしあなたみたいになれたら、今までできなかった事が、皆できるような……。 そんな気持ちで好きでした。 でも、そのうち、それは違うってわかったんです。 あの頃、本当は……。 今の話みたいに。あなたは、一杯勇気を出して接してくれたんですよね。 自分が痛くても、辛くても、我慢して。 怖い目に遭うかもしれないのに、守ってくれて。 私といても何もいい事ないかもしれないのに『一緒にいよう』って言ってくれた。 だから……いつからか私は、あなたになるんじゃなくて。 あなたの力になれる人になりたいって思うようになりました。 ご存知の通り。 私、話すの苦手ですし。 臆病で気が弱くて、すぐに緊張して。 ずっと言いたい事、したい事ができずに生きてきました。 でも、あなたといると勇気が出せる。 すごく楽に息ができる……。 自分にはまだ可能性があるんだって思えるんです。 それは。あなたが『したい事をしていい』って言ってくれたから。 『それならこんな事をしたい』『こんな人になりたい』って思い描けるようになったから。 へへ。 だから、まだまだ頼りないのは重々承知なんですけど。私……。 えっ? それは、どういう……。 そうなんですか? あなたも、私と同じなんですか? だったら……。 あ。 またかぶっちゃいましたね。 いえいえ、あなたからどうぞ。 ふふ。今のセリフも、あの時と一緒。 だから、今回はあなたからどうぞ。 対等……。どちらかだけが頑張るんじゃなくて。 ずっと、一緒に成長していく……。 そっか。あなたは、そんな風になりたいって思ってくれてるんですね……。 はい! 私も、すごく素敵だと思います。 あなたと、そうなりたいです。 へへ。実は、私も同じ事を考えてました。 さっきは『これからも、一緒に頑張らせて下さい』って、言おうとしてたんです。 はい! へっ? あっ? なんでしょうか。 あ。 そうでした! 今日は、お昼、あなたが用意してくれたんですよね。 私、あなたのお弁当、すごく楽しみだったんです。 ふふふ。そのセリフ、今度はあの時の私みたい。 いただきます。 あなたのお料理、お弁当の形でいただくのは初めてですね。 ふふ。大丈夫です。絶対おいしいですよ。 ……もし、仮に。今回思うような仕上がりになってなかったとしても。 全部食べます。 私が、全部受け入れたい、全部好きになりたいって思うのは……。 ずっと、あなただけですから。 では、いただきます。 もぐもぐもぐ……。 ほら、おいしい。すごくおいしいです。 はい❤ たとえばこれとか、すごく好きです。 前に青柳のおばあちゃんが作ってくれたのと同じ味がする。 え? そうなんですか? あはは! 目に浮かぶようです。 あは、あはははっ……❤ それはすごいです。 ふふふふふっ。あはははは……❤