ん?おぉ……目が覚めたかの。 くふふ……どうじゃ?体に大事は無いかえ……? ……うむ、そうじゃ。 お主……此度は少々抜かったようじゃのう。 妾を調伏せんと、道観を包囲した術師共に後れを取るとは……。 ふむ……いかにお主といえど、多勢に無勢が過ぎたようじゃな……? ……くふふ、まぁ仕方の無いことじゃ。 妾としても、今の妖が滅んだ世に、よもや術師がああも生き残っていようとは思うておらなんだ。 故に……今回のことは、妾にも責がある。 お主一人を責めはせぬよ……安心せえ。 ……うむ、じゃからもう暫くはこのまま、妾の膝の上で休んでおれ。 体の傷が癒えるまでは、こうして傍に居てやるからの……。 ……あぁ、術師共か? 無論、あ奴らならば既に始末したぞ。 今頃は、肉の一片たりともこの世に残ってはおらぬ。 くふふ、妾の可愛いしもべに傷をつけたのじゃ……当然の末路と言えよう……。 ……よい、妾の手を煩わせたなどと、その様なことは気にするな。 妾にとっては、お主が無事であったことの方が遥かに大切じゃ。 お主の様なしもべは、替えが利かぬからのう……。 ……じゃが、そうさな……。 この先、妾の支配を広げていくに辺り…… どの様な諍いが起こるか、分からぬところもある。 差し当たって……お主には雑事を任せ、人間の刺客は妾が相手しようかのう。 多少面倒じゃが……仕方あるまいて。 ……ふむ、それではお主の気が収まらぬか……。 くふふ……そこまで妾の手を煩わせることを厭うのかえ? まこと、忠誠心の塊の様な奴じゃのう……? ……うむ、では分かった。 妾も、今のお主の言葉を聞いて決心したぞ。 ……どうじゃ、お主よ……。 妾の、眷属となるつもりはないかえ……? ……そうじゃ。 妾の力の一部をその身に宿し、正式に妖としての道を歩むのじゃ。 当然、器としてその体が耐えきれるか……保証はない。 もし妾の力が受け入れられなかった場合は……分かるじゃろう? ……くふふ、そう案ずるな。 妾の見立てでは、お主の体は既にこちら側へ傾いておる。 妾を封じたあ奴の血を引くだけあって、元々器としての適性が高いのじゃろう。 ……それよりも一応、確認するが……。 妾の力を受け入れれば、お主はこの先……人の身を遥かに超えた生を享受することになろう。 自身の生まれた種族を裏切り、妖として生きてゆくことになるが…… それでもよいのじゃな? ……ほう。 くふふ……妾と共に在ることこそが望みか……。 ふむ……やはりお主は、よい眷属となろう。 ……では、早速じゃが……。 そのまま、じっとしておるのじゃぞ。 こうして……お主の額に、妾の手を乗せ……。 ん……力を、流し入れてやろう……。 ……あぁ、またべろちゅーでもされると思うたか……? くふふ、それはまた今度じゃな……。 あれは、力を与える手段としては少々大雑把に過ぎる……。 こうした繊細な力の受け渡しには向かぬのでな……。 ん……ふぅ……。 すぅ……ふぅ……。 ……。 ……ふむ、これでよいかの……。 くふ、思うていたより随分と容易であった故、驚いたぞ? よもや、お主の体が器としてここまで優れたものであるとは……思わぬ誤算じゃ。 ……おぉ、狐の耳まで現れおったか。 何ともまぁ……恐るべき才覚じゃのう。 もしやお主は元より、こちら側の存在であったのやもしれぬな……? ……して、どうじゃ? 体の方……不足は無いかえ? ……ほう、既に力が満ちて……。 ならば……よい、起き上がってみせよ。 ……ふむ……。 くふふ……改めて、よう似合うているな? その耳……そして、後ろの尾もな。 ……うむ。 与えた力というのは、主にその尾の方じゃ。 妾に九つある内の一つを切り離し、お主に貸し与えた……と言えば分かりやすいかのう? ……む?いや、妾の方は全く問題無いぞ? 元来、妖狐にとっての力とは、主に尾の本数で推し量るものであるが……。 妾はその中でも最も多い九尾ゆえ、一つくらい切り離したとて、その力に影響は殆どない。 ……じゃが、どうじゃ? お主にとっては、尾の一本でも湧き上がる妖力は格別であろう……? おまけに現れたその耳は、妾の力が即座に馴染んだ証拠じゃ。 今は仮初の形であろうが……その内、身も心も真の妖狐となるであろう。 妾の眷属として、な。 ……くふふ、そうか。 妾と同じ妖狐となれることが、そんなにも嬉しいとな……。 ……うむ、妾も同じ気持ちじゃ。 お主を眷属として迎えられ……喜ばしく思うぞ。 ……故に……ほれ、近う寄れ。 もう一度、眷属となったお主を妾に感じさせるのじゃ。 ……ん、ふぅ……。 すぅ……ん……はぁ……。 ……これが、眷属というものか……。 己が力を分け与えた存在というのは、斯様にも愛おしいのじゃな……。 まるで、既に幾年も共に在ったかの様な……。 ……うむ、無論……お主にはこれからも役に立ってもらうつもりじゃ。 人間共を支配し、妾がこの地を統べるため……。 ふむ……そうじゃな、まずは手始めに、その力を振るってみてはどうかの? 今日我らに狼藉を働いた術師共……あ奴らがどこから来たのか足跡を辿り、 その一族郎党を見せしめとして、同じ末路を辿らせてやるのじゃ。 妾が与えた力を使い、大妖狐、白尾に手向かう者の愚かさを、眷属として存分に教えてやるがいい。 ……うむ……では、行ってこい。 我が眷属よ……くふふ。