XX26年 1月1日(木) 今年最初の一日は、この上なく幸せな一日だった。 会長と神社の近くで待ち合わせをして、 「ごめん、待った?」 「いいえ、今ついたところですよ」 なんて、デートみたいな会話をして、 二人で参拝待ちの行列に並んで、 とりとめのない話をして……。 参拝待ちの行列はかなり長かったけれど、 私としては願ってもない展開だった。 だって、会長とたくさんお喋りできるから。 会長のこと、たくさん聞いちゃった。 趣味のこと。家族のこと。学校のこと。 会長のことを知っていくたびに、私はもっと会長のことを好きになっていく。 ああ、会長。 好きです。 大好きです。 初詣の願い事、会長は何をお願いしたんだろう。 私は、文化祭の成功と、会長のお傍にいられますように。 とお願いした。 二つもお願いするなんてどうなんだろう。 でも、どちらも私にとっては大切なことだ。 参拝が終わって、解散になるとき、 離れたくないですって会長にしがみついてわがままを言いたかった。 私の中にこんな子どものような感情があるなんて思わなかった。 もちろん、実行はしなかったけれど。 うん。本当に幸せな一日だった。 会長、ありがとうございました。 今年もよろしくお願いします。 1月2日(金) 母の代わりに、夕食にカレーを作った。 「お正月っぽくないけど美味しいね」 と妹が言っていた。 私は、おせちよりもカレーが好きだ。 1月5日(月) 今日から三学期。 生徒会としては、来年度の部活の予算調整などをやることになるのだが、 体育祭運営ほどの大きな仕事はない。 久しぶりに生徒会室にメンバー全員が揃って、のんびりした時間を過ごした。 中根くんが 「会長と副会長って初詣二人で行ったんすよね? デートじゃないっすか」 と言っていて、すごくいい気分だった。 会長は笑っていた。 好き。 1月6日(火) 小松さんと田中くんはクリスマスにデートをしたけれど、 結局、何もなかったらしい。 何もなかったということは、愛の告白もなければ、キスとか、そういうのもなかったということだ。 「もう本当に男心って分からないよ」 廊下から外を眺めながら、小松さんは呟いた。 うん。 これは私もよく分からない。 田中くんにとって小松さんって何なんだろう。 友だち、なのかな。 1月7日(水) 男と女の関係って難しい。 去年、私は会長と相良先輩のことを勝手に恋愛関係にあるのではないかと思っていたけれど、 そこにあったのは男女間の友情だっただけで、 小松さんと田中くんの場合も、恋愛関係に発展するのかと思ったらそうでもないみたいだし。 恋人同士になる、恋愛関係になるって、なかなかレアなのかな。 私は会長とそうなりたいんだけどな。 1月25日(日) 生徒会で使う紅茶の茶葉の買い出し。 去年からずっとカモミールだけれど、たまにはと思って ダージリンを買ってみた。 会長のお口に合いますように。 1月26日(月) もう! どうしていつもそうなの!? 今日は新しく買ったダージリンの茶葉で淹れた紅茶を会長に飲んでもらうつもりだったのに、 淹れているタイミングで相良先輩が生徒会室に入ってきて、 結局相良先輩の紅茶レビューを聞くことになった。 いや、会長も飲んでくださったし、別に相良先輩は何も悪くないし別にいいんだけれど。 ただ、私は会長に美味しいねって言って欲しかったの。 2月4日(水) 日曜日に小松さんと一緒にチョコ作りをすることになった。 彼女は、バレンタインに手作りチョコを田中くんに渡して、そこで告白するらしい。 2月8日(日) 私の家で小松さんとチョコレート作りをした。 バレンタインに渡すチョコはちゃんとしたものを作りたい。ということで、 その練習を私とするというわけだ。 私は、ガトーショコラやブラウニーを作ったことはあるけれど、 純粋なチョコレートを作るのは初めてだったので、新鮮で楽しかった。 出来も良かったと思う。 小松さんの作ったものは、見た目もすごくかわいいし、 味もお店で売っていてもおかしくないようなレベルのものだった。 これだけ美味しくてかわいいチョコだったら、 きっと田中くんも小松さんのことを好きになるんじゃないかと思う。 小松さん、告白、上手くいくといいね。 バレンタインデーが土曜日じゃなかったら、学校休みじゃなかったら、 私も会長にチョコを渡すのにな。 2月9日(月) 相良先輩大好き! 放課後の生徒会室で、相良先輩が 「バレンタインチョコ欲しい人~?」 と言い出し、中根くんが、はい! 欲しいっす! 会長は、え? どうしたの? と答え、 ここでチョコをあげるつもりなのかな、でもちょっと早い気も…… なんて思っていたら、 週末に相良先輩の家でバレンタインパーティーをすることになった。 クリスマスのときといい、今回といい、彼女はこういう催し物が好きなんだろう。 当日は私と相良先輩がチョコを作って会長と中根くんに渡すことになった。 私の手作りチョコを会長が食べてくださるなんて……! あああぁもう幸せすぎる。 相良先輩、いつも素敵な企画をしてくださってありがとうございます。 私、相良先輩のこと大好きです。 2月11日(水) さっきまでチョコを作っていた。 2月14日のリハーサルのようなものだ。 だいぶ、美味しい作り方が分かって来た気がする。 2月13日(金) 明日の準備は万端。 「男性の心を掴むには、まず胃袋から」ってどこかで見た気がするけど、 明日、私のチョコレートを食べた会長が、 私のことを少しでも魅力的だと感じてくれたらいいな。 会長、私、頑張りますね。 2月14日(土) 幸せ。 幸せ。 もうすっごく幸せ。 今日は相良先輩の家でバレンタインパーティーだった。 私と相良先輩でチョコレートを作って、 それを会長と中根くんに食べてもらう、 なんなら私と相良先輩も食べるっていう、 普通のバレンタインデーとは少し趣が異なるイベントだったんだけれど、 すごく楽しかったし、私は幸せでいっぱいだった。 中でも一番のハイライトは、会長が私のチョコを食べて 「星之宮さんの作ったチョコ、美味しい」 と言ってくれたところ。 無邪気な笑顔でそう告げる会長を見て、 私は胸のときめきが止まりませんでしたよ。 会長、好きです。 大好きです。 いつか、チョコレートではなくて、私を召し上がってくださいね。 そして、美味しいと言ってくださいね。 日記を書いていて、パーティのことを思い出してにやけてしまう。 今日はなんて素敵な日なんだろう。 ところで、この日記を書いている間に、小松さんからの着信が何件も来ている。 告白、上手くいったのかな。 この後私からかけなおしてみよう。 2月15日(日) 田中くん、さすがにこれは罪深いと言わざるを得ないよ。 昨日の夜、小松さんに電話をかけなおした私は、 話したいことがあるから直接会って欲しいと言われ、 今日、彼女と会ってきた。 二月とは思えないポカポカとした空気の中、私たちは歩き、公園のベンチに腰を掛けた。 「ふられちゃった……」 震えるような声で、小松さんはそう言った。 「田中くんね、私と同じ感じで遊んでいた女の子が私以外にもいたんだって。 それでね、その子と付き合うことに決めたから私とは無理だって言われて……」 「え? でも、そういう人がいるんだったら小松さんと二人で遊ぶのはおかしいんじゃ……」 「それがね、田中くん、私とその子、どっちと付き合うかを決めるために、 私とも、その子とも遊んでたんだって。 それで、私じゃない子の方がいいって決めたみたい……」 絶句した。 要するに、田中くんはお試しのような感じで 小松さんと、もう一人の女の子とデートをして、 どちらにするかを決めたということなのだろう。 ひどい。 それは、よくないことだ。 彼は、小松さんの気持ちをどう思っているのだろうか。 公園で泣き出してしまった小松さんを、私は抱きしめた。 小松さん、辛いよね。悲しいよね。 どうか、彼女の心が穏やかになる日が来ますように。 2月16日(月) 辛いだろうに、小松さんは学校に来ていた。 田中はいつもと変わらない感じだった。 小松さんにひどいことしておいて、 よくもまあ普通に過ごせるなって思った。 2月20日(金) 今日も会長はかっこよかった。 会長に小松さんと田中の話をして、見解を聞きたい。 でも、このことは小松さんのプライバシーに関わる部分だから、 しないししてはいけない。 3月1日(日) 「お姉ちゃんさ、バレンタインに生徒会の人にチョコあげたんでしょ。 お返しもらえたらいいね」 妹が無邪気な顔をして言った。 私も、もらえたらいいなとは思うけれど、ホワイトデー、土曜日なんだよね。 ああ、相良先輩がホワイトデーも何か企画してくれたらなあ。 3月2日(月) 卒業式だった。 会長が卒業生に向けての挨拶をしていたのだけれど、 その内容も、その佇まいも、その声も、全てが素晴らしかった。 どうしてこんなに素敵なんですか。と、いつものことながら思ってしまう。 そして、来年の今頃には会長が卒業するのかと考えると、胸が苦しくなった。 3月3日(火) VRでなおさん(NAO-WARDOGSさんね)とたくさんお喋りした。 今流行しているVRで釣りができるワールドで釣りをしながら、結構遅い時間まで。 高校三年生だった彼女は先日卒業し、 来月から大学生になって一人暮らしをするらしく、 しばらくログインできないかもと言っていた。 VRになおさんがいないって考えると寂しいな。 3月4日(水) 三年生が卒業して、なおさんも大学生になって、 もうすぐ私は二年生になる。 会長や相良先輩は三年生に。 変化の時期だ。 今期生徒会は、六月の文化祭終了後に解散することが決まっている。 生徒会が解散したら、私と会長は離れ離れになるのかな。 そのまま会長が卒業したら、もう会えなくなるのかな。 嫌な想像をしてしまって、涙がこぼれた。 少し、怖い。 3月6日(金) 相良先輩主催のホワイトデーパーティーの開催が決まった。 さすが相良先輩だ。 こういうことを考えて、実際に開催するのは本当にすごいと思う。 参加者はいつもの生徒会メンバーで、場所はいつもの相良先輩の家、日程は14日。 もう最高。密かに期待していたことが現実になるなんて。 中根くんはホワイトデーパーティーなんて聞いたこともないし俺はお菓子作ったことがないなんて言っていたけれど、 だからこそいいんじゃない。 初めて作ったお菓子を食べるというのがいいの。 ああ、会長……会長の作ったお菓子を食べるの、 私楽しみにしていますからね。 3月8日(日) 明日から学年末テスト。 いい気分でホワイトデーを迎えるためにも、 頑張っていきたい。 3月12日(木) うん。問題ない。 3月13日(金) 学年末テストが終わり、明日は相良先輩の家でホワイトデーパーティー。 会長の作ったお菓子を食べることが出来る日。 今日はずっとそのことを考えてドキドキしていた。 会長はどんなお菓子を作るのだろう。 どんな味なのだろう。 私、どんなものでもちゃんと味わいますし、 美味しくいただくつもりです。 もし作り方が分からないときは、 私も一緒に作りますからね。 3月14日(土) 新しい自分が見つかった日だった。 今日は相良先輩の家でホワイトデーパーティーだったんだけれど、 会長も中根くんもお菓子作りは未経験だということで、 私と相良先輩も加わって、一緒にクッキーを作った。 一緒にお菓子を作るという行為、 今まで妹とは何度もやってきたことだし、小松さんともやったことがあるのに、 会長と一緒だと、生まれて初めての信じられないぐらい甘くて幸せな感覚に陥った。 そして、会長が作ったそれを食べる際、 私が口の中に入れて、咀嚼し、飲み込むまでの間の会長の表情。 期待と不安。どちらかというと不安の方が割合多めなその表情がたまらなく可愛かったし、 美味しいです。と伝えたときの、安堵と喜びが混じった顔もとても可愛かった。 会長の作ったものを、口を通し、自分の体内に取り込んでいく。 会長を、私の中に取り込んでいく。 手作りのものを食べるという行為が、なんだか官能的なものに思えてきてしまった。 だから私は、会長の作ったクッキーしか食べられなかった。 中根くん、ごめんね。 会長、私は、会長に食べて欲しいと思っていました。 でも今日、気づきました。 私は、会長を食べたいです。 もしも会長が私を召し上がってくださる日が来たら、その時は 私も会長のことを食べてもいいですよね? 3月15日(日) 昨日の会長の顔が可愛すぎて、何度も思い出していた。 好き。 大好き。 3月18日(水) 学年末テストの結果は学年三位。 会長を支える立場としては、これぐらいはとっておかないとね。 3月20日(土) ホワイトデー以降、私の気持ちはさらに肥大化した気がする。 好きで好きで仕方がない。 今日はずっと、会長のことを考えていた。 3月21日(日) 声がききたいな。 3月23日(月) 終業式だった。 今日で私の高校一年生は終わり。 一年間、あっという間だったな。 次はどんな一年になるんだろう。 まずは、六月の文化祭を成功させなきゃな。 そして、会長ともっと仲良くなれるといいな。 生徒会が解散しても、離れ離れにならないぐらいに。 4月6日(月) 高校二年生になって数日が経ち、 今日は入学式だった。 一年前、私の心を討ちぬいた会長のスピーチは、 今年も素晴らしかった。 なんなら、今年の方が良かったように思う。 だって、壇上に立つ会長を見る私の胸の高鳴りは、去年以上だったから。 会長、素敵なスピーチでしたよ。大好きです。 4月7日(火) 高校二年生になった私は、中根くんと同じクラスになった。 生徒会のメンバーが同じクラスにいるというのは、新鮮な感覚だ。 4月10日(金) 最近、私の中に不思議な欲が芽生えている。 会長を、抱きしめたい。 あの逞しい体をぎゅうっと抱きしめて、 たくさん甘やかして、たくさん褒めてあげたい。 たまに、この欲が暴走しそうになることがある。 ハグをするとストレスが解消されるって話があるけれど、 それにかこつけて、軽くでもいいから抱きしめることはできないかな。 こんなことを書くの恥ずかしいけれど でも、抑えきれない私の正直な気持ちだ。 4月13日(月) 会長の目が、たまに私の体に向いている時がある。ような気がする。 気になるのかな。 会長だったら、いくら見てもいいですし、触ってもいいんですよ。 私も会長の体、気になりますし。 って、またこんなこと書いてる……。 4月16日(木) 生徒会室で、文化祭の運営についての会議が行われた。 文化祭の運営は、私たち今期生徒会の最後の大仕事で、 その仕事量は想像を絶するものだった。 体育祭でやることよりもずっと多い。 文化祭実行委員会との打ち合わせや、 出し物によっては各部活の部長、各クラスの代表との打ち合わせ、 それに、時間や経費の計算、タイムテーブルの作成など。 学校生活をいつも通り行いながら、 これらをこなしていくというのは、 なかなかハードだと思う。 でも、私はやりきる。 体育祭のときにいろんな人に嫌な思いをさせてしまったから、 文化祭では楽しい思いをして欲しい。 いい文化祭だったと思って欲しい。 4月17日(金) 去年の文化祭では、 前生徒会長があまり働かなかったらしく、 現会長や、相良先輩は大変な思いをしたらしい。 そんな状況なのに、全く問題なく文化祭の運営をした現会長は 本当にすごいと思うし、尊敬の念を抱いた。 会長、本当にすごいです。 今年は、私も一緒に頑張らせていただきますからね。 4月19日(日) 昨日の夜は久しぶりにVRでなおさんとたくさんお喋りをした。 VRの世界で釣りをしながら、彼女の近況を聞くのは楽しかった。 大学生活や初めての一人暮らしは、新鮮で面白いらしい。 私も二年後にはそうなるのかな。 出来れば、会長と同じ大学に行って、その…… 一人暮らしじゃなくて、会長と一緒に住んでみたいな。 4月29日(水) 小松さんと遊んできた。 二年生になって別々のクラスになってから、 顔を合わせることも話すことも少なくなっていたので、 久しぶりに遊べるのは嬉しかった。 ショッピングモールの中にある財布に優しい価格のイタリアンレストランで、 いろんな話をした。 彼女は新しいクラスメイトのことを好きになったようで、 田中のことはもうどうでもいいと言っていた。 切り替え早くてすごいなあ。 私は、一度失恋したら、数年間は引きずってしまいそう。 流れで、好きな男の人にやってみたいことなんかを話しあったんだけど、 抱きしめたいっていうのがお互い最初に出した案なのは笑った。一緒だねって。 「ほら、抱きしめるってストレス解消効果があるらしいから、 そんなに深い仲じゃなくても、ストレス解消っていう名目でできちゃうって言うかさ」 うんうんうんうん。と、私は頷いた。 会長……、もしお疲れのようであれば、私、ストレス解消の用意はできていますからね。 4月30日(木) ぎゅうってしたら、嫌かな。 でも、私はしたい。 5月7日(木) ゴールデンウィークが終わり、文化祭の準備期間が始まった。 生徒会では、文化祭実行委員会との最初の打ち合わせが行われ、 開催までの大まかな予定や、当日の役割分担などが決められた。 今期生徒会最後の大仕事、頑張ってやりきろう。 5月8日(金) 私のクラスでの文化祭の出し物はスーパーボールすくいになった。 私と中根くんは生徒会の仕事があるだろうから、 そっちを優先して大丈夫だよ。 と、責任者になった子から言われた。 ありがとう。 5月14日(木) 文化祭実行委員会との打ち合わせ。 各クラス、各部活の出し物の一覧が共有され、 問題がないかを確認する作業だ。 いくつか、実際にやるのは難しい出し物があったため、 それらの変更依頼を出すことになった。 会議の後半から、会長の表情が少し曇っていたように見える。 大丈夫かな。 5月15日(金) 昨日の会議の結果を受けて、 出し物の変更依頼や、予算の調整依頼を 該当のクラス、部活の代表者に伝えることになった。 「うわー、やっぱりそうなったかぁ」 と、相良先輩がこぼす。 「これ、個人的に文化祭準備で一番きついとこかも。 まあ、頑張るしかないよね」 と彼女は続け、会長も頷いた。 この変更依頼、調整依頼というのは、 なかなかストレスがかかる仕事らしく、 生徒会メンバー全員で分散してやろうということに決まった。 5月17日(日) お風呂上りにスマホを見ていたら、 生徒会のライングループに相良先輩からのメッセージが届いた。 「文化祭の準備、星之宮さんと中根くんは、もし無理だって思ったら遠慮なく言ってね」 はい。でもきっと大丈夫だと思います。 と返信した。 「心強いね。ありがとう」 と会長から返信が返ってきて、何があっても頑張ろうと改めて誓った。 5月18日(月) めちゃくちゃ大変だった。 こんなに大変だとは思わなかった。 今日は、文化祭で運営的にちょっと難しいと思う出し物のクラスに 変更依頼と、予算の調整依頼を出しに行ったのだが、 なかなかこちらの言い分を聞いてもらえなかった。 まあ、それはそうだ。 だって文化祭の出し物は、クラスや、部活みんなで考えて、 これが一番いいと思ったものだろうから。 それを運営の都合でできませんなんて言われても、すぐに納得はできないだろう。 だけれど、ダメなものはダメなのだ。 気持ちは分かるけれど、ダメなものはダメ。 それを伝えるのに、本当に苦労した。 最終的には分かってもらえたけれど、疲れちゃったな。 夜、生徒会のライングループで、 会長、私、相良先輩と今日の報告をしていたのだが、 中根くんだけ何の反応もなかった。 どうしたんだろう。 5月19日(火) 中根くんが学校を休んだ。 5月20日(水) 中根くんが、文化祭の準備を降りたいと言い出した。 恐らく、月曜日に出し物の変更依頼をに行った際、何かあったのだろう。 それが精神的に大きなストレスとなり、今回の発言に至ったのだと私は思った。 会長も、私も、相良先輩も、彼の要望を受け入れた。 だって、大変だものね。 「三人になって、少しきついかもしれないけど、きっと大丈夫。頑張ろう」 中根くんが帰ったあと、会長は私と相良先輩にそう言った。 人員が一人減って困っているはずなのに、 こんな言葉を言える会長がすごく立派だと感じて、 でもきっと無理をしているんだろうなと思って、 抱きしめたくて仕方がなかった。 「はい。頑張りましょう」 「うん、がんばろ」 私と相良先輩がほぼ同じタイミングで同じ内容の発言をし、 それが少しおかしくて、三人で笑った。 5月21日(木) 文化祭実行委員会との打ち合わせ。 会長も、実行委員の人たちも少し疲れているように見えた。 私たち生徒会も頑張っているし、文化祭実行委員会も頑張っている。 5月24日(日) 生徒会室で使う茶葉を買ってきた。 今回は、カモミールでもダージリンでもなく、 店頭の人気ランキングで上位だったアールグレイを。 リラックス、ストレス軽減に効果があるって書いてあったから、 これで会長がリラックスしてくれたらいいなと思う。 5月26日(火) 仕事が終わらない。 あまりこういうことは書きたくないのだけれど、 中根くんが文化祭の準備を降りてから、 私と会長、相良先輩の仕事の量がとんでもないことになっている。 会長はお疲れが溜まっているようだし、 相良先輩は顔色が悪い。 いい文化祭にしたいけれど、その前に二人の体調が心配だ。 5月27日(水) 会長の判断で、今日から相良先輩は仕事が残っていても、 18時半には帰宅してもらうことになった。 彼女はまだやれると主張したが、昨日から顔色が悪かったし、 無理をして倒れたりしたら大変だからという会長の言葉に、 しぶしぶ従った。 相良先輩が帰宅したあと、私と二人きりの生徒会室で 「星之宮さんも、しんどかったら無理しないでね」 と会長は言った。 この人は、どうしてこんなにも優しいのだろう。 自分だって大変なはずなのに、しんどいはずなのに。 私は、今回の文化祭の仕事を、例え何があっても、 多少体調を崩すようなことがあっても、絶対に最後までやり遂げようと思った。 それは、私自身のためでもあり、この高校の生徒のためでもあり、 そして、会長のためでもある。 「私は、どんなに辛くても、会長と一緒に最後までやり遂げます」 そう答えると、会長は 「本当に、星之宮さんは頼りになるね」 と笑った。 5月28日(木) 文化祭実行委員会との会議の後、 今日の分の仕事が終わった会長を、抱きしめてしまった。 二人しかいない生徒会室で。 私の淹れたアールグレイを飲んだ後、 少し疲れた顔で「美味しいよ」と言ってくれた会長を見ていると、 何だか胸が苦しくなって、つい、そうしてしまった。 「ほら、抱きしめるってストレス解消効果があるらしいから、 そんなに深い仲じゃなくても、ストレス解消っていう名目でできちゃうって言うかさ」 いつかの小松さんの言葉が私の心にこだまする。 私が抱きしめていると、会長も私のことを抱きしめてくれた。 その時間は、文化祭の準備のことを忘れるぐらい、甘美なものだった。 会長、好き。 好きです。 文化祭、二人で頑張って、成功させましょうね。 5月31日(日) この前、会長と抱きしめあったとき、 私のお腹に熱いものが当たっていた気がする。 熱くて硬い、会長の体の一部。 嬉しい。 すごく、嬉しい。 あれを触ったら、どうなってしまうのだろう。 触ってみたい。 6月1日(月) 一線を超えてしまった。 相良先輩が下校して、生徒会室が私と会長の二人きりになった後、 私は会長を抱きしめ、先日同様、お腹に熱いものを感じて、そのまま、手で……。 男性のものを見るのは初めてだったが、 とても逞しくて、そして愛おしくて、胸がときめいた。 6月の湿った空気の中、私と会長は何度もキスをして、 逞しく膨張した会長のものは、私の手で愛撫され、そしてその中で果てた。 書いていてドキドキする。 果てる瞬間の会長、すごくかわいかった。 もっと見たい。 もっと愛したい。 会長、好き。 好きです。 6月2日(火) 文化祭の準備も終わりが見えてきた気がする。 明日は学校の都合で午後から校内への立ち入りが禁止されているから、 会長にちょっと大胆なお誘いをしてみた。 誘われた直後の、少し戸惑った会長がすごくかわいかった。 大好き。 6月3日(水) 私と会長は付き合っているわけではない。 でも、体の関係を結んだ。 最初は、一緒にお風呂に入るだけのつもりだった。 一緒にお風呂に入って、会長の疲れを癒せたらなって。 そこにはもちろん、また会長にご奉仕したいという下心もあったのだが、 その……セックスまでするとは考えていなかった。 でも、した。 お風呂場で、私のご奉仕で果てる会長を見ていたら、 私の中の欲が止まらなくなってしまったのだ。 初めてのセックスは、痛みはなく ただただ気持ちよくて、愛おしくて、幸せだった。 会長と一つになっている。 私の中に会長がいる。 あの幸せな感覚。今思い出しても、うずいてしまう。 またしたい。 また、私の中に会長をお迎えしたい。 すき。 だいすき。 6月4日(木) 文化祭実行委員会との最後の打ち合わせも無事に終了し、 こまごまとした雑務を片付け、あとは週末の文化祭本番を待つのみ。 といった状況になった。 私も、会長も、やることはほとんど残っていないのに、 何故か相良先輩が帰るまで生徒会室にいた。 何故か、ではないかな。 お互いを求めあうために、放課後の生徒会室に残っていた。というのが正確なところだろう。 少なくとも、私はそうだ。 今日もたくさん愛し合った。 付き合ってもいないのに、お互い求めあい、貪りあった。 幸せだった。 6月5日(金) 明日と明後日は文化祭。 いよいよここまで来た。 文化祭が無事に終わったら、 成功したら、会長に告白しようと思う。 怖いけど、でも、もうこの気持ちを止められそうにないから。 6月7日(日) 心地よい疲労感と安堵感に包まれている中、この日記を書いている。 昨日今日と二日間開催された文化祭は、無事に、何の問題もなく終わった。 何の問題もなく、というのは、当たり前のことのように思えて、本当はとてもすごいことなのだ。 私は去年の体育祭でそれを痛感した。 だから、文化祭は頑張った。 ううん、頑張ったのは私だけじゃない。 会長に、相良先輩、中根くん、文化祭実行委員会の人たちも、 参加するみんなも頑張った。 だからこそ、素敵な文化祭になったんじゃないかと思う。 体育祭のときと違って、みんな笑顔で、私はそれが本当に嬉しかった。 今日、会長に告白しようかと思っていたけれど、 ちょっと疲れが出たので、明日にすることにした。 明日、会長と二人でこの二日間の打ち上げをするのだ。 場所はラブホテルで。 はは。 笑ってしまう。 私、会長と出会って、生徒会に入って、いろんなことを知ったんだけれど、 私自身が、好きな男性の前ではこんなにえっちになってしまうというのもそのうちの一つである。 6月8日(月) 会長と付き合うことになった。 今日、文化祭の打ち上げで入ったホテルで 体を重ねる前に、私は自分の気持ちを会長に伝えた。 好きです、と。 彼は私の気持ちを受け止めてくれて、 私たちは恋人という関係になった。 その瞬間の喜びを表現するだけの語彙を私は持ち合わせていない。 人生の中でこんなにも幸せな時間が存在するなんて知らなかった。 その後、私たちはいつものように体を重ねたのだけれど、 その時間はいつもよりもずっと甘くて、ずっと幸せだった。 心の底から求めあい、心の底から溶け合ってゆく。 入学式で初めて見たときからずっと好きだった人と結ばれる。 こうなるために、私はずっと歩いて来たつもりだったんだけれど、 本当にそうなると、幸せの大きさがすごすぎて、驚いてしまう。 文化祭が終わり、現生徒会の解散が目前となったタイミングで、 生徒会長と副会長という私たちの関係は終わり、 彼氏と彼女という新しい関係が始まった。 愛するあなた、 私を彼女にしてくださって、ありがとうございます。 私はあなたが好きです。誰よりも好きです。世界で一番好きです。 まだ未熟な私ですが、 でも頑張って、いい彼女になりますから、どうかずっとお傍においてくださいね。 愛しています。