4月7日(月) 心を打ちぬかれた。 今日、高校の入学式で、 生徒会の副会長がスピーチを始めた瞬間、 私の席にだけ雷が落ちたような感覚に陥った。 衝撃だった。 こんなにもかっこいい人がいるなんて。 こんなにも素敵な人がいるなんて。 高校生活の初日にして、大変な経験をしてしまったと思う。 ドキドキする。 4月8日(火) 高校生活二日目。 ずっと昨日のことを思い出していた。 入学式の時に壇上に上がった生徒会の副会長は、 体調不良の会長の代役だったらしい。 代役を引き受けるなんて、優しい人なんだろうな。 そして、代役とは思えないほどに堂々としていて、かっこよかったな。 あの人とお話してみたいな。 どうにかして近づけないかな。 4月9日(水) なんとなく話をするようになったクラスメイトと とりとめのない会話をしている最中も、 私の頭の中は副会長一色だ。 目の前で楽しそうに言葉を発する新しい友人たちに、 少しの申し訳なさを覚える。 4月10日(木) 完全に落ちた。 私は完全に落ちてしまった。 副会長との恋という沼に、落ちてしまった。 そうなったのには理由がある。 今日、副会長と直接言葉を交わしたのだ。 放課後の校舎で彼と偶然すれ違った私は、 少しの恐怖心と、私の中で自分勝手に肥大した期待を胸に声をかけた。 「あの……入学式でのスピーチ、すごく素敵でした」 「ああ、ありがとう」 その時の彼の表情、彼の声、彼の匂い、彼のまとう雰囲気、その全てが私を魅了し、 一分にも満たない短い時間で、私の心は完全に落ちた。 好き。 好き。 好き。 好き。 好き。 4月11日(金) 夕食中、家族に高校生活のことを聞かれた。 高校生になって最初の一週間、 私が普通に楽しく過ごせていることを伝えると、 父と母は安心したようだった。 本当は、ものすごく好きな男の人ができて、 毎日その人のことを考えて幸せな気持ちになったり、 いろんな妄想をしてドギマギしているのだが、 そんなことは家族に言いたくない。 妹に、部活は何にするのかを聞かれたけれど、 まだ決めていないと答えた。 正直な気持ちを書くと、副会長が入っている部活を知りたい。 そして、私もそこに入部したい。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ? ここまで書いていて思ったんだけれど、 私が生徒会に入ればいいのでは? 4月12日(土) うん。 私も生徒会に入れば、副会長に近い場所に居られる。 一気に、距離を詰めることができる。 そうしよう。 私は、大好きな人の近くに行くため、 生徒会へ入ろうと思う。 4月13日(日) たまに、母の代わりに私が夕食を作る日がある。 今日はその日だった。 今日作ったのは春野菜のクリームシチューで、 美味しいと言って食べてもらえて嬉しかった。 いつか、副会長にも私の料理を食べてもらいたいな。 どんな料理が好きなんだろうとか、どんな食べ方をするんだろうとか、 お風呂で妄想をしていたら長風呂になってしまった。 4月15日(火) クラスメイトの男子の視線を感じる。 チラチラ見られている気がするんだけれど、なんだろう? 気のせい? 4月18日(金) ここ数日は、生徒会についての情報を集めていた。 次期生徒会で、現副会長……私の憧れの人が会長になるのは確実視されているようだ。 そして、副会長の座は空位になる。 であれば、私はその座を狙いたい。 彼が会長で私が副会長……そうすれば、私はあの人の傍にいられる。 4月23日(水) 生徒会役員は投票で決められる。 だから私は、一人でも多くの人に投票してもらえるよう、 関わる人全員と仲良くなれるように(それが難しい場合は嫌われないように) 立ち回ることにした。 我ながら、打算的な女だなと思う。 でも、私は目的のためにそうする。 4月30日(水) クラスメイトに告白された。 私のことをチラチラ見ていた人。 気持ちは嬉しいけれど、お断りした。 私の心と身体は、あの人に捧げられるためにあるのだから。 5月1日(木) 昨日告白してきたクラスメイトは、私のどこに惹かれたのだろうか。 ぼんやりと考えていた。 私が副会長に抱いているような感情が、彼にもあったのだろうか。 だとしたら、申し訳ない気持ちになる。 今日はイマイチ授業に集中できなかったな。 5月3日(土) 私の通っている高校では、六月に文化祭があって、 それが終わると現在の生徒会は解散し、次期生徒会選への動きが始まる。 そこで副会長に選出されれば…… ああ、想像すると口角が上がってしまう。 5月4日(日) 天気が良かったので昼下がりに一時間ぐらい散歩をして、 夜はVRで仮想世界に潜っていろんな人とおしゃべりをした。 いつか、副会長とも一緒に散歩できたらいいな、とか考えたり。 5月5日(月) お昼に妹とカップケーキを作って、夜は昨日同様VRでいろんな人とおしゃべりした。 カップケーキは上手にできたし、VRは楽しかった。 VR上でよく会う人に、私の恋の話をしたら、 「応援してるよ」って言ってもらえて嬉しかった。 ネットって不思議。 会ったこともない人と会話をして、たまにすごく暖かい気持ちになれる。 5月7日(水) 放課後、来月に行われる文化祭に向けてのクラス会議があった。 私たちのクラスは、ベビーカステラの屋台をやることに決まった。 何をするかが決まった後、議題は責任者を誰にするか、ということになり、 たまに料理やお菓子作りをしている、というぼんやりとした理由で、 私が責任者になった。 良い展開だ。 責任者としてしっかり文化祭をやりきれば、クラスメイトの信頼を得ることが出来るし、 それが生徒会選挙の票にもつながるだろうから。 5月8日(木) 来週に迫った中間テストの勉強をして、 来月行われる文化祭のクラスの予定を考えていた。 部活に入っていなくて良かった。 ここに部活が加わるとさすがにきついだろうから。 5月15日(木) 今日で中間テストが終わった。 頑張った甲斐があって、かなり良い出来だと思う。 生徒会に入るにあたって、成績優秀である必要はないのだが、 学年上位の成績を出していれば、それだけで信頼感というものが生まれるはずだ。 そしてその信頼が、生徒会選での私への投票に繋がるはず。 だから、私は頑張った。 全ては、あの人の近くに行くために。 5月19日(月) 中間テストの成績は学年五位だった。 良いね。 学年首位はさすがに難しかったけれど、五位だったら充分だ。 5月22日(木) お昼休みに副会長を見かけた。 やっぱり、すごくすごくかっこよかった。 一目見るだけで体温も心拍数も上がり、ドキドキしてしまう。 あの人の近くにいけるように、頑張ろう。 5月27日(火) 文化祭に向けてのクラス会議があり、 班分けや、各班ごとのスケジュールを決定した。 やる気のある人もいれば、明らかにやる気のない人もいる。 やる気のない人たちにやる気を出してもらうのも責任者の仕事だ。 ちょっとしんどかったけれど、頑張った。 よく頑張ったねって、副会長に頭を撫でて欲しい。 彼の手はきっと暖かくて、私は触れられただけで安心して、 いや、ドキドキするかも……って、ダメだ。 疲れすぎていて妄想を書いてしまう。 寝よう。 6月4日(水) 文化祭の調理班で、ベビーカステラ作りの練習を行った。 調理班はみんなやる気があるから、なんだか頼もしい。 調理室にベビーカステラの甘い香りが漂う中、 クラスメイトの小松さんが 「これ、田中くんに食べて欲しい」と言っていて、 それを聞いていた周りの女子たちが 今日作ったの差し入れしてあげたら? とか、 これ食べたら田中くん小松さんのこと好きになるよ。とか、 そういうことを話していた。 私も、副会長に食べて欲しい。 そして好きになって欲しい。 って、この書き方よくないな。 私の作ったベビーカステラを食べて欲しい、だ。 いやでも、私自身も……。 ああぁもう、私の頭はどうしてしまったの。 6月7日(土) 文化祭初日。 開会式で、生徒会長の代わりに副会長が開会の挨拶をしていた。 彼の姿を見るたびに思う。 どうしてこんなにかっこいいんだろう。 どうしてこんなに素敵なんだろう。 それにしても、入学式でもそうだったけれど、 副会長が会長の代理で壇上に立つことが多い。 私としては嬉しい限りなのだけれど、 会長の欠席率の高さはちょっとだけ謎だ。 6月8日(日) 昨日今日と二日続けて行われた文化祭は問題なく終了し、 私のクラスの出店であるベビーカステラも好評だった。 田中くんにベビーカステラを食べて欲しいと言っていた小松さんは、 休憩中に本当に田中くんに差し入れしていて、その行動力は素晴らしいと感じた。 私も副会長にそうしたかったけれど、 何の関係性もない副会長にそうするだけの勇気が持てなかった。 6月11日(水) 先日の文化祭を最後に、現生徒会が解散し、 次期生徒会選挙の立候補受付が始まったので、 立候補の届出を提出した。 これで副会長に選ばれれば、私はあの人の傍に……。 考えると、期待と不安で手で震えてしまう。 6月18日(水) 次期生徒会選挙の候補者が発表された。 会長、副会長ともに立候補者は二名ずつ。 私が思いを寄せる前副会長は、会長に立候補していた。 良かった……。 副会長に立候補しておいて、 もしもあの人が生徒会にいなかったらどうしようかと思っていたから。 会長、副会長ともに、役職につけるのは一人だけ。 きっと、前副会長は会長の座に就くはず。 その会長を一番近くで支えるのは、私だ。 なにがなんでも、副会長の座を手に入れる。 6月20日(金) 今日で16歳になった。 家族がお祝いしてくれた。 いつか、あの人にもお祝いしてもらいたいな。とか考えてしまった。 あの人に出会ってから、こういうことを考える時間がすごく増えた気がする。 お誕生日プレゼントは、あなたのハグか……あるいはキスを……。 わああああああだめだめだめ! 妄想が暴走している。 6月24日(火) お昼休みの校内放送で、前副会長の演説が流れた。 前副会長……きっと、新会長になるであろう彼は、 見た目もすごく素敵なのだが、声もすごく素敵だ。 その声を聴いていると、胸の高鳴りが止まらなくなってしまう。 校内放送でドキドキしすぎて、箸が止まってしまった私を見て 一緒に昼食を食べていた小松さんが 「星之宮さん、食欲ない? 大丈夫?」 と聞いて来た。 ごめんね、大丈夫。と答えた。 6月25日(水) 今日は私の演説が校内放送で流れた。 ちょっとだけ恥ずかしさがあった。 投票は一週間後。 6月27日(金) 次期生徒会選、投票日に行われる立会演説会の練習をしていた。 この日、立候補者演説を私が、私の応援演説を小松さんがしてくれることになっている。 彼女は、文化祭での私の働きを評価してくれたようで、 副会長に立候補することが決まった際、応援演説をやると言ってくれた。 正直に書くと、文化祭で責任者をやり遂げたのは、こういう展開になることを見越してのことだったのだが、 実際にそうなると、とても嬉しい。あと、打算で動いた私自身が嫌な人間に思えても来る。 とにかく、嬉しい気持ちは本物。 小松さん、ありがとう。 7月1日(火) 明日、立会演説会があって、その後次期生徒会選挙の投票。 その結果で、私があの人の傍にいられるかどうかが決まる。 今の気持ちは、怖いというのが本当のところだ。 ここまで、やれることは全てやってきたつもりだし、 きっと大丈夫だと思う。 でも、怖い。 あの人は今、どんな気持ちなのだろうか。 7月2日(水) 日記を書く手が嬉しくて震えてしまう。 今日の夕方に次期生徒会選挙が終了し、 憧れだった元副会長は、今日から会長となり、 私は今日から生徒会の副会長となった。 とても、とてもとても、言葉では言い表せないぐらいに嬉しい。 ようやく、ここまで来ることが出来た。 新生徒会で生徒会室に入って、メンバー全員で自己紹介をした。 憧れの人である会長と、私と、 会長同様、去年から生徒会にいる会計の女子、相良先輩と、 私と同じ一年生で書記の中根くん。 みんないい人そうで良かった。 見事新会長になった私の憧れの人は、 会長になることが出来て嬉しいということと、 昨日の夜は緊張して眠れなかった。 ということを話していた。 かわいい♡ 私もそうでしたよ。 あぁ、今までかっこよくて仕方がないと思っていた会長に、 かわいいの要素が加わるなんて……そんなの、魅力的すぎてずるい。 会長、これからよろしくお願いしますね。 7月3日(木) 生徒会のやることは多岐に渡る。 文化祭、体育祭などの学校行事の運営や、 入学式や始業式などでの挨拶、 さらには、地域の清掃活動など。 一見すると、なかなか大変そうだが、 私としては嬉しい限りだ。 だって、生徒会の活動をしている間は、会長と一緒にいられるのだから。 今日も会長はかっこよかった。すき。 7月5日(土) 小松さんとスイーツを食べに行ってきた。 立会演説会で応援演説をしてくれたお礼として、私が彼女の分を支払った。 小松さんは、副会長になれて良かったね。と微笑んでくれた。 優しい笑顔だった。 ありがとう。 7月6日(日) 明日から期末テスト。 今回も良い結果を出したい。 7月7日(月) 期末テスト初日。 テスト期間中は勉強に集中するため、 生徒会は休暇期間となっている。 寂しい。 織姫と彦星が会っている日に会えないなんて。 テスト自体はいい出来だと思う。 7月11日(金) 期末テストが終了し、生徒会の休暇期間も終わった。 今日は生徒会全員で、今後の大まかな予定を話し合った。 会長は終業式での挨拶があり、その後、夏休み期間中は地域の清掃業務。 二学期に入ってからは体育祭の運営。 ワクワクする。会長と一緒に、こんなたくさんのことが経験できるなんて。 あと、新生徒会でライングループが作られた。 嬉しい。会長がいるグループに私もいるんだ。 7月16日(水) 放課後の生徒会室で、会長と会計の相良先輩が楽しそうに話していた。 相良先輩は会長同様、去年から生徒会にいたそうで、 二人は仲が良いように見える。 その様子を見ると、胸が苦しくなる。 相良先輩は綺麗でかわいい女性だ。 あまり考えたくないようなネガティブなことを考えてしまう。 7月18日(金) 終業式。 会長の挨拶、とても素敵だった。 明日から夏休み。 8月2日(土) 生徒会の活動として、午前中に地域の清掃活動を行った。 会長と、会計の相良先輩と、私の三人で。 本当は二人が良かったな、なんて。 相良先輩と会長はやっぱり仲が良くて、 会長と一緒に活動できるのは嬉しかったけれど、 二人が話している声を聴いているのはつらかった。 8月3日(日) もしかして、付き合ってるのかな。 8月4日(月) VR内でよく遊んでいるNAO-WARDOGSさん(ハンドルネームね)に 会長と相良先輩について、私が思っていることを聞いてもらった。 「あー、それはいろいろ考えちゃうよね。 でもさ、シンプルに異性の友だちって感じじゃない? 私も男子の友だちいるけど、そんな感じで話すよ」 その物々しい名前からは想像がつかないような可愛い声で、NAO-WARDOGSさんは発言した。 彼女は私と同じ、女子高生なのだ。 「もし気になって仕方ないんだったら、直接聞くのもアリかもよ」 会話の最後に彼女はそう告げ、ログアウトした。 確かに、直接聞くのもいいかもしれない。 いやでも、怖い。 だって、それで本当に付き合ってるとかだったら、私は耐えられない。 8月5日(火) 会長、相良先輩と、どういう関係なんですか? 8月6日(水) 不安なことがあるほど、思いが強くなるのはどうして 8月11日(月) とても良い一日だった。 今日は生徒会全員出席で、夏休み中の校内清掃だった。 休憩中に、私と同じ一年生である書記の中根くんが 会長に向かって尋ねた。 「会長と相良先輩って仲良さそうに見えますけど、付き合ってるんすか?」 私が怖くて聞けないことを、彼はあっさりと聞いた。 答えは、ノーだった。 ただの友だちだ。と。 良かった。本当に良かった! それを聞いた瞬間、安堵感と嬉しさでガッツポーズをしそうになったけれど、 さすがにみんなの前なのでぐっとこらえた。 中根くん、聞いてくれてありがとう。 それにしても、汗をかきながら掃除をする会長、すごくかっこよかったし、 その…………色気のようなものを感じてしまった。 相良先輩と付き合っていないという事実が、私のトリガーを外したのだろうか。 一生懸命に頑張る彼の姿を見て、お腹の奥が疼く感じがした。 まただ。どうしてこんなことを書いてしまうのだろう。 8月12日(火) 昨日の夜は嬉しすぎて、かなり深い時間までVRでNAO-WARDOGSさんに話を聞いてもらった。 終わり際、私の話ばかりしてしまってごめんなさい、と言うと、 全然いいよ~、と彼女は軽い感じで返してくれた。 彼女のこういう私にはない軽い感じ、素敵だなと思う。 ちなみに、夜更かしの代償か、今日は集中力に欠ける一日だった。 8月17日(日) 妹とガトーショコラを作って、家族みんなで食べて、のんびりして過ごした。 ちょっと甘すぎたかも? でも、家族には好評だったからいいかな。 今日は時間の流れがゆっくりしていた気がする。 こういうの、好き。 8月18日(月) 小松さんと遊んできた。 彼女は、この前クラスメイトの田中くんを誘って二人で出かけてきたらしい。 それってデートじゃない? と言うと、彼女は少し顔を赤らめながら 「そう……なのかなあ」と呟いた。 なんだろう。私は小松さんのように行動することができないから、 ベビーカステラを差し入れしたときといい、今回のことといい、 彼女の行動力は本当にすごいなと感じる。 私も、会長と二人で出かけたいな。 8月30日(土) ああぁ♡ 幸せ♡ 今日は午前中に地域の清掃活動だったんだけれど、 会長の近くで掃除をすることが出来たし、終了後に寄ったファミレスで たくさんお話することが出来た。 会長と私、相良先輩と中根くんが向き合うような席になって、 私、会長と向きあうように座れるだけでもすごくすごく嬉しいのに、 生徒会の活動について、 「星之宮さんが頑張ってくれてるから助かるよ」って言ってもらえて、 幸せすぎてどうかしてしまいそうだった。 会長。 すきです。 好き。 好き。 すき。 9月1日(月) 今日から二学期。 私たち生徒会は、来月に行われる体育祭に向けての準備が始まる。 生徒会でやることがあるということは、会長と一緒に何かできることがあるということで、 その事実が私は嬉しい。 9月2日(火) 放課後、生徒会室で体育祭の運営会議だった。 競技の選定や、それに合わせた予算の設定、スローガンの作成など、 決めることはたくさんあったのだけれど、 今日の会議だけで概ね全てのことが決定した。 会議を仕切っていた会長のお力だ。 やはりあなたは、とても優秀なお方なのですね。 私もあなたを支えられるように、優秀な人間でありたいです。 9月11日(木) 以前にもまして、私の心の中は会長でいっぱい。 熱意を持って体育祭の準備に取り組んでいる会長は 本当にかっこよくて仕方がないのだ。 そのお姿が私の胸に、心にずっと残っている。 大好きです、会長。 9月19日(金) 生徒会室の給湯器は誰でも自由に使っていいそうなので、 今度、会長のためにお茶でも淹れてみようかなと思っている。 9月20日(土) 生徒会室で使うための、ううん、会長に飲んでいただく用の 紅茶の茶葉を選んできた。 近所に専門店があったから、そこでいろいろ悩んで、 ちょっと高いのを買ってしまった。 高かったけれど、やはり、会長に飲んでいただくものだし、 妥協はしたくないなと思って。 この茶葉で淹れた紅茶で、会長がリラックスできたらいいな。 9月21日(日) 明日、紅茶を淹れてみようと思う。 生徒会室で、会長のために。 些細なことなのに、そのことを考えるとドキドキ、ワクワクする。 「美味しいよ」なんて言われたらどうしよう! そんなことになったらきっと赤面してしまう。 ああ……でも、でも、言って欲しい……! 会長、求めすぎかもしれませんが、 私「美味しいよ」の一言が欲しいです……! 9月22日(月) もう! 相良先輩のために買ってきたわけじゃないのに! 放課後、会長と生徒会室で二人きりになったので、 茶葉を買ってきた話をして、紅茶を淹れて……そこまではすごく良かったのに、 会長がこれから飲むっていうタイミングで相良先輩が生徒会室に入ってきて、 彼女にも紅茶を淹れることになってしまった。 しかも、私の選んだ紅茶が彼女には刺さったらしく、 「え! 美味しい~! 星之宮さん、これ、すっごく美味しいよ」 と目をキラキラさせながら話していた。 その感想、私は会長から聞きたかったのに! 9月25日(木) この前の紅茶の一件以来、 相良先輩とよく話をするようになった。 と言うか、相良先輩がよく話しかけてくるようになった。 話しているとよく分かる。 彼女は、とても優しく、いい人だ。 勝手に会長との仲を疑ったり、この前の紅茶の件があったりと、 彼女に対してあまり良い印象を持っていなかった私だったけれど、 それが、会話の中で払拭されていく。 たまに思うんだけれど、私は一人で勝手に、 よく知りもしない人のことを敵みたいに思いこんだりする。 ぶっちゃけ、相良先輩もそうだった。 そういうの、私の良くないところだよね。 相良先輩はとてもいい人。 思い込みでいろんなこと考えてしまってごめんなさい。 10月2日(木) 体育祭が一週間後に迫り、生徒会はバタバタしている。 会長、少しお疲れなのかな。 あまり顔色が良くないように感じた。 心配。 10月3日(金) 会長は多少疲れがたまっていても頑張ってしまうらしい。 今日、相良先輩から教えてもらった。 今の生徒会になる前、つまり会長が副会長だった頃、 当時の会長が少し……いや、かなりひどい人だったようで、 いろんな仕事を副会長がやらざるを得ない状況になっていたらしい。 当然、彼の仕事の量は膨大なものになったが、それでも頑張ってやり遂げたとのこと。 なるほど。 副会長なのに壇上でのスピーチが多かったのは、そういう理由だったんですね。 そう相良先輩に告げると、彼女は、そういうことと答えた。 だから、今期は星之宮さんが彼のことを支えてあげて欲しい。と言われ、 私は、はいと頷いた。 うん。私は、会長を支えるんだ。 10月6日(月) 体育祭当日の生徒会役員の役割決めを行った。 最初に会長が提出してきた案は、会長の負担があまりにも大きなものだったから、 私の役割を増やしてもらった。 具体的には、一部競技の審判補助、得点集計、全体の進行などだ。 これで会長の負担が減るといいな。 そういえば、会長の顔色は良くなっていた。 良かった。 相良先輩のお話をきいて、心配してしまいましたよ。 10月8日(水) 明日は体育祭。 二学期が始まってから、生徒会では明日の準備のためにたくさんの時間を費やしてきた。 体育祭が無事に終わったら、生徒会のみんなでお疲れ様会をやりたいな。 みんなでお疲れ様会をやって、その後、こっそり会長と二人きりになりたいな。 ああもうだめだめ。そんなこと考えてないで、早く寝ないと。 明日は私もやることがたくさんあるんだから。 10月9日(木) こんなにも沈んだ気持ちになるの、初めてかもしれない。 今日の体育祭、私は大きなミスをしてしまった。 全て、私のせいだ。 情けないし申し訳ない。 ミスをしたのは二つ。 まずは、時間が押した。 プログラムに記載されているタイムテーブルよりも、 かなり遅い時間での進行になったのだ。 それに対して文句を言っている人がいて、 自分のふがいなさ、仕事のできなさを感じて辛くなっているところで、 もう一つのミスが起きた。 得点集計のミスだ。 これは洒落になっていなかった。 私が集計した得点に間違いがあって、 本来ならば負けているはずの白組が、僅差で紅組に勝利してしまったのだ。 結果発表の際、そこに疑問の声があがり、時間をかけ再集計し、 今度は紅組の勝利が告げられた。 勝利チームが変更されるなんて体育祭、そんなものが今まであったのだろうか。 少なくとも私は聞いたことがない。 そんな体育祭に、私がしてしまった。 時間を押し、得点集計を間違え、みんなの体育祭を壊してしまった。 結果が変わった後の空気、周りの人の冷たい視線、どこからか聞こえてくる罵倒の声、 とてもつらいものだったけれど、それは全て自分自身のせいで生まれたこと。 体育祭を頑張った人たちにも、生徒会の人たちにも申し訳ない。 ごめんなさい。 ごめんなさい。 10月10日(金) 学校を休んだ。 10月11日(土) そもそも、好きな人と一緒にいたいから生徒会に入るという私の考えが愚かだったのではないだろうか。 体育祭前の浮ついた自分が許せない。 だから、壊してしまうんだ。 ごめんなさい。 10月12日(日) 「星之宮さん、大丈夫?」 生徒会のライングループで、会長が私に心配の言葉をくれた。 こんな私を心配してくださるなんて、なんて優しいのだろう。 その後に相良先輩や中根くんからも優しい言葉を投げかけられ、 私の心は少しだけ軽くなった。 私の罪は消えないけれど。 10月14日(火) 少し怖かったけれど、学校に行った。 体育祭の件があって、私はクラスでのけ者にされるのではないかと思っていたんだけれど、 そうでもなかった。 小松さんも普通に私と話してくれた。 生徒会室には行けなかった。 会長にも、相良先輩にも、中根くんにも合わせる顔がないのだ。 10月15日(水) 足が重かったが、生徒会室へ向かった。 今日は体育祭の反省と、今後についての会議だったからだ。 会長も、相良先輩も、中根くんも、私の失敗を責めずに、 今後どうしていくかを話してくれて、 その優しさが嬉しくて、そして、どこか申し訳なくて、 私はたくさん泣いてしまった。 「失敗することは誰にでもあるから、今回のことは仕方がないこと。 大事なのは、それを繰り返さないためにどうするかだと思う」 会長のその言葉が、ボロボロになっていた私の心を優しく包んでくれるような気がした。 会長……ありがとうございます。 心を救ってくださって、ありがとうございます。 10月16日(木) 今後の生徒会の大きな仕事としては、来年の文化祭の運営がある。 私、そこでは絶対に成功してみせる。 いい文化祭にしてみせる。 10月24日(金) 中間テストが終わった。 ちょっと今回は怪しいかもしれない。 体育祭のことがあったから……って、これは言い訳か。 よくないな、私。 10月28日(火) 中間テストの結果はなかなかにひどいものだった。 全て自業自得だ。 ここから巻き返していこう。 勉強も、生徒会としての活動も。 11月2日(日) 妹と買い物に行ってきた。 こうして姉妹で出かけるのって久しぶりな気がする。 妹は筆記用具を、私は生徒会室で使う茶葉を購入した。 私が買った茶葉を見て 「そんなに高いの買わなくてもよくない?」 と妹が言ってきたけれど、 大切な方に飲んでいただくものだから、 多少高くてもいいものを選びたいのだ。 11月15日(土) 生徒会で地域の清掃だった。 体育祭が終わって以来、公には初の活動かも? 落ち葉の量がすごくて、掃き掃除をするのが大変だった。 会長は今日もかっこよくて、そのかっこよさに惚れ惚れしそうになったけれど、 どうにかこらえて清掃作業に集中した。 私は、生徒会の仕事を頑張るんだ。 11月16日(日) 会長は、やっぱりすごくかっこいいし、すごく優しい。 ただ、そこに見とれてしまって、 私自身の役割をおろそかにするようでは絶対にダメなんだ。 もう私は、失敗したくない。 11月21日(金) VRで、NAO-WARDOGSさんとたくさん恋バナをした。 彼女の考え方は私にはないものばかりで、すごく新鮮だ。 バンドをやっている彼女は昔、同じバンドのギタリストと付き合っていたけれど、 束縛がきついし、音楽性にも口を出してくるからすぐ別れたとか。 私は……正直、会長には束縛して欲しい。 そうすることで、私が会長のものだと実感できるだろうから。 NAO-WARDOGSさんはそうではないらしい。 「やっぱりウォードッグスさんは自由がお好きなんですね」 「うん、そうだね。自由命! あとさ、ウォードッグスさんじゃなくて、なおでいいよ」 「分かりました。なおさん」 そこそこ長い付き合いだったのに、突然呼び名が変わった。 それも、何かきっかけがあったわけではないのに。 もしも会長との付き合いが長くなれば、こういう風に呼び方が変わる日が来るのだろうか。 会長の下の名前……呼んでみたい。 って、またそんなこと考えてる。 こういうこと考えすぎて失敗したらダメなんだから。 11月27日(木) ようやく、会長からあの言葉を聞くことができた。 「星之宮さんが淹れた紅茶って美味しいね」 って。 ずっとずっと、二か月以上前から欲しかったお言葉。 私が淹れた紅茶を会長が飲むことはあったけれど、 こうして二人きりで褒めてくれることは今までなかった。 と言うか、そもそも二人きりになれる機会がほとんどなかった。 「あ、あ、ありがとうございます……」 顔が紅潮し、それが恥ずかしくて、でも褒められたことが嬉しくて、 なんとかお礼の言葉を伝えようとしたら、 変な風になってしまった。 その後少しだけ沈黙が流れて、相良先輩が生徒会室に入って来た。 私が勝手に感じていた、幸せで、甘くて、少し恥ずかしい空間はそこで打ち切られた。 惜しい気もしたけれど、それでいいのかもしれない。 だって、あの空気の中にずっといたら、私、変になってしまいそうだったから。 12月2日(火) なんと! 今年のクリスマスに生徒会でクリスマスパーティーをすることが決まった。 ちょっとこれは嬉しすぎるぐらい嬉しい出来事だ。 だって、相良先輩と中根くんがいるとはいえ、会長と一緒にクリスマスを過ごせるんだから。 発案は相良先輩で、会長も中根くんも乗り気で、もちろん私も開催に賛成した。 みんなでご飯を食べてプレゼントを交換するだけの簡単な会だと発案者の相良先輩は言ったが、 その簡単な会がどれだけ私を心を躍らせているか、きっと彼女は知らないだろう。 相良先輩、素敵なイベントを企画してくださって本当にありがとうございます。 ああ、楽しみ。 プレゼントは何にしようかな。 会長のプレゼントと交換になったらいいな。 12月3日(水) 小松さんはクリスマスは田中くんと二人で遊びに行くらしい。 「それって、クリスマスデートだね」 「うん。でも……」 「でも?」 「私、彼の気持ちが全然分からなくて、ちょっと不安かも……」 「分からない?」 「うん。何回か二人で遊びに行ってるのに、田中くん、私のこと好きって一回も言ってくれないし、 付き合おうってことにもならなくて……」 え? 私もう小松さんと田中くん付き合ってるって思ってたんだけれど……。 とは言えなかった。 男女二人で何度も遊びに行っているのに、付き合ってない。 そういう関係もあるのかな。 男の人の気持ちって分からない。 12月5日(金) 来週から期末テスト。 中間テストがなかなかひどい出来だったから、 挽回できるように頑張ろう。 週末は勉強漬けにする予定。 会長に勉強教えて欲しいとかいろいろ書いて消して今に至る。 12月9日(火) いいね。 今のところ、期末テストはかなり良い手ごたえを感じている。 12月12日(金) 期末テスト終了。 最初から最後まで手ごたえを感じられたテストだった。 中間よりもずっといい結果が出るんじゃないかと思う。 12月14日(日) クリスマス会で交換する用のプレゼントを見に、 妹とショッピングモールに出かけてきた。 「え? お姉ちゃん男の人にプレゼントするの? 彼氏? いつから付き合ってるの?」 妹が矢継ぎ早に質問してくる。彼氏でもないし、付き合ってもない。まだ。 と答えようと思ったが、そうすると、また質問攻めが始まるだろうから、 「どうだろうね」とだけ答えておいた。 しかし、クリスマスプレゼントってどういうのがいいんだろう。 今日一日見て回ったけれど、正解が分からなかった。 12月15日(月) マフラー アロマキャンドル 帽子 香水 服……はなんだか重たい感じがするし、 相良先輩に当たったら着れないだろうしなあ。 12月18日(木) 期末テストの結果は相当に良かった。 だけれど、私はクリスマスプレゼントのことで頭がいっぱいで 喜びにあまり浸れなかった。 私って、目の前に気になることがあると、 喜ぶべきところで喜べないような部分あるのかなあ。 12月19日(金) 聞く相手を間違えたのか。 あるいはそういうのが標準なのか。 VRでなおさんにクリスマスプレゼントの件を話したら、予想だにしない展開になった。 「う~ん、私だったらギターの弦とかもらえると嬉しいかなあ。 でも、プレゼント交換って、誰に当たるか分かんないんだよね?」 「そうなんですよ」 「じゃあさ、ポン酢とかいいんじゃない?」 「え? ポン酢?」 「そうそう、ポン酢! あれかけると何でも美味しくなるしさ、ポン酢嫌いな人っていないじゃん?」 悪ふざけしているのかなと思ったけれど、話し方からそんなそぶりは感じられない。 彼女は、本気だ。 本気でポン酢を推しているのだ。 なおさんの価値観は独特で面白いけれど、その案は私の中では却下となった。 12月20日(土) そう言えば、前に会長が 「冬は手荒れがきつい」って言ってたな。 そうだ……そうなると……! 12月21日(日) 生徒会のクリスマスパーティー用に私が用意したプレゼントは 少し高めのハンドクリームとなった。 ほんのり甘い香りがして、保湿効果も抜群の優れものだ。 そして、ささやかながら、 私は会長の言葉を聞き逃していませんよ、というアピールにもなる。 これだったら、相良先輩や中根くんに当たっても問題ないだろうしね。 あああ楽しみ。 もしもこれが会長に当たって、それを会長が喜んでくれたら……。 もう今年のクリスマスは、今まで生きてきた中で一番幸せなクリスマスになる。 12月23日(火) 今日が終業式で、明日は生徒会のクリスマスパーティー。 あああぁ楽しみ。 本心を書いてしまおう。 会長に私のプレゼントが届いてほしいし、会長のプレゼントが私は欲しい。 私、会長がくださったものであればきっと何でも大切にします。 ですから、お願いします。 神様、会長のプレゼントを私にください。 そして、私のプレゼントを会長に届けてください。 12月24日(水) 人生とは総じて思い通りにはいかないものである。 相良先輩の家で行われた生徒会のクリスマスパーティーは、 終始楽しい雰囲気のまま、つつがなく進行した。 待ちに待ったプレゼント交換の時間、 私の手に渡ったのは、相良先輩の用意した上品なマグカップだった。 うん。 このマグカップは、見た目もかわいいし、とても実用的でいいと思う。 さすが相良先輩だ。 そして、相良先輩の手には、私が用意したハンドクリームが……。 ああもう! どうしてこんなことになるの!? 本当に人生って思い通りにいかない。 会長は中根くんとプレゼントを交換したことになり、 私は中根くんがうらやましかった。 なんだか不満ばかり書いているけれど、クリスマスパーティーはとても楽しかったし、 こんなにウキウキした気持ちでクリスマスを待つということ自体、 幼い頃以来のことだったので、 開催が決まってから今日まで、すごく良い数週間を過ごせたと思う。 相良先輩、素敵な会を主催してくださってありがとうございます。 会長、メリークリスマス。 中根くん、今度会長のクリスマスプレゼント、私に見せてね。 12月28日(日) 今日は生徒会で地域の清掃。 生徒会としては今年最後の活動になる。 会長を見るのも今年最後になるのかな。 今日もすごくかっこよかった会長、 私、あなたに出会えて良かったです。 会長に出会ってから、私は、今まで知らなかった感情をたくさん知りました。 来年も、よろしくお願いしますね。 願わくば、もっと親しくなれますように。 12月30日(火) これは夢じゃないよね。 元旦に、会長と初詣に行くことになった。 それも二人で! 生徒会のライングループで、 会長が生徒会のみんなで初詣に行かない? と提案したのだけれど、 相良先輩も中根くんもご両親の実家に帰省して行けないということで、 流れで私と会長の二人で行くことになったのだ。 ああああ嬉しい! 当日のことを想像したらニヤニヤしてしまう。 元旦に会長と二人きりなんて、 そんなの、最高の年始としか言いようがない。 楽しみ。楽しみ楽しみ! 12月31日(水) 早く明日にならないかなあ。