この度は当サークルの作品をお買い上げいただき誠にありがとうございます。 あとがきでは、私がこの作品を作るに際し意識した点をいくつか述べます。私自身の備忘録としての側面もあってお見苦しいところなどあるとは思いますが、おまけとして楽しんでいただければ幸いです。 設計意図 寝取られ/寝取りが連鎖するという構造的な面白さがアイデアのもとであったと記憶しています。最初は「クーリングオフネトラレカノジョ」といった元鞘っぽいお話を考えていたのですが十分な内容が練れず、短編集にしたところ収まりがよくなりました。 ヒロインの造形は比較的遅くに作られ、今の自分の文体から冒険しない無難なキャラクターになったと思います。名付けも結構適当ですね。聞き手だから「ゆう」とか話し手だから「あい」とか。別にナオミでもエンマでもいいくらいには凝らずにつけています。 NTRの中の小分類について、トラックの特徴を保つためにある程度ジャンルの多様性が出るようにしました。それでも、個人的な好みから避けたジャンルもいくつかあります。不可逆性が高くなる妊娠や衛生的に好みではない汚じさんなどですね。 この作品に限らず私の同人活動のモチベーションの一つに「自分の書けるもの、書きたいものを知る(あるいは逆に書けないもの、書きたくないものを知る)」があります。そのためには多様なジャンルに一旦触れる必要があり、NTRという大テーマに沿った短編集が適していました。ただ、結果としてトラックごとのターゲットが発散し商品としてはあまり良くないものになったかもしれないという反省があります。 Tr.1 幼馴染は年上に勝てない。 対等な立場の異性がより高いステータスを持った相手に取られるという、スタンダードなNTRを目標にしています。 このトラックでは年上の優位について性知識に絞り、無知シチュとBSSというテーマで書きました。恋心が性欲で塗り潰されるのってエッチですよね。 シチュエーションについて、ビデオ通話という場面設定はリアルタイムで進行し寝取り側と寝取られ側とのインタラクティブなやり取りが可能という点で優れています。逆にビデオレターは不可逆な過去に寝取られたという無力感、普段の格好をした現在のヒロインとビデオの中で乱れる過去のヒロインというギャップを作れる点が優れていますね。どっちも好きです。 Tr.2 オタクはヤンキーに勝てない。 これが当初の組み立てでした。パソコンオタクのお兄さんからバスケ部部長のヤンキーへ……という。執筆当時この二人に接点を作ることが難しく設定を変更したため形骸化したコンセプトです。清楚な彼女が不良に汚されて……というストーリーは頻出ですが、今回の場合お兄さんも大概なのでギャップが弱くなってしまいましたね。 脅迫や強姦がNTRに含まれるかという議論は非常に難しいものだと思います。歴史として性暴力に関する表現規制からNTRというジャンルがレイプの置き換えとして生まれ、さらに浮気や乗り換えを内包して発達していったというのが私の認識です。この意味では当然含まれるでしょうが、ヒロインの心情にNTRの真髄を見るという方々からすれば同意のない行為は芯を外したものに映るでしょう。 余談ですが私個人は性暴力系の作品が苦手な傾向にあります。興奮よりも痛々しさが勝ってしまうんですよね。トラックが短いのもそういう要因があるのかもしれません。 Tr.3 未成年は大人に勝てない。 当然。ターナー段階Ⅲのガキがしゃしゃるなよと。高校生というのは性成熟の途上であって到達点ではないんですね。体格差を感じさせる要素として首絞めを入れました。 このトラックのテーマが逆NTRとなっていることについて。脅迫と違って逆NTRは「本当に」NTRと異なる文脈のジャンルだと思います。NTRが性欲を軸に描かれるのに対して逆NTRは略奪愛や執着心といった恋愛感情からアプローチするものが多いことも裏付けになります。またその観点からこれが逆NTRに属するかについても結構怪しいところがありますね。(後述するTr.6のために)ヒロインは恋愛感情なしに教師に迫っていますから。全トラックにNTRに関するテーマを入れたかったという必要性からこのように名付けましたが愛好家の皆さんに受け入れられるか正直ヒヤヒヤしています。 このトラック以降作品全体の雰囲気は女性優位なものに変わっていきます。受動的に関係を結んでいたヒロインが主体に転じて背徳に興じるというキャラクター心理に起因する部分があるにはあるのですが、音声作品が話し手優位で作りやすいという都合の方が大きかったように思えます。 Tr.4 直情的なプレイはテクニックに勝てない。 ほんとかー?ここの強弱関係についてはかなり怪しいですね。作中でもヒロインはわざと負けている節があり、自分で決めた流れに執筆中自分で疑わしくなっているのがわかります。 ただ快楽堕ちというテーマに照らすと一定の説得力が生まれると考えています。自分としては快楽堕ちとは「堕ちる快楽」でありそこには負けたがる心があるのではないかと。ただ、気丈なヒロインの心を折るもの(なんならこっちが主な意味かも)や快楽を感じるもの全般まで快楽堕ち判定されていることもあり、難しい概念です。 Tr.5 野性は知性に勝つ。 おじさまが「ムード」とか呼ぶものをバックハグひとつで醸成できる、圧倒的なオスを目指しました。 このトラックはBBC(big black cock)を微妙にかすりながら外すように作っています。人物名を「ジョージ」として日本人でも通じるようにしたり、肌の色に言及しないようにしたりですね。体育教師とキャラ被りが強くなり作品のメリハリが減じるデメリットはあるのですが、BBCというジャンルの歴史的背景や政治的なアレコレから踏み込みが浅くなりました。 寝取らせというテーマはなかなか難しいもので、なぜ進んでそんなことをするのかという疑問を解消しなければ共感を得づらいでしょう。このトラックではより優れたセックスを見たいという探究心を原動力にしています。「おじさま」の年齢には言及していませんがお年を召すと性機能も減退しますからね。後進に譲る頃です。 このトラックの反省として、尺が長いのにフィニッシュが急という問題がありました。また最後のビデオのくだりもオチへの興奮に足るものかと言われると疑問です。報告って難しい。 Tr.6 寝取られは純愛に勝てない! 念のためもう一度、寝取られは!純愛に!勝てない!!! 寝取られが連鎖する構成においても最後のトラックではその終端を描く必要があり、これを始端と繋げるというアイデアはかなり自然な発想でした。結果としてNTR作品なのに純愛に。作品紹介では検索除けの目的で伏字にしています。ふつう逆じゃないか? しかしこれだと幼馴染のゆうくん大勝利なので「両思いセックス最高に気持ちよかったから!」でバランスをとります。あくまで興奮のためのカッコ付きの「純愛」シチュですね。割とフラフラしがちなヒロインのキャラにある程度一貫性を出せたかなと思っています。 声は月屋めの様です。年齢や立ち位置が作品内で変化していくヒロインを、美しいお声で演じていただきました。 特にトラック3の首絞めパートは台本の想定以上に臨場感ある演技で、個人的なお気に入りポイントです。 イラストは三本翠様です。蠱惑的な美貌のあるヒロインの姿をしっかりと形にしていただきました。 今回は暗い色をメインでお願いしましたが、色彩鮮やかなイラストも魅力的なのでクレジットのリンクからぜひご覧になってください。 ここまでご覧いただきありがとうございました。作品の幅のためにしばらくNTRを書くことはないと思いますが、次に挑むことがあれば『ボヴァリー夫人』よろしくヒロインの心の動きに焦点を当てて、恋愛の側面を強調した作品になるでしょう。