……あ。来た。 大丈夫、待ってないよ。 私も、さっきついたところだから。 ごめんね、急に呼び出して。 うん、少し、話したいことがあってさ。 とりあえず、こっちおいで。 ……うん。 ふふっ。 ここ、きれいだよね。 来るのは少し大変だけどさ。 ここだけ空が空けていて……。 ……。 ほら。 上、見て。 ……ね。 星が見える。 冬の、綺麗な星。 あの白くて一番光ってるのがシリウスで、 近くにあるのが、プロキオン それから……。 あの赤い星が…… うん、ベテルギウス。 あの星だけ、他より少し浮いてるけど、 でも、そこを中心に冬のダイヤモンドが出来てるっていう。 ふふっ。 なんか、星を見てると心が落ち着いてくるよね。 空気も澄んでてさ。気持ち良い。 こういうところは、やっぱ、好きだな。 ……ん。 はは。 ばれちゃった? 明るく、話そうと思ってたんだけど。 ……あのさ。 私の夢、覚えてる? あの海で君に話した……。 歌手になりたいっていうの。 自分の気持ちを歌にのせて、誰かに届けたくて……。 それで、君に隠れて、オーディションに申し込んでみたんだ。 仮歌ってやつ。 コンペティション用のがあってさ。 ……ん。だって恥ずかしいし。 結果が出てからじゃないと君に言えなくて。 それに、君に褒めてもらえたから、少し怖かった。 期待を裏切っちゃうんじゃないかって。 でね、なんか。 ……ん、合格。しちゃった、私。 ……うん。 ふふっ。 嬉しい、そんなに喜んでくれて。 だけど、さ。 デビュー候補っていう扱いらしくて、 寮に入らないといけないんだって。 そう。 毎日、レッスンがあったり、それから生活も管理されるみたいで。 ……うん。 だから、この町から、離れないと、いけなくて……。 君とも、しばらく、会えなくなっちゃう。 ……。 ごめんね、急な話で……。 これからも、いろんなこと、したかったけど……。 ……でも、ずっと思ってきた夢だからさ。 どうしても、諦められなくて。 小さいころからずっと、 自分を閉じ込めて生きてきたのに、君が引っ越してきてくれて。 それで、私、変われたから。 だから、そんな私を否定、したくないから。 行こうと思う、東京。 応援してくれる? ふふっ、やっぱ、君を好きになってよかった。 うん、頑張る。 頑張って、ちゃんと大きくなれたら、君ともまた、会えるから。 そしたらさ、また、続きしようよ。 あの日の。 ふふっ。