……ん、っと。 ……ん。 ……あれ、君は? ……あぁ、転校生。 今日から? ふーん、そうなんだ。 そういえば、この席。ずっと空いてたっけ。 うん、あまりここに来ないから、今知った。 ま、いろいろあってさ ……あぁごめん、私。清水愛芽。 愛が芽生えるって書いて愛芽。 よろしくね ふふっ。フルネームって。 固くなりすぎじゃない? まぁ、呼び方なんてどうでもいいけどさ。 でも、そんなに畏まってると、浮いちゃうんじゃない? うん、ここの人、閉塞的だからさ。 最初に輪に入っとかないと。 ま。私が言えたことじゃないけど。はは。 ふ~ん、それにしても転校生かぁ。転校生。 いきなり知らない人が隣にいるの、こんな感じなんだ。 うん、こんな田舎。 他所(よそ)さまがくるなんて、めったにないから。 なんかちょっと、不思議な気分。 どっから来たの? この辺? えっっ、東京?! あぁごめん、いきなり大きな声出しちゃって。 ちょっと、うん、憧れとか、ね。 へぇ、ふぅん。でもそっか。 そしたら、ここにきてびっくりしたんじゃない? 何にもないでしょ、ここ。 あるのは山と、田んぼと、たまーにくるお客さん用の古いペンションくらいで。 少し歩くだけでカエルとか蝉とか、ちっちゃな猫ちゃんの声も聞こえてくるしさ。 ふふっ。それが落ち着くって。 なんかおじさんみたいな事言うんだね、君。 でもまぁ、たしかに。それはあるかも。 私も、疲れるとついつい何にもないのに出かけたりする。 ん、けど、そっちだとほら、 いろんな音楽が鳴ってたりするんでしょ? アイドルとか、ロックバンドとか、いろんな。 そっかあ、私、君に興味湧いてきた。 うん、だって、私の知らないこととか、いっぱい知ってそうだし。 クラスで聞こえてくる話題って、いつも同じ感じで。 なのにさ、その輪に入らないと疎外されちゃうっていう。 でも、君はみんなと違いそうだし。 というか、なんか、私を見てるみたいで、すごく新鮮。 ふふっ。 えぇ、じゃあさ。 君の話も聞かせてよ。 うん、君の地元のことじゃなくて、プライベートの。 自己紹介、聞き逃しちゃったからさ。 大丈夫だよ、あの先生、おばさんだからさ。 私達のことなんて、何も見えないって。 多分。 ほら、例えば、何が好きなの? 向こうだといろんな娯楽があるんだから、 一つくらい好きなの、あるでしょ? へぇ、ふむふむ。 アニメ……? アニメ。 ふ~ん、そっか。 私は詳しくないけど、この前やってたあれ…… なんだっけ…… えっと、魔法少女だけどなんか変わってて。 たしか、相手を黄泉送りにするの……。 あぁ、そうそう、それそれ。 ふふっ。 いきなり饒舌に。 本当にアニメ、好きなんだ。 君の笑った顔、なんか可愛いね。 畏まってるよりさ、ほら。 先生 「ちょっと、そこの二人。 先ほどから話し声が聞こえますよ。 (愛芽さん、その子は転校したばかりなんですから。 あまりからかわないでくださいね。)」 ふふっ、ちゃんと見られてたみたい。 ごめんごめん。 もう。 せっかくいいところだったのに、やっぱあの先生苦手。 ……ね。 授業終わったらさ、また話聞かせてよ。 君のその感じ、面白いからさ。   ん、じゃ、よろしくね、今後も。