01_「先輩、ちょっとお時間、良いですか?」 「ここに居たんですね。先輩」 「少し時間が掛かりましたが、見回り等終えて戻りました。今日も小さいゴタゴタはありましたが……問題なしです」 「巡回するにしても……アビドスは結構学区が広いですし、自転車とかあればーとか思っちゃいますね」 「……あ、この荷物ですか? この荷物は……」 「……」 //ちょっとだけ慌てた感じ 「ちょ、ちょっといろいろ、です。大したものじゃないです。単なる……私物ですよ。気にしないで下さい」 「……」 「……えーっと、先輩、ちょっとお時間、良いですか? これから用事があるようでしたらまた今度、で構いませんが」 「特に予定はない、ですか。では、先輩、ちょっとお時間、頂きますよ」 「何をするのか気になるって顔、してますね。えーっと、私もどうしたらこのアビドスに新入生が来てくれるか色々と考えてみたのですが……」 「最近は学校宣伝のビラや冊子も相当数撒いていますし、もしかしたら学校見学に来てくれる生徒さんもいるかもしれないな、と」 「そのときの印象ってやっぱり大事じゃないですか? 第一印象――ファーストインプレッションが良ければもしかしたらそのまま入学や転校してくれる可能性も無きにしも非ずですし」 「……確かに、先輩の言うように掃除やおもてなしのお菓子を用意しておくのも大事ではあると思いますが……」 「それよりももっと大事な、ファーストインプレッションを決めるものがありますよね」 「……うーん……確かに校門を綺麗にしたり飾り付けたりするのも大事ではあるんでしょうけど……もうちょっと目に付くようなものがあるじゃないですか」 「そうです。アビドスを訪ねてくるときに目にする看板や標識を増やしたり綺麗にしたり――」 「……はあ。確かにそれも重要ですし、そこらへんもおいおい整備していくとして……ファーストインプレッションで大事なもの、あるじゃないですか」 「……わかりませんか、先輩。見学や体験に来た生徒が一番最初に目にするもの、それは――先輩ですよ。先輩」 「……どういうことって……学校そのものや校風も確かに大事だとは思いますが、やっぱり良くも悪くも印象一番印象に残るのは生徒会長だと思うんです」 「もちろん、私もちゃんと案内や説明はするつもりですが……それでもやっぱり、一番は生徒会長である先輩が一番大事です」 「私だって、先輩が生徒会長だったから、みたいなところはあるんですから」 「と、言うわけで先輩。今日は来るべき見学や新入生に備えて……先輩のファーストインプレッションアップ作戦を行います。良いですね?」 「大丈夫ですよ。特に先輩に何かして貰うということはないので。ちゃんと準備もしてきましたし、すぐに取り掛かれます」 「さて、それでは先輩、ちょっとお時間、頂きます」 02_「やはり手と指先の印象は大事、ですよ」(ネイルケアとハンドマッサージ) 「では先輩、早速始めますね」 「……はい? 何でしょうか?」 「何をするのか気になりますか? 先輩の第一印象を少しでも良く出来るよう、私が調べたことを実践しようってだけですが」 「私も大概ですが……先輩、私とふたりきりなのもあって身だしなみや身なりに手を抜きがちな気がするので」 「というわけでまずは……手を出して下さい、先輩」 「はい、お手――でなく、ですね」 「……いえ、握手でもなく……こう、手のひらを下にして……ですね……というか、爪切りやヤスリを出してるんですから、わかりませんか?」 「そう、そんな感じ……って、両手をいっぺんに差し出されても困るので……まずはどちらか片手だけで……」 「はい、有難う御座います。では……先ずは指先のお手入れから――先輩、手、ちょっと失礼しますね」 「……どうして爪のお手入れなのか、と? 第一印象について調べたら出てきました」 「以外と人は靴や手、指先が印象に残るようですし、それらが清潔だと印象も良くなるそうです」 「靴は……砂埃ですぐに汚れてしまうので適宜綺麗にするとして、手――指先はこうしてお手入れ、出来ますからね」 「……多少は自分でもしているようですが、しっかりとしたお手入れはしていないでしょう? 普段見ているので分かります」 「……折角綺麗な手と指なのに……勿体ないですよ、先輩」 「はい、こっちは終わりです。逆の手、下さい」 「――有難う御座います」 「では、こちらの爪も失礼しますね」 「……というか先輩、今更で申し訳ないんですが……爪切り、痛かったらちゃんと言って下さい。血が出たりしてないので大丈夫だと思いますが」 「……折角私にして貰うんだから、多少痛くても我慢する……? 意味がわからないんですけど……痛いときは我慢せずにちゃんと言って下さい」 「痛いのを我慢するようでしたら……あるかわかりませんが、次はありませんよ」 「……まあ、あまり深く切るつもりはないので大丈夫だとは思いますが」 「人のことは言えませんが…ちゃんと自分ででもお手入れしないといけませんからね」 「あまり深爪をするとキズになってしまったり、巻き爪になってしまったりするらしいのでこれくらいで。これくらいのほうが爪の見た目も良いみたいですし」 「……いえ、お礼を言うのはまだ早いですよ。まだこれからなので手はこのままで」 「次は――爪、研ぎます。痛くなるようなことはないと思いますが、痛くなったらちゃんと言って下さい」 「……さっきのの爪切り程じゃないですが……爪を研ぐのもやっぱり緊張、しますね」 「人の爪を切るのも爪を研ぐのも、初めてなので」 「……上手いと言っても何も出ませんよ。ですが……有難う……御座います。動画を見て一応どういった感じにするのかは勉強したので」 「勿論、他の人にするのは初めてですよ。ご存じのとおり練習するにも相手なんていませんし」 「おかげ様で自分の手も指も結構綺麗になっちゃいました」 「……指先が綺麗になっているの、気付いてた……んですか? おしゃれに目覚めたのか、と思ってた……」 「生憎、そういう理由ではありません。御覧の通りです」 「はい。こちらは終わりました。逆の手、お願いします」 「有難う御座います。続けますね」 「……先輩の指、やっぱり綺麗ですね。普段見ていても綺麗だと思っていましたが……」 「……こうして改めてじっくり眺めて触れていると……やっぱり綺麗だなって思います、先輩の手」 「白くて細くて……それに……なんというか優しさが感じられます。上手く言えませんが」 「……いえ、先輩に比べると小さくて子供みたいな手ですよ、私の手なんて。練習で手入れはしてあるので小綺麗ではありますが」 「まあ……銃火器のお手入れや細かい作業がしやすいので……小さい手も悪くありませんが」 「……小さい手も好き……それは……どうも。有難う……御座います」 「……私も……先輩の手、好きですよ」 「……全く、何を言わせるんですか、全く」 「はい。こちらの手も爪とぎ、お終いです」 「どうでしょう? 比較的綺麗に仕上がったと思います。先輩の手――指が元々綺麗だから、というのも大きいですが」 「あ、手はまだそのままで。まだ続きますから」 「次は……爪の美容液?っていうやつ、塗ります」 「ただちょっと塗るだけなので……すぐ終わりますよ」 「マニュキュアや流行りのネイルアート?とかのほうが良いかと思ったのですが……そういうのは好みもあると思いますし……それに、ユメ先輩はナチュラルなほうが似合うかなと」 「こういった爪の美容液は色付いたりはしませんが、艶が出たりしますよ。私も試してみましたし」 「あ、マニュキュアも透明なのもあるみたいですし、ツヤツヤな爪が気に入ったりしたら後からそれを塗ってみても良いかもしれません」 「勿論、先輩がしたければマニュキアやネイルアートでも。先輩の指には似合うと思います」 「はい、こちらの手、オッケーです。爪に艶が出ると綺麗に見えますよね」 「では、また逆の手を」 「有難う御座います。では、こちらも」 「はい? あー……私は見てのとおり、マニュキアもネイルアートも興味がありませんので、する予定はありません」 「お手入れをして綺麗になるのは嬉しくはなりますが……それ以上となると特に、って感じです」 「……ふたりでお揃いのマニュキュアやネイルアートにしたら楽しそう……?」 「はぁ。そういうのは仲良い友人同士でするものですよ、先輩」 「……いえ、私と先輩が仲が良くないというわけでなく……」 「……ま、まあ……き、機会があれば……あまり派手でないものでしたら……先輩とお揃いでしたら……しないこともないかもしれないでs」 「はい。こっちも終わりです。お揃いの話は……また、そのうちにでも……」 「とりあえず、爪のケアは完了です。どうです? 爪がピカピカ綺麗になると嬉しくなりません?」 「ファーストインプレッションも絶対によくなりますよ、これは」 「でも……まだもうちょっと、仕上げ的なものを」 「爪も大事ですが……手――指先を綺麗に保つのも大事、だそうです」 「なので……仕上げにハンドクリームで……」 「あっ、これは両手を一緒に出来るので、両手を出してください」 「……有り難う御座います」 「痛いとかは無いと思いますが……嫌だったら言って下さい」 「……私は乾燥する季節に、極稀に保湿やらでお手入れをすることはありますが……最近まではあまりハンドクリームやらは使っていませんでした」 「……手が乾燥しているよりはちゃんと適度に潤いがあったほうが気持ちは良いですね。銃火器のお手入れのときに静電気の心配も減りますし」 「なので、たまには私もハンドクリームやらでお手入れをしようかと思いますが――」 「……ああ、やっぱり先輩も乾燥する季節以外ではあまりお手入れはしていない感じですか。折角綺麗な手なのに勿体ないですよ」 「……先輩も手のお手入れに興味が出て来てたりします? お手入れしたら絶対に私よりも綺麗になりますよ、先輩の手」 「……ふたりで手のお手入れを頑張ったら、手の綺麗な生徒がアビドスに居る!って評判になって新入生がきたりとか……!」 「これはちょっと名案かもですね。早速明日――いえ、今夜からちゃんと手のお手入れ、頑張りましょう!」 「あ、ついでにハンドクリーム、残り少なくなってきているので一緒に買いに行くのも良いかもですね!」 「……って、すみません……勝手に盛り上がってしまって……」 「はい、ハンドクリームと手のマッサージ、お終いです。お疲れ様でした、先輩」 「とりあえず先輩のファーストインプレッションアップ作戦、1つめは終了です」 「勿論、手だけでは終わりませんので……まだ続きます。もっと先輩のファーストインプレッション、向上して貰いますから」 「というわけで……もう少々お時間、頂きますよ、先輩」 03_「髪の毛が綺麗だとつい目が行ってしまいますからね」(簡易ヘアカット&ケアと肩マッサージ) 「さて、手が綺麗になった後は……次は――どうすると思います?」 「……美味しいものを食べて身体の内側から綺麗に元気になる……あー……それも凄く良い案だとは思いますが……違いますね。それだと即効性に乏しいです」 「た、確かに……美味しいものを食べたときの顔は素敵ですが……ずっとおいしい顔、してるわけにもいきませんし」 「先輩の名案は……そのうち、余裕のあるときにでも採用するとして――」 「次は……じゃじゃん、これです」 「手や指先にも目は惹かれますが……次はもっと目につきやすい髪の毛のお手入れを、です」 「シャンプーや頭のマッサージから、とも思ったのですが……学校だと難しいので、簡単なお手入れ程度です」 「あっ、大丈夫です。先輩はそのまま座ってて下さい。新聞紙を敷くのなんてすぐ終わりますので」 「と、言ってる間に終わりです。あまり大掛かりに切るつもりはありませんが、後片付けが楽なように」 「よし、っと。では……髪の毛、失礼しますね」 「……本当はシャワーで髪を流したりとか、そういうところから出来れば良かったんですけど……冷たいシャワーだと身体が冷えてしまいますからね」 「はあ、先輩は別に構わなくても……私は冷たいシャワーは夏でもあまり浴びたいと思わないので……」 「というか、ふたりで一緒に浴びる前提になってません? どちらにせよひとりででもふたりででも冷たいシャワーは――」 「先輩の家の温かいシャワーで……? ま、まあ……そのうち、機会があれば……先輩の家で、でも……」 「……ふ、ふたりででは入りませんよ。先輩がどうしても、というのでしたら……そのときにでも考えますが……」 「よし、っと。先輩、髪の毛はやっぱりちゃんとお手入れしているんですね。こんなに長いのにブラシ通りが良かったです」 「最近試供品で貰ったシャンプーが良いだけで、特に念入りにお手入れをしているわけではない――んですか? はあ、なるほど」 「でも先輩……最初に出会ったときから髪の毛は結構綺麗だった記憶が――あ、でもやっぱり……ちょっとだけ毛先は傷んでいますね」 「毛先だけ、ちょっとハサミでカットしていきますね。長さを変えたりとかはしませんので。枝毛を落とすだけでも髪には大分良いそうですから」 「折角こんなに長くて綺麗な髪なのに……勿体ないですよ。私はこの通り、手入れなんてしてもしなくても大して変わり映えはしませんが……」 「私が髪の毛をサラサラつやつやにしたって誰も気にも留めませんし、どうせ動き回ってすぐに乱れたりしそうですし……」 「……まあ、手と同じで綺麗にしたら綺麗にしたで気分よく過ごせたりするかもですが……」 「先輩は学校の顔なので……髪の毛を綺麗にしておいたほうが良いです。初対面で綺麗な髪を見たら「おおっ!」ってなるでしょうし」 「やっぱり……印象の良い先輩や生徒会長のいる学校には憧れるものでしょうし」 「……私、ですか? 私は――第一印象で決めたわけではありませんよ。ご存知でしょうけど」 「……私がアビドスに入学した理由……言ってませんでしたっけ? 何か、サラっと聞かれてサラっと答えた記憶もありますが……」 「……大した理由でもないので……別に答えても全然良いんですけど……改めてだと何か恥ずかしいですね……」 「……」 「……あー……それじゃあ……先輩が卒業するときにでも教えますよ。卒業式のあとに「実はこんな理由で入学しました」みたいに言ったら感動しそうですし」 「そのときまでに入学希望者が現れてくれたら……先輩も安心して卒業、出来るんですけどね」 「よし、っと。毛先、枝毛になっていたところはおおよそカット出来たと思います」 「折角毛先を整えたんですから今夜からは髪のお手入れ、頑張ってみて下さい。今後はたまに髪の毛、チェックしたりしてみますので」 「……長いと乾かしたりが面倒かもですが……そこは気合で」 「私も……今夜から一緒に髪のお手入れを……? う、うーん……短くしているのを見て分かるように、私は髪の毛のお手入れに興味は……」 「はあ……確かに……会長だけでなく……名前ばかりとはいえ私は副会長ですし……やっぱり外部の生徒への印象は大事ですからね」 「折角だし髪のお手入れするものも一緒に選びに行くのも良いかもですね。ひとりだとなかなか買おうと思っても実際には手に取りませんから」 「はい、一旦ブラッシングはここまでにして……」 「自分でカットすることも多くて滅多に美容室に行ったりしませんが……こうしてマッサージ?のおまけ、つきますよね。動画でも見ました」 「先輩、いつも頑張ってますし、それに肩も凝りそうですし……ちょっとだけですが肩のマッサージを」 「人の身体をマッサージするのは慣れていなくて――というか、初めてなので……力加減が今一つだったら言って下さい」 「……先輩の肩、思ったより細くて柔らかいですね。凝ってる感じは……多分無いと思います」 「好みの強さは良くわからないので……希望があれば遠慮なくどうぞ。一度教えて貰えれば多分今後も同じような感じには出来ますので」 「……どうですか、先輩。肩、少しは楽に……なってますか。それなら良かったです」 「先輩は普段から肩に負荷が掛かっているんですから……本格的にしんどくなる前にちゃんとケア、しないといけませんよ」 「私は……何日もぶっ通しで動き続けた、とかで無ければ肩が苦しくなったりはしませんよ。普段から肩が〜とか、腰が〜とか言い始めたら……おじさんみたいじゃないですか」 「私が「うへ〜、腰が〜」とか言うの、似合うかも……? 何ですかそれ……似合うわけないですし……期待されてもそんなこと、言いませんよ」 「……まだまだ若いんですから……そうならないように気を付けて下さい」 「まあ、肩やら腰やら、そういった部分のケアやマッサージはなかなか自分では難しいと思うので……」 「しんどいなあと感じたときには……言って頂ければこうしてマッサージくらいならしますよ。効果のほどは定かじゃありませんが」 「……先輩には元気で居て欲しいですし……それにほら、いつ見学の生徒が訪れるかもしれませんし、先輩にはいつもシャキッとしていて貰わないと」 「もうちょっと財政に余裕があれば……生徒会室に生徒会専用のマッサージチェアとか置いたり出来るんでしょうけど……」 「あー……でも……そんなものを置いちゃったら……先輩にずーっと占領されることになっちゃいそうですね」 「えー……意外と私みたいな人間が気に入って動かなくなっちゃったり? 「あ゛〜……」とかいいながら? はぁ……それこそ本当におじさんじゃないですか……」 「まあ……借金もありますし……上手いコト金策が出来たらマッサージチェアの導入、検討しましょう」 「生徒会室にマッサージチェアが!というのもアピールポイントになったりしそうな気もしますし」 「そういえば……他の学校は様々なアピールポイントというか、特色がありますよね」 「先輩のファーストインプレッションアップ作戦を進行中ですが……他校にも負けない何か個性があったりしたらもっと入学――まではいかないまでも、見学は増えたりしそうな気もします」 「とはいえ、そういったものは一朝一夕でどうにかなるものでもないですけど……ああ、そうですね。砂祭り、また復活させられたら……興味を持ってくれる生徒も増えるかもです」 「はあ……ですがそのためにもすることは山積み、ですね。お互い、あまり無理のないように頑張りましょう」 「……先輩は特に頑張りすぎるんですから……もうちょっと手を抜くとか……私を頼るとか、して下さい」 「……私も……頼りないかもしれませんが……副会長なんですから……」 「……しっかりと目標は見定めつつ、出来ることからコツコツと、ですねー、やっぱり 「本当に小さなことからコツコツと、しか出来ませんが……宝くじとか当たれば……ちょっとは楽に返済出来たりするんでしょうけど。まあ、宝くじなんて買ったこともありませんが」 「それか……酔狂なお金持ちのご令嬢でも入学してきて、そのお金で――というのは他力本願過ぎてよくありませんね。そもそもそんなご令嬢は――トリニティやミレニアムにでも行きそうですし」 「法律的にも宜しくない闇銀行を襲う――とか、ちょっと考えましたが……分かってます。そういうのも却下ですよね」 「代々受け継がれてきているとはいえ、学校の借金は私たち生徒が返済すべきですから」 「……とりあえず……新入生や転校生が来てくれるのはまだ先でしょうから……それまではふたりで頑張らないと、ですね」 「とはいえ、さっきから言っていますが……無理は禁物ですから。先輩が倒れたりしていなくなってしまったら……困りますので」 「私は――大丈夫ですよ。先輩が倒れるよりも先に私が倒れるなんてことはありませんよ。ご存じの通り、身体に似合わず丈夫さと頑丈さは先輩には負けませんので」 「なので……お互い無理はしないようにしましょう。私も無理はしないので、先輩も無理しないように」 「逆に先輩が無理をしたら、私も無理をしますから」 「何かあったら私も先輩を頼るので、先輩も私を頼って下さい」 「こうしてマッサージをして欲しい、とか。どういう風にでも頼ってくれて、良いですから」 「はい。髪の毛のケアと肩のマッサージ、おしまいです。もっと続けて欲しければこのまま肩のマッサージを続けても良いですが――」 「いつまででもマッサージをして貰いたくなっちゃうからこれぐらいで良い、ですか。私はいつまででも先輩にならマッサージしていても良いですが……では、今日はこれぐらいに」 「髪と肩の次のメニューも考えてあるので。次に移りましょう」 「もうちょっとだけお付き合い、して頂きますので」 「では、次は――」 「次は……何だと思います? 先輩」 「と、そのまえに……次のメニューに移る前に……ちょっと顔を洗ってスッキリ、しましょう」 「あ……い、いえ……と、特に深い意味はなく……気乗りしないのであれば……別に構いませんが……ちょっとおトイレに行くついでにでも顔を洗ってスッキリと……そ、そうですそうです。私もトイレに行きたかったので、先輩もぜひ一緒に……そしてついでに顔を洗ってスッキリと」 04_「そしてお顔がツヤツヤで健康的だとなおよし、です」(乳液フェイス+@マッサージ) 「では、次……ですが……」 「手、指、髪の毛ときたら次は――そう、お顔です。お顔のマッサージです」 「お顔を洗って貰ったので……もしかするともしかして、バレちゃっているかもしれませんが……」 「髪の毛と違って肌が荒れてるとか、そういうことはなく、先輩のお顔――お肌は美容に疎い私でも綺麗だとは思うのですが……さらにブラッシュアップを、です」 「……本当はお化粧まで出来れば良かったのですが……私にはまだちょっと未知の領域なので」 「では……失礼しますね。正面からよりも後ろからのほうが勝手が良さそうなので……このまま」 「まずは……乳液を手のひらに乗せて」 「……そのままお顔につけてしまうとヒンヤリしてしまいますので……ほんの少し手のひらで馴らして……」 「……多分……これぐらいで大丈夫……なはず……」 「では、今度こそ失礼します」 「冷たく……は、ないみたいですね。それなら……続けます」 「先ずは頬のあたりから……円を描くように……だったはず……」 「……こうしてお顔をマッサージするの、動画を見て勉強しただけで……実際に自分でも殆どしたことなんてないので……あまり上手く出来ているかわかりませんが……」 「……ちゃんと自分の顔で練習はしましたが……やっぱり自分自身にするのと他の人にするの、ちょっと勝手が違うので……」 「大丈夫ですか? 違和感等は……むしろ良い感じなら良かったです。続けます」 「……やっぱり……自分のお肌とは触り心地が違いますね。先輩の頬、私よりも柔らかいです」 「普段から見ていて柔らかそうだとは思っていましたが……触れてみると想像以上に柔らかい、ですね」 「……う、うへ〜……ち、違いますよ? 普段から先輩の頬を眺めては触れてみたいと思っていたわけではなく……顔を合わせていれば頬なんて必ず視界に入るものなので――」 「……必死に言い訳をすると逆に怪しくなりますね。ちゃんと分かっている? そ、それなら良いですが……」 「あ、頬の次は……顔の周り――フェイスライン?ですね」 「……こうして……耳のほうから顎に向かって……すーっと撫でるような感じで……」 「……そしてその逆も……」 「先輩のお顔をマッサージしている私の指先がほんのりこそばゆいのですが……先輩は……」 「ギリギリ大丈夫……そうですね。くすぐったくて無理になったら言って頂くか思いっきり笑って下さい」 「……それでやめるかどうかは保証しませんが。なんて」 「次は……おでこを……」 「あっ……今更ですが……この乳液の匂いは大丈夫ですか? あまり詳しくないので……花の匂い、みたいなやつにしましたが……」 「……好きな匂いだから大丈夫、ですか。それなら……先輩の好きな匂い、ちゃんと選べて良かったです」 「私くらい先輩といつも一緒に行動していれば、好みもちゃんと把握出来ますから」 「……まあ……先輩が好きなイラストは把握は出来ますが……ちょっと可愛さは理解出来ませんけど」 「と、今更ですが……こうしてマッサージするのは……大人しく静かに、のほうが良かったり……したりします……?」 「……私がたくさん話しかけてくれてとても嬉しい……? そ、そんなことを言われても……な、何も出せませんよ……」 「さて、次は目の周りもマッサージするので……開いてたら目、閉じて下さい」 「……瞼の」 「目の周りは……他の部分以上に優しく……」 //他人:ひと 「……他人の瞼を撫でる機会あんてありませんし……何かドキドキしてしまいますね」 「他人の眼球って……こんな感触、なんですね。瞼越しではありますけど……」 「……ち、違いますよ。妙なことを考えたりしたわけじゃなく……ただの感想です」 「……先輩も触ってみたい……? ま、まあ……構いませんけど……」 「……では、お言葉に甘えて……そのうち私も先輩にマッサージ、して頂きましょうか 「はい。お顔のマッサージはこれぐらいで。こういうの、すればするほど良さそうなイメージがありますが……し過ぎはかえって良くないらしいです」 「顔がポカポカしてきました? それは血行が良くなっている証拠だと思うので……マッサージ、上手く出来てたみたいですね」 「何度も練習した甲斐がありました。良かったです」 「どおりでここ最近顔に艶があると思っていた……。まあ……朝晩と練習していたので……」 「確かに……自分でもしっとりしてるなあとは思ってました。顔も、手も」 「さて、次はお耳を」 「普段は髪の毛に隠れていて見え難いですけど……ちらりと見えるお耳が綺麗だと印象が良いらしいですから」 「というわけでお耳も失礼します。くすぐったかったり苦手だったら言って下さい」 「なんとなく……耳のほうがくすぐったそうなので」 「……大丈夫そうので……続けます」 「……瞼のときも言いましたけど……他人のお耳を触るのも……なかなかレアな体験ですね」 「というか……瞼もお耳もですけど……お顔も……なんなら髪の毛だって他人のを触るの、なかなかレアですね」 「私なんか……先輩のを触ったのが初めてですし」 「先輩も、ですか。まあ……そうでしょうね」 「……って、そうでしょうね、というのも失礼ですね。すみません」 「これから新入生が増えたら、他の人の身体に触れる機会も増えるかもしれない?」 「……そう、ですね」 「……って、思わず同意してしまいましたけど……たとえ新入生が入っても……こうして触れ合えるくらいに身近になれるとは限りませんし」 「先輩ならあっという間に打ち解けて仲良くなれると思いますが……私は先輩ほど社交的でもありませんので」 「勿論、新入生が来たらしっかり努力はします。ただ……得意ではない、というだけです」 「……べ、別に……先輩が新入生と仲良くなって、今、私がしてあげているようなことをするようになっても……ヤキモチを妬いたりなんてしませんよ」 「……多分、ですけど」 「仕上げにちょっとだけお耳の中のほうまで」 「……ここまでする必要は無い気はしますけど……折角なので、ついでに」 「……というか、こんなところをマッサージしていたら……私の声、聞こえなかったりしそうですね」 「少女漫画とかだったら聞こえていないのをいいことに、普段言えないことを言ったりとか、そういうことをしたりするんでしょうけど……」 「……」 「いつも有難う御座います。ユメ先輩」 「はい、お耳もお終いです。これでお顔のマッサージはお終い――」 「……あー……お顔もですが……そういえば――」 「首も綺麗だと印象が良くなるらしいので……少しだけマッサージを」 「……まあ、先輩の首は何もケアしなくても十分に綺麗ではありますが……先輩の首筋、細くて柔らかくてしっとりして……触り心地、良いですね」 「というか……さっきから同じような話をしてますが……他人の首筋に触れるのは……思いの外にゾクゾクしますね」 「……あっ、やっぱり先輩も、ですか。目や耳もですが……首は急所ですし、服従の合図に首をさらす動物もいるみたいですし……だからゾクゾク、しちゃうんでしょうか」 「……いえいえ、先輩は私に服従はしないで下さい。むしろ逆に、私が服従する立場ですから」 「……あとで、服従の証に首筋、差し出しますよ」 「はい。今度こそお顔のマッサージ、お終いです。お疲れ様でした、先輩」 「あとはメイクは――出来ればバッチリ仕上がるんでしょうけど……生憎、私にはまだ早そうなので……」 「……先輩ならメイクなんてしなくても全然綺麗だと思いますし……したらさらに素敵になると思います。ファーストインプレッションもバッチリです。先輩を見かけたら体験入学、したくなりますよ!」 「よし。というわけで、ファーストインプレッションアップ作戦、無事終了です――って、はい? どうしました? 先輩」 「はぁ……マッサージで顔がポカポカしてたら……お耳の中がムズムズしてきた……?」 「……あー……そういうことがあること、失念していました……」 「……うーん……困りましたね。どうしましょうか? 我慢出来ないレベルでしたら……病院でも探して――」 「そこまでじゃないけど……耳かきをちょっとしたいくらい? なるほど」 「耳かきですか……耳かき……」 「……」 「……分かりました。では……先輩のファーストインプレッションアップ作戦番外編、といきましょうか」 「……と、耳かき棒ではなく、綿棒とローションでのお耳のお掃除とマッサージになりますが……良いですか? 硬い耳かき棒が良いのであれば探してきますが――綿棒で大丈夫ですか。では、今日は私の手持ちで」 「あー……えーっと……お耳の掃除をすること自体は全然良いのですが……流石にこのまま座って、というのは難しいので……ちょっと体勢というか姿勢というか、変えたほうが良いと思います」 「というわけで……移動、しましょうか、先輩。ちゃんとどんな姿勢が良いか、把握してますので」 「……お耳の掃除をして欲しいと言ったのは先輩なんですから……恥ずかしがらないで下さいよ」 05_「……耳かき? なぜかここに耳かき棒があるので……仕方ありませんね」(なぜか仕上げの普通の耳かき) 「……丁度良く生徒会室にソファーがあって良かったですね。流石に床やパイプ椅子を並べて、だと心地が良くないと思うので」 「というか……私の細い足での膝枕だと……あまり心地よくなかったりは……しませんか。それなら……このままで大丈夫、ですね」 「では、お耳の掃除をしますが……頭、力を入れて浮かせたりしなくて良いですよ。膝の上に乗せて楽にして下さい」 「折角のお耳掃除なのに首が疲れてしまっては勿体ないので。先輩の頭くらいなら全然苦になりませんから」 「どうぞ。遠慮なく」 「やっぱり少し首に力、入れてましたね、先輩。本当にそのまま身体を預けてくれて良いですから」 「さて、それではお耳、失礼します」 「自分でするのは慣れてますが……他人にするのは初めてなので……ローション付きの綿棒なので大丈夫だと思いますが……違和感や痛みがあれば言って下さい」 「……多少であれば良いですが……我慢はほどほどにして下さい。ちゃんと言ってくれないと……怒りますよ」 「……ちゃんと表情、眺めながらお耳の掃除、しますから」 「……お耳がムズムズってことでしたけど……先輩のお耳、綺麗ですね。やっぱり血行が良くなってムズムズしちゃったんでしょうか」 「それよりも質問? はい? なんでしょう」 「……どうしてお耳掃除セットを都合よく持っていたのか……? さ、さあ……偶然バッグに紛れてたんじゃないですか?」 「荷造りをしていたときにでもこう、どこかから転がって入っちゃった、とか」 「……もしかしたら、と思って入れておいただけですよ、先輩」 「……そういえば先輩、新入生の勧誘の他にも金策についても考えてみたのですが……空いている時間にアルバイトとかしてみるのはどうでしょう」 「借金の金額に比べたら焼け石に水だとは思いますけど、それでも足しになるかなと……」 「あ、いえ、何となくこの前通りかかったラーメン屋さんにアルバイト募集の張り紙が出ていたので……ふと思っただけです」 「……まかないで食費も浮くでしょうし、その分も返済にあてれば――と思いましたが……」 「……ですよね。相談したら絶対に「私もいっしょにやろうかな」って言い始めますよね、先輩は」 「ふと思っただけですし、アルバイトまでしてしまったら……学校の活動をする余裕もなくなってしまいそうですし」 「せめてもう少しだけでも生徒が多ければ……アルバイトをする余裕も出てくるんでしょうけれど」 「……となるとやはり新入生や転入生に期待するしかありませんね。そうすれば余裕もゆとりも生まれそうですし」 「……経理や書記を任せられるようなしっかりした後輩でも入ってきてくれると私としては有難いかもです」 「経理や書記は……私も先輩も得意とは言い難いですし……事務仕事の得意な子が入ってくれれば――」 「……私が経理や書記が得意だと思っていました? まさか……好きでも得意でもないです。やらなければいけないのでやってるだけですよ」 「まあ……先輩は生徒会長としての仕事で忙しいでしょうし、私が出来ることはやりますが……」 「と、捕らぬ狸のなんとやら、ですね。新入生であればどんな子でも歓迎、です」 「折角だからムードメーカーになるような元気な新入生もほしい、ですか?」 「はあ……元気なムードメーカーも良いですが……私はどちらかというとおっとりしていて場を和ませてくれるような子のほうが嬉しいかもです」 「賑やかな雰囲気も好きですが……あまり馴染みがないので……和やかな雰囲気のほうが性に合ってる気がします」 「……おっとりな子だと先輩とキャラが被ってしまう……? 確かに……ですが、おっとりした子は何人いても良いと思います。和みますし」 「まあ……どんな子でも構いません。新入生が入ってくれれば、どんな子です」 「スケバンや不良な生徒が入ってきたらちょっと困りますが……そのときは先輩とふたりで頑張って矯正、するしかありませんね」 「……それが上手くいって不良の矯正で有名になって、不良の入学がたくさん――は、ちょっと微妙な気持ちになりますが……」 「さて、お耳の掃除……もうちょっと奥のほうまでしますので……痛かったら言って下さい」 「自分でするときはそれなりに深くお耳の掃除をしますが……他人のお耳だと勝手が違う部分もあるので……痛みや違和感にはさっき以上に警戒をお願いします」 「……大丈夫そう……ですね。表情もしっかり観察しつつ、このまま続けます。引き続き違和感等あれば即座にお願いします」 「……」 「…………」 「……やっぱり先輩のお耳、綺麗ですね。まあ……毎日お耳のお掃除をしたくなる気持ち、よーくわかりますが」 「毎日するのは良くないとは知りつつも……これだけ砂埃舞うアビドスで生活していたら……したくもなります」 「大分慣れはしましたけど……砂埃、結構厄介ですからね。砂浜とか、そういったレベルの多少の砂であれば良いんですけど……」 「まあ、砂もアビドスの名物ですが……流石にモノには限度っていうものがありますし」 「やはり……何か植物を植えて緑化を……と思いましたが、それはそれで専門的な知識も必要ですし」 「何事も長期的な目で見て行かないといけませんね、やはり。金策も砂漠化対策も新入生の勧誘も」 「先輩が在学中――そして私が在学している間に少しでも事態が好転していけば良いなあと思います」 「……こうして長期的な視点でモノを見ようとするの、学生っぽくないですね。大人みたいです」 「……長期的に考えておいて損なんてことはありませんし、まだ見ぬ後輩のためによりよい学校にしていくのも生徒会としても大事ですから」 「……遠い未来のことを考えるのも大事ですが……やっぱり今も大事、ですよねぇ……と思ったり」 「やはり今回のファーストインプレッションアップ作戦で体験入学の生徒を呼び込むしかありませんね!」 「もし効果があるようだったら……また続けてこの作戦を継続させて頂きますので!」 「……まあ、効果があまり感じられなくても……先輩の希望でしたらマッサージやお手入れやお耳の掃除、しますよ」 「先輩、結構気持ち良さそうにしてくれてますし……多少でも骨休めになるのであれば、私は喜んで」 「……疲れていると私が判断した場合、半ば強制的に、でも良いですけど」 「はい、こちらのお耳、お耳の掃除、終了です」 「ふーっ、ふーっ、ふーっ」 「さて、では逆向きになって下さい」 「はい、ごろーん」 「有難う御座います」 「それでは、こちらのお耳も失礼します」 「……こっちのお耳もやっぱり綺麗ですね。先輩、流石です」 「……確かに……砂埃の多いこの気候だと頻繁にケアしておかないと、ですから」 「……いつ私にお耳掃除をされても良いように綺麗にしていた? はあ……そんなわけ、ないでしょう」 「私たちには単なる日常の風景になっていますが……砂埃、厄介ですからね」 「お肌も髪もお耳も、そして銃火器も普通よりもちゃんとケアしないといけないのは……ちょっとだけマイナスイメージかもですね」 「まあ、でも住めば都と言いますし、新入生もすぐに慣れてくれると思います。私もすぐに慣れましたし」 「アビドスというと砂、みたいなイメージばっかり持たれているかもしれませんし……そこらへんの誤解も解けると良いかもですね」 「学校紹介や名所やイベントの案内は冊子にまとめてあったりしますし、その他で……」 「……」 「……例えば、美味しいお店をまとめて冊子で宣伝してみるとか、どうでしょう」 「噂ですが、確かゲヘナ学園の美食研究部……の1年生に美味しい食べ物に煩い子が居て、その子が美味しいと言ったお店は必ず繁盛する、とか」 「そういった方面から攻めてみるのも良いかもしれません。口コミというやつで、アビドスに興味を持ってくれるかもしれませんし」 「……でも良くない噂を耳にしたこと? そう、なんですか? 私はそこまでは知りませんが……」 「気に入らなかった店は爆破してしまう……? 流石にそれは……何かの間違いじゃないですか? ゲヘナだから話に尾ひれがついたmとか」 「ただ気に入らなかっただけで爆破なんて……流石にゲヘナでもそんな生徒がいるとは思えませんが……」 「……一応、機会があれば美食研究部の1年生について調査、しておいてみます。風紀委員の情報部の気になる生徒の調査もしたいので」 「それも良いけど、もっと効果的な方法がある――んですか? 先輩の案はいつもこう……まあ、聴くだけ聴いてみます。どんな案ですか?」 「可愛いアイドルの格好をしてふたりで見学や体験に来た生徒を丁寧に案内する……? はぁ……なんですかそれは……」 「ふたりで案内するのは良い案だと思います。それは私も考えてました」 「……が。が! が! しかし! しかし、ですよ。なぜアイドルなんですか? 普通――いつもの格好で良いですよね!?」 「……普通の格好よりもアイドルの格好のほうが印象に残るって……それはそうですが……確かに、ファーストインプレッションは大事だと言いましたが……」 「ただアイドルの格好をしてーだけだと、そこまで印象に残らない気がします。アイドルの格好だけ、格好だけのアイドルはこう……浅いです」 「……それなら歌と踊りも用意したら良い? しかもオリジナルで? 歌って踊りながらアビドスをご案内……?」 「……はぁ。先輩も私も、作曲も振り付けも出来ないじゃないですか……先輩、実は才能があって両方出来る、とかなら可能性がありますが」 「……いえいえいえいえ、私はどっちも出来ませんよ。出来るわけないじゃないですか……」 「アイドルとかそういうのは可愛い可愛い新入生がやってきたらお願いしたら良いんです」 「とにかく、アイドル衣装は却下です。衣装代や楽曲、振り付けをお願いするお金もありませんし。というかアイドル衣装を着るくらいなら前に宝探しのときに着た水着で案内するほうがまだマシですよ」 「えっ……? じゃあ水着で案内を採用……って、先輩……今のはモノの喩えであって、本当にやるって意味じゃないんですけど……」 「そんなに着たいなら先輩だけ着て案内をすれば良いです……って言ってしまうと本当に先輩だけ水着になりそうな気もするので……ダメです。いつもの制服にします。副会長命令です」 「……なにはともあれ、案内が出来るような未来が来れば良いですね、先輩」 「では、こっちのお耳も中のほうまで綺麗にしますので」 「痛みや違和感があったらすぐに言って下さい」 「こっちも大丈夫そうなのでこのまま続けます。何かあればちゃんと知らせて下さい」 「……」 「…………」 「……改めて考えると……やはりすることもしなければいけないこともたくさんありますね、先輩」 「急いてはことを仕損じる、といいますし、出来ることからコツコツと、が大事なのは分かっていますが……」 「それでも時間は有限ですし……最悪、来年は私ひとりででも頑張らないとなあと思ってたりです」 「……私が寂しそうだからもう1度3年生をやろうかなとか、そういうことは絶対に言いださないで下さいね」 「……そりゃあ、もう1年一緒に先輩と学校生活を送られたら……嬉しくないことはないですが……」 「それはそれ、これはこれ、です。ちゃんと卒業して……来られるのでしたら、たまに遊びにでも来て下さい」 「って、何を言わせるんですか。全くもう」 「……私が勝手に喋っただけ? た、確かにそうですが!」 「……確かに……今日はいつも以上に喋っている気がします。というか、喋ってますね、私」 「……折角の時間ですし、静かにしていたほうが良かったですか?」 「たまにはこうやってたくさん喋ってくれるのは嬉しい……そう、ですか。それなら……良かったです」 「こう……こうして先輩にあれこれしてあげていると……なぜか勝手に言葉が出てくる、みたいな……」 「なので、頼まれても普段はこんなには喋りませんので。喋りたくなったら喋りますけど」 「はあ……黙っているところもかっこよくて可愛いとか、褒めてるのかそうでないのかわかりませんよ、先輩」 「……私は……お喋りしている先輩も黙っている先輩も、どっちも先輩だなって思いますよ」 「はい、こちらのお耳も掃除、これくらいで」 「ふーっ、ふーっ、ふーっ」 「よし、っと。お耳、綺麗になりましたよ」 「ムズムスしていたのは良くなりました?」 「そう、ですか。良くなったのなら良かったです。では、今度こそ先輩のファーストインプレッションアップ作戦は終了ということで――」 「……はい? ついでなのでちょっとだけお願いがある? お願いの内容によりますが……」 「折角だからもうちょっとこのまま横になっていたい? では、私はちょっと見回りにでも行ってきますので、先輩はこのまま――」 「……膝枕でこのまま? 膝枕よりもソファーのほうが寝心地が――」 「……はぁ。膝枕が良い、ですか。そうですか。先輩がそこまで言うなら……構いませんよ。もうちょっとこのままで」 「それでは……先輩が満足するまでどうぞお休みを。お耳の掃除は……流石にしすぎるのは良くないと思うのでしませんが」 「……さっきとは違って……何だか押し黙ってしまうんですけど……」 「……」 「……別に無理に話さなくても良い? そ、そうですか」 「……あー……先輩……」 「……いつも本当に……お疲れ様……です」 「……休めるときはちゃんと休んで下さいね」 06_「先輩。少し休んだら勧誘に行きますよ!」 「……あっ、先輩、おはようございます」 「……夢でもなければ、幻でもないですし、先輩の家に私が侵入して膝枕をしているわけでもありませんよ」 「先輩はどれくらい寝ていたか?ですか? 何か映画ででもありそうなセリフですね」 「うたた寝程度の時間しか眠っていませんよ。まだまだ日も落ちてません」 「というわけで……先輩もひと眠りをして元気になったと思いますので……」 「……いえ、元気にもうひと眠り――は、しません。しないで下さい」 「丁度街に人気も出てくる時間でしょうし……折角ファーストインプレッションアップ作戦を行ったんですから、顔を出してみましょう!」 「もしかしたら先輩を見かけた他校の生徒が見学に来てくれたりするかもしれませんし!」 「というわけで先輩、善は急げです。のんびりしている暇はありませんよ!」 「……あと5分だけ? そんなことを言って……無理やり起こしちゃいますよ?」 「絶対に……5分で起きるから……? 本当……ですか?」 「……うーん……」 「……ううーん……仕方……ありませんね。わかりました。あと5分だけ、です。5分経ったらシャキっと起きて、勧誘活動に行きますよ」 「……それじゃあ……もうちょっとの時間だけ……ゆっくりお休みを。ユメ先輩」