ねぇ…お兄さん… 傘…ないの…? 家、どっち…? あー…そっちなら私も帰り道だから、途中まで送ってあげよっか? うんん、遠慮しないで… 私…ちょうど独りが寂しかった所だから… 自分のためだから… ん? ダメなの? うんうん… そっか…世間体的に…か… 確かに…こんな真夜中に制服を着てる私と… スーツを着たお兄さんが相合傘して歩いてたら… 警察に職質されちゃうかもね… んっ…それじゃあ行こっか… え? ちゃんと聞いてたよ? 世間体的にアウトの話でしょ? 私…そんなことに興味ないから… 別にやましいことないんだからさ… 聞かれたら…正直に答えればいいだけでしょ? ほら、お兄さん…行くよ? ※ 終電で帰ってくるってことは、残業? そっか…大変だね… 私…働いたことないから… お仕事ってどれだけ大変か分からないけど… うん…そそ…アルバイトもしたことないよ… 欲しい服とかコスメとか…別にバイトしなくても買えるし… う~ん…? あっ…違うよ? パパ活とかやってるわけじゃないよ… 私…処女だし… この間…お父さんとお母さんが事故で死んだから… 遺産相続したんだ… それで…別に不自由なく暮らしてるの… 金額がかなり大きかったから…手続き大変だったなぁ… んぇ? どうして謝るの? あっ…もしかして… 死んだ話を掘り返したから…? うん…? どうして…? 別に遅かれ早かれ、人間はみんな死ぬし… 普通のことじゃない? 特段、不幸なことでもないよ… それに…両親のこと…大っ嫌いだったし… 私さ… ずっと虐待されてたんだよね… 家に帰れば…お父さんに殴られて… お母さんに罵られる… 二人とも…私のことを愛してなかったの… お前なんか生まなければ良かった… おろせばよかった… そう…何度も言われた… 最初は違ったんだよ…? すっごく優しかったし…大切にしてくれてた… でも…小学校に入ったくらいからかな…? 二人とも…人が変わったように…残酷で冷徹になって… きっとお仕事で何かあったんだと思う… で…優しさがなくなった変わりに… 食べ物もお洋服も住む場所も…すっごく豪華になったんだ… だけど…私はそんな…お金で買える幸せなんて…いらなかったな… 昔みたいに… って…私の自分語りをしてたら…お家に着いちゃった… んぇ…?そうだよ… このタワマンの最上階が私の家… やばいと思う? JKなのに…こんな所で一人暮らししてるの… でも…お兄さんが思ってるほど…私は幸せじゃないよ… ほら、おいで… 余ってる傘渡すから…家まで一緒にいこ? ※ ただいま… って…誰もいないんだけどね… んっと…確かこの辺に… あれぇ…? 無いなぁ… ごめん…傘…この一本しかなかった… じ~… じ~~… うん…やっぱり…好みのタイプかも… ねぇ…あのさ… この傘を渡す前に… 今からすっごく変なお願いをするんだけど… 嫌だったら無視して…? 私…すっごく寂しいの… 大っ嫌いだったお父さんとお母さんが死んで… 最初はすっごく嬉しかった…幸せだった… でも…気付くと…胸の中には虚無感ばっかりだった… だからさ… ねぇ…お兄さん… 私に飼われない…? 時給は一万円出すから… 私のペットになってよ…