おはようございます、社長 ……はい? 「いつもこんな早くから」……と言われましても… もう始業までそれほど時間はありませんよ? それに、私は社長の秘書ですから いつでも社長をサポートできるよう、先に出社して待機しておくのは当然のことです ではいつも通り、コーヒーをご用意しますね はい、お待たせしました 先日淹れたものが好評でしたので、本日も同じ豆を使用してご用意しております ミルクと砂糖も前回同様の分量で入れておきました お味はいかがでしょうか? ……かしこまりました。 今後もこの淹れ方でご用意いたします では本日の予定を説明しますので、そちらを飲みながら聞いておいてくださいね えー、本日は予定が5件ございます まずは…… はぁ……社長? まだ1件目の予定も説明してませんよ? あからさまにげんなりするのはやめてください 週明けで気分が乗らないのは理解できますが、そろそろ代表としての自覚を持っていただかないと 私も先代から「しっかり息子を律してやってくれ」と頼まれているのですから ……はい。 わかっていただければ結構です 特にこの時期は得意先から急な仕事の連絡が入ることも多いですから、しっかり気を引き締めてくださいね …… まぁ…… そうは言っても、社長はこのところ案件が立て込んで……お休みも取っておられませんでしたね 今からなら……使える時間はそれほど長くはありませんが……うん、可能そうですね 社長、私に考えがあります こちらまで来ていただけますか? 私がこうして……ソファに座りますから ……? 見ての通り膝枕ですよ 社長は横になって、ここに頭を置いてください 今日は1件目の予定まで、まだ時間がありますから この……綿棒を使って、社長を耳かきで癒して差し上げます はい、ささやかながら、これは私からの慰労です ……どうされました? 驚いた顔をなさって… もたもたしていると、時間が無くなってしまいますよ? ほら。早く頭を置いてください ……ん。 自分から提案したものの… この態勢で目が合うと、少し恥ずかしいですね… こほん。と、とにかく始めましょう まずはどちらかの向きに身体を倒していただけますか? はい。ではこちらの耳からですね 耳かきを始める前に、一度中の状態を見てみますね… んしょ……っと…… あら……奥のほうに、結構垢が溜まってしまっていますね これは取れるとスッキリしそうです それでは早速、綿棒を中に入れていきますね? 皮膚を痛めないよう、慎重に作業しますので。 そのまま動かないでくださいね… んん……気をつけないと、耳垢が奥に押し込まれてしまいそうですね そーっと……ゆっくり…… こんな感じ……でしょうか んっ…ふぅ… んん…ふ、ぅ… んっ…んんぅ 力加減は大丈夫そうですか? 痛かったりはしませんか? はい……でしたらよかったです ……ふふっ。 綿棒がこすれて気持ちいいんですね? まだ始めて少ししか経っていないのに、もう頬が緩んできていますよ 今日だけ、特別ですからね……? 耳かきでお掃除のついでに……擦れる音をじっくり聞いて、リフレッシュしてください ふぅ、ぅん… んー…はぁ、ふぅ… ……はい? 中の様子、ですか? んー……今掻き出している手前の方は、細かいのがいっぱいある状態ですね 奥はさっきも言った通り、大きい塊がありそうです まだ綿棒は届いてませんが、これは掃除のし甲斐がありそうですよ。うふふっ んぅ…ふぅ は、ぁ…ふ、ぅん… そういえば社長……ひょっとして、昨日はあまり眠れなかったんですか? 先ほど部屋に入るとき、あくびをしておられましたけど… もしかして、仕事の方で何か懸念事項があったりするのですか? ……そうですか。 私の杞憂だったら良いのですが… 少しでも気になることがあるのでしたら、すぐに共有してくださいね 社長は仕事が立て込んでいるとき、色々と1人で抱え込まれることが多いので… 過去にはそれで一度体調を崩されたこともありましたし はい、社長とは秘書になってもう長い付き合いになりますから。 ある程度はメンタルの傾向を把握しているつもりですよ 社長を傍で支えるのが、私の役目ですから その……仕事だけではなく、心のケアも。 私にできることは全てして差し上げたいです ……はい、もちろんです 私にお任せください。……ふふっ。 はい。これで手前のほうは綺麗になりましたね。 力加減は今のところ大丈夫そうですか? ……わかりました。では、このままで続けますね。 次はいよいよ、奥のほうを掃除しますので。 少し失礼しますね。 …… ん〜…… よく見ると垢が固まって貼り付いていて、取りにくくなっちゃってますね。 社長は普段ビデオ通話でこちら側にイヤホンをつけておられるので、 耳垢が押し込まれちゃったんでしょうか… ここは一度ふやけさせて、剥がしやすくしてから取りましょうか。 貼り付いてしまった垢は、無理に剥がすと皮膚を痛めてしまいますから。 えーと……あった、これだ。 これで綿棒を軽く湿らせてから……もう一度、中に入れますね。 ……ちょっとずつ、ちょっとずつ、湿らせた先っぽを耳垢に当てていくと… うん、段々と垢がふやけて柔らかくなってきてますね。 これなら上手く剥がせそう……かな。 んっ…ふぅ んんぅ…はぁ、ふぅ… うん、いけました。ふふっ。 これであとは、落とさないように掻き出せば… よし、取れましたよ。 耳の中をかなり占領していたので、少しはすっきりしたんじゃないですか? ……ふふっ、よかった。 ではまだ細かいのが残ってるので、それも取って綺麗にしていきますね〜 んぅ…はぁ… ふぅ…はぁ… ……えっ? 「いつもと雰囲気が変わっている」? そう……ですか? 自分ではあまり気づきませんでしたが…… 「敬語がときどき抜け」……あっ。 し、失礼しましたっ。気が抜けてしまって、つい。 そ、そうですね……こんな機会、滅多にありませんので。 社長に喜んでいただけるのが嬉しくて、思わず…… ……い、いえっ。 慰労とはいえ、勤務時間には変わりありませんから。 気を付けようと思います。 んんぅ…ふぅー… んっ…ぅん はぁ、ふぅ… うん……? 何かおっしゃいましたか? ……うふふ。私の耳かき、そんなに上手でしょうか? でも、こうして耳かきをするのは久しぶりなんですよ。 昔、隣に住んでた幼馴染の男の子がいたんですけど。 当時は弟みたいに可愛がっていて、よく耳かきをしてあげてましたね。 はい。私は兄弟姉妹もいない、1人っ子です。 その子が私より年下だったので、「お姉ちゃん」ってよく懐いてくれて。 「可愛いな」って思うと、つい甘やかしちゃうんですよね。ふふっ。 んっ…ふぅ…はぁ… ふぅ…ぅん はぁ…ふぅ ん……しょ…… そろそろ細かい垢も取り終わりそうですよ。 もうちょっとなので、そのまま楽にしていてくださいね〜 これでよし…… はい。 耳の中は終わったので、外側のこの部分も綿棒で綺麗にしておきますね。 耳の中だけじゃなくて、こういうでこぼこしたところも、意外と垢が溜まりやすいんですよ。 このあたりとか、綿棒を押し当てて軽くこすると……うん、結構取れてますね。 私も普段の耳掃除で、ここを忘れがちになるので…… お風呂上りはタオルでしっかり拭いて、意識的に綿棒で掃除するようにしてますよ。 ふぅ…ぅん はぁ、ふぅ… ちなみに今掃除している、普段私たちが「耳」って呼んでる部分。 ここは「耳介(じかい)」っていう名前があるそうですよ。 周りの音を集めて鼓膜へ伝える役割があって、 耳介によってどこから音が聞こえるのかがわかる仕組みなんだそうです。 ……ふふっ。 初めて聞きましたか? えへへ……そうですね、元々雑学には興味があったので。 テレビのバラエティーで雑学クイズのコーナーとか、好きでよく見てましたよ。 私、学生の頃から特定の科目が好きとか得意っていうタイプじゃなくて。 テストの成績も突出したものもなく、全科目だいたい同じくらいだったんです。 雑学もジャンルが幅広いので、ほかの科目よりもそっちの方が面白くて、 なんとなく追いかけちゃうんですよね。 それこそ秘書になるためにも、ビジネスマナーや英語スキル、一般常識みたいな、 色んなジャンルで知識を網羅してないといけないので。 そういうのは無理なく、むしろ楽しんで勉強してましたね。 今思えば私の性に合ってるのかもしれないなって思います。 うふふっ。 はい。これで右耳はかなり綺麗になりましたよ。 大きい耳垢も取れて、聞こえもかなりよくなってるんじゃないかなと。 ……ふふっ、そうですよね。 それでは最後に、仕上げをしておきますね〜…… はぁ〜…フゥゥゥぅぅぅ〜〜〜〜 ふぅっ…ふぅっ、ふうぅぅぅぅぅぅ〜〜〜…! ふふっ、ちょっぴりくすぐったかったですか? 意外と、こういうのには弱いんですね……社長。 でも……まだもう片方が残ってますから。 覚悟、しててくださいね? では、反対側に身体を向けてください? では、始める前に綿棒も新しいものに持ち替えて…… まずは中を見てみますね。 うーん……こっちもそこそこ垢が溜まってますね。 でも、イヤホンで押し込まれたりがない分、奥のほうは比較的綺麗に見えますね。 じゃあ綿棒のほうを失礼して……早速始めていきますよ ……ふふっ。このあたり、くすぐったくて気持ちいいんですか? まだ垢が取りきれてないので、もうしばらく触りますよ〜。 ふふっ。 ふぅ…ぅん んんぅ…はぁ、ふぅ そうだ……社長?せっかくなので、この機会に聞いてみたいんですが…… 先代からこの会社を継ぐのは、元々からご自身の希望だったんですか? あっ、いえ、今のは純粋な興味です。 一体どんな経緯だったんだろう……って。 例えば事業に興味があったりしたんですか? へぇ〜……なるほど。社長も先代を見て育って、同じ道に進もうと決めた、と。 小さい頃から見ていたものには、やっぱり影響を受けているものなんですね。 はい、私も社長と似たようなものですよ。 母が先代の秘書だった姿を、幼い頃からずっと見ていました。 ……私が秘書になろうと思ったきっかけ、ですか? そうですね……母は先代を支えるために、遅くまで雑務をこなしていて。 時折、自宅に持ち帰って残業をすることもありましたね。 でも……どれだけ忙しくても、母はすごく充実して楽しそうで……キラキラしてて。 「誰かの支えになれるのは嬉しいことなんだよ」って言っていたのが印象的でした。 気づけば私も母が取った資格の勉強をして、なんとなく同じ道に進んでました。 それからしばらくして、母の紹介で先代から社長の秘書になるよう言われたんです。 あはは……ちょっと恥ずかしいですね。 自分のことを話すのって…… ……? 「私と会って最初の頃を思い出した」? ……って、もうっ。 余計なことまで、思い出さなくていいんですよぉっ。 だって初めて就く仕事が、社長の秘書だったんです。 それも母と先代から任された、会社を継いだばかりの社長を支える大事なお仕事…… 「ちゃんとしなきゃ」って緊張しちゃうのは当然じゃないですか。 ホント社長ったら、意地悪言うんですから…… でも……そう、ですね。 母も私も、秘書という仕事が天職なのかもしれないなって思います。 ……もちろん、支えたいと思える相手がいてのお話ですけど。 えへへ…… と……とりあえず、耳かき続けますねっ。 んっ…ふぅ… はぁ…ふぅ… んっ…はぁ、ぅん… ……うん、手前のところは耳垢がほとんど取れて、綺麗になってきましたよ。 耳かきされるのももちろん気持ちいいですけど、 こうやって耳かきをする側も、綺麗になってくのを見るのは気持ちがいいですね。 ふふっ。 はい、これで手前のところは終了です。 それじゃ、そろそろ奥のほうを綺麗にしていきますね。 そのまま楽にしていてください ん〜……こっちは右耳よりも垢は少なそうですね。 特に固まって貼りついている様子もなさそうなので。 ふふっ、今ちょっと残念そうにしました? まぁ……さっきみたいに、ごそっと取れるのは気持ちいいですもんね。 んっ…はぁ、ふぅ んん…ふぅ…はぁ… んっ…ぅん… 私、家でたまに耳かきの動画を見るんですよ。 小さなカメラで耳の中を映すんですけど、ほとんどは取るのが大変そうなくらい溜まっている状態から始まって。 そういうのを耳かきや綿棒でごそっと取っているのを見ると、不思議とスッキリした気分になるんですよね〜。 それこそ、さっきの大きいのが取れたときは、動画のを追体験した気分でしたよ? うふふっ。 とはいえ、こっちの耳も細かいのが結構あるので、しっかりと綺麗にしておきますから。 掃除が終われば比較的スッキリすると思いますよ。 はい。これで耳の中の掃除は終わりました。 いかがでしたか?ふふっ。 ではこのまま、外側も綺麗にしていきますね。 んしょ……綿棒を持ち替えて……始めますよ? 今日は珍しく、社長の無防備な姿が見れて満足です。ふふっ。 初めてのことなので、ちゃんと社長を癒してあげられるか……不安だったんですけど。 えへへ……よかったです。 普段は仕事に集中してますから、こんな機会は滅多にありませんしね。 その代わり、リフレッシュの時間が終わったらキッチリと仕事していただきますからね? ふふっ。 …… ……えっ、「慰労のお礼」ですか? いえ、そんなのは気にしなくていいですよ。 私が「社長を癒してあげたい」って言って始めたことなので。 「なんでも」? ……本当に、なんでもいいんですか……? えへへ、それじゃあ……すぐには浮かばないので、この時間中に考えておきますね。 はい、ではこちらも息を吹きかけて終わりですね。 すぅ…ふぅうぅぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜 すぅー…ふぅうぅぅぅ〜〜〜…!ふうぅぅぅぅぅ〜〜〜! ……ふふっ。やっぱり社長の反応、可愛いです。 ごめんなさい、ついいたずらしたくなっちゃって。 ではこれで、両耳とも耳かきはおしまいです。 仰向けになってもらって構いませんよ。 ……ふふっ。耳かきだけでも少しはリフレッシュできたみたいでよかったです こういう音って、聴いているだけで気持ちいいですよね。 …… あ、そうだ。 まだもう少し時間もありますから、今度は…… こういうのは……どうでしょう……? ふふっ……ちょっとゾクっとしちゃいました? こうやって……耳元で囁かれるのも、癒しになるみたいですよ〜……? ちょうどいいので、この状態でさっきはできなかった、本日のスケジュールを説明してみましょうか。 では改めて……本日の予定は5件です。 1件目は、部品発注先の緋山商事(ひやましょうじ)で峰村部長と面会して納品項目の最終擦り合わせ、 2件目に…… ……社長? まったくもう、ささやきでもダメなんですか? 相変わらず、わかりやすくうんざりした顔するのはやめてください? きちんと聞いてもらわないと、後々の予定に支障をきたすんですからね。 ホントにもう……仕方ないですね。 それじゃあ、今はなにか他のことを…… …… じゃあ……えっと、その……今からの内容は、返事はしないでただ聞いていてくださいね? 面と向かって言うのは、ちょっぴり恥ずかしいので…… 【寝かしつけも兼ねて、空行をこれまでより空け目に読む】 ……毎日、朝早くから夜遅くまでお疲れ様です。社長。 私も日頃雑務に追われてしまって、ちゃんとは伝えられないことがほとんどですけど。 社長が頑張る姿は、ちゃんと私が傍で見てますよ。 商談となると、相手がどんな人でも上手く取り入って、丸く収めてしまったり。 私のことも気にかけて、雑務でバタバタする時には分担してくださったり…… それから……仕事に必要な知識も、私が帰宅した後にこっそり勉強してるのも知ってます。 ……ふふっ。 知らないと思ってましたか? 怠けがちに見えて、頑張るときはちゃんと頑張ってるんですよね、社長。 立場上、社長には厳しく接してるだけに思われるかもしれないですけど…… 私自身、仕事ぶりで社長を尊敬しているところがたくさんあるんですよ? 心から、社長の秘書でよかったなって思ってるんです。 私がたまに緊張して力が入っちゃったときは、社長がフォローしてくれて。 逆に、社長がだらしないところは、私が発破をかけて…… 社長とだったらこう……うまく噛み合って、2人で仕事を進めてるっていう実感が湧くんです。 社長を支えて、社長に頼ってもらいながら仕事ができてる……今がとっても楽しいんです。 母が先代の秘書だった頃に見ていた景色も、こんな感じだったのかなぁ、って思ったりします。 だから……いつも、ありがとうございます。社長。 ……もうっ。 恥ずかしいから返事はしないでください、って言ったじゃないですか。 しかもただの返事じゃなくて、褒め言葉で返してくるなんて…… おだてられても、これくらいのお返ししかできないんですからね? ふふっ。 こうして、頭を撫でられるのは久しぶりですか? もしかして……子どもの頃以来だったり? そうなんだぁ……こんなに可愛いのに…… あは……もしかして照れちゃってます? 「可愛い」って言われるの慣れてないのかな、社長ってば。うふふっ。 別にからかってませんよ。 ホントに可愛いから、可愛いって言ってるんです。 社長はあの時のこと、忘れちゃったかもしれないけど…… 私が秘書になってすぐの頃、最初に2人で飲みに行ったの、覚えてますか? 「これから一緒に頑張っていく仲間だから、まずはお互いのことを知ろう」って。 社長に誘われて、駅前の居酒屋で2人で親睦会したんですよ。 そのときの私、秘書の仕事もままならなくて、自分のことで精一杯で。 社長の前で失礼のないように、って、親睦会なのにすっごく緊張してて。 そしたら社長、お酒強くないのにすごいペースで飲んで、案の定酔いつぶれちゃって。 ……ふふっ、覚えてなかったんですか? まぁ、酔ってたので当然ですよね。 私に介抱される社長、子どもみたいですっごく可愛かったですよ。 ううん、ちょっと眠そうにしていたくらいで、社長に迷惑かけられたりとかはなかったですよ。 ただ……お酒が回ると本音が漏れちゃうタイプなのかなぁって思いました。うふふ。 ……うん? ふふっ。 「お互いのことを知ろう、なんて言ったけど」 「本当は……秘書なんて初めてだし、年下だし、どう接していいかわかんなくて」 「単に勢いで飲みに誘っちゃっただけなんだ」って。 そんなの……さすがに可愛すぎますよ、社長? 私が社長を支える立場なんだから、社長がそんなこと気にしなくてもいいのに。 社長の方が私より緊張してたって知った途端、私の緊張なんてあっさり解けちゃいましたよ。 ふふっ……大丈夫です。このことは、私だけしか知りませんから。 でも、あの時社長の本心を知ったおかげで。 「社長の秘書になってよかった」って……今でも思えるんです。 社長は、仕事ではかっこいいところがたくさんあって、子どもみたいに可愛いところもあって。 そして今は…… 社長のこと、もっと知りたい。 もっと社長のこと、甘やかしてあげたいなって…… 私、ずっと見たかったんですよ? 今みたいな社長の無防備なところとか、素で過ごしてるプライベートな社長とか。 でも最初に2人で飲んで以来、会社の飲み会でこういう可愛い社長は滅多に見れないし…… あの時はたまたま飲みすぎたってだけで……普段はほとんど飲みませんよね? それに、その……こうやって甘やかすのも私……やりたくてずっと我慢してたんですよ? 「好きな人が目の前にいるのに」、秘書っていう立場上、どうにもできなくて… …… ……あっ。 い、今のは……違っ……えっと…… さ、さぁ。 時間もそろそろですし……このくらいで終わりにしましょう? ほら。起きてください、社長。 ……こほん。 私はこれから、次の予定の準備をしますので。 最初はタクシーでの移動になりますので、時間までお掛けになってお待ちください。 あ、あの……なにか問題でも? そんなに視線を向けられると、作業がしにくいのですが…… ……! い、いえ……私はあくまで…… そ、そう! 秘書として、社長の疲れを癒す必要があると思ってしたまで……ですのでっ。 …… ただ、その…… 社長がもしご希望なのでしたら…… ご用命いただければ、また……して差し上げても構いません……よ? ……えへへ。 はい、お任せください。 あ……あくまで秘書として、社長の慰労のため、ですからね! お待たせしました。 手配したタクシーが着いたようですので、降りて向かいましょう。 あ……はい、本日の予定はタクシーの中でご説明します。 ……今度こそはげんなりしないで、ちゃんと最後まで聞いていただきますからね? ふふっ。 あっ……それと。 さっきお話しした「お礼」の件……まだ有効ですよね? ……はい。 内容、決まりました。 また、社長と2人で飲みに誘っていただけますか? 場所はもちろん、あの居酒屋で。 ふふっ……はい。楽しみにしてますね。 さぁ、行きましょうか。