//00 ん…? 召喚に成功…したか? はぁ、かなりの量の魔力を使ってしまったか…。 まぁ異世界人を喚び寄せる魔術のだから、当然なのだが…。 ……? んんっ、気がついたようだな。 ここは、オリディレート大陸の西の大国「ギルリア王国」領、「静黙の樹海」。 その最深部だ。 ふっ、驚くのも無理はない。 何せ、「オリディレート大陸」も「ギルリア王国」もお前のいた世界では存在しないのだからな。 お前は異世界からこの世界へ、私によって召喚されたのだ。 そうだ。改めて、私のことを教えておいてやろう。 私は、この館の主、大魔法使い「ローゼリア=ラ=フェブラール」だ。 この森で魔術研究をしている魔法使い。 人は私を「泰然のローゼ」と呼ぶ。 今日からお前は、その「泰然のローゼ」に使役される使い魔だ。 その二つ名の通り、私はこの館を出ず、1日の大半をこのソファベッドの上で過ごしている。 過去、攻撃魔法の多くをこの館で編み出し、 いち小国に過ぎなかったギルリア国を、魔法大国に成るまで貢献をした。 今や「オリディレート大陸」、列強の一国だ。ふふ しかし、新魔術を編み出したのも今や昔の話に過ぎぬ。 現代では、魔術で圧倒する我が国に、戦争をしかけてくる敵国などいないからな。 今はこうして、独り静かに自分の館で、密かに魔術研究をしているのだ。 だから私は、この国…いや、この大陸では知らぬ人などいないだろう。 …だが、私の存在を目で確かめたギルリア人はそう多く無いが。 何せ、多くの魔導書に、名を連ねている魔女だ。 そんなローゼ様に、仕えるのが異世界のお前なのだ。 うぬぼれるなよ。 お前は私の弟子にする為に召喚したのではない。ただの使い魔だ。 女性の場合、子宮で魔力を生産し、それを理性へと落とし込み「魔法」に昇華させる。 一方で、男子はキンタマで精液魔力を生産できるものの、それを魔法に換える術(すべ)を持たぬ。 つまり一般的に魔法を扱えるのは子宮の持つ女性だけであり、我が国でも魔法使いの殆どが女性だ。 だから男の弟子を取る理由などないのだ。 男であるお前を、この世界に喚んだのは、別の理由だ。 「この私、ローゼ様に『毎晩、魔力を欠かさず供給する』事」だ。 文字通り、私に魔力を供給するだけの使い魔だ。 ……以前までは、外部から魔力を得る必要はなかったのだが。 んん、少し端折り過ぎてしまったな。 一から話そう。 この世界の女性は、三大欲求が強ければ強い分、「魔法の才」に恵まれると言われている。 私は生まれながら、その3つの欲求…つまり「食欲」「睡眠欲」「性欲」が他人より、かなり強かった。 ん、私も例に漏れず魔法の才に恵まれ、お陰で歴史に名が残る程の魔法使いとなった。 その一方、この三大欲求の強さが邪魔でね。 魔術研究がしたくても、正直、この欲求に負けている人生だ。 暴食、爆睡、オナニー、この3つが私の長い人生大半を占めてる。 正直、魔術研究に費やした時間よりもな このデカいローブでも隠せないくらいの、だらし無い…いや大きな身体を見てわかるだろう…。 これでも、10年前はでかいローブに身体を十分隠せていたのだが…。 ふ、太ってはないぞ。す、少しだけ肉付きが良いだけだっ! …まぁ食欲だけでも抑える魔法掛けられれば、研究も捗るんじゃないか、と。 「食欲減衰魔法」を古の魔法書から読み解き、私自身に掛けたのだ。 食欲は抑えられたが、予想以上に魔力の消耗が激しくてな…。 日々の休息で得られる回復量よりも多い。 ……これ以上太りたくないので、なんとか魔力を外部から得ないといけないのだ。 そこで召喚させたのが異世界住人である「お前」だ。我が魔力媒体となる使い魔だ。 そう。 その精魔力を私へ注ぐ為に、喚ばれたという訳だ。 んん、まずい、今日の分の欲求減衰魔法の効果が切れ始めている…。 あぁ、魔力が底をつき始めているのだ… んん。 魔術研究の前線にいた頃はもっと魔力容量があったのだが、やはり歳を取るものではないな…。 さ、近くに来い。 お前にはまず、使い魔として契約を私と結んで貰うぞ。