お疲れ様です。こちらにいらっしゃったのですね。  ふふ。やはりお気づきでなかったのですね。  貴方らしいです。  ふふふ。貴方の集中力には、目を瞠るものがありますものね。  ですが、そちらの本を借りるのでしたら、そろそろ行かなくてはなりませんわ。  貸出手続き終了まで、あと十分程になりますもの。  ええ。今手にされているそちらの本です。  何だかとても熱心に眺めているようでしたから、てっきり借りられるのかと。  よろしければ、どのような本かお聞きしても?  まぁ……!  確かに少々意外ですけれど……思わず手に取ってしまうのもわかります。  綺麗な紫の本……私も惹かれます。    あら。では、見せて頂こうかしら。  ええ……素敵な本。  これは翻訳版で……原書は西洋の本、といった所でしょうか。  今日はこちらのご本を借りるつもりで、地下書庫へいらしたのですか?  全く同意です。ですから、このような出会いの機会があるのでしょうね。  あら……それは楽しそうです。  この辺りなんて如何でしょうか?  ふふっ。でも、私も、同じ気持ちです。  だって私達。『歴史の目撃者』ですもの……♪  ですが、ステージの前を偶然通った事で、事態は急展開。  『あちらで一息つきましょうか』。  そう声をかけた私達に、貴方はまるで無反応。  ある一点を見つめたまま、全く動かなくなってしまわれたのです。  その視線の先におられたのが……。      ……けれど、件の先輩につきましては、お名前さえもわからぬまま。  もし三年生だったのなら、卒業されている可能性さえあります。  彼女の捜索は、困難を極めるかに思えました。  だけど……!  そしてお二人は、紆余曲折ありながらも、少しずつ距離を縮め。  貴方の想いは実を結び、七月、めでたくお付き合いを始められました。  あら?  え?  あらあらまぁまぁ、これはこれは……。  ふふっ、ふふふふふっ♪    折角のおまじないなのですから、もっと大きなお願いをされても良いでしょうに……本当に奥ゆかしい方ですわね。  でも、貴方のそういった所が、萱島先輩の心を惹きつけたのだと、私は思いますわ。      ええ、参りましょう!  ふふっ……どのような効き目があるか……今から楽しみですね♪