■作品名 THE FIRST 胎内回帰 [Side B] ひざし 池崎ひなた(お笑いコンビ) ■ひざし プロフィール ▼池崎ひなた 年齢:22歳 身長:155cm 好きな食べ物:カレー、ラーメン、ルイボスティー 趣味:サウナ、一人カラオケ 最近がんばっていること:自然体でいること 性感帯:耳たぶの裏あたり ▼佐竹陽 年齢:28歳 身長:179cm 好きな食べ物:とにかくスースーするやつ(清涼菓子系) 趣味:サウナ、エゴサ 最近がんばっていること:5分前集合 性感帯:根性焼きの痕 【おまけ:THE FIRxx TAKE / ひざしの記録】 ーーレコーディングスタジオの廊下にて。 「なぁ、俺、やっぱ素人声だったんだな」 佐竹陽は半開きのYシャツの襟元を無意識に触りながら、 どうにもできない事実に苛まれていた。 「"でかおはぎ"の二人にも、『1000年に一人の素人声』って言われてましたもんね」 隣を歩いていた相方の池崎ひなたは、 グレーのトレーナーの袖口を指先でいじり、クスリと笑う。 緑のロングスカートが歩くたびにゆったりと揺れている……。 ーー佐竹とひなたは、「ひざし」という名の若手お笑いコンビだ。 結成からわずか3年、シュールな掛け合いとウィットに富んだ会話で笑いを紡ぎ出す二人がライブやSNSで話題を呼び、 最近ではテレビ出演の機会も増えてきていた。 そんな中、彼らは大きな挑戦の機会を掴んだ。 若手芸人の出演が珍しい人気深夜番組「神ペロ」への出演が実現したのだ。 主に中堅芸人が腕を競うこの番組で、二人は人気企画の「ガチ歌選手権」に挑んだ。 お笑いだけでなく歌唱力も問われるこの企画は、彼らにとって大きな山場となった。 そして今日は「ガチ歌選手権」で歌唱した曲、 「6741 〜未練STK〜」の配信用音源の録音を終えたところだった――。 スタジオの廊下には柔らかなカーペットが敷き詰められていた。 二人の足音は柔らかく、耳に心地良い余韻を残している。 その静かな音が、録音を終えたばかりの二人の緊張を和らげていくようだった。 「でも、意外とすんなり終わりましたね」 「すんなり終わったのはお前だけだろ……」 佐竹とひなたは並んで歩きながら、時折肩が触れ合うほどの距離を保っている。 廊下の照明が二人の影を長く伸ばし、壁に映し出していた。 佐竹は足を止め、少し疲れた様子で答えた。 「俺、『ざざざざざぁこ♡』って何十回言ったんだろ……しかも、使われたのが最初のテイクって」 「あんなにいろんな声で言ったのに……ふふっ」 いままでに聞いたこともない彼の高音を思い出して、ひなたは込み上げてくる笑いを必死にこらえた。 「もう、これ以上の苦行はないぜ」 佐竹は小さく溜息をつき、再び歩き始める。 ひなたは佐竹のペースに合わせて歩きながら言った。 「次の神ペロ、佐竹さんだけ呼ばれたらどうしよ」 「……無言で3分、現代音楽と言い切る」 「強気すぎる……」 ひなたはカメラワークの効いた佐竹の真顔を想像して、また笑いをこらえる。 やがて廊下の静けさが目立ち始めたころ、 佐竹は何か言いたげな表情を浮かべ、ちらりとひなたの方を見た。 「……あのさ」 彼は静かな声で切り出した。 「ん、なんですか?」 ひなたは佐竹を見上げ、首を傾げる。 「書いてくれた歌詞のたたき台見たとき、『ひなたって、俺のこと好きなの?』って思っちゃったんだけどさ……」 佐竹の声が普段よりも低くなっていることに、彼女は驚きを隠せなかった。 ひなたは一瞬言葉に詰まる。 「……あれは、私たちがビジネスパートナーじゃなかったら、どうなってたんだろ、って設定ですからね」 「なんだよ、前と同じこと言っちゃってさあ」 佐竹はさらに踏み込む。 「実は……とかじゃないの?」 ひなたは言葉を選びながら口を開いた。 「私の中で……」 「佐竹さんは、無いの。絶対、無いですから」 ひなたは念を押した。 「ふーん」 佐竹の声が突き当たりの壁に跳ね返った。 二人の間に、言葉にならない感情が漂う。 ひなたは唇を軽く噛んだ。 彼女の指先がスカートの端をつまみ、小さく捻っている。 その仕草には、何か言いづらいことを言おうとする緊張感が漂っていた。 覚悟ができたひなたは、唇を軽く引き締めた。 そして、声に力を込めるように口を開く。 「……あの、佐竹さん」 「ん?」 さきほどとは調子が違うひなたの声に、佐竹は緊張した様子で返事をする。 ひなたは決意を固めたような表情で続けた。 「今日、ついてきてほしい場所があるんです」 「……どこに?」 「私の…胎内音を、録りに……」 佐竹は目を丸くして、ウソだろ、と信じていない様子だった。 「でもいま流行ってるよなー。マタニティフォトみたいなもん?」 「あぁ、たしかに。それに近いかも」 ひなたは視線を落とし、右手の親指と人差し指でサイドの髪を挟むように弄りながら、言葉を続けた。 「ここのスタジオで録音できるんですよ。だけど、ちょっとだけ、怖くて……」 「お前にも怖いことがあるんだな」 ひなたは少し怒った様子でムーッと喉を鳴らした。 「……集合時間まであと20分、ちょっと早かったかな?」 ひなたは手に持っていたスマホから予約完了メールを開いて、佐竹に画面を見せた。 収録時間の欄には『2時間が目安』と記載されている。 「これがドッキリじゃないってわかるのがな……」 佐竹は苦笑いを浮かべながら、「参ったな」と付け加える。 「アハハッ、現実見ちゃいましたもんね」 ひなたは軽やかに笑った。そのあと、目元が少しだけ緩み、まつげが揺れた。 「……私の、どんな音なんだろうなあ」 「そうだなあ…デリケートな音だもんな。まったく想像つかねえよ」 佐竹は手を後頭部に回し、髪をかき上げる仕草をした。 「なあ、俺はどうしたらいいんだよ」 「録る直前……眠るところまで、見守っててほしいです」 ひなたの言葉に佐竹は一瞬戸惑ったような表情を見せたが、すぐに普段の無愛想な表情に戻る。 「へー、そんだけでいいの?」 佐竹は腕を組み、視線をひなたのほうへ向けた。 「……録音始まったらすぐ出るからな。タバコ吸いたいし」 掠れた声が出た。言い切ったところで佐竹は咳払いをして、声のトーンを普段のものに戻す。 「そこらへんのサイゼとかでテキトーに待ってるよ。終わったら、メシでも食お」 「やった! ありがとうございます」 ひなたの顔が明るくなる。 その笑顔に、佐竹は思わず目を逸らした。 彼は、自分の中の何かが揺さぶられるのを感じていた。 「別に……大したことじゃないだろ」と、佐竹はぶっきらぼうに呟く。 ――そんな会話を交わしながら、二人は録音ブースへと向かった……。 ★ 音のない無機質な部屋の中央に、白色のシーツに包まれたベッドが静かに佇んでいた。 録音ブースの壁は冷たいコンクリートで覆われ、窓のない空間に微かな照明だけが灯っている。 外界から遮断されたこの場所は、まるで世界から隔絶された異次元のようだった。 部屋の隅に小さな監視カメラが設置されている。 隣室で待機する録音スタッフたちはモニターに映し出されるひなたと佐竹の姿を見守りながら、 録音の進行を遠隔でコントロールするのだ。 二人はやや緊張した面持ちで部屋に入ると、そのまま部屋の中央へと歩を進めた。 「……よいしょっと」 ひなたはベッドに腰掛けた。ベッドフレームが「ギシィ…」と鈍い音を立てる。 一方で、佐竹は部屋の中を落ち着かない様子で見回した。 「……なあ、この部屋、変な音しない?」 佐竹はこめかみあたりを押さえる。鼓膜からは心臓が脈打つ音が聞こえる。 ひなたに気づかれないように喉元で呼吸を整えようとするが、 それでも胸の内側で心臓が激しく跳ねている。 「変な音?」 ひなたは首を傾げ、佐竹の方を不思議そうに見た。 「めちゃくちゃ低い音が聞こえるような気がする」 佐竹の声には、わずかな焦りが混じっていた。 彼は耳を澄ませ、その音の正体を探ろうとしているようだった。 「どれどれ……」 ひなたも真剣な表情で、部屋の中の音に耳を傾けた。 「……………………」 「……………………」 二人は静かになった。 「……うーん、俺の気のせいか」 佐竹は自分に言い聞かせるように呟いた。 しかし、その表情には依然として不安が残っている。 (……ひなたには聞こえない音なのか?) (なんか、頭がぼーっとしてきた……) 佐竹の内心の混乱が、彼の落ち着かない仕草に表れていた。 彼は髪をくしゃくしゃとかき上げた。 首の後ろに空気が触れ、わずかに涼しさを感じる。 ひなたは佐竹の様子を心配そうに見つめながら口を開いた。 「ちょっと部屋が暑いかも?空調の温度、下げてもいいですか?」 「ああ、いいよ。たしかにちょっと暑いな……」 佐竹はそう言ったあと、ポケットから残り少ない"スースーするやつ"を取り出し、全部手に放ってボリボリと噛んだ。 ひなたは佐竹に小さくおじぎをして、壁に埋め込まれたリモコンで空調を調整すると、再びベッドへ腰掛けた。 「そういや、この部屋、椅子とかないんだな」 佐竹は両手をポケットに深く突っ込み、かかとを床から浮かせては下ろす動作を繰り返した。 「まあいいや、ここで立ってるわ」 ひなたは申し訳なさそうに「早く寝ないと」と声を落として言った。 佐竹はベッドのそばに立ったまま、録音ブースの天井を見上げた。 照明の光を目に刺し、瞬きを繰り返す。 広々とした空間に、彼は自分の居場所のなさを感じているようだった。 「……佐竹さんのも聴きたいけど、やるとしたら金玉なのかな?」 スニーカーの紐をほどきながら、ひなたは唐突にそう言った。 その声には、緊張を和らげようとする明るさが混ざっていた。 「あー、やるなら脱毛からやりたいよなー。ツルッツルにしたい」 「佐竹さんの、めっちゃムワムワしてそう」 ひなたは笑いながら言った。 「お前、そんなこと考えるんだな……」 「だって、芸人なんですから、全部想像できないといけないじゃないですか」 ひなたは真剣な表情で答えつつ、最後に少しふざけた笑みを浮かべた。 「つまり、佐竹さんのを想像するのも、仕事の一環になるわけです」 「プロフェッショナル仕事の流儀じゃん」 「……デデデー デデデー デデッデ〜♪」 Progressのイントロを熱唱するひなた。 「……いつか出たいなあ」 「芸人冥利に尽きるよな」 「……あれっ、かかとのとこが脱げない」 「金玉の話なんかしてるからだろ」 二人の賑やかな声が録音ブースに響く。 「てか、次何すんだよ」 佐竹は話題を変えようと、少し焦ったように尋ねた。 「これ飲んで、マイク挿れておしまいです」 ひなたはスタッフから渡された睡眠薬の封を開けて手に取る。 一瞬だけ迷いを見せたが、すぐに口へ放り込んだ。 「うーわ、苦っ!」 ひなたは顔をしかめながら、口の中で溶けていく薬を少しずつ飲み込む。 「水とか、飲んじゃダメなんだよな」 「スタッフさんは、口の中で溶かしてください、って言ってましたからね……水分摂ったらお腹がちゃぽちゃぽ鳴っちゃいそうですし」 「ああ、たしかに」 ひなたは口をモゴモゴさせ、口の中の頬側に張り付いた睡眠薬を舐め取りながら飲みきった。 「…よしっ…OK…」 ひなたは靴を脱ぎ、ベッドに仰向けになる。 「メガネも取ろ」 ひなたは言葉とともにメガネを外すと、枕元から少し離れたところにメガネを置いた。 メガネのパッドから、カチャリ、と小さな音が鳴った。 佐竹はその様子をじっと見つめているが、 目の前の光景と自身の感覚にズレを感じ始めていた。 部屋の輪郭がぼやけ、ひなたの姿が不自然に鮮明になる。 (おかしいな、なんか、ひなたは俺の前でなにやってんだろ……やっぱ俺、変かも……) (昨日、何時に寝たっけ……川だったかな) 意識の統合にズレが生じていくような感覚が彼を支配していく。 「そもそも"マイクを挿れる"って、なんだ……?」という疑問が彼を困惑させた。 周囲の音が遠ざかり、自分の心臓の鼓動だけが異常に大きく聞こえる。 佐竹の意識は、卵の黄身がほぐれるように溶け出していった。 今度はひなたの姿が、遠い夢の中へと霞んでいく。 それでも、彼女の仕草の一つ一つが佐竹の網膜へと焼き付いてしまう。 「……っ………んっ…」 かすかに聞こえるひなたの声が、佐竹の耳の中で反響し、増幅されていく。 意識が飛んでいる佐竹を前にして、ひなたはロングスカートをたくし上げた。 緑色のスカートの裾が滑り上がり、彼女の白い太ももがあらわになっていく。 ひなたはインナーパンツのウエスト部分に指をかけると、 それとパンティを同時にゆっくりと下げ始めた。 二枚の布地が一緒になって、彼女の肌をなぞるようにして脱げていく。 佐竹は自分に起こっている異変を感じつつも、ひなたの行為から目を離すことができなかった。 (……ヤバイ…野菜炒め…ひまわり…換気扇…モヒート……これがひなたの……) 断片的な思考が佐竹の意識の中で無秩序に飛び交う。 それぞれの言葉が持つ意味が歪み、繋がりのない映像となって彼の脳裏に浮かんでは消えていく。 佐竹は、自分が見知らぬ舞台に立たされているような感覚に陥った。 これは自分が作り出した世界なのか、それとも現実の一部なのか、もはや判断がつかないでいた。 ひなたの存在すら、佐竹の混沌とした意識が生み出した幻だと感じられ始める。 (これ、夢じゃ……ないんだろうな……) 佐竹の意識の一部は、冷静さを保っていた。 その冷静な意識が、目の前で展開される光景を克明に記録していく。 感覚が研ぎ澄まされ、些細な動きも見逃さないように……。 (これも…受け入れなきゃ…いけないのか?) その問いが、彼の頭の中で執拗に繰り返される。 ひなたはマイクを右手に取り、自身の秘部へと向けた。 手の震えが、緊張の高まりを物語っている。 マイクが彼女の膣口に触れた瞬間、ひやっとした感覚に全身がビクリと反応する。 「冷たっ…!」 マイクが入りやすいよう、ひなたは左手をチョキのような形にして膣の入口を広げる。 「……んっ……」 ひなたから小さく唾液を飲む音が鳴った。いよいよ、マイクを膣内へ導く瞬間だった。 佐竹は目の前で起こっていることを否定することができなかった。 混乱と期待が入り混じる中、彼はただ流れに身を任せるしかないと感じていた。 「…いっ……」 微かな痛みに、ひなたは唇を噛んだ。 マイクの先端が無理矢理入っていく感覚に、彼女はぎゅっと目を閉じる。 「…痛い、…けど…、は…ぁ、…っ」 ひなたの頬は薄紅色に染まり、微かな吐息が漏れ始める。 「ひなた…」 自分の声が自分のものではないような感覚の中、佐竹はひなたへ声をかけた。 「………?」 ひなたは佐竹の方を向くが、返事どころではないようだった。 彼女の目は潤み、頬は紅潮していた。 その表情は、佐竹への無言の誘いのようだった。 佐竹は、一歩、また一歩とひなたに近づく。 「……こんなところ見せられたら、誰だって…ダメだろ…」 ひなたが初めて見せた色っぽい表情、乱れた髪、上気した肌。すべてが佐竹の欲望を掻き立てる。 「果てしなくエロいな……」 佐竹の手は、ゆっくりとひなたのほうに伸びていく。 彼の冷たい手のひらがひなたの頬から髪へと流れて、ひなたの背筋を驚かせた。 「…っ……!!」 その瞬間、ひなたの表情が変化する。 それは、彼女らしさを捨て去ったような、 佐竹にとってはきわどい一面を見せるものだった。 ひなたは佐竹の首に腕を回し、引き寄せた。 二人はこれまでにない距離で目と目が合うと、彼はひなたの唇を奪うように口づけした。 そして、また目が合い……。 「…ぁ、っ、は…ぁっ……スースーする……」 佐竹の舌がひなたの唇を割るよう侵入すると、 清涼菓子の刺激がひなたの舌に伝わっていった。 最初は戸惑いがちだったひなたの反応も積極的になっていく。 彼女の舌が佐竹の舌に絡みつき、湿った音が二人の間で弾けた。 「…っ…む、…は…、ぁ…」 キスの熱が高まるにつれ、膣の収縮とともに、マイクは外へゆっくりと押し出されていった。 唇は一旦離れるが、どちらともなくすぐに唇を重ね、 今度はより深く、より激しく求め合った。 「…っ…、ふ……、はずかし…、んんっ…」 録音ブースの隅々に、二人の吐息と、時折漏れる甘い声が吸い込まれていく。 佐竹はひなたの服の上から、その小ぶりな膨らみに触れる。 彼女は声を抑えめにして、ぶるりと震えた。 「…ぁっ…、や…、んんっ…」 大きな手のひらが、ひなたの胸を揉みしだく。 ひなたはうっとりとした表情で、快感に身を委ねるように身体を反らせた。 「…ひなたって、こんな顔するんだ」 佐竹の手がひなたの服の下へと滑り込んでいく。 指先はおへそ周りの柔らかな窪みをさらりと撫で、 やがて肋骨あたりを親指がなぞった。 「ぁ、っはぁ…っ…、くすぐっ…たい……」 ひなたは奥歯を軋ませ、ときおり襲ってくる快感の波に耐えている。 佐竹は服の中のブラを左側だけ剥いだ。 柔らかく張ったひなたの乳房が、ブラからふるりとこぼれる。 「っ、…ちょっと……」 静止を求めようとするひなたをよそに、佐竹の手のひらはひなたの乳房を包み込む。 「俺の手にピッタリだ」 掌全体で優しく圧をかけ、乳房の形を確かめながら揉みしだく。 佐竹はひなたの乳首を軽くつまむと、ひなたの身体がビクリと反応した。 「ひぁ…、ん、んんっ……!!」 ひなたは佐竹を抱きしめ、肩甲骨の辺りでぎゅっと力を込めた。 その腕が佐竹の身体に圧力を残し、確かな重みとなって彼の意識に届く。 宙に浮いていた感覚が、その圧力によって彼の意識を現実へと繋ぎとめる。 (もう、引けるわけ、ないだろ……俺たちは) 佐竹はひなたの服を胸の上までまくり、片手でブラのホックを外した。 唇がひなたの首筋に触れると、 首筋から鎖骨、そして胸元へと唇が這い、 彼女の肌に柔らかいキスを落としていく。 「…ぅ、…ん…っ……、うぅ…」 いやらしく尖った乳首をそっと舌で舐めると、ひなたの身体が大きく痙攣した。 「ぁぐっ…!!」 ひなたは歯を強く噛みしめ、漏れそうになる声を必死に抑え込む。 その反応に興奮した佐竹は、舌で乳首を優しく愛撫した。 「ん…っ!! …んぐ…っ、ふぁ…、ゃっ…」 抑えきれない声が、ひなたの意志を裏切るように零れ落ちていった。 佐竹の手がひなたの下腹部へと移動していく。 「ぅ、ぁ…、やだぁ…っ…、くすぐったい…」 ひなたの吐息に導かれ、たどり着いた指先が想像以上の熱と湿り気を感じ取る。 クリトリスの辺りに触れた瞬間、ひなたの声が急に高くなる。 「やだ、あっ…、っ……!」 そこを縦にくすぐるように撫でると、ひなたの腰が自然と動き始めてしまう。 「ひなた…ここヌルヌルじゃん…」 膣口の輪郭をなぞりながら、佐竹は言った。 その言葉に、ひなたの頬が真っ赤に染まる。 佐竹は微笑んで、ひなたの耳元で 「ちょーえっち」 と、囁いた。 その言葉のあと、佐竹のゴツゴツした中指がひなたの中に入り始めた。 「…っ…は、入ってくる…」 佐竹の中指は、ずぷずぷとひなたの中へと進んでいく。 彼女の背中が弓なりに反って、指先が白くなるほどシーツを掴んでいた。 「……すぐ奥まで入っちゃったな」 早すぎず遅すぎず、彼の指は中で出入りを繰り返す。 佐竹の指の動きに合わせて、ひなたは満たされた状態の感覚に集中する。 「…ぅ、うっ…ん、ぁ…」 「お前の中、すげえな……」 出し入れもそこそこに、佐竹はゆっくりと指を引き抜いた。 「ここはもうおしまい」 その囁きが首筋をくすぐり、ひなたは思わずぞくりとした。 「ぁ…、っ…」 名残惜しい責め方に、ひなたは唇を噛んだ。 佐竹は備え付けのティッシュで指を軽く拭う。 彼は「あっつい」と言いながら、自身の服を脱ぎ始めた。 服の生地が擦れる音を聞きながら、佐竹の鍛えられた身体を見たひなたは思わず目を見開く。 「……あんま見んなよ、恥ずかしい」 「ごめんなさい」 ひなたは素直に目を伏せる。 上半身裸になった佐竹は、ひなたの上に覆いかぶさるように距離を縮めた。 二人の肌が触れ合う感触に、互いの呼吸が乱れていく。 「…お前、どこ弱いの?」 「さっきのとこ……かも」 「……ふうん」 佐竹は意地悪そうに笑みを浮かべる。 ひなたは瞼を閉ざし、きゅっと息を止めた。 彼の唇がひなたの耳に近づく。 「本当は、どこ?」 鼓膜に届けられた佐竹の声は、さらに低くなった。 「耳たぶの、裏あたり」 ひなたは小声で告白する。 「ああ、わかるわ」 佐竹の吐息が耳たぶに当たる。 「っ…、わかるって……佐竹さんも?」 佐竹は答える代わりに、ひなたの耳たぶに唇を寄せた。 「…はぅっ…!!」 耳たぶの裏を佐竹の舌が這う。 「んぁ、ぁ、あぁっ…………!!」 鳥肌が全身を駆け巡り、じんじんとした痺れがひなたの背筋を目覚めさせる。 「…ぁぅ…っ……上手すぎ……」 ひなたの声が途切れる。快感で頭が真っ白になりそうだ。 「お前が弱すぎなだけだろ……」 ひなたは佐竹の首筋に顔を寄せる。 「ねえ、佐竹さんは……?」 ちょうどいい場所にきたところで、ひなたの舌先が佐竹の耳たぶ裏をとらえた。 してほしいことを教えるように、チロチロと舌が動く。 「…………………」 しかし、反応はない。 ひなたは恐る恐る佐竹を見ると、彼は目を見開き真顔になっていた。 「……うわっ!! 騙された!!」 ひなたは慌てて顔を離す。その表情には焦りと恥ずかしさが浮かんでいた。 「佐竹さん、本当サイアク!」 「アハハハ!」 佐竹はケタケタと笑う。 「ベロから香水の香りするんだけど! ……あああっ、香りが、立ってる!」 ひなたは両手をゾワゾワとさせ、苦い顔をして舌先を出した。 「ハハッ、食レポの練習になってよかったな」 佐竹が言う。その声には、からかいの色が混ざっている。 「……私、そろそろ寝ちゃいますよ、本当に」 「ああ、そうだったそうだった」 佐竹は優しくひなたを抱き寄せる。 その腕の中で、ひなたは全身の力を緩めた。 「……なあ、あの薬、まだ飲んでんの?」 佐竹が突然尋ねる。 「?」 ひなたは少し混乱した表情を浮かべる。 「あの、前に飲んでた薬。生理痛とかのやつ」 「ピルのこと?」 「そう」 「飲んでますよ。だから……そのままでも、いい、かな」 ひなたの声は小さく、視線は下を向いている。 「……俺とするの、嫌がらないんだ」 「…………………………」 ひなたは顔を上げ、佐竹の肩あたりに視線を移す。 「…うん」 彼女の声は小さいが、確かだった。 「かわいいな、お前…」 「お前の素直なとこ、俺は好きだ」 佐竹のその言葉には、今まで隠していた感情が溢れていた。 ひなたは一瞬だけ佐竹と視線を合わせたが、すぐに俯いてしまった。 胸の奥が、じんわりと熱くなる。 (なんて返せばいいんだろう) 自分の気持ちはわかっているのに、それを言葉にする勇気が出ない。 (……佐竹さんに、かわいいって言われた) (生でするって、素直なことなのかな) ひなたの胸の中で、女の子としての喜びと不安が激しくぶつかり合う。 そして、自分が"うまく"返せないことに、ただただ、ひなたの頭の中は、真っ白になった。 二人の間に微妙な緊張感が漂い、互いの呼吸だけがかすかに聞こえる。 その空気は、今まで築いてきたものが一瞬で壊れそうな脆さを孕んでいた。 「…佐竹さん…いれて……」 早くしないと寝ちゃいそうです、と、ひなたは付け加える。 「ああ……」 ーー彼は準備ができると、ひなたの腰を持ち上げ、 滾ったそれを彼女に合わせるようにぐにゅりと押し当てた。 先端が膣口に触れ、咥えこまれた瞬間、 ひなたは股関節あたりの神経がばちばちと弾ける感覚に襲われた。 「ぁ…、っああ、っ……!!」 佐竹は慎重に、少しずつ挿入していく。 「痛くないか?」と、佐竹が心配そうに尋ねる。 「大丈夫…、じゃないかも……」 はじめてのサイズ感にひなたは少したじろいで、両腕を佐竹の首に絡ませた。 「…あったかい……」 ひなたは目を細め、佐竹との直接的なつながりをはっきりと感じ取っていた。 「めちゃくちゃきっつい…あつすぎる……」 視線が絡み合いそうになる。まだ始まったばかりの快楽に逃げようと、ひなたは目を閉じる。 「…ぁ、あぁ、ん…っ…」 佐竹はひなたの反応を見ながら、じょじょに深く進んでいく。 「ひなたの中、超にゅるにゅるだ…」 「……だって、いっぱい触ってもらったし…」 ひなたは意外と丁寧な段取りで責められたことを思い出して、 またそうしてほしいな、と、自身の心を抱きしめた。 さきほどの快感を頭の中で再現する。 佐竹の指先や舌遣いの名残を思い出して、余計に胸が苦しくなる。 「…かはぁ、っ…!!」 ズンッという衝撃で、ひなたの呼吸は乱れた。 奥まで完全に挿入されたとき、佐竹は深い息をついた。 「奥まで…入った……」 「…く、くるし……」 佐竹はひなたの反応を中でも感じ取りながら、腰を動かし始めた。 「…ぁ、ぁあ、っ…はぁっ…、…ふぅ…」 ひなたの吐息が佐竹の耳に吹きかかる。 「そんな声出すなって…くすぐったい」 「…苦しいの、おっきいから…」 その声に刺激され、佐竹の動きが少しずつ激しくなっていく。 「っ……やだ…っ…気持ちいいよお…」 「…あっつい…ちんこ溶ける」 自分の中で気持ちよくなっている佐竹の声が、ひなたの鼓膜を困らせる。 「ぁ、は…ぁ、…んっ…あぁっ…」 ひなたは佐竹にしがみついた。 「…佐竹さんの、引き抜くときがね、すごくいい」 ひなたは息を切らしながら言う。 「マチャアキのテーブルクロス引きぐらい、思いっきり引いてる」 ひなたのその比喩に、佐竹は吹き出した。 「お前、かくし芸大会やってた時代にはもう生まれてたの?」 「ふふっ、YouTubeで見た」 「逆にテーブルクロス押しとか、意味わかんないよな」 二人は一瞬、その奇妙な光景を想像して笑い合う。 逆再生になるとそうなるのだろうか……と、頭の中で描いてみる。 「ちょっと、萎むのやめて」 ひなたが軽く佐竹の胸を叩く。 「マチャアキの顔想像してた。チューボーですよ、好きだったし」 「YouTubeにあるかな」 「なんかさ、あっても違法アップロードされたドラえもんみたいな感じだったらウケるな」 「あの、枠がキラキラしてるやつ」 ひなたも笑みを浮かべる。 「てか、こんなとこでマチャアキ出すなよ」 直後に佐竹の声がかすかに上ずる。 「……おい、お前、締めるな」 「佐竹さんの、グニャグニャしてきてるからですよ」 ひなたが意地悪そうに言う。 佐竹は、声を出す前に、一瞬だけ目を閉じる。 今まで誰にも見せなかったものを曝け出そうとする時のような、 そんな緊張が彼の全身を支配していく。 「……じゃあ」 佐竹は言葉に詰まる。緊張か不安か、指先は微かに震えていた。 「お前にだけ、教えるよ」 「え……?」 「……俺の、本当に弱いところ」 佐竹はひなたへ右手の甲を見せる。 そこには、他の肌の色とは異なった、白く丸い痕があった。 ひなたも知っている痕だったが、特に触れずにここまできていた。 「タバコの火ぃ押し付けたら、どうなるか試したかった」 「誰かにやられたとかじゃなくて……?」 ひなたの声には心配が滲んでいる。 「自分で…やったの?」 「自分でやった」 「……ワイルドだろ?」と、佐竹は続けた。 「ワイルドすぎて、スギちゃんが職を失う」 スギちゃんの席を奪えるのでは、と話すひなたをよそに、佐竹の心はすでに別のところにあった。 アルコールの強い匂い。母親の荒い息遣い。小さな手を掴む力の強さ。 そして、皮膚が焼ける音と痛み……。 幼少期、母親が彼の手に無理やり火のついたタバコを押し付けた日の記憶が、佐竹の心の奥底で蠢く。 「……ここを、舐めればいいんですか?」 ひなたの声がして、佐竹は我に返る。 そのクレイジーな性感帯に、ひなたはどう扱えばいいのか戸惑っていた。 「好きにしたらいい」 「……じゃあ…」 ひなたは差し出された右手を両手で握り、痕の周りをそっと舐めてみた。 皮膚を滑る温かい舌先の感触が、佐竹の苦い記憶を少しずつ和らげていく。 「…うぅ…、くっ……」 佐竹の喉から絞り出すような声が漏れる。 「そんなに……?」 目を閉じてしばらく舐めていると、掌に伝わる佐竹の手が、ガタガタと震え出した。 突然の異変に、ひなたの目が大きく見開いた。 心臓が、ドクドクと脈打つ。 「……これ、消えねえかな、やっぱ」 その呟きに、彼が長年隠してきた傷の深さを、ひなたは悟った。 「……治れ……治れ……」 ひなたの舌は、まるでその痕を塗りつぶすかのように、何度も往復する。 そうするとひなたの心臓はさらに落ち着かなくなったが、 彼を救わなければという気持ちが先行して、自然と涙がこぼれた。 ひなたはそれを拭うことなく、痕に口づけをする。 両目尻から伝っていった雫は、はたりと枕を濡らしていった。 その間、佐竹は目を閉じていた。 母親の歪んだ顔がフラッシュバックしそうになるが、それはすぐにひなたの優しい表情に取って代わる。 ひなたの舌先がもたらす温かさは、過去の痕跡を覆い隠していくようだった。 「ん…っ…女の子みてぇな声、出ちゃうな…っ……」 「めちゃくちゃ野太いじゃん……」 ひなたの言葉に、佐竹は目を開いた。緊張が少し解ける。 「ヤバイ、もうダメ、ホントに気持ちいい……」 ひなたの中で次第に膨張する佐竹のそれが、事実を物語っていた。 「まだイキたくないよ、俺。マチャアキもそう言ってる」 「長生きしてほしいからね」 ひなたは佐竹の右手を両手で包む。 「…ワラマングランプリで優勝したら、治しに行きますか?」 「それは名案だな、ずっと残るもんだと思ってた」 佐竹はひなたの耳たぶ裏に唇をあてがう。 「ありがとな……ひなた…」 「…ぁっ……そんなとこで感謝しないで!くすぐったいっ!」 ひなたの声が高くなる。その声には笑いと困惑が混ざっていた。 佐竹の動きが再び激しくなり、ベッドがきしむ音が聞こえ始める。 ふと、「幸せを潰さなければ」と、無意識のうちに彼は思い立った。 佐竹の意識の底から、どす黒い感情が這い上がってくる。 「…ひなたは……今まで何人とした?」 佐竹が尋ねる。 「……3人、かな」 ひなたは少し躊躇いながら答える。 「本当?この感じは6人って感じだけどな……」と、佐竹は冗談めかして言う。 「…っ、失礼すぎますね」 ひなたはムッとした表情で佐竹を見上げた。 彼の目は、どこか虚ろだった。 それでも繰り返される抽送。 ひなたが小さな声で言う。 「嘘、本当は7人」 「……絶対盛ったろ」 佐竹は動きを止めることなく、さらに質問を重ねる。 「じゃあ…俺といた3年間でした人数は……?」 深く、黒い時間だった。 彼の瞳孔がわずかに細まり、嫉妬とも独占欲ともつかない感情が胸の奥で疼く。 その感情が自分の中で膨れ上がるのを抑えきれない。 佐竹はひなたに触れる他人の影を思い、それを捻るように奥まで突き入れた。 「…あ゛ぁっ!!」 子宮口から先の内臓が泣き喚くほど、ひなたの奥はグリグリとへしゃげていく。 「く、くるしい…やめて…」 ひなたはたまらず腰を引いた。 「……ねえ、何人なの?」 佐竹は逃げ腰になるひなたへ追い打ちをかけようとする。 「……してない……おかげさまで、忙しかったですし……」 ひなたは涙目で答えた。 「…ふぅん」 彼は冷ややかに返した。 「……佐竹さんのは、いまは聞きたくない」 ひなたは顔を背けようとする。 「それはフリか? 普段から言ってるのに」 佐竹は自嘲気味に言う。 「俺は……さんじゅう…」 ひなたは左手で佐竹の口を塞いだ。 「…っ…聞きたくないって言ってるでしょ」 ひなたの手首をつかみ、佐竹は顔をそらす。 「…さんじゅうごおく…」 ひなたはハッとした。 「……やだ……もうやめてよ…ブルゾンさんじゃん……」 彼女の目からは、ポロポロと涙がこぼれていた。 「……なんか、私…涙出ちゃってるし……。涙出ちゃってるしん!」 「お前、こんなときにクロちゃんすんなよ、萎むぞ」 お互い反射的に他人のギャグをことあるごとに披露するなか、佐竹の動きは止まることはない。 「……ひなたとだったら…俺のはもう、増えない」 「……っ…うそだ…だいたい、おとといは34人だったし……」 ひなたは信じられないという表情を浮かべる。 「…半分、本音だけどね」と、佐竹は言った。 「もういいよ」 ひなたはそれがすべて嘘になるように、佐竹にキスをした。 (相方は、やっぱりクズじゃないとね) 佐竹の髪を撫でる。毛先についたワックスが、指先をザリザリと気づかせる。 唇を重ねながら、ひなたは数ヶ月前のことを思い出していた。 打ち上げの帰り道、いつもより酔っぱらっていた佐竹が、ひなたの肩に頭を乗せてきたことがあった。 「……ひなたぁ、お前といると、幸せすぎて死んじまうよお」 佐竹の体温が耳元で熱く感じられ、ひなたは思わず身震いした。 「俺たちが、芸人じゃなかったらなあ……」 翌日、彼はそのことを覚えていないようだった。 しかし、あの体温とともに、ひなたの心にはその言葉が深く刻まれていた。 ーー養成所で初めて佐竹と出会った日。 あの日、人付き合いが苦手そうな佐竹に声をかけたのは、単なる直感だった。 「一緒に組みませんか?」 その言葉が、目の前で起きている複雑な関係の始まりだったのだと、ひなたは今になって気づく。 ――二人で考えた最初のネタ。夜遅くまで話し合ったサイゼのテーブル。 失敗を重ねながらも、少しずつ形になっていくコント。 そして、初めて観客の笑いを取れたときの喜び。舞台袖で交わした抱擁。 若手ながら、わずか3年でプロとしての関係を築き上げてきた二人が、今ここで… ひなたは佐竹に目を向けた。胸が締め付けられる思いとともに、 彼女の脳裏に、「もしも」の分岐が浮かぶ。 もしも二人が普通に出会っていたら。お笑いでなく、ごく普通の恋愛をしていたら。 現実と違いすぎて考えられない……二人にとって、お笑いは夢であり、魂であり、お互いを縛る鎖でもあったのだ。 二人は夢を追いかけるために、自分たちの関係を棚上げしてきた。 そして今、歪んだ形で積み重なった想いが、一気にあふれ出そうとしている。 「…………………」 愛情の言葉をかけられずにいる二人。 しかしそれを口にしたら、"夢"が終わってしまいそうで、キスを夢中で繰り返す。 佐竹とひなたは、言葉を交わすことなく見つめ合った。 (好きとか、愛してる、って言えたら…) (でも、それを口にしたら、ぜんぶ終わっちゃうんだよ……) 不意に、佐竹がひなたを抱き寄せた。 二人は目を閉じ、唇を重ねる。ひなたの柔らかな下唇を佐竹が優しく挟み込むと、 小さな吐息が漏れた。そっと舌先が触れ合い、ためらいがちに絡み合う。 まるで、今この瞬間しか許されていないかのように、 束の間の許された時間を噛みしめる切実さがそこにあった。 息を整える瞬間、ひなたと佐竹はわずかに目を開く。 そこには互いへの愛情と、それを口にできない悔しさが混ざっていた。 言葉の代わりに、もう一度唇を重ねる。今度は、深く、激しく……。 それは彼らにとって、唯一許された愛の表現方法だった。 佐竹の舌がひなたの唇の隙間をそっと探り、絡まり合う。 「もっと、したい……」 キスの間に、佐竹は言った。 ひなたはそこへキスをする。佐竹は唇を返しながら、ひなたの舌を絡めとる。 「…さたけ…さん……」 ひなたの声が震える。それは快感のためなのか、 それとも別の感情のためなのか、定かではなかった。 佐竹が奥を突くたびに、彼女の喘ぎ声が録音ブースに響き渡る。 「……あんっ…、あっ、ぁ、はあ…っ…」 二人の身体は汗でうっすらと光り、互いの熱を感じ合っている。 「…ひなた、っ……」 佐竹の声も荒くなる。ギシギシと鳴るベッドが、快感を求める強さを象徴していた。 「…はっ、ぅん…ぁあっ、んぅんっ…!!」 ひなたは佐竹の広い背を抱き、必死に彼にしがみつく。 これからくる何かを恐れているような、何かを受けいれようとするような仕草であった。 二人はただ、本能のままに動いていた。 「ひなた…もう…イキそ……」 佐竹は歯を食いしばり、首筋の血管が浮き上がるほど必死に快感の波に抗っているが、 もはや限界が近いことは明らかだった。 「いいよ、中に……」 ひなたの声はこれまでの高ぶりで掠れていた。 彼女の発したその声に、佐竹の身体が一瞬ビクリと反応する。 「…出すぞ……」 ひなたを抱く腕に力が入り、もう離すまいと強く引き寄せる。 「ぁ…、やば……」 佐竹の下腹部が打ち付けられるたび、ひなたの敏感な部分が押しつぶされる。 ひなたはそこに感覚を集中させ、中をキュルルと締めつけた。 締め上げられた佐竹のそれは、まるで肉でできた螺旋階段のように、 一種の芸術性をたたえながら膨張していく。 「ひなた…締めすぎだろ…っ…」 彼の全身の筋肉が一斉に緊張し、これからくる絶頂に向けて意識が集合する。 身体の芯から熱が押し寄せ、抑え込んでいた衝動が一気に解放される瞬間を前に、佐竹は強く目を閉じた。 「…っ、出るっ……!!」 ひなたの中で濃厚な熱が解き放たれたとき、佐竹の喉から野性的な呻きが漏れた。 「ぁ…、ぁああっ………!!」 ひなたも同時に絶頂を迎え、身体を大きく反らした。 視界がぱちぱちと真っ白になり、佐竹の姿をさらっていった。 ★ 抱き合ったまま、二人の荒い息遣いがしだいに落ち着いていくと、 佐竹はひなたから自身を引き抜いた。 「っ…いっぱい出た…」 ひなたの中を人差し指でかき混ぜると、膣口からサラッとした精液が顔を出した。 ティッシュを何枚か取ってそれを拭い、ゴミ箱へ捨てる。 クシャクシャになったティッシュがビニール袋に当たり、シャワッ…と音を立てた。 佐竹はひなたの横に身を寄せ、横たわった。 二人は言葉を交わすことなく天井を見つめていたが、 しばらくして、ひなたが小さな声で呟いた。 「録音…」 その言葉で、佐竹は我に返り、身体を起こした。 「そうだった………挿れるか」 佐竹はマイクに手を伸ばす。 ひなたは上半身だけ少し起き上がって、身を縮めるように膝を曲げた。 「大丈夫か?」 佐竹の声が柔らかく揺れる。 ひなたは一度だけ頭を下げた。 「はい……お願いします……」 佐竹はマイクを手に取り、ひなたの秘部へと導く。 ひなたの愛液と佐竹の精液が混じり合った跡に、冷たいマイクの先端が触れた。 「ぁ…、…ぁぅう…」 ひなたの喉から声が零れる。 「痛かったら言って」 ゆっくりと、佐竹はマイクを挿入していく。 彼女の太腿の筋肉にピクリと緊張が走った。 「……ひなた?」 「大丈夫です……そのまま奥まで…」 「わかった」 マイクは容易に奥へと進み、一気に奥まで達した。 ひなたは目を閉じ、肺の底まで空気を満たす。 薄く開いた唇から「ありがとうございます」と言葉を落としたひなたの瞳は焦点を失いかけていたが、まだ意識は保っているようだった。 「そろそろ、行くから」 ひなたは小さく頷いた。 服を整えた佐竹は、ベッドの端に腰かけた。 「……ひなた」 呼びかけられたひなたは返事をしようとしたが、その前に佐竹が口を開いた。 「俺……」 「お前のこと、ただの相方以上に見てる」 「……それが…怖いんだ」と、佐竹は続けた。 「うん………」 ひなたはかすかに唇を開いたが、言葉がうまく出てこない。 彼女は一度目を閉じ、長く溜めた息とともに言葉を探した。 その間、佐竹は息を潜めるほど静かだった。 「私も、佐竹さんのこと……」 ひなたは言葉を探すように、一度目を逸らす。 「……でも…」 しかし、すぐに佐竹をまっすぐ見つめ返した。 「私たち、これからもずっと……」 自分の心を押し殺し、ひなたは言葉を絞り出した。 「…ずっと、いいコンビで……いましょう」 その言葉のあと、ひなたの頬を一筋の涙が伝っていく。 佐竹は思わず手を伸ばしそうになるが、彼女はすぐさま手で涙を拭った。 ――愛が、夢に負けた瞬間だった。 ★ やがて、彼女の瞳がだんだんと焦点を失っていく。 「……ごめんなさい、もうダメみたいです」 「ああ」 ひなたは寝そべり、寝顔をみられないよう佐竹に背を向けた。 彼女の小さな背中を見て、佐竹の脳裏には、「6741」という数字が浮かんでいた。 それは、今年初めて出場するお笑い賞レース、ワラマングランプリの出場番号だった。 その数字が、今の状況と重なって彼の心に突き刺さる。 『むなしい…か、ラッキーすぎますね!散々ネタにしましょう!』 明るく話すひなたの言葉がよぎる。 そこに"なにか"が、ぐちゃぐちゃに混ざっていった。 「………………………………」 「ひなた?」 佐竹が声をかけると、ひなたは仰向けになった。 ひなたは目を閉じており、返事はない。 彼女の呼吸が、深く、規則正しくなっていく。 「…眠ったのか」 しばらくの間、佐竹はただひなたの寝顔を見つめていた。 何か言い表せない感情が混ざり合って、ずっと消えないでいる。 録音は、もう始まっているのだろう。 (これで……最後だから) 自分で決めたはずの覚悟が、揺らぐのを感じる。 ひなたの髪を撫でる。柔らかな髪の感触が佐竹の心に突き刺さり、消えることはなかった。 今この瞬間さえも、すでに追憶のように感じられる。 眠りに落ちた彼女の表情には、かつての純粋な信頼が残っていた。 佐竹はひなたのお腹あたりにタオルケットをかけた。 言葉は何度も喉元まで上がってきたが、どれも闇の中へと溶けていった。 録音ブースから出ようと、扉に手をかけたところで、佐竹は立ち止まる。 振り返ることはなかったが、その肩が微かに震えているのが分かる。 「ごめん…」 かすかな声が漏れた。それは誰に向けられた言葉なのか、佐竹自身にも分からなかった。 ゆっくりと扉を開ける。誰の気配もない廊下の明るい光が、録音ブースの照明と交わる。 佐竹は一歩を踏み出した。その一歩に、全身の重みがかかっているようだった。 扉が閉まりかける直前、彼の頬に涙が伝う様子が見えた。 「……っ…ぅうっ……」 得体の知れない、初めての感情。 佐竹は、自分の心が音もなく砕けていくのを感じていた。 顔を手で覆い、廊下に佇む。 「…っ………ッッッ……」 真っ赤に充血した瞳からは、一粒、また一粒と涙がこぼれ落ちていく。 その涙は、これまで抑え込んできたすべての感情を含んでいるかのようだった。 佐竹の口元が震え、ひなたの名を呼ぼうとしたが、声にはならない。 それでも、彼の心の中で彼女の名前が響き続けていた。 録音ブースの扉が完全に閉まる。 オートロックの施錠音が廊下に響いた。 その音は、二人の関係に鍵をかける音のようにも聞こえて――。 ================================================================== ■レーベル作品紹介 <被験者A 性感実験 1> https://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ01101787.html すべてはここからはじまったーー。 あなたも被験者Aの感覚に! 鼓膜と心を震わせる性感実験課題を体験。 <THE FIRST 胎内回帰 [Side B] 崎山アオイ(シンガーソングライター)> https://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ01261197.html 膣内に挿入された、一本のマイク。一期一会の胎内回帰を見逃すな。 <【世界初!?鼓膜用バイブ】”聴くバイブ”で体感する快楽の極み!脳が疼く、淫靡な低周波ASMR> https://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ01047436.html 「鼓膜用バイブ」の元祖! 本作は“聴くバイブ”として世に生まれた、 あなたの性感開発をお手伝いするサウンドです。 低音域の振動が身体的な感覚に直接響くことで、性感開発をサポートすることが期待されています。 < 「東京オナニーランド」シーズン1> https://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ01220605.html アダルトASMR・エロ音声ストリーミングサイト 東京オナニーランド(TOL)」 (https://tokyo0721land.com/)をテーマにしたオールラウンド作品。 きみがきみじゃなくなる場所「東京オナニーランド」に遊びにおいでよ! ★サブスク配信 一般向け作品紹介 <瞑想とヒーリングの世界> https://www.tunecore.co.jp/artists/Meditation-Healing-Music?lang=ja iTunes Store インストゥルメンタルTOP10入り! ヒーリングミュージックの新たな金字塔「あなたのためのリラクゼーションBGM集」が各音楽サブスクにて配信中。 瞑想・睡眠用BGM、ASMRを含む豊富な癒しの音楽が、あなたを穏やかな安らぎへと誘います。 <あかちゃんあまえんぼくらぶ> https://www.tunecore.co.jp/artists/aac 突然のばぶみを感じる大人赤ちゃんにも支持されているヒーリングミュージック。 おねんねのときも、あまえんぼしたいときも、いつでも守ってくれる、ねんねのともだち。 音楽といっしょに、ほっぺたをほんわりとさせて、すやすやとねむるよ。 メロディーに耳をかたむけて、すてきな眠りの準備をしよう。 ==================================================================