『とーかの秘密』ご購入&ご視聴いただきありがとうございます、シナリオ担当の毛ガニです。 女の子だと思った方、夢を壊してすみません、野郎です。 「小説の方が、マンガやゲームよりも高尚である」そんな風潮は感じないでしょうか? 僕は、そういう意見を聞く度に思うのです、「そんなバカな」と。 媒体の違いは、表現上の向き不向きの違いであり、高尚だとか低俗だとかいう評価は作品それ自体に下されるべきものであって、媒体に下されるべきものではないでしょう。 培うべきは、媒体への偏見ではなく、作品を見る審美眼かと思います。 さて、媒体に向き不向きがあると言いましたが、逆に言えばその媒体を選んだからにはその媒体に合った表現を用いるのが得策でしょう。 では、バイノーラル音声作品という媒体のシナリオは、どのような表現を用いるべきでしょうか? 本作のメインテーマは、身も蓋もないですが「売れるやつ」です。 今まで、需要ガン無視で、クオリティを追求したシナリオを書いてきました。 しかしながら、せっかく質の高い作品を作ったつもりなのに、注目度は今一つ。 ならば、それらの作品を見てもらえるように、サークルの看板となるような作品を作ろうと思い立ちました。 ただ、「売れるやつ」とは言っても、サークルの特徴を出した物にしたいところ。 本サークルの特徴は、やはりシナリオ。 というわけで、R18バイノーラル音声作品という媒体に最適な文章表現を考えてみたのが本作です。 まず、ストーリーテラーは女性、メインターゲットは男性の作品ですので、野郎に耳元でささやかれたくないですよね。 バイノーラルは臨場感がウリなので、シナリオはそれを活かす方向に。 すなわち、作中には存在するけれども、目の前には存在しない物に対する想像を駆り立てて、没入感を深める方向で。 であれば、目の前に存在しない物とは女性の身体なので、その感覚を丹念に、生々しく描写する事に。 自分の身体について語り続けるのは変ですので、相手も女性、つまり百合と相成りました。 普通は前面に押し出すキャラクター性やシチュエーションの説明を極限まで削る事によって、それらを探ろうと能動的に聴く効果を意図しています。 また、聴き手がキャラクターについて知らない事で、より背徳感が際立つ、ピーピングチックな雰囲気もかもし出せたかと思います。 サブテーマは「擬音語の力を信じてみよう」です。 いざ書いてみると、女子高生の話し言葉の語彙ですと、あまりにも表現の重複が発生し過ぎたので、それらをどう描写し分けるかという問題に突き当たりました。 そこで思い当たったのが擬音語です。 擬音語のおかげで、違和感なく描写の幅を広げれたと思います。 なお、文章表現重視なシナリオなので、耳舐めや喘ぎ声はかなり控えめにしてあります。 音よりも文章を押し出したいので、SEも小さめ、少なめに。 そんな、僕なりの、R18バイノーラル音声作品の文章表現についての一考察、とでも言うべき作品となりましたが、楽しんでいただけたようでしたら幸いです。 ただ、そんな効率だとかで自分の好きなジャンルを書かれるのは面白くないもの。 ですので、百合マンガや小説や音声作品を150程、読んだり聴いたりして勉強してきました。 今まで、百合は伊藤計劃の『ハーモニー』(出版社曰く百合らしい)しか持っていませんでしたが、おかげでKindleのオススメがずいぶん様変わりしました。 定番どころが多いですが、『やがて君になる』、『私の百合はお仕事です』、『百合ドリル』シリーズ、コダマナオコ、森奈津子なんかが良かったです。 百合好きな方々、僕の勉強は足りていたでしょうか? 本作を聴いて、「コイツ、口だけでヘタクソじゃねーか」と思われたようでしたら、申し訳ございません。僕の修行不足です。 もし、「コイツ、なかなかいいシナリオ書くじゃねーか」と思っていただけたようでしたら、本サークル作品の体験版だけでも聴いてみていただけると嬉しいです。 どれもこれも、方向性は違えど人を選ぶ内容にはなっていますが、クオリティには自信があるものばかりです。 さて、本作の声優は陽向葵ゅか様。 愉しそうにとーかちゃんに意地悪したり、甘え上手だったりといい性格なキャラを見事に演じていただきました。 こういう知能の高そうなキャラ、とてもいいと思います。 声をひそめての演技とか、背徳感マシマシですね。 前述の通り、キャラクター性を極端に削ったものの、演技によってその奥ゆきを想像させる厚みを持たせてもらえました。 イラストは、はれんちとめこ様。 僕の「キャラクター性を削りたいから、サムネは目隠しと目が見切れている構図で」という無茶ぶりに、ミステリアスで背徳感にあふれるイラストを仕上げていただけました。 目が出ずとも心の内を語ってくれる指先が素敵です。 透明感や、線の細さ、肌のやわらかさ、対比的な2人の表情と、ガラス細工のように繊細な百合の予感にドキドキしますね。