はいはーい。こんな時間にだれかしら? あら、かわいらしいお客さんね どうしたの?そんなに驚いた顔しちゃって それとも、キレイなお姉さんに見とれちゃった?なんちゃって♡ え?こんな森の中に人がいるなんて思わなかった? あらあなた、教わらなかった?森の奥には人間を襲うこわーい魔女が住んでるって ふふ、怖がらせちゃったかしら。でも安心して、わたしは危害を加えたりしないわ まったく失礼しちゃうわよね。だれがそんな噂広めたんだか… それにしてもあなた、どうしてこんなところに? ふむふむ、森の中で友達と遊んでいたら、いつの間にか深いところまで来ちゃったのね だんだん暗くなってくるし、帰り道が分からなくて途方に暮れたところで、わたしの家を見つけた、と そう、かわいそうに…事情はわかったわ。立ち話もなんだから、中で話しましょっか なに?やっぱり警戒しちゃってる?大丈夫よ、言ったでしょ?わたしはあなたにひどいことなんてしないわ ほら、こんなキレイなお姉さんが悪い人に見える? ふふっ、ほらいらっしゃい。中で温かいお茶でも出してあげる ほら座って座って。外寒かったでしょ 待っててね、いまお茶とお菓子を出してあげるから はいはい、遠慮しないでどうぞ お口にあったかしら?ふふっ、そうだと嬉しいわ え?こんなところにひとりで住んで、本当に魔女なのかって? うん、そうよ。何を隠そうわたしは本物の魔女なの! うーん、いまいち信じてなさそうね…それじゃ、証拠を見せましょっか 触手くーん、お客さんよ!出てきて挨拶しなさい! じゃーん。わたしのカワイイ使い魔の、触手くんで~す! あら、やっぱりビックリしちゃった?まあ無理もないわね、この見た目じゃあ ああん、逃げようとしないで!…ほ、ほら、せっかくこの子も挨拶しに来てくれたんだから、ね? ちょっとだけ、お話しましょ? さて、落ち着いたかしら? じゃ、改めて紹介するわね。わたしの使い魔の触手くんよ この子見た目はちょっとグロテスクだけど、とっても紳士なんだから え?危なくはないのかって? 大丈夫よ、わたしはこの子と魔法の契約を結んでいるから、勝手なことはしたりしないわ その証拠に……触手くーん!はい、お手! 伏せ! 三回まわって、にょろにょろ~ ふふっ、ね。こうして見るとかわいいでしょ? それにあなたがいま食べてるそのお菓子も、この子が焼いてくれたのよ なぁに?微妙な顔しちゃって…でも、おいしかったでしょ?ふふっ 人間と同じくらい…ううん、もしかしからそれ以上に器用なのよ。腕もいっぱいあるしね この子はこの森にずいぶん昔から住んでたみたいで、それをわたしが見つけて使い魔にしたの そしたらほんとに賢くて気が利いて…これを知ったら、もうネズミやコウモリなんか使い魔にできないわね どう?これでわたしが魔女ってコト信じてもらえたかな?ふふふっ あら触手くん、どうしたの?…ふんふん…そっかあ……わかったわ ねえあなた。触手くんがね、あなたと仲良くしたいんですって 言葉が分かるのかって?…まあ、使い魔だからっていうのもあるけど、この子賢いから。心を通わせて、簡単な意思の疎通くらいはできるの 触手くん、さっきは怖がらせてごめんって言ってるわ あなたもよかったらなんだけど…よろしくの握手、してくれない? いいの?ありがとう。やさしいのね それじゃあ右手を出して、触手くんの方に向けてみて… どう?ちょっとぬるっとしてるけど、ぷにっと柔らかくて、暖かいでしょ? クセになる感覚だと思わない?ふふふっ、気を許してもらえたようでなによりだわ ねえ、今日はここで泊まっていきなさいよ 夜の森は危ないし、わたしも久々のお客さんだもの、ちゃんとおもてなししてあげたいわ 夜が明けたらちゃんとあなたをおうちまで送ってあげるから、ね? …ふふ、契約セーリツ、と ん?ううん、なんでもないわよ? それよりほら、もう眠いでしょ?夜も遅いからね。今日はもうお休みなさいな 触手くんにベッドまで案内させるから、ついていくといいわ それじゃあ、おやすみなさい