//01_3年、9月、放課後の教室で。 あ@「すー……すー……すー……すー……すー……すー……すー……すー……すー……すー……すー……すー……」 ゆ@「ただいまー」 ゆ@「担任の先生の話が長くなっちゃってちょっと時間掛かっちゃったー。お待たせー……」 ゆ@「……って……あらら……梓ちゃん……寝ちゃってる……?」 ゆ@「梓ちゃーん? 寝てるー? 寝てたら返事してー?」 ゆ@「…………」 ゆ@「梓ちゃん、本当に寝ちゃってるかぁ……こんなに本気で寝てるんだったら……さすがに起こしちゃうのは悪いし……起きるまで待ってようかな……」 ゆ@「ふふふふーん ふふふふー ふふふふふふーん ふーふーふーふふふふーふー ふふふ ふふふ ふふふ ふふふ ふふふふふふふ ふーふー♪」 ゆ@「今日もクラス委員のお仕事とか任されてたし、お疲れだったのかなー」 ゆ@「梓ちゃん、今日も一日お疲れ様。えへへ」 ゆ@「梓ちゃん、今日も頑張ってえらいえらい。よしよし」 ゆ@「梓ちゃんの髪の毛、今日もサラサラで気持ち良いねぇ……」 ゆ@「…………」 ゆ@「……梓ちゃんは寝顔も本当に綺麗で羨ましいなぁ……」 ゆ@「まつ毛なんてこんなに長くて……」 ゆ@「って、何かキスする前みたいなセリフだね、えへへ」 ゆ@「……」 ゆ@「梓ちゃん、もう9月だねぇ。すっごい丁度良い気温だねぇ」 ゆ@「あと10月と11月と12月と1月と2月と3月で卒業だねぇ」 ゆ@「学校でこうやって過ごす時間ってなると、きっともっともっと少なくなっちゃうんだよねー」 ゆ@「……」 ゆ@「この3年、いろいろなことがあったよねぇ」 ゆ@「……って、振り返ってみると本当にあっという間だったなーってちょっとびっくりしちゃうし、しんみりしちゃうかも……なんて」 ゆ@「学校の行事とかはいっぱいあったけど、いつも楽しくて楽しくて幸せな学校生活だったよー」 ゆ@「それもぜーんぶ、梓ちゃんが隣に居てくれたから、なんだよね」 ゆ@「梓ちゃんは私と最初に会った時のこと、覚えてるかなぁ」 ゆ@「覚えてないかなぁ? 2年以上も前のことだし覚えてないかもねー」 ゆ@「でも、私はちゃーんと覚えてるんだよー」 ゆ@「実は最初はねー……『あーっ、この人とはお友達になれなさそうだなー』って思ったの」 ゆ@「って、これ、前にも言ったかもねー、えへへっ。ふうんって顔されたの、思い出しちゃった」 ゆ@「高校に入って初めて隣の席になったのが梓ちゃんだったんだけど」 ゆ@「梓ちゃん、中学校から上がってきたばっかりなのにすっごい大人びててしゃんとしてて」 ゆ@「クラス委員とか任されちゃって、『凄過ぎて近付けないー!!』って思ったの」 ゆ@「私なんて昔からこの通りだし、梓ちゃんとは絶対仲良しになれないなーって」 ゆ@「でもー、梓ちゃん、こんなに真面目な感じなのに教科書の忘れ物とかしてきて、机をくっつけて教科書一緒に見たりして」 ゆ@「それを切欠にちょっとずつお話とかするようになったんだよねー、えへへ」 ゆ@「もしかして梓ちゃん、優しいからわざと忘れ物をして私に切欠とかくれたのかなー?」 ゆ@「なーんてね」 ゆ@「それからは……どんどん仲良くなっていったねぇ、びっくりするぐらい」 ゆ@「他にもお友達は出来たけど……気付けばいつも梓ちゃんと一緒に居るようになって」 ゆ@「席替えで席が離れたのが寂しいなあって思っちゃったり、別々の部活だったから部活の話を聴くのが楽しかったんだけど……何かちょっとヤキモチを妬いちゃったり、えへへ」 ゆ@「それでもやっぱり梓ちゃんはいつもそばに居てくれて、とても楽しかったし嬉しかったよ。って、過去形になったけど、今も楽しいんだからー」 ゆ@「2年生のときはクラスが別々になっちゃって私はちょっと――っていうか、かなり寂しかったなあ」 ゆ@「用事も無いのに梓ちゃんのクラスにちょくちょく遊びに行ったりしてたし、『変な子だなー』って思われてたりしたかもねー」 ゆ@「っていうか……今思うと梓ちゃんの迷惑になってたかもねぇ……ごめんねー……?」 ゆ@「でもちょっと距離が出来ちゃった分、いろいろ気付けたこともあっちゃったりしたんだよねー、えへへ」 ゆ@「3年生になってクラス割りが発表になる日は……何日も前からドキドキしたなあ」 ゆ@「もしかすると高校受験の合格発表よりもドキドキしちゃったかも、なんて」 ゆ@「ドキドキしてたの、きっとバレちゃってたよねぇ、えへへ。私、分かりやすい性格だから」 ゆ@「それでそれで、クラス割りを見て一緒のクラスだーって分かったら、本当に嬉しくなっちゃって」 ゆ@「なんか本当に……学校生活で一番嬉しい瞬間だったかも」 ゆ@「えへへ、一番はちょっと言い過ぎかな? でも、それぐらい嬉しかったんだよー」 ゆ@「まあ、席が隣じゃないのは……ほんのちょっとだけがっかりだったけどねー。でも、同じクラスで同じ空気の中で梓ちゃんを感じられるの、とっても嬉しかったからー」 ゆ@「だからね、この一年は……本当に楽しいことばっかりだったなぁ」 ゆ@「梓ちゃんと同じクラスだっていうのもあって、学校の行事も今まで以上に楽しく感じられて」 ゆ@「ふたりとも部活を引退してからは帰りも一緒に帰ったりして」 ゆ@「学校に居る間も楽しくて、学校が終わってからも楽しくて……本当に楽しいことがいっぱいだったよー」 ゆ@「……うん、本当に凄い楽しい1年だったなあ」 ゆ@「……って、まだ半年くらい残ってるのにね、えへへ」 ゆ@「でも……うん、本当に今年は人生で一番楽しくて嬉しい1年だったなぁ」 ゆ@「そしてそれと同じくらい……ううん、そんなにでもなかったけど……心がチクチクしてた1年だったよ」 ゆ@「梓ちゃんと一緒だと楽しくて嬉しいのに、なんかちょっと心がチクチクしちゃってね、えへへ」 ゆ@「同じクラスでこんなに距離が近くていつも一緒にいるのに、梓ちゃんが他の子と楽しそうにお話しているのを見て心がチクチクしたり」 ゆ@「梓ちゃんクラス委員だし、お友達も多いしそんなの1年生の頃から当たり前で普通のことだったのにねー、えへへ」 ゆ@「…………」 ゆ@「私は梓ちゃんのこと、1番仲の良いお友達だと思ってるし、親友だーって思ってる」 ゆ@「だから私は、一番仲良しのお友達が他の子と仲良くしてるのが面白くなくて、ヤキモチを妬いてる嫌な子になっちゃったのかなーって思っちゃったんだよね」 ゆ@「そういうの良くないなあって悩んだ時期もあったけど――そんなときも梓ちゃんは『何かあったの?』って気に掛けてくれてたねー、えへへ」 ゆ@「私が分かりやすい性格だからっていうのもあるんだろうけれど、梓ちゃんが私のことをちゃんと見てくれてるんだって嬉しくなったりしたんだよー」 ゆ@「あのときも言ったけど……心配、掛けちゃってごめんね?」 ゆ@「でも心配されてるーって思うと……やっぱりちょっと嬉しくなっちゃったりしたんだよね、えへへ」 ゆ@「心配されて喜んでたらダメだよねー……でも……『梓ちゃんに想われてるー』って思うと、やっぱり嬉しくなっちゃってたりしたんだー」 ゆ@「……梓ちゃんはただ、『友達として』心配してくれてるって分かってても、私は嬉しかったんだよねー……」 ゆ@「……うん、『友達として』。『友達として』隣に入れればそれで楽しくて嬉しかったはずなんだけどねぇ……」 ゆ@「私、梓ちゃんみたいに頭が良くないし、いろいろなことを考えたりするのが得意じゃなくて……自分で自分の気持ちさえもよく分かってなかったけど……」 ゆ@「……私は……梓ちゃんのことが……」 ゆ@「……好き、なんだと思う」 ゆ@「最初は――自分でも自分の気持ちがよく分かってなかったんだー」 ゆ@「本当にただ『お友達として』、梓ちゃんのことが好きなんだーって思ってた」 ゆ@「ううん、最初は――本当にただ『お友達として』、梓ちゃんのことが好きで――大好きで仕方なかったんだよ」 ゆ@「でも……気付いたときには『そうじゃなくなってた』みたい」 ゆ@「ずっと一緒に居たいとか、もっと近くに居たいとか、そういうことばっかり考えちゃうようになってて」 ゆ@「そしたら……これって恋なのかなあって気付いちゃって」 ゆ@「気付いちゃったら気持ち、止まらなくなっちゃってねー、えへへ」 ゆ@「すっかり梓ちゃんのこと、好きになってたんだよ」 ゆ@「梓ちゃんは優しいし何でもお話聞いてくれるけど、さすがにこればっかりは相談なんて出来なくてねー」 ゆ@「能天気であまり頭が良くない私でも、言っちゃったらきっと良いことにはならないし、後戻りはできなくなっちゃうだろうなってことくらいは分かるし」 ゆ@「だから、この気持ちは私の中だけにしまっておこうって決めたんだ」 ゆ@「……本当は伝えたい、言いたいーってすごい思うんだけど……ね、えへへ」 ゆ@「梓ちゃんと友達以上になれたら、きっときっと凄い楽しいんだろうなー、嬉しいんだろうなーって、そんな風に考えてたら私、それだけで楽しいし幸せなんだー」 ゆ@「でもでも、そうならなくて、今みたいに仲良しのお友達のままでもすっごい楽しいし幸せなんだー」 ゆ@「あーっちゃん」 ゆ@「好き。大好きだよ」 ゆ@「……なーんて、告白出来たら……良かったんだけどなぁ……」 ゆ@「きっと……そんな機会なんて……無いんだろうなぁ……」 ゆ@「えへへっ、だから梓ちゃん……ただただ梓ちゃんのこと、好きでいさせてね。なんて」 //02_3年、9月、放課後の教室で。 あ@「……んっ……んーっ……」 あ@「……ふわぁ……」 ゆ@「……あっ、梓ちゃん起きたー? っていうか、起こしちゃった!?」 あ@「……いつの間にか寝てたみたい。おはよう」 ゆ@「おはよう、梓ちゃん!! お待たせしちゃってごめんねー?」 あ@「ううん、全然大丈夫。用事は済んだの?」 ゆ@「うんー。何か先生の話が長くなっちゃったけど、バッチリだよー」 あ@「そっか。あー……それじゃあ……時間も時間だし、準備をして帰ろうか。待ってたつもりが待たせちゃって、ごめんね」 ゆ@「えへへー、全然♪ それじゃあ準備して帰ろっかー」」 ゆ@「えーっと……忘れ物は……お弁当もちゃんと持って……」 ゆ@「あ、梓ちゃん、今日は帰りにクレープ食べて帰るの、無理そうだねぇ、ごめんねー」 あ@「あたしが寝ちゃってたのもあるし、お互い様。今食べちゃうと夕飯、食べられなくなっちゃいそうだからね」 ゆ@「ねー。あ、でもでも、週末にカップルデーがあるし、そのときに行けばお得に食べられるから、梓ちゃんが良ければそのときにでもっ!!」 あ@「うん。週末は特に予定が無いから、行こうか」 ゆ@「わーい!! って、カップルデーにいつもふたりで行ってるし、お店の人にカップルだって思われてたりしてねー、えへへ」 ゆ@「カップルじゃなくても2人だったらオッケーって、変なカップルデーだよねぇ」 あ@「まあ……本当にカップル限定にしちゃうと、お客さん減っちゃいそうだし、ね」 ゆ@「かなあ。女の子同士がいっぱいだし……って、その中に本当のカップルが居たりして!?」 あ@「……まあ……居ない、とは言い切れないわね」 ゆ@「えへへー、それじゃあ……次行ったときはじっくり観察してみようっと」 あ@「……あんまりジロジロ見てると変な人だと思われちゃうから……ほどほどに、ね?」 ゆ@「え、えへへ、そ、そこまでジロジロは……見ちゃうかも!? 気を付けます」 あ@「うん」 ゆ@「……よしっ、っと。忘れ物も無いし、これでバッチリ――」 あ@「……ねえ優芽?」 ゆ@「ん? 梓ちゃん、なあに? 忘れ物?」 あ@「……忘れ物っていうか……さっきの話……なんだけど」 ゆ@「さっきの話? カップルデーであんまりジロジロ見るなーってやつかな?」 ゆ@「大丈夫だよー。そんなにジロジロなんて見ないからー」 あ@「それじゃなくて、もうちょっと前の話」 ゆ@「えーっと……もうちょっと前……」 ゆ@「……梓ちゃん……やっぱり今日クレープ食べて帰りたい?」 あ@「それよりもうちょっと前、かな?」 ゆ@「……それよりもうちょっと前……」 ゆ@「……」 ゆ@「……先生、大事なお話の後の雑談が長過ぎて――」 あ@「……その話もちょっと気になるけど、それは前に行きすぎかな?」 ゆ@「ええっ……じゃあじゃあ……え、えーっと……」 あ@「……あたしが寝ていた間の話」 ゆ@「……梓ちゃんが寝ていた間のお話……」 ゆ@「……え、えーっと……」 ゆ@「……あ、梓ちゃんが寝ていた間のお話っ!?」 あ@「うん。あたしが寝ていた間の話」 ゆ@「あ、梓ちゃん、寝てたんだよね!? 寝てたのに……その間のお話!?」 あ@「……あたし……実は起きてたから」 ゆ@「あーっ、なるほど!! 梓ちゃん、実は起きてたから、その間のお話……」 ゆ@「…………」 ゆ@「……え、ええっ!?」 あ@「あっ、優芽、固まっちゃった」 ゆ@「あ、あっ、梓ちゃん!? 起きてたの!?」 あ@「うん。起きてた」 ゆ@「……起きてた!?」 あ@「うん。起きてた」 ゆ@「私が起こしちゃったんじゃなくて、起きてた!?」 あ@「うん。起こされちゃったんじゃなくて、起きてたよ」 ゆ@「い、い、いいいい、い、いつから起きてたの!?」 あ@「『寝てたら返事してー』って辺りからかな?」 ゆ@「えーっ!! 最初からずっと起きてたの!? い、い、言ってくれたら良いのに!!」 あ@「ふふっ、なんとなく寝たふりしちゃってた。ごめん」 ゆ@「って、って、って、ことは……私のお話は全部……」 あ@「うん。聴いてたよ」 ゆ@「ひゃー! ぜ、ぜぜぜぜ、ぜ、全部!?」 あ@「うん。全部」 ゆ@「ひゃー! て、てててて、て、徹頭徹尾ぜ、ぜぜぜぜ、全部!?」 あ@「うん、徹頭徹尾全部聴いてた」 ゆ@「ひゃー!!!」 ゆ@「……あ、あのですね……梓さん? 折り入ってちょっとご相談なのですが……」 あ@「聴かなかったことには出来ないよ? 聴いちゃったし」 ゆ@「……ううっ……さ、先回りされちゃった……」 ゆ@「…………」 ゆ@「……梓ちゃん?」 あ@「はーい?」 ゆ@「……引いちゃったりしてない?」 あ@「うん? あたし、そんな風な顔、しちゃってる?」 ゆ@「……ううっ……してないと思うんだけど……でも……」 ゆ@「……私……梓ちゃん寝てると思っていろいろなこととか……聴かれたら困るようなことも言っちゃったし……」 あ@「あたしも寝たフリしてたの悪かったし、気にしない気にしない」 ゆ@「う、うーん……そ、それなら……気にしない!」 ゆ@「なんて!! 気にしないーって、さすがの私でもそんなに簡単に頭の切り替え、出来ないよ!?」 あ@「ふふっ、じゃあ頭を切り替えないままで良いから」 ゆ@「は、はーい? 梓ちゃん、な、何かな?」 あ@「さっきの話だけど」 ゆ@「さっきの話……」 あ@「……あたしから、なんてどう?」 ゆ@「……あ、梓ちゃんから……? それってどういう……」 あ@「気持ちを伝える機会」 ゆ@「……えっ?」 あ@「……今度はあたしが、優芽に気持ちを伝える」 ゆ@「……えっ、ええっ!? あ、あああ梓ちゃん!? そ、それって……どういう……」 あ@「言葉通りの意味、じゃないかな」 ゆ@「え、ええっ!? ええええっ!?」 あ@「あははっ、そんなに驚かれるとあたしのほうが驚いちゃうんだけど」 ゆ@「だ、だってだって……こ、こんな風になるなんて……夢にも思ってなくて……」 あ@「……優芽の気持ちを聞いたら……あたしもちゃんと気持ちを伝えなきゃって思ったから……」 ゆ@「えっ、えええっ!? あ、梓ちゃん、ほ、ホントに!?」 あ@「今冗談を言っても仕方無いし、本当」 あ@「……あたしだけ聞きっぱなしっていうのも、良くないと思うし」 ゆ@「……べ、別に……そ、そんなことは無いんだけど……」 ゆ@「……わ、私……こ、心の準備が……ちょっと梓ちゃんの気持ち、聞くの怖いし……」 あ@「……あたしは……もう心の準備は出来てるから」 あ@「……でも……優芽が怖いなら……やめておくよ?」 ゆ@「う、ううん! き、聞く!! 聞きたい!!」 ゆ@「で、でもでも……心の準備を……ちょっとだけ……」 あ@「……うん」 ゆ@「すーっ……はーっ。すーっ……はーっ……」 ゆ@「よしっ!!」 ゆ@「……わっ、私も……こ、心の準備……出来たよ! 梓ちゃん!」 あ@「……うん。それじゃあ……えーっと……」 あ@「…………」 あ@「……あ、あたしがちょっと……緊張してきたかも……」 ゆ@「え、えへへっ、緊張だなんて……梓ちゃんらしくないー」 あ@「あははっ、かもね」 あ@「……すーっ……はーっ……すーっ……はーっ……」 あ@「……よし」 ゆ@「……ごくり」 あ@「……ちょっとまだ頭の中が整理しきれてないから、ごちゃごちゃしちゃったらごめん」 ゆ@「う、うん。ぜ、全然大丈夫……だよ」 あ@「……実際のところ、優芽の気持ちを聞いて驚いたっていうのはある」 あ@「……驚いたし……どうしようって思った」 あ@「……けれど、それ以上に……あたしは嬉しいなって思えた」 あ@「……聞かなかったフリをするとか、もうちょっと考えてからっていうのも、ちょっと考えた」 あ@「……けれど、あたしも……やっぱりすぐに自分の気持ちを伝えたいって思った。優芽の気持ちに応えたいって思った」 あ@「ふふっ、何かもう、そんな風に思えちゃうのがあたしの感情の答え、なんだよね、きっと」 ゆ@「……う、うん」 あ@「……正直、まだ自分の気持ちがどうなのかっていうのはちゃんと分かっていなかったりする」 あ@「……けれど――あたしも、優芽と――優芽となら、もっと先に進んでも良いかなって。友達よりももっと近い距離に」 あ@「……えーっと……だから……その……」 あ@「……だから……今度のカップルデーは、本当のカップルとして行こう?」 ゆ@「……あ、梓ちゃん……そ、それって……も、もしかして……」 あ@「……は、恥ずかしくて遠まわしな言い方しちゃったんだけど……伝わらなかった?」 ゆ@「……や、やっぱりそれって……」 あ@「……あたしも……優芽が好き。だから……付き合ってください」 ゆ@「……う、うんっ!」 『3年、9月、放課後の教室で。』