//00 温泉の案内 ● んしょ。ようやく到着しましたね。 ● 雪仙温泉のお宿に♪  ● 兼ねてより存じており、訪れてみたいとは思ってはおりましたが、中々時間が取れず…。 ● ですが、何とか時間を合わせ、こうして大好きな弟と二人で来れた事、大変嬉しく思います。 ● 二泊三日の短い旅ではございますが、私…美吹姉上と楽しみましょうね♪ ● んしょ…。 ● まぁ、とっても広いお部屋♪ 私達のお家の居間よりも大きいでしょうか♪ ● んん〜、こんなお部屋で寛げるなんて贅沢ですね。ふふ。 ● 古い旅館と聞いてはいましたが、古臭い訳でもなく、大変丁寧に使われているのでしょう♪ ● イ草の良い香りがして…、畳も最近張り替えたのでしょうか? ● あ、見て下さい。 ● 窓からは素敵な温泉街が見下ろせますね♪ ● 街燈に照らされた雪、温泉街を散策を楽しむ皆様。 ● 山奥でひっそりと暮らしている私にとって、 ● 小さな温泉街の賑わいも、まるで都に来たかのように感じます。 ● 真ん中に流れる川からは湯気も立っておりますね♪ ● 奥にはいくつもの山々があって大変美しいです。 ● 私達が住む山から、雪山を二つ超えた谷間にある温泉郷が、ここ「雪仙温泉」。 ● 何でも、冬の間しか現れなく、私達のような鬼や妖怪しか来られない温泉なのだそうですよ。 ● たまに迷い込んでしまわれる純粋な人間もいるようで ● 彼らの間では「幻の温泉郷」と呼ばれているみたいです。 ● 私は鬼、貴方もしっかりと母方由来の鬼の血を引いておりますから、 ● 迷う事なく来れたという訳です♪ ○ 失礼します。 ○ 本日は、数ある雪仙温泉の旅館から当館をお選び頂き、真にありがとうございます。 ○ 私は、当旅館「冬銀荘」の若女将をしております「神楽」と申します。 ○ 当館ご滞在中の間、お二人のご担当をさせて頂きます。 ○ ここ冬銀荘は客室、十の、小さな旅館です。 ○ 冬銀荘の従業員は皆鬼でして、私も角を見て分かる通り、鬼の種族です。 ● ご丁寧にありがとうございます。 ● 私は、美吹と言います。横にいるのが弟です♪ ○ 貴方が美吹さんなのですね。 ○ ご予約に際、大変ご丁寧なお手紙を頂き、ありがとうございます。 ● 神楽さんも、お手紙ありがとうございます。 ○ 弟様もおいで下さりありがとうございます。 ○ ここでは「旦那様」と呼ばせて頂きます♪ ● ● こちらの宿の女将や、若女将は私達の遠い親戚にあたります。 ● 何でも私達の母方の祖母の祖母、そのまた祖母の母が同じなようで…。 ● ほら、姉上にある角と、神楽さんの角、どことなく似ているでしょう? ○ ふふ、確かに美吹さんと私の角、よく似ておりますね。 ○ ん。遠い親戚とはいえ、鬼がいらして来て下さる事、大変嬉しく思います。 ● こちらの皆さんは、私のような「先祖返り」の鬼とは違って、鬼の血が色濃く残っているのですね。 ○ ええ、女将である母も、大女将の祖母もしっかりと鬼の角がございます。 ○ 角があっても皆、優しくて真面目な鬼ですので、ご安心を頂ければと思います。 ● ふふ、唯一角が無い弟ですが、それを一番分かっているのは弟だと思います♪ ○ それは何よりです♪ ○ んしょ、それでは簡単に館内のご説明をさせて頂きます。 ○ 窓から見える温泉街をご覧頂きながら、聞いて下さいませ。 ○ こちらは三階一番奥、「鬼灯」というお部屋になります。 ○ 他の部屋より僅かではあるものの、広めのお部屋になっております。 ○ 当「冬銀荘」の目玉であるヒノキの内風呂も、ついております。 ○ 他にも一階、大広間の奥を進みますと大浴場と露天風呂がございますので、そちらもお楽しみ頂ければと思います。 ● 私、露天風呂というものに入ったことがなく、大変楽しみです♪ ○ 本日は大変寒い分、露天は気持ちがいいと思います。 ○ 滑りやすいですので足元には気をつけて、お入りなさって下さいね。 ● ええ、ありがとうございます。 ● 弟がお部屋の内風呂に入る際は、お声を掛ければ良いのですか? ○ ええ、必要があれば、私を始め、仲居にお声掛けをお願いします。 ○ 当館一階に番台がございますので、そちらでもご対応させて頂きます。 ● ありがとうございます。よく分かりました♪ ○ 浴衣はそちらの押入れの上の段に入ってございます。 ● 分かりました。 ○ お夕食は、こちらの部屋でのお食事となります。ご希望のお時間はございますでしょうか? ● そうですね。 ○ では午後六時でお願いできますでしょうか? ○ 承知しました♪ ○ 明日の朝食につきましては、お夕食の際にお伺いさせて頂きます。 ○ 説明は以上となりますが、他にお手伝い出来ることはございますか? ● いえ、今は特にございません。 ● ご丁寧にありがとうございました。 ○ では、これにて失礼致します。 ○ 美吹様、旦那様。雪仙温泉をごゆるりとお寛ぎ下さいませ。