あねとり〜弟の友達に強制とろ甘快楽堕ち〜 特典SS 【夏斗】 「お疲れ様でしたー」 「夏斗さん!」  バイト上がりに挨拶をして店を出ると、声をかけられた。  振り向くと同じバイトの二歳下の女の子が緊張した様子で俺を見上げていた。そういえば上がりの時間がかぶっていたかとシフトを思いだす。 「一緒に帰りませんか?」 「ごめん、俺ちょっとこの後も用事があって急ぐんだよね」  嘘じゃない。  この後はおねーさんの家に行って、春から三人で暮らすための部屋を探す予定だ。  俺と冬樹とおねーさん、三人での変則的な形だけど恋人になったんだから、就職で家を出るタイミングに合わせて引っ越しをしようと言ったのは俺。今日はそのための条件のすり合わせをしようって約束してるから、遅れるわけにはいかない。 「駅まででもいいので」  そんな俺の事情を、敢えてだろう気にしない振りをして強く主張される。  まいったなとため息をついて、「駅までね?」と了承した。  駅に向かう俺の横に並ぶ後輩の横顔にもう一度息を吐きそうになった。 「バイト辞めちゃうんですね」 「大学卒業するからね」 「夏斗さんがいなくなったら寂しいです」 「そんなことないっしょ。他にもバイトはいっぱいいるしさ」  軽く笑いながら返事をすると、彼女の足が止まった。  決意を秘めた目で俺を見上げてくる。 「私の気持ち、気が付いていますよね?」 「……あー、まあそりゃあね」  仕事中にもちらちらと向けられる視線や、話しかけられる時に少し上ずる声、緊張した指先。気が付かない方がどうかしてる。 「夏斗さんのこと、ずっと好きでした」  近いうちに言われそうな気配を感じ、俺が避けていたことを彼女が察していたかどうかは知らない。  いや感じていたからこその、今日の強引さだったのかもしれないけど。  冬樹と比較すると、俺は他人に対する壁が低い方だと思う。みんなと楽しくやりたいし、人見知りとかもよく分からない。女の子も好きだ。  高校の時までだったらとりあえずふわっと返事してキープなんてことも考えたかもしれないけど。 「ごめん、君の気持ちには応えらんない」 「なんでですか? 彼女はいないんですよね?」  その情報はもう古いんだけど、深くつっこまれても面倒だから笑ってスルーした。 「俺ね、ずーっと好きな人がいんの。彼女以外ダメなんだよね」  冬樹の家で出会って、挨拶や簡単な雑談を交わす程度。それだけの交流が俺にとってどれだけ特別だったか。  彼女が家を出て行っちゃって会う機会が激減して、残念だったか。  おねーさんは俺にとって特別だ。彼氏がいることを知ってからも俺の気持ちは何も変わらなかった。  手に入れるために無理やり犯して閉じ込めて心をぶっ壊して、俺のことしか考えられないようにしても良かった。けれどそうしなかったのは、ありのままの彼女が好きで、幸せになって欲しいという思いもあったから。  男女関係なんて付き合っても永遠じゃない。たとえ結婚したとしても、離婚話だって世間にはありふれてる。  だからチャンスをずっと待っていた。  最高の形で彼女自身から堕ちてきてくれた今、こうして他の人にかけている時間は一分一秒でも惜しい。少しでも早く、彼女に会いたい。 「私にも少しくらいチャンスとか……」 「ないんだ。ごめんね?」  俺よりいい男なんていくらでもいるから、そう定型文を残してその場を去る。  未練を残されないよう、わずかな希望も持たれないよう、後ろは振り返らない。それがせめてものの誠意だ。  駅の改札を通ると同時にスマホが震えた。 『何時に来る?』  冬樹からの連絡に『向かってる。すぐ着く』と返信する。  告白されたことなんて頭から吹き飛んで、彼女と冬樹と三人で過ごすこれからのことで頭がいっぱいになった。