あねとり〜弟の友達に強制とろ甘快楽堕ち〜 特典SS 【冬樹】 「今夜空いてないか?」  問われたのは、ゼミの後のことだった。  同じゼミ生の同級生の男は普段は必要最低限しか俺に話しかけてこない。もちろん、プライベートでなんか誘われたこともない。 「なんかあるのか?」 「合コン。男の人数が足りないんだよ」  大切な用件でもあるのかと思ったが、そうじゃなかったらしい。  興味ないと言って教室を出るが、後ろから男が付いてくる。 「そう言わずに頼むよ冬樹。お前連れてったら俺の株も上がるし」  学部の中で中心的な夏斗が名前で呼ぶせいか、俺のことを名字で呼ぶやつはほとんどいない。  なれなれしく肩に手を回され、足を止める羽目になった。 「客寄せパンダになるつもりはないから」  もしかしたら数か月前だったら人助けのつもりでうなずいたかもしれないけど、今となっては合コンに参加するなんて義理だろうとなんだろうと絶対に無しだ。  姉ちゃんに誤解されかねないリスクは、ほんの少しだろうと取れない。  小さい頃からずっと好きだった、誰よりも何よりも大切な人。焦がれて、姉弟だからと諦めて、それでもずっと気持ちを消すことができなくて苦しんでいた。  姉弟だから一緒にいられた。でも血が繋がっているせいで、想いは一生叶うことがない。  そう思っていた俺にとって、今の状況は奇跡だ。  夏斗のめちゃくちゃな性格のおかげで、姉弟でありながら「恋人」になれたのだから。三人で、なんて言われた時は驚いたし上手くいくかという疑いもあったが、他の誰でもない夏斗とだから、三人での時間はこれ以上なく自然だ。  これから先、結婚や子供の問題が出てきた時、表に立つのは夏斗だ。俺とのことは他人には言えないし、どうなるかは分からない。  それでも姉ちゃんに男として見てもらえて、一緒に暮らすなんて話をすることもできている。ただの弟だった時には見せてくれなかった、女としての一面をあますことなくさらけ出してくれている。  なにを犠牲にしてでも欲しかったけれど諦めるしかないと理解していたのに、失うものもなく手に入れることができた。  いまこの瞬間を大切にしなかったらバチが当たる。 「頼むよ冬樹、な?」 「夏斗に頼めば?」  あいつなら適当に場を盛り上げて帰ることもできるだろう。そう思って言ってみたら、予想以上に嫌そうな顔をされた。 「夏斗を呼んだら女の子を全員持っていかれるだろうが」  それはそうかもしれない。  あいつは自分一人で女の子と楽しむっていうよりは、男も交えて会話を盛り上げるだろう。けどただの飲み会ならともかく合コンってことを考えると、どれだけ場が盛り上がっても女の子の興味が夏斗一人に向くことは目に見えている。 「な? その点冬樹なら一対一で会話するタイプだから安心だし。彼女欲しいだろ?」 「俺がフリーなのは前提なんだな」 「だってそんな話聞いたこと……え、いんの!?」  いると答えて深く追求されても面倒だから、明確な返答はしないでおく。  適当に笑って、肩に回された腕をほどいてその場を後にした。 「お前に彼女がいるってなりゃ大ニュースだぞ! 学部の半分の女が泣くって! なぁ!」  なにか喚いてる男を残して、俺は姉ちゃんに今夜の予定について連絡をした。