9. 一人前の…? ふむ…偶にはこうして、外を出歩くのもよいな。 お前もそう思うであろう? …ふふ。 なに、我だって好きでいつも住処に引きこもっておるわけではないぞ? 我が人目に付くと何かと面倒なことになるゆえ、あまり出歩かぬだけだ。 まぁ…幸い日向ぼっこをするだけであれば、住処の周辺で事足りるしな。 …お前なら、角さえ何とかすれば、人の子らに溶け込むことも容易だろう。 故に今後、皆とのやり取りは基本お前に任せる。 我の従者として、人の子らと上手く付き合うのだぞ? 無論、分からぬことや解決できぬことがあれば、我に申せ。 よいな? …うむ。 では…頼むぞ。 ふふ…。 …いやなに、お前の生い立ちを思えば…な。 自身の親さえ知らぬお前が、人の子らと上手くやれるかどうか… そこに関しては、少々心配であったのだが…。 お前なら…きっと大丈夫だ。 なにせ、お前は我の自慢の従者だからな…。 くふふ…。 …ん、どうした? この場所…? …あぁ、確かに見覚えがあるな。 確か、「金目の物を出せ」などと、どこぞの小僧に脅された場所か…。 ふふ…あの時の不届きものは、今はどうしているのであろうな…? お前、心当たりはあるか? んー…? …どうやら、ありそうだな…? 実は…我もだ。 思うに…あの時の小僧も、今や多少は成長しておるだろう。 かつては歯が立たなかった我に対しても、 今であれば一矢報いることぐらいはできるやもしれぬが…。 お前は…どう思う…? …その時は護る? お前が…我を? …ふふ、くふふ…。 そうか…。 実に頼もしい答えだな…? ならば…ん…。 その言葉、覚えておくからな…。 いざという時には…頼んだぞ? ふふ…。 …さて、ではそろそろ帰るか? これ以上は、かつてのように誰かに見つかってしまうからな。 …うむ。 それでは手を…っと、いや…もう繋ぐ必要はないか…。 お前はそんなことをせずとも歩ける…一人前の従者だ。 …ほれ、行くぞ? あぁ…だが、ドラゴンとしてはずっと半人前のままであったな? 半竜半人…ふむ…。 やはり、尻尾が生える方法でも考えてみるか? もし上手くいけば、我もお前の尻尾を…ふふ…。 楽しみだ…。 なぁ…? くふふ…。