トラック1 (ソラとの再会、塩対応に見えて喜んでいる) ■場面:雨の降る山で再会 【正面20cm】 (少し離れたところから呼びかけるように) そこで何をしているっ…。 なにをしにここへ― ん…お主もしや…。 【正面10cm】 (再開できた喜びと約束を破ったことへの怒りがまじった感情、わざと少し他人行儀) やはり…っ…お主は…いつぞやのわらべではないか…。 なぜここへ戻ってきた、妾との約束は果たせていないはずじゃっ…。 帰れ、不届き者に居場所などないっ…。 (僕はこの山を離れてから、噂を頼りにかあさまを探しておりました。しかし、飢饉や病によって、すでにこの世を去っておりました…。ですから僕の名前は、もう知ることができません。) (若干押され気味) …いくらもう名前を知る術がないにせよ…約束を交わしたことは事実じゃ、 なかったことにはできぬ…。 (空狐様は先程、「約束は果たせていないはず」とおっしゃいました。なぜご存知だったのですか?) そ、それは…きっとそうじゃろうと思ったのじゃ、 まだお主が出ていってからあまり時間も経っておらぬ… 約束を果たすには短すぎるはずじゃと…。 (それは嘘です。旅の探す途中、以前に綺麗な着物の女性が同じことを聞きに来たことがあると言われました。それに、時間も十分経ちました、僕のような人間にとっては…。) (途中で遮られる) むぅ…。そ、それは妾ではー (空狐様の眷属の方のことかもしれません、でも空狐様は僕がここを旅立つよりも前から、もう名前を見つけるという約束が果たせないことを知ってらっしゃったはずです。ですからこの約束は、無効になるはずです…。) (観念した感じ) んぅ…。わ、分かった認めよう…。 確かに妾は…お主の名が既にこの世から消えていることを知っておった…。 じゃから…この約束はもとより果たせぬ約束じゃった…。 (気を取り直して) じゃが、それとお主と妾の間で交わした約束とは別の話じゃ、 決して反故(ほご)にすることはできん。 諦めるのじゃ…いつぞやのわらべよ…。 (なぜ、ソラと呼んでくれないのですか。) (少し寂しそうに) ん…その名は妾が一時(いっとき)与えただけの仮の名に過ぎん、 妾はもうその名を呼ぶことは…ないのじゃ…。 (ソラを僕の名にします。) な…っ…。そのようなこと…名とはそう気軽に変えてよいものでは…。 (名がこの世にないのなら、何を真名にしても僕の自由なはずです。それに、この名は空狐様に助けて頂いた時につけて頂いた大切な名です。) (途中で遮られる) むぅ…そ、そうは言っても…。 (ですから、ソラと…もう一度…呼んでください。) (押され負けて) んぅ…ん…。 わ、分かった…妾の負けじゃ…お主の言う通り、元の名は俗世を離れておる、 故に新たな名付けはお主の好きなようにすべきじゃ…。 しかし、名はそのものの形を決めるもの、 それを…妖かしである妾が気まぐれに付けた名にしてしまうというのは…。 (旅の中、遠縁の親族すら出会うことはありませんでした。僕は一人なのです。僕の家族は、空狐様だけです。) (ゆっくりと噛み締めながら) はぁ…そうか…。 わかった…。 (ソラの顔を見ずにぽつりと言う感じで) ひとまず、ひどい雨じゃ…屋敷へ帰るぞ…ソラ…。