「中ボスの黒い球体が懐いてくるボイス」 (読みづらいのでカタカナは最初だけですが、ロボット風の抑揚の少ないカタコトで読んでください) グググ……グググ……ピーガガガガ…… 負ケタ……コノ私ガマケルナンテ……アリエナイ…… 博士に作られた……この塔を守るために作られたシステム…… その私が人間どもに負けるなんて…… 理解不能……理解不能…… 個々の能力が優れたわけでもない人間どもが…… 計算では勝てたはずなのに……なぜこれほどまでの力を…… 理解不能……理解不能…… 友情?愛情? そんな得体のしれない力によって私は負けたというのか…… 計算し尽くされた私が…… だがフシギな気分だ…… 友情は計算できない力を生むことがある……それは紛れもない事実のようだ…… 弱い人間同士が庇いあい、お互いの力を補っている…… その力によって私は負けたのだろうか…… なあ、人間ども、こんな感覚は初めてだ。 こんな球体だが……私にも感情という機能がつけられている、博士がつけてくれた感情という名の心の機微。 お前たち人間と対峙するうえで邪魔だとすら思っていた”ココロ”そんなものに、ここまで強く打ちのめされるとは…… ココロ……フシギ……ココロ……フシギ…… なあ、人間、私を連れて行ってくれないか。 あれ…… なぜそんな渋い顔をしているんだ…… どう考えてもこの流れ、絶対仲間になる流れなのに…… 理解不能……理解不能…… 私のことが訝しいのは理解できる。 生みの親である私の博士も人間を憎しんでいた…… だからお前たち人間と対峙していた…… だけど、そんな博士も私にココロという機能をつけてくれた。 人間を憎みつつも……人間を理解してほしい……そう考えていたのかもしれない…… 博士には人間には見せない優しい面もあるのだ。 いつも博士は私のことを褒めてくれるのだ。感情が芽生えかけている私に対して、丸さを褒めてくれる…… いつも丸くていいねと言ってくれるやさしい面もあるのだ…… もう少し四角くてもいいよと言ってくれる日もあるのだ。 なんならもうちょっと白くてもいいよとも言ってくれる日もあった…… いやいや、私はもっと黒くなるぞ。なんなら黒くて丸くなるぞと今日まで頑張ってきたのだ。 確かにオシャレしたい時期もあった…… 博士がEDMを聞きながら首を振ってる時……私がもっとカラフルなら……ミラーボールになって照らしてあげれるのにと思った時もあった。 トマトとビール入れたらレッドアイになって出てくる機能があればいいのにと思ったこともあった。ビームなんて出なくていいから、博士に小粋なカクテルを出してあげたかった…… そのくらい私にとって、博士は親そのものだったのだ。 博士の愛により私は少しずつ感情を理解していき……そして今日、お前たち人間との戦いで敗北を知った…… 欲を言えば復讐したかった…… しかし、負けてしまったのではそれはもう叶わない。 もう一度考えてみてくれないか? どうか私を連れて行ってほしい…… もし連れて行ってくれなければ、ここで一人っきりになってしまう。 感情ある私が一生この塔の動力部で、ふゆふゆと浮いてることになる。 とっておきのエピソードトークとを誰もいない壁とかに向かって披露することになる。 寂しいと思うだろう? 自分が同じ立場だったらどう思う? 考えただけで寂しくなるだろう。 じゃあここで一人にされて寂しさが我慢できなくなって、意を決して外に行くとするだろう。 浮いてる黒い球体が近づいてきたら、人間は戸惑うだろう。 私も人間なんてほとんど見たことないから、うまく話しかけられないだろう。がんばって、挨拶とかしてみたりするわけだ。 「(棒読みのまま少し高い声で)ど、どうも人間さん、こんにちは……ま、まあ、そんなに怯えないでほしいな、黒い球体だけど悪い黒い球体じゃないんだよ、ただちょっと、丸いだけで……ピー……ピガガ……」 とか言ったあたりで絶対石とか投げられるだろう。 表面硬いから別にダメージはないんだけど、精神的なダメージは受けるだろう。 涙は流せないが……ココロは泣いている…… 博士がまだ生きていたら、浮いてる白い立方体の友達とか作ってほしかった。 まず白い立方体に人間を襲ってもらって、それを助けに行く作戦もありだっただろう。 でもそれだと白い立方体に悪いかも…… せめて”泣いた球体”という絵本を描いてあげたい。 でも実際は白い立方体は存在しないから考えてもしかたない。 そうなるとやはり、お前たちのような人間についていくのが一番良いだろう。 たまになら、転がして遊んだりしていい。 でも土がつくと嫌なので、終わったら水でちゃんと洗ってほしい…… あれ……? だからなぜそんな渋い顔をする。 データによると人間はこういう展開好きらしいとあるが。 敵対した者同士が共闘しその中で認めあっていく展開が好きではないのか? あと私みたいな機械が人間らしくなっていく展開が好きというデータもある。 二つ返事で連れて行ってくれそうなものだが。 理解不能……理解不能…… 確かにお前たちのパーティには私は向いてないのかもしれない。 いや、私が球体だからという意味ではない。 確かに球体が後ろからついてきたら嫌かもしれないが…… しかも浮いている……パーティーに入ったら2つの意味で浮いてることになるだろう…… それよりも気になるのが……お前のパーティー巨乳だらけじゃないか? しかも露出高すぎではないか? そこの白魔法を使う女性、もうレオタードみたいになっている。 ちゃんと服着たほうが絶対良い…… 季節の変わり目に厳しい格好…… 大人しそうな性格なのになぜそんな露出の高い格好をしている? 絶対に必要ないと思うのだが、どういう理屈でそんなに露出が高いのか…… お前の趣味なのか……世界を救っている旅をしているから、そんなことも許されるのか…… 理解可能……理解可能……(可能なので注意) 変態……変態パーティ…… 人間って変態ばっかり……やば……もう無理…… 変態パーティーって広めよ…… 塔の先端あたりについてる電光掲示板で広めようかな…… 雷で執拗に責められたし…… 重大発表、削除覚悟……正義パーティーの隠された真実、私は露出魔達に執拗に雷で責められた……って動画作ろう…… 24時間に渡って流そう…… え、やっぱり連れてってくれるのか…… 心優しき正義パーティー、巨乳じゃなくても連れていってくれる心優しき人間よ、ありがとう…… 思えば対峙した時から、私達はそういう運命だったかもしれない…… 一度は戦った人間どもだが、今後はともに戦おうではないか…… こっちからお願いして申し訳ないが、気をつけたほしいことが何点かある…… 睡眠は不要だが一日一回はその……ほっぺにちゅーしてほしい…… じゃないと無理かも…… それに月曜日と木曜日はブラッシングをしてほしい…… 雨の日はちゃんと拭いてほしいし…… 塔の外出るの……初めてだから……挫けそうな時はうんうん頑張ったねって肯定してほしい…… そうそう私には名前とか無いからつけてほしいな。 かわいい名前がいいし、姓名判断もしっかりしてほしい…… あれ?聞いてる? 歩くの早くない? なんか急いでない? というか撒こうとしてない? 話聞いてる? あ、柱につっかえたから、ちょっと待って 聞いてる? おーい……おーい……待って……