■トラック02 <----------------------------------------------------------------------------------------------->  サボり魔だった猫又学生、白猫 愛里(はくびょう あいり)は、"あなた"に気を許し始めてきました。  まだまだサボり癖は治らないようですが、  その一方で"あなた"に対する感謝の気持ちも、しっかり抱いているようです――。 <-----------------------------------------------------------------------------------------------> 保健室の先生ー、急患ですー。 重度の飢餓状態でお昼休みを迎えた白猫 愛里(はくびょう あいり)のご到着ですよー。 はい、今日も先生の手作り弁当に餌付けされに来ましたー。 我ながらチョロすぎますね。いやはや、美味しいものには負けてしまいます。 おや……? 今日も保健室には先生一人だけですか。 えへへ、今日も保健室は貸し切りですねー。 ではさっそくお弁当をいただきましょうー……ってなんでお弁当を引っ込めるんです? いやいや、今日だって先生の言いつけを守って、ちゃーんと授業には出ましたよ? サボり魔である私が、なんと授業に出席したのです! ふっふっふ。ただし授業中に意識があったとは限らない。 ぐぅーぐぅー……ってお弁当をしまっちゃダメですよ! サボり魔の私が嫌々ながらも授業に出たんですよ? これは大いなる進歩と言っても過言じゃないです! というわけで、私に手作り弁当を明け渡してくーだーさーいー! ……よしっ。 どれどれ、今日のお弁当はー……。 鮭(さけ)の塩焼きにミートボール、卵焼きにポテトサラダですかー。 どれも美味しそうです……。では……もぐもぐ……。 んん〜! 今日も美味しいです! 特にこの冷めていても美味しい鮭! ふぃー、最高です……。 私としたことが、女子力の欠片もなくペロリとたいらげてしまいました……。 あっ、そもそもこういうお弁当を自分で作れない時点で 女子力がないとか言うのは禁止ですからね先生っ。 ではお弁当代を先生にお支払いー…… しようとしても、先生ってば毎回受け取りを拒否しますよね? 一人分作るのも二人分作るのも手間は変わらないー って言われてしまうと、確かにそうかもしれませんけど……。 でも材料費とかは当然かかっているわけですよねー……。 うえぇっ!? 真面目に授業を受けてくれるのが最高のお支払い〜!? うぅ……、心が痛い……っ! そ、そうやって良心に付け込んで、 私をサボり魔から脱却させようとしてくるなんて……! んにゃぅぅ〜……先生は策士ですねー……! いや、別にクラスに居づらくてサボってるーとかじゃないんですよ? 私はクラスで唯一の物の怪ですが、これといって差別とかもないですし。 最近終わったばかりの文化祭を思い出してみて下さいよ。 私とは別クラスなんですけど、人と物の怪(もののけ)のカップルが仲良く活躍してたじゃないですか。 えっと、妖狐の空前 天狐(そらまえ てんこ)さん……でしたっけ。 劇の出し物で演出として狐火を出したりとか。 そんなわけで、物の怪である私も、以前より クラスで声を掛けられるようにはなって来たんですけどー……。 ほら……、授業をサボるのって何とも言えない快感があるじゃないですか〜? ……ってふぎゃー! い、い、今っ、私の尻尾を力強く握りましたね! た、体罰ですよ! ……うぐっ! サボる方が悪いのは分かってますけどー……。 でも私だって、「授業をサボる」から「授業中に寝る」に進化してるわけでして! これは先生のお弁当による餌付け効果の賜物です! そういうわけで、是非ともお礼をしたいわけなんですけどもー……。 ふっふっふ、前に猫又だからといって簡単に餌付けされないと言いましたがー……。 それは嘘です! 私に一般的な猫又の誇りなど無いのです。恩を感じた人間には、ただ懐くのみです。 ふっふっふーっ。これが私流(わたしりゅう)の猫又の誇りなのです……! <----------チャイムの鳴るSEを挟む----------> ……あっ、チャイムの音ですね。 えぇー……、もうお昼休みが終わりなんて殺生なー……。 ……せーんせっ。誰も居ないこの保健室……、 次の授業が終わるまで私の身体を自由にしていいから、サボらせ…… ふぎゃーっ! ま、また尻尾をギューッと握りましたね!? ……あれ? せんせー、いつもと違って顔が真っ赤ですよ? もしかして私の身体を弄(もてあそ)ぶ想像をしちゃったりぃー? わ、わっ、尻尾を握ろうとするのは反則です! こ、降参です! 降参しますから、尻尾を握ろうとするその手を下ろしてくださいーっ! もう、わかりましたよ。お弁当も頂きましたし、授業には出ますよー……。 もちろん寝ないようにしますから、尻尾だけはご勘弁をー! それじゃあ先生、また明日ーっ。お礼の話はまた今度しますねーっ。 ……えへへっ、ばいばーい。