<院長先生> よろしい。 では、咎人よ。 貴女はどのようにその蛞蝓と交わり、魔物を愛し、子宮を明け渡して子を孕むに至ったのか、告げなさい。 偽りも秘匿もなく、真実を我ら信徒の前で告げなさい。 貴女がその身と魂を如何様に穢し、堕落し、腐泥に沈めたかを全て知らしめたその時、救いは開かれるでしょう。 <シスター アザリア> はい…… わかり、ました…… お話、いたします…… ええと、そう、私は、捕まったのです。 どのように、というか、手を掴まれたと理解した瞬間には、もう、私は組み伏せられていたのです。 いえ…… 組み伏せられた、と言うか…… 押し潰された、というべき、でしょうか…… 仰向けに倒れて、足のつま先から、胸の高さまで…… 布団で覆うように、でも、絶対に逃げられないんだってくらい重くて、強くて…… お腹から空気が出て…… 今思うと、痛いとか、苦しいとか、そういうのが、あったんだと思います。 でも、その時はそれどころじゃありませんでした。 目の前に、蛞蝓の顔がありました。 はい、粘液を纏った触角が、私の目の前にありました。 ゆっくりと、ゆっくりとそれがこちらに伸びてきて。 少しでも遠ざかろうと頭を後ろに下げようとして、地面に阻まれました。 ……触れた時、肌が総毛だったのを覚えています。 穢れの塊である魔物と直に触れてしまったこと、異臭を放つ粘液がべったりと肌に触れたこと、そしてなにより、その触角が、私を『確かめている』ことが、理解できてしまったからです。 理屈ではありません、これから、今まさに、食べられる獲物だったから、理解できてしまったのです。 あの時に、バレてしまったのです。 私が、もう子供ではないということが、もう、私の身体が子供を作れるようになったんだって、私が、お嫁さんに成れるんだってことことが、バレてしまったんです。 ああそう、そうなのです。 つい一月ほど前、だったのです。 私の身体は、神の恩寵を賜ったのです。 愛の奇跡を、愛する人の子供を産めるようにと、私の身体は子供を産めるように、なっていたのです。 ……それ、なのに、私は、その恩寵を差し出してしまいました。 ……あの時、わかっていたのかもしれません。 私は、この雄に、その最も大事な…… 女性の最も神聖で、大切な物を捧げることになるのだと…… 理解、していたのかもしれません。 胸元で、布地が破れる音がしました。 私の法衣が、破られた、いえ、食いちぎられた音でした。 ご存知の方はいらっしゃるでしょうか? 蛞蝓の口、という物は、地面に接する腹の部分に開いているのです。 ええ、私に覆い被さった部分に、口が開いているのです。 ……私も、こんな事がなければ知る事もなかったでしょう。 きっと、今の私はこの場の誰よりも蛞蝓の体という物に詳しいだろうと思います。 全身で…… いえ、体の奥の奥に至るまで、何もかもを蛞蝓と擦り合わせて、交わって、奉仕して。 そんな者が私の他にいるはずがないのですから、今ここにいるありとあらゆる方々の中で、私だけが唯1人、最底辺の人間未満の存在なんですから。 <院長先生> おやめなさい。 確かにここは罪を自覚する場でもあります。 しかし、今は罪を告白なさい。 告解し、そして懺悔するのです。 貴女が今すべきことを為しなさい。 <シスター アザリア> ああ、はい、はい。 申し訳ありません。私はどうしようもなくて、申し訳ありません…… 私の乳房が、露わにされてから、でしょうか。 いえ、臍に至るまで? いずれにせよ、法衣を剥ぎ取られるのはあっという間のことでした。 私は覆いかぶさられて、顔をベタベタと触角で撫で回されて、そのままに服を剥ぎ取られて、蛞蝓の肌にこの肌を全て合わせる事となったのです。 ……当然、抵抗しました。 助けを呼んで叫びながら、両の腕をがむしゃらに振るって…… そう、初めて、生まれて初めて、拳を固めて何かを打つという行いを、しました。 院長先生が私を叱る時のような、軽く当てるだけの拳ではなく、力いっぱい、思い切り、握りしめた拳を蛞蝓の顔に向かって振り下ろしました。 何度も、何度もです。 暴力を忌避し、許されないとしていた教えすら忘れて、泣き叫びながら腕を振るいました。 ……だって、何一つ意味がないんです。 一度ぶつかっただけで解りました。 私の拳は、この魔物にとって何の痛痒にもならないんだって。 一つの禁忌を破ったはずなのに、私はあまりにも非力で、魔物の力はあまりにも強くって、勝負にすらならないんだって。 私はこの蛞蝓にとって、単に食べられるだけの物なんです。 その日のパンが噛み切るのに少し硬くても、ただそれだけでしょう。 私は、皿の上にのったパンで、抵抗なんてーー 本当に、お話にすらならないんだって、わかっちゃったんです。 ……それで、泣いて、助けを呼んで、それで、許しすら、乞いました。 神と人に仇なす存在である魔物に、やめて下さいと懇願しました。 意味も通じないとわかっているはずなのに、私は必死で懇願しました。 <院長先生> 貴女は、魔物に許しを乞うたのですか。 魔物に頭を垂れたのですか。 <シスター アザリア> ひっ…… はい…… 私は、私は…… <院長先生> ……いえ、続けなさい。 恐怖に屈して頭を垂れた事は、それだけであれば許されざる罪とは言いません。 ですが貴女は、その後、子を成しました。 恐怖だけでは決してあり得ない、愛を捧げねばあり得ない神聖なる奇跡をよりにもよってその魔物に捧げました。 その罪を懺悔なさい。 <シスター アザリア> う、あ…… ああ、はい…… 私は、咎人です…… そう、です。 私は、それで…… もう、腕も振るえなくなって…… そうしたら、ぐるりと、私のお腹の上で、蛞蝓が動きました。 私の顔の上に、尻尾が、そして、私の股間に上に、蛞蝓の顔がありました。 ……暴れている間に、私の体はベタベタになっていたんです。 肌を、グニグニと蠢く蛞蝓の体で撫で回されて、粘液を散々に塗りたくられて…… 蛞蝓は、自分の粘液の上であれば驚くほど素早く動く事ができるのです。 私はもうすっかりと、粘液を体中に塗りたくられていましたから…… 今の自分は、酷い悪臭を放っているな…… なんて、どうでも良いことを考えたのを、覚えています。 触角が私の股間に、パンツ越しに、女の子の部分に触れました。 もう、その時には私の身につけている衣服はその一枚だけでした。 薄手の布でできた、たった一枚の布きれ。 私の貞操を守ってくれる物は、もう他に何一つ存在しませんでした。 触角は、ぐにぐにと布ごしに、私のそこを…… 女の子の、割れ目の部分をいじり回していました。 それはひどく無遠慮で、容赦なく、強い力で…… そして、的確でした。 布ごしに、ワレメをなぞって、舐め上げるようにして、つぷ、と押して、引いて…… それで、そう、私は…… 私は、あの時、感じて、いました…… はい、間違いありません。 アレは快楽です。女の悦びを、感じていました。 いえ、雌の快楽を、教えられていました。 自分の中から、熱くて、ドロドロして、それで、とってもいけない物が溢れ出していました。 パンツはぐしょぐしょに濡れてしまって、それは蛞蝓の粘液だけでなく、私の体が吐き出した粘液でも濡れていて。 私は、怖いって、怖い嫌だって叫んでいたんですけど、本当はわかっていたんです。 私がイケないことで悦びを覚えているんだって、わかっていたんです。 私のお腹が震えながら、ワレメが開いて恥ずかしい粘液を吐き出しているのも、目の前がチカチカして頭がフワフワするのも、叫んでいるのが悲鳴じゃなくて、気持ちよくて出てる声だってことも、全部わかってたんです…… ……幾度の絶頂があったかは、わかりません。 ただ、頃合いだと見たのでしょう…… 私の上に乗った蛞蝓が、男性器を、取り出しました。 蛞蝓の男性器は、なんというか、頭の横から出てくるのです。 体内に隠していたのでしょうか…… 突然、頭の横からズルリと出てくるのだから、初めはそれが何かなんてさっぱりわからなくて、ポカンとしてしまいました。 ああ、でもそんなの、一瞬でした。 それが姿を現して…… パンパンに膨らんで、硬くて、そしてあの、女の子を抉る為に作られたのだと一眼でわかる形を見た時…… 私は、舌を噛もうとしました。 <院長先生> 咎人よ、自死は大罪です。 <シスター アザリア> はい、その通りです。 自死など決して許されない大罪です。 それでも、あの時…… あの男性器を見た時、思ってしまったのです。 どうか、自分で死ぬので殺さないでください、肉体だけでなくて心も魂も尊厳も何もかも殺し尽くされる前に、死ぬ事をお許しくださいと、思ってしまったのです。 ……当然、許されるはずもありませんでした。 舌を噛もうとした時には既に、口の中に尻尾が入り込んでいました。 ……きっと、私だけじゃなかったんです。 何人も、何人もの女がああして、覆いかぶさられて、同じように死のうとして、それすら許してもらえなかったんです。 パンツ、簡単に引き摺り下ろされちゃいました。 最後の一枚、これがあれば最後の一線は守れるって思ってたのに、すごくあっさりと。 手慣れてたんです。 今まで脱がさずに残してたのは、私を嬲るためだったんです。 いつでも食べれたんです。 口に入れた果実をいきなり噛み潰したりしないで、舌先で転がすのと同じように、私は弄ばれていただけなんです。 ああ、知ってるんだ、私みたいな女の子をどうやって手篭めにするかなんて、もう何度も何度も繰り返して知りつくしているんだって理解してしまいました。 私は何も知らない未熟なーーいえ、性的な物を避けてすらいた、潔癖ですらあったというのに、そんな、何も知らない私は、もう終わりだって、はっきりと理解してしまったのです。 もう、やめてなんて言えませんでした。 言葉を発すれば叱られてしまうんだと、女の子の部分をひどく折檻されてしまうんだとわかったからです。 以前、そう、去年の収穫祭の二日目、一度だけ私は、夜ふかしをしました。 あの時と同じ、バレないようにって、頑張って歯を食いしばって、掌をギュって握って、目を閉じていたんです。 そう、あの日、収穫祭の日の夜は、本をもらったのです、お姫様が少年に手を引かれて、素敵な冒険をする物語。 それがどうしても読みたくて、私はこっそりと夜更かしをしました。 あの時、見回りにきたシスターにバレないように、布団の中に小さなライトと一緒にすっぽりとくるまって、絶対に声を出さないようにと必死で息を潜めました。 えへ、でも、あの時は少し、楽しかったんです。 私、きっとあの時から悪い子だったんです。 だって、あの夜も、あの森でも、私はバレてしまったんです。 神様に今だけは許してくださいって、今だけでいいけら助けてくださいって、お願いして、お祈りして、 ああ、そうです、私はおまんこが熱くてゴリゴリして大きな大きなペニスで引きちぎられながら、手を組んでお祈りをしていたのです。 地におはします我らが母よ、願わくば御身をあがめさせたまえ、おん名を讃えさせたまえ、輝ける地に茜の天をなさせたまえ…… ああ、私は、私はそう、あの時まではたしかに、たしかにシスターだったのです。 誓っていいます、私はあの、処女を奪われたその瞬間、まだ確かに神に仕えるシスターだったのです。 <院長先生> では、いつですか。 貴女は孕みました、魔物の子を 貴女は受け入れました、邪悪で穢らしい蛞蝓の雄を自らの魂の伴侶として認めて、その尊厳を捧げました。 そのことは貴女のその膨らんだ腹が証明しています。 いつ、貴女は、神に仕えるシスターをやめ、人間をやめて、尊厳なき孕み袋に、魔物の番雌に成り果てたのですか。 <シスター アザリア> ああ、はい、それは、私がシスターでなくなったのは、それからです。 そう、私は女にされたのです、おまんこを、掘削されて、打ち据えられて、私の狭くて浅い膣の肉はゴリゴリと削り落とすようにして何度も何度も抉りぬかれて、ああ、アレはそう、食事のようでした パンを齧って、噛み潰して、すり潰して、舌でかき混ぜてはまた丁寧に、何度も何度も噛み潰して噛みちぎってドロドロにしてしまうのです。私のおまんこは、いえ、私は、一欠片のパンでした。 柔らかでふわふわしたそれは、硬くて大きくて圧倒的なそれに、何度も何度も、丁寧に、ぐちゃぐちゃのどろどろに溶けてしまうまで、咀嚼されてしまったのです。 抵抗、しようとしました 逃げようと、押しのけようとしました ああ、でも、知っていますか? ナメクジの脚がどうなっているのか。 アレはすごいんです。柔らかくてブヨブヨと平べったいお腹の部分が、波打って動くんです 一部だけ出っぱらせたり、引っ込ませたり、伸びたり縮んだり、自由に動くんですよ。 でもそれ以上に、わたしを覆ったあの灰色の肉は、悪辣でした。 押しのけようとして力一杯持腕を上げれば、同じだけの力で下に押しつけられました 横に逃げようと右に動けば、左に押し込まれました。 上に、下に、右に、左に、最後はもう方向すら考えないで、めちゃくちゃに手足を振り回してみたんです。 でも、全部無駄でした。 丁寧に丁寧に、ひとつ一つの抵抗に、全く同じだけの力で押し返して、引っ張って、潰してくれたんです。 きっと、外から見たら私は何一つ抵抗もせず、無抵抗で身体を明け渡している様にしか見えなかったと思います 何もかも、私の抵抗の何もかもを叩き潰してくれたのです。 噛んで含めるようにじっくりと、繰り返し、私の無力さを、雌の哀れさを、食われる肉の柔らかさを、絶対に逃れられないということを、教えてくださったのです。 ああ、でも、でも私は、抵抗、していたのです。 屈服していなかったのです、隷属していなかったんです。 なのに、なのに、私の、私の、身体が、先に <院長先生> 訂正なさい。 ここで虚偽を述べれば、貴女の魂は未来永劫救われることはありません。 信仰と尊厳を保つ者は、決して屈することはありません。 貞操を無くせども、信心を保てていたのならば、女の城門は開くことはありません。 神から賜った女性の体は、自らの意思なく魔物に屈することは決してありません。 問いましょう、貴女は、自らの意思でその城門をーー子宮口を、ナメクジの生殖器に対して開いたのですね? <シスター アザリア> あ、ああ…… は、い。そう、です。 私は、自らの意思で、それを開きました。 最も大事な場所を、神聖で、不可侵であるべき場所を、開きました。 子宮を、ご主人様の男性器が、貫き、ました。 ……子宮に、ご主人様が踏み込んだのと、精液が注がれたのは、同時だったのかと思います。 本当に、わからないのです。 バキリと何かが砕けるような音がしました、熱湯をかけられたようにひどく熱かった気もします、お腹が押し潰されたようにひどく重くなったとも思います。 ああ、でも、ただ一つわかることは、あの時、私は孕みました。 受胎しました。 巨大なナメクジの魔物を、我が夫と、人生の伴侶と、永劫の主人として心から愛し受け入れて、悍ましい男根に屈服したのです。 <院長先生> ……嫌とも、言わなかったのですか。 孕んだということは、貴女は拒絶の言葉すら吐くことはなかったと、そういうことですか。 <シスター アザリア> ええ、ああ、はい。 きっと、そう、そうです。 こうして妊娠したということは、疑うべくもありません。 私は受け入れて、それで、私はーーそう、歌っていました。 <院長先生> 歌、ですか? <シスター アザリア> はい、歌っていました 聖歌ではなく、断末魔を。 女が止めを刺される断末魔で、アレは、そう、歌、讃美歌、でした。 ご存知の通り、私は、聖歌隊に入っていました。 ここにいらっしゃるみなさんも、聴いてくださったかもしれません。 私は歌が好きです。 私の喉は、声は、神の御名を讃え、実りを言祝ぎ、感謝を歌うためのものでした。 違ったのです、私の歌は、結婚を祝うためにあったのです。 魔物のオスに屈服し、降伏し、永遠の愛と奉仕と隷属を誓う穢らわしい婚姻を、心から祝うためにあったのです。 アレは、受胎を言祝ぐ讃美歌でした。 旋律も、言葉も要りません。 子宮に精液を注がれ、お腹の奥まで精子にずぶずぶと突き刺される音が頭の中で響いていました。 情けなく失禁する私の無様な屈服が、言の葉よりも雄弁でした。 ご主人様への愛の結晶を、私の血を分けた赤ちゃんをお腹の中に宿したという実感が、鐘の音のように繰り返し身体を揺らしてくれました。 私はずっと、ずっとずっと、歌っていました。 意識を失うその時まで、歌い続けていました。