<院長先生> 良き信徒の皆様方、お集まりいただきありがとうございます。 そして、この度は誠に申し訳ございません。 教会として、このような不埒極まる事態について心より謝罪させていただきます。 後ほど、町の皆様全員に対し、改めて教会より謝罪させていただきます。 ーー申し遅れました、私、今回の懺悔において司祭の任を預かりました修道院長のシスター・レンデュラと申します。 懺悔の執行については私が、母なる神の元に罪を雪ぎ、彼の者を許すことを誓います。 では、咎人・シスター・アザリア。壇上へ。 【SE:一瞬のざわめき】 ……皆様、静粛に願います。 この醜く膨れ上がり、悍ましく蠢く腹を前に、平静ではいられぬとは思います。 ですが、これこそがこの咎人の罪そのもの。 獣より尚不浄なる、魔物の番雌(つがいめす)に堕したシスターの孕み胎。 ……汚らしい魔物のオスを、心から愛し受け入れて、悍ましい男根に屈服して淫欲のままに異常な姦淫に耽った番雌の証です。 ……咎人は静粛に。 懺悔と告解を求められるまで、その口を閉ざし、腐臭の漂う言葉など決して吐き出さぬように。 それでは、これより告解を始めます。 我らが母たる神の名の下、真実のみを告げるよう。 この場に集まりし清廉たる信徒達がその真実を断じます。 仮に偽りを述べれば、その魂は決して神の御許に届かぬことを心しなさい。 シスター・アザリア。 貴女の胎に息づき、その血を分けて子宮を捧げて育むその子供は、如何なる者の子供ですか。 <シスター・アザリア> ……魔物の、子供です。 <院長先生> 如何なる魔物ですか。 <シスター アザリア> ……巨大な、蛞蝓の魔物です。 ……牛程の大きさで、鈍い鉛のような色で、ヌメヌメしたっ、粘液を纏った、蛞蝓です…… <院長先生> 貴女は、その巨大で悍ましく粘ついた蛞蝓の子を孕み、自らの子宮の中で育んでおりますね。 <シスター アザリア> っは、はい…… <院長先生> 貴女は、汚らしく悍ましい蛞蝓の魔物と、性行為をしましたね。 <シスター アザリア> ……っ! <院長先生> もう一度問います、貴女は、その穢らわしく怖気の走るような蛞蝓と、子を成すことを目的とした性行為…… いえ、交尾を、行ったのですね? <シスター アザリア> ……っつ、う…… <院長先生> 沈黙は許されておりません。 神と信徒の前に罪を告解なさい。 <シスター アザリア> ……う、あ、はい。 <院長先生> はっきりと。 <シスター アザリア> わ、私は、性行為を、しました。 <院長先生> どのような相手と、何をしたのか告げなさい。 <シスター アザリア> き、汚らしく、怖気の走るような、巨大な、蛞蝓のヌルヌルした魔物と、子を孕むことを目的とした、交尾を、しました。 <院長先生> ……よろしい。 信徒の皆様、どうぞお聞き届けください。 この咎人は汚らしく吐き気を催す様な巨大な蛞蝓という悍ましい魔物と、自らの血と子宮を捧げて子供を孕み、育み、魔物の子を産み落とすことを目的として、性行為、セックス、交尾を行いました。 そして、この咎人はご覧の通りに子を孕みました。 この咎人と、魔物の両方の血を引いた子供です。 主なる母曰く、子を孕むということは女が男を深く愛し、これに心から自らの魂の全てを差し出し受け入れた末に授かる愛の奇跡となります。 咎人よ。貴女は、穢らわしく粘ついた蛞蝓の魔物を、人どころか獣ですらない悍ましい魔物を心から愛し、子供を孕みました。 人類の尊厳を溝に捨てて踏み躙るに等しい最低最悪の行為を、仮にも神職にある者が行い、魂を魔に委ねたことは決して許し難い罪です。 ……ですが、慈悲深き我らが母は全てを許されます。 告解を以って、懺悔し、そしてその胎と命を以って魂より罪を雪ぎなさい。 それのみが貴女の魂を神の御許へ運び、無尽の責め苦より救うでしょう。 <シスター アザリア> ひぐっ、う、う…… はい…… <院長先生> 咎人よ、貴女は穢らわしい蛞蝓を自らの夫と認め、その胎と魂を捧げましたね。 <シスター アザリア> ……っ、そん…… そう、です <院長先生> 貴女はなぜ、語ることすら悍ましい蛞蝓の妻となるに至りましたか。 貴女はなぜ、信仰と尊厳を打ち捨てて、糞尿に塗れるよりもなお汚らしい、蛞蝓と子作りするなどという気が狂った…… いえ、気が狂っても行わないような異常な姦淫を何故犯したのですか。 <シスター アザリア> ……っ <院長先生> 一つづつ、答えなさい。 貴女は、如何なる経緯でその夫と…… 粘ついた腐臭を放つ巨大な蛞蝓と巡り合いましたか。 <シスター アザリア> ……はい、私はあの日、森の中へと踏み込んでおりました。 薪となる枯れ枝、食事に使う香草、果実の類、そういった物を求めてです。 <院長先生> あの森に魔物が現れたという噂は知っておりましたね。 <シスター アザリア> はい、知っておりました。 ……ですが、西の方は一度狩人達が見回りを行ったとも聞いておりましたので、そちらであれば問題はないだろうと、考えて、しまいました。 <院長先生> その行いに、魔物との悍ましい異種交配を期待する気持ちは本当にありませんでしたか? 貴女は、魔物との姦淫を目的としてその森に踏み込んだのではありませんか? <シスター アザリア> 違います! そんな気持ちはございませんでした!! 神に誓ってそんなことは <院長先生> おやめなさい。 貴女は今、神に誓う資格はありません。 <シスター アザリア> ……っ、は、はい…… <院長先生> 問いましょう。 貴女は、何に自らの言葉の潔白を誓いますか。 自らの魂と血と愛を捧げた物は何ですか。 <シスター アザリア> う…… あ…… ……わ、私の夫たる蛞蝓の魔物と、私の子宮に宿った我が子に、誓います。 <院長先生> よろしい。 貴女が心から愛し、仕える物に誓うと言うならば、その言葉の潔白を信じましょう。 <シスター アザリア> …… <院長先生> では、答えなさい。 咎人よ、貴女はどのようにその魔物と、貴女の夫と出会ったのですか。 <シスター アザリア> ……はい、私は、森の中に踏み入った先で、あの蛞蝓の魔物と、出会いました。 西の森の林道を行った先、大きな切り株の辺りの横道に、大きな岩があります。私は、そこで…… <院長先生> 魔物は、その場所に潜んでいたのですか。 <シスター アザリア> ……はい。そうです。岩の割れ目に隠れていたんだと、思います。 本当に、全く気がつかなかったのです。 それにあの岩の近くは、よく燃える枝や、たまに木の実もあるので、何度も行っていて…… だから私はいつものように、枝を集めて、木の実を拾い集めていて…… それで、警戒なんて、していなかったんです…… ……違和感を感じたのは、地面に水たまりのような物を見つけた時になってから、でした。 水たまりと言うよりも、モップでペンキか何かを地面に塗った後、という方が近かったでしょうか。 雨水にしては妙に粘ついていて、でも何の色もない粘液が、妙に薄く広く、地面に塗りたくられていて…… 何かわからなくて、不気味で…… その場を去ろうと、そう、思いました。 本当です、あの時、私は確かにその場を去ろうと、したんです……! <院長先生> ですが、貴女は去らなかったのですね? それは何故ですか。 <シスター アザリア> 違うんです……! 拾おうとしただけなんです……! 落とした枝を拾おうとして、それで、指先が触れて、そうしたら、突然体が痺れて……! <院長先生> 麻痺毒、ですか。 魔物の中には、狩場に罠を仕掛ける物もいると聞きます。 そうであったと? <シスター アザリア> はい! 神…… あ…… ち、誓っていいます! 私の意志に反して、体が動かなくなったのです! その、それで、身体が横に倒れて。 それで、それでも少しは動くことができたから、逃げようとしたんです。 でも、でも、もうその時には、私の前には…… 魔物が、巨大な蛞蝓が、いたんです。 それは灰色で、這いつくばった私からは、見上げる程に大きくて…… 怖くて、でも、怖すぎて目が離せなくて…… ぶよぶよとした灰色の肌が、少し震えて…… ぬらぬらと光る粘液が、木漏れ日を反射すると少し虹色に光ったのを、覚えています…… 顔の位置には、四本の角のような、触手のような、気持ち悪いものが上下左右に四本生えていて、それがジッと私の方に向けられていました。 其れが蛞蝓と同じ形をしていることに気がついた時に…… 私の腕が、ぐずりと、肉のような何かに…… いえ、蛞蝓の肌に、脚に捕まって…… それで…… それから、犯され、ました……