トラック01 『飲み会からの帰り』 【みちる】 「……っとと……すみません、先輩」 【みちる】 「だいじょぶですよー、ちゃんとセーブして飲んでたんですからー」 【みちる】 「もー、ほんとですって! そろそろ私のこと信用してくださいー!」 【みちる】 「そりゃ……先輩から見たら、私まだまだ半人前かもしれませんけどぉ……」 【みちる】 「だって、べろべろになっちゃったら、もったいないじゃないですか……」 【みちる】 「せっかく……先輩の家でのお泊まりなのに……んふ」 【みちる】 「はぁ……ほんと嬉しい……もう楽しみで楽しみで…………」 【みちる】 「え、めちゃくちゃ大したことありますよー!」 【みちる】 「初めての彼氏の部屋とか、テンション上がる要素しかないです……!」 【みちる】 「……いよいよほんとに先輩の彼女になったんだなーって感じするじゃないですか」 【みちる】 「あ、もちろんべつに今まではニセモノだったとか、そういうことじゃなくて」 【みちる】 「やっぱ、特別なことなんです……んふー」 【みちる】 「いいですよね? これくらいなら、外でくっついても……」 【みちる】 「あは、嬉しい……先輩の手の感触、ほんとに好き……」 【みちる】 「実は、仕事中とかもときどき触りたいなーって気持ちになっちゃいます」 【みちる】 「えっ……なんでそんなに好きって……なんでだろ……うーん」 【みちる】 「自分でもいまいちよくわかんないです……」 【みちる】 「私、こういうのって感覚で、理屈じゃないタイプですし」 【みちる】 「あっ、だ、だいじょぶですよ! お仕事はしっかりやってます、心配しないでください」 【みちる】 「先輩の教え、ちゃんと守ってまじめに取り組んでますから! ほんとです!」 【みちる】 「いっつも先輩のことばっかり考えてへらへらしてるわけじゃないです」 【みちる】 「むしろ、いっしょうけんめいお仕事がんばるためっていうか……!」 【みちる】 「ほら、ちょっときついなー、しんどいなーってときでも」 【みちる】 「先輩のこの感触思い出すと、癒やされて、またがんばるぞーって気持ちになれるから」 【みちる】 「幸せな気持ちが、お守りになるみたいな? なんか、そーゆー感じです、えへ……」 【みちる】 「……お、おおー……ここが先輩のお宅……」 【みちる】 「…………」 【みちる】 「すっごく、わくわくしてきました……!」 【みちる】 「えっ、今日来ると思ってなかったから、あんまり片づいてない……?」 【みちる】 「ぜんぜん悪くないです! それが! それがいいんじゃないですか!」 【みちる】 「むしろ私にはご褒美っていうかごちそうですよ!」 【みちる】 「先輩のナマっていうか、彼氏の素の生活感が見られるんですから!」 【みちる】 「あ……はい……先輩が私の部屋きたときは、もうめっちゃ気合い入れて片づけましたけど……」 【みちる】 「えーと、たしか三日くらい前から掃除はじめましたね……あ、いやもっと前だったかな……」 【みちる】 「ずるくないですよ! そこはやっぱり男女の見栄の差ってことで!」 【みちる】 「とにかく、お邪魔しまーす!」 【みちる】 「…………」 【みちる】 「これが……先輩がいつも暮らしてるお部屋……」 【みちる】 「って、言うほど散らかってないじゃないですか?」 【みちる】 「もっとこう……しっちゃかめっちゃかで、私があしたお掃除します! って流れをちょっとだけ期待してたんですけどぉ……」 【みちる】 「まあでも……先輩、会社のデスクも物は多くてもぐちゃぐちゃって感じではないですもんね……」 【みちる】 「うー、やっぱ先輩は先輩ですねー、それにくらべて私はまだまだだー!」 【みちる】 「どうぞ、これからもご指導よろしくお願いしますっ……ひゃぅっ!」 【みちる】 「あっ、ありがと、ございます……すみません、ちょっと足がふらっと……」 【みちる】 「酔っ払うほど飲んだつもりないんですけど……うー、けっこう匂います?」 【みちる】 「じゃ、じゃあまずはシャワーお借りしても……」 【みちる】 「……ていうか、一緒に入りませんか、せっかくだから……」 【みちる】 「先輩の背中、流してみたいなーって実はずっと思ってたんです……ヘンですか?」