※こちらは本編の前日譚の短編小説となります。(pixivに投稿されているものの改訂版です) 本編視聴前でも後でも、お好きなタイミングでお読みください。  【サキュバスメイドのエレナさん。序章 従順淫魔とドスケベ主従契約を結んでキンタマからっぽになるまで搾り取られる短編小説】 「ああ、メイドがほしい……」 散らかり放題の部屋の真ん中でベッドに寝転がって、スマホ片手に俺は呟いた。 辺りには脱ぎ捨てた衣類、コンビニ弁当やカップ麺の空容器、そして大量のエナドリの空き缶が転がっている。 そう、なんもかんもリモートワークとかいうやつが悪いんだ。 最初のうちは通勤時間がなくなれば少しは楽になる等とぬか喜びしていたが甘かった。 これ幸いと今まで以上に押し付けられる残業、意味もなく繰り返されるミーティングという名の進捗の監視ーー。 これなら以前の職場と自宅を往復するだけの単調な日々の方がまだマシだったかもしれない。 そんなこんなで日常にまで仕事が侵食してくると、まあとにかく家事が面倒くさい。 食事はまあスマホでデリバリーを頼めるからいいとして、ついつい片付けをサボってしまう。 文句を言う家族のいない独り身となれば尚更、部屋の中は散らかり放題である。 デスクとベッド周りだけは人間性を保っているがそれも時間の問題か……。 これでも自分は生活力がある方だと自負していだのだが、自宅に閉じこもる暮らしが続いて思い知らされた。 今まではただ家に帰って寝るだけの生活だったから大して散らかる事がなかっただけなのだと……。 「ああ、メイドさんがほしい……」 思わずスマホで『メイドさん』などと検索してしまうが、出てくるのは派手派手しい雰囲気のメイド喫茶ばかり。 (へぇ、メイドヘルスなんてのもあるのか……しかも意外と安い……) 思わずクラシックメイドさんにロングスカートをたくし上げさせて「いけませんご主人様……」プレイをさせる妄想が膨らむ。 いや、それはそれでいつかヤッてみたいけど、それよりこの部屋の惨状をなんとかするのが先だ。 メイドさん等と贅沢は言わないから、家事代行サービスを使えば少しは生活レベルを向上できるだろうか。 うちの会社はブラックだが幸いにして賃金だけはちゃんと払ってくれるので、貯えならそこそこあるし。 (それでも出来れば家政婦のおばちゃんよりは綺麗なメイドさんがいいんだよなぁ……) でもお高いんでしょう?と思いつつも『メイド 家事代行』と打ち込んで出てきた一覧を上から順にタップしてみる。 (すごいな、ホントにあるんだ、メイドさんが家事してくれるサービス……) はえー都会ってしゅっごい……。田舎で生まれ育った俺には想像もつかない物が色々ある。 思ったよりしっかりした企業が運営してるっぽいし、仕事ぶりもちゃんとしてそうだなぁ……。 やっぱりお値段もそれなりにするけど、まあ払えない金額じゃないし。 とはいえ安い買い物でもないので、しっかり吟味しようと次々と閲覧してるうちに気になる文字を見つけた。 「サキュバスメイド……デリバリー……?」 なんだこれ、また風俗店か?と思いつつも、ついタップしてしまう悲しき男のスケベ心。 サキュバスーーというのは男を誘惑して精を搾り取るといわれる美しい女悪魔で、もちろん空想上の存在だ。 と、思われたのは昔のことで、今では実在が確認されて普通に人間社会でも暮らしているらしい。実際に会ったことはないけど。 (でもサキュバスがメイドさん?悪魔が家事すんの?ホントに……?) 疑いつつもサイトの会社概要、料金プラン等を隅々まで見てみるが、どうも本当にきちんとした家事代行サービスらしい。 メイドのプロフィール写真も掲載されているが、どの子も美人でーーそして本当に角と尻尾が生えていた。 メイド服なのにやたら露出が高いのと、やたら胸やお尻を強調してるポーズばかりなのは気になるが。 (いや待て落ち着け、こんなリーズナブルなお値段で美人のメイドさんが呼べるわけがないじゃないか……) それになんといっても相手は悪魔である。どんな裏があるか分かったもんじゃない。 エッチなお姉さんに「お代は体で払ってもらうわよ♡」と言われるならまだいいが、怖い黒服のお兄さんに囲まれる可能性もある。 (まあ、そうそう美味い話がある訳ないし……おっ、この子可愛いな……) 冷やかし気分になりつつも、ついつい気になるメイドさんのプロフィールを確認してしまう。 『エレナ(24)』 スマホの画面には丈の長いメイド服を身に纏い眼鏡を掛けた、穏やかな笑顔を浮かべるサキュバスの女性が映っている。 美人なのに親しみやすいというか、サキュバスらしからぬ優しそうな雰囲気になんだか心惹かれるものがあった。 ……年齢の後ろに小さく(人間換算)とか書いてあるのはこの際、気にしないでおこう。 ああ、こんな美人のメイドさんが身の回りのお世話をしてくれたらどれだけ幸せだろうか。 もういっそ騙されるの覚悟で申し込んじゃおっかなー……等と逡巡していると。 「ん……なんだコレ?メイド無料お試しサービス……?」 いや、いやいや。 こちらの内心を見透かしたかのように、うさんくさいポップアップが画面に表示されたがちょっと待て。 いくらなんでもタダでメイドさん呼べるわけないだろ!どうせ定期契約がセットとか法外な解約料を取られるに決まってる。 (ま、まあでもとりあえず説明だけでも読んでみるか……) ちゃんと約款を読んで、ヤバそうな事書いてあれば引き返せばいいし。 エナドリのキメすぎと寝不足で朦朧としていたせいか、つい俺はそのボタンをタップしてしまったのだ。 するとーー。 「おわっ!?な、なんだ!?」 突如ピカピカと光を放ちキュインキュイン唸りはじめる俺のスマホ。液晶にはなにやら幾何学的な魔法陣が映し出されーー。 ーTOUCH!!ー 「ガチャ演出だこれ!?」 なんなのもう!?虹色に光ってるけどSSRサキュバスメイドとか出てくるの!? おそるおそる指先で画面に触れる。 その瞬間、目も眩まんばかりの光が部屋を覆い尽くし、思わず俺は両腕で顔を覆った。 そしてようやく光が収まり、恐る恐る目を開くとーー。 「はじめまして、ご主人様♡」 そこには先ほど画面に映っていた、あの眼鏡のサキュバスメイドさんが恭しくお辞儀をする姿があった。 ◆◇◆ ガチャを回したらスマホからメイドさんが出て来た。 何を言っているのか分からないと思うが、俺も何が起こったのか分からなかった。 いかん、落ち着け。電子機器で悪魔が召喚できるのはRPGではもはや古典じゃないか。 「あの、ご主人様……?」 ご主人様、なんと甘美な響きか……。しかし半ばゴミ溜めと化したこの部屋の主がそう呼ばれるのはあまりに不釣り合いなような……。 いや、そんな事はどうでもいい。目の前の美人に見惚れている場合ではない。それに俺はどちらかといえば旦那様派だ。 挙動不審な俺を目の前にメイドさんがきょとんと首をかしげると淡いベージュの髪が揺れる。長身でキリッとした目つきとのギャップが可愛い。 あとおっぱいがでっかい。しかしこれ、本物か……?いやおっぱいが、ではない。突如目の前に現れたメイドさんがだ。 夢か幻ではなかろうと恐る恐る手を伸ばすが、女の子に触れる等というハードルの高すぎる行為に躊躇してしまう。 するとメイドさんは真っ白な手袋に包まれた両手で俺の手を優しく握り、にっこりと微笑んだ。可愛い。手袋すべすべ。 「初めまして♡私(わたくし)、サキュバスメイドデリバリーから派遣されて参りました、エレナと申します。よろしくお願いします、ご主人様♡」 サキュバススマイルやばい。女慣れしてない陰キャには刺激が強すぎる。そしてエレナという名前……やはり彼女は先ほどのサイトの? 「あっ、私のプロフィール見て召喚(よ)んでくれたんですね、嬉しいです♡」 ランダム召喚かと思ってました、とはしゃぐ彼女。いちいち仕草がかわいい。 「もう、ご主人様ったら、先ほどからぼーっとして、どうされました?あ、もしかしてサキュバスを見るのは初めてです?」 はい。サキュバスも初めてだし、スマホから女の子が飛び出てくるのも初めてです。 「うふふ、びっくりさせちゃいましたね、ごめんなさい。ほぉら、見てのとおり正真正銘のサキュバスですよー♡」 優雅にくるりと回り背中を見せるエレナさん。ふわりとスカートが広がり、お尻の付け根から伸びる黒いしっぽが見える。 ぱっと見はクラシカルなメイド服だけど、後ろから見るとなかなか露出が……。さすがサキュバス。 まあ姿形以前に、あんな登場の仕方をされては本物だと信じざるを得ない。 「それで、本日ご主人様が私をお呼びになったのは、お試しメイドコースで間違いございませんでしょうか?」 なんか勢いに押されてタップしちゃったけど多分そうです。 「あらあら♡それでは今日一日、私エレナがご主人さまのお世話をいたします。なんなりとお申し付けくださいね」 アッハイよろしくお願いします。とはいえ具体的に何をしてもらえばいいものやら。 というか本当にサキュバスが家事なんてしてくれるのだろうか……頭の中でサキュバスとメイドがイコールで結びつかないのだが。 「まあ、ご主人さまったら私のメイド力(ちから)をお疑いですか?大丈夫です、こう見えて家事は得意なんですよ!」 胸の前で両拳をギュッと握るエレナさん。かわいい。確かに彼女、サキュバスらしからぬ家庭的な雰囲気があるなーと思うが……。 「そ・れ・と・もぉ……ご主人様は”こちら”のお世話の方がお好みですか?うふふっ♡」 すぅっと身を寄せ、片手で俺の胸を、反対の手で俺のふとももを布越しに撫でるエレナさん。前言撤回、やっぱり悪魔だった。 「なーんて、冗談です♡えっちなサービスはダメって規約にも書いてありましたよね?」 クイッと眼鏡を持ち上げながら赤い瞳でジーッと射抜くようにこちらを見つめるエレナさん。 流石に読み飛ばしてましたとも言えず生返事を返す。……てかさっき、規約って表示されたっけ? まあ元からそこまで下心があったわけじゃないんで、美人のメイドさんが家事をしてくれるならそれで十分です。 「もう、美人だなんてお上手なんですから♡それで、まず何からいたしましょうか……あら、あらあら……」 部屋を見渡したエレナさんの視線が散乱するゴミの山に釘付けになる。 どう見ても掃除からですありがとうございます。 ◆◇◆ それからのエレナさんの手際はまるで魔法のようだった。もしかしたら本当に魔法でも使ってたのかもしれない。サキュバスだし。 「なるほどなるほどー♡ご主人様はこういうプレイが好みなんですねー♡参考になります♡」 足の踏み場もなかった部屋は見る見る片付けられ、ついでに散乱していた薄い本もジャンル別作者別にきっちり本棚に納められ。 「その服も一緒にお洗濯しちゃいますから脱いじゃいましょうねー♡はーいばんざーい♡お風呂沸かしてありますから入っちゃってくださいねー」 洗濯ついでにと、抵抗虚しく服を脱がされ今はのんびりと湯船に浸かっているところだ。 「~~~~~~♪」 扉越しに楽しげな鼻歌と包丁のトントンと刻む音が聞こえてくる。俺がくつろいでる間にエレナさんは夕食まで用意してくれているのだ。 冷蔵庫が空っぽと見るやネットスーパーで食材を注文する姿に、俺はサキュバスもスマホ使うんだなぁと妙に感心していた。 うーん、しかしこんなに到れり尽くせりでいいんだろうか……なんだか元の生活に戻れなくなりそう……。 等と、ぼーっと考えているとーー。 「ご主人様ー、お湯加減いかがですかー?」 突然浴室のドアが開いてエレナさんがひょっこり顔を出し、俺は咄嗟に首までお湯に潜って両手で前を隠す。 なななななんですか突然!? 「せっかくですので、お背中を流して差し上げようかと思ったんですけど、いかがです?」 お気持ちは嬉しいですが流石に恥ずかしいので!! というかメイドさんってこんな事までしてくれるもんなの!? 「あらいけない……今日は”お試し”でしたね♡残念♡」 それって、正式に契約すればしてくれる……ってコト!? 「さあ、どうでしょう♡うふふふっ♡」 サキュバスらしい悪い笑みを浮かべたままエレナさんがドアを閉めて立ち去っていく。 一人残された俺は悶々としたまま湯船に浸かるのであった。 ◆◇◆ あらぬ妄想につい長風呂してしまったが、風呂から上がって洗いたてのパジャマに袖を通す。 キッチンから漂ういい匂いに釣られフラフラと歩を進めると、テーブルに料理を並べるエレナさんと目が合った。 独身男の安アパートにメイドさんがいる光景、改めて見てもなかなかに違和感があるというか贅沢というか……。 「あら、ご主人様、すぐお食事の支度ができますので、どうぞお掛けになって下さい」 サキュバスなら洋食というイメージがあったが、食卓に並ぶのは意外にも純和風な家庭料理だった。 「うふふっ♡一人暮らしの男性はこういう素朴な料理がいいかなと思いまして♡」 さすがサキュバス、男心がよく分かってる。独身男の荒んだ心に肉じゃがは染みる。 「さあ、どうぞ召し上がれ」 いただきます、と手を合わせ箸を取る。 湯気のたつ味噌汁を啜り、ホクホクの肉じゃがを頬張り、ふっくら炊けた白米をパクつく。 美味い、美味いと我を忘れて飯をかき込む俺を隣でエレナさんがニコニコと見守っている。 そう、こういうのでいいんだよ、こういうので。なんだかホッとする、毎日でも食べたくなる味だ。 これは心より先に胃袋を掴まれてしまったかもしれない、サキュバスメイド恐るべし。 「もう、そんなにがっつかなくても……。あら、ご主人様、頬におべんと、付いてますよ?」 身を乗り出したエレナさんの白魚のような指がすっと伸びて、俺の頬に触れる。 久しくなかった女の子との接触、に心臓が高鳴り、目の前に迫る彼女の顔から目が離せない。 「どうしました?そんなにジーッと見つめて……」 男を惑わす魔物らしい整った顔立ちに血のような赤い瞳、そして凶々しくねじ曲がった角。 それらとは不釣り合いな、メイドの象徴であるホワイトブリムに、知性を感じさせる細身の眼鏡。 サキュバスであり、メイド。美しくもあり、日常の中ではあまりにも異質でもある、そんな存在。 だが彼女のころころとよく変わる表情や茶目っ気のある笑顔は、そんな冷たさや恐ろしさを全く感じさせない。 まあ一言で言って、かわいい。めっちゃかわいい。大人の女性に些か失礼かもしれないがかわいいんだから仕方ない。 「あの……ご主人様……?」 ごめんなさい、エレナさんがあんまりかわいいんでつい見とれてました。 「も、もう……あんまりからかわないで下さいね……?」 意外とウブな反応が返ってきた。かわいい。 その後も彼女の料理に舌鼓を打ち、すっかり腹も心も満たされた俺はようやく箸を置いた。 今はエレナさんの淹れてくれた食後のお茶(ちなみに緑茶だ)を啜ってほっとひと息ついているところだ。 「うふふっ♡どうです?私のお料理はお口に合いましたでしょうか?」 俺の食べっぷりから聞くまでもなく答えが分かっているのだろう。エレナさんがニッコニコで訪ねてくる。 ホントに美味しかったです。こんな料理を毎日食べられる男は幸せだろうなー……。 「もう、お上手なんですから。それでご主人様、本日のメイドお試しコースはこれで終了になるんですが……」 そうか、もうお終いなのか……。楽しい時間ほど過ぎるのは早いな……。 「私の働きぶりはいかがでしたか?ご主人様にご満足いただけたでしょうか?」 それはもう、文句なしに大満足です。エレナさんが来てくれてよかった。 「ありがとうございます。それでは本日はこれにて失礼させていただきますが、もしよろしければ……」 キリッとしたメイドの表情に戻って事務的な別れの挨拶を告げるエレナさんの言葉を遮る。 俺の心はもう、とっくに決まっていた。それとも悪魔に魅入られたのだろうか。 ーー貴方と、契約したいです。 「えっ……えっ!?本当に、ですか……!?」 これだけ家事も料理も上手くて、美人で可愛くて気遣いもできるメイドさんなら雇いたいって思うのも当然だと思うけど。 「もう、褒め過ぎです……。でも、私はサキュバスですよ?本当によろしいんですか?」 そりゃ最初はびっくりしたけど、真面目だし優しいし、たとえ悪魔でもエレナさんはいいひと、だと思う。 「いえ、そういう事ではなくて……。もしかしてご主人様、ご存じないのですか……?」 何のことかと戸惑う俺を見つめるエレナさんの艷やかな唇がニタァ……と釣り上がる。 先ほどまでの穏やかな彼女とは及びもつかない妖艶な表情に本能的な危険を感じたのか、背中にゾクリと電流が走る。 「サキュバスメイドのお賃金は、ご主人様の精気、なんですよぉ……♡」 眼鏡の向こうの彼女の真っ赤な目、瞳孔の縦に裂けた悪魔の瞳が妖しく輝いた。 「本当に私を雇っていただけるのなら、ご主人様の”お味”、確かめさせてくださいねぇ……♡」 ◇◆◇ 恐怖からか戸惑いからか、思わず椅子から立ち上がり後ずさる俺に、エレナさんがにじり寄る。 トン、と背中が壁に付くのを感じ、冷や汗が額を伝った。もう逃げ場はない。 だがそれでも俺はこの目の前の恐ろしい悪魔から目を逸らせない。心臓がドクドクと早鐘を打った。 「ごめんなさい、私、本当はずーっと、我慢してたんです……」 我慢って、なにを……? 「ご主人様のコト、美味しそうだなぁって♡食べちゃいたいなぁって♡」 思わず喉から引きつった悲鳴を上げ、俺はその場にへたり込んでしまう。そんな情けない姿に彼女はくすくすと笑った。 こちらに覆いかぶさるようにエレナさんが身をかがめると、お互いの唇が触れそうなほどに近づく。ふわりと甘い香りがした。 たったそれだけの事で下半身に熱を帯びるのを感じ、彼女に感づかれまいと腰が引けてしまう。 「ねえ、ご主人様?いいですよね?ご主人様の精気、味見させていただいても♡」 えーと、その、精気ってやつは、もしかして……。 「もー、いやですねぇ。サキュバスが欲しがるものといえば、決まってるじゃないですかぁ♡」 とろけた顔で笑ったエレナさんが体を擦り寄せるようにして俺の耳元に顔を寄せる。 胸元だけやたらと露出の多いメイド服に包まれた乳房をむにゅむにゅと俺の体に押し付けながら彼女が囁く。 「私が欲しいのはぁ♡ご主人様の精液♡ザーメン♡子種汁♡」 先ほどまでの温和で理知的な彼女からは想像できない下品な言葉が紡がれる度、俺の股間も反応してしまう。 それに気を良くしたのか、エレナさんはロングスカート越しのふとももをすりすりと擦り付けてきた。 「ご主人様のここに溜まってる、濃くて白くてドロッドロのミルク♡私にたっぷり飲ませてくださいね♡」 もはやズボン越しでも隠しきれないくらいにパンパンに張り詰めたそこに、エレナさんが嬉しそうに頬ずりする。 「すんすん……すん……はぁぁ♡むわぁって、濃いオスの匂い♡たまらない♡」 俺の股座に顔を埋める彼女を見下ろせば、黒く捻れた恐ろしい角と先端が矢尻のように尖った禍々しい尻尾が見える。紛れもないサキュバスの姿。 だがそんな恐ろしげな悪魔がまるで動物のようにくんくんと鼻を鳴らし、ぴこぴこと尻尾を振る様は、愛らしくさえあった。 つい手を伸ばし、彼女の淡い栗色の髪を撫でると、猫のようにゴロゴロと喉を鳴らし、ますます情熱的に顔を擦り付けてくる。 「ね、ね……ご主人様ぁ♡これ、脱がしていいですよね?脱がせますね♡」 返事も待たずにズボンに手を掛け、ずり下ろそうとする。俺も自然と腰を浮かせて彼女に応じてしまった。 「あらあら♡ご主人様ったら、もうガッチガチじゃないですかぁ♡それに先走りでパンツがべっとり♡」 後またでお洗濯しなきゃいけませんねぇ等と暢気なことを言いつつも、下着越しに嗅ぎ、舐め、甘噛みしてくる。 カウパーで黒い染みが出来ていたところに、彼女の唾液による新しい染みがじわじわと広がっていく。 「うふふっ♡パンツにご主人様のおちんちんの形、くっきり浮き出てます♡そんなに期待しちゃってるんですかぁ?」 エレナさんが悪戯っぽく笑いながら、情欲に潤んだ瞳でジーッとこちらを見つめてくる。 その目には男を意のままに操る魔力でもあるのだろうか。俺は壊れたようにコクコクと頷いてしまう。 「もう、かわいいんですから♡でも、我慢できないのは私もです♡はむっ……」 エレナさんが可愛らしい口を大きく開けると、人のものよりも鋭いであろう犬歯がチラリを見えた。 彼女はそのままパンツの端をかぷっと咥えると、ぐいぐいと口でずり下げていく。 「んふふ……♡んんっ……んむっ……ぷぁっ♡はぁい、脱げましたー♡ふわぁぁぁ♡」 ブルンッと下着から弾かれるように飛び出たソレは、自分でも見たことがないくらいにいきり立っていた。 「あは、すっごぉい♡ギンギンに反り返って、おなかに当たっちゃってます♡とっても逞しい♡」 生まれてこの方、女の子に自分のモノを褒められた経験なんぞない俺は、恥ずかしさに身悶えしてしまう。 「こんなに熱くって、ビクビク震えてる♡うふふっ♡これならとっても濃ぉい精気が搾れそう♡」 すべすべの白い手袋に包まれたエレナさんの手が優しく竿の根元を握り、反対の手はさわさわと玉袋をくすぐる。 その刺激に本人の意志とは関係なく竿が跳ね、すぐ傍で匂いを堪能していたエレナさんの美しい顔に先走りを塗りたくってしまう。 「やぁんっ♡もう、お元気なんですから♡」 だがエレナさんは嫌な顔ひとつせず真っ赤な舌をチロリと伸ばすと、自らの口元を拭ってカウパーを舐め取った。 その妖艶な仕草と、雄の体液にまみれてぬらぬらと輝く唇の淫靡さに俺の股間はますますいきり立つ。 「うふふっ♡暴れちゃ駄目♡だぁめ、ですよ♡」 亀頭が彼女の手のひらで包まれると、その細い指が妖しく這い回り、その度に俺は情けなく呻いてしまう。 ダダ漏れになった先走りがメイドの白い手袋にも粘り気のあるいやらしい染みを塗り拡げていく。 「もうご主人様ったらぁ♡こんな逞しいおちんぽ見せつけられたら、私も欲しくなっておまんこキュンキュンしちゃうじゃないですかぁ♡」 情欲に潤んだ目で見つめられると、こちらもそれを期待して漲らせてしまう。 「うふふっ♡でもごめんなさい♡今日は”お試し”ですので、お口で我慢してください♡」 お試しでなければもっと凄い事も出来ちゃうのだろうかと、下衆な勘ぐりが鎌首をもたげる。 「うっかりサキュバスとセックスしちゃうと、”戻れなく”なっちゃうかもしれませんからねー♡」 さらっと恐ろしいことを言われて、背筋がゾッとする。もしかして搾り殺されちゃったりするんだろうか……。 「本当はおまんこの一番奥に濃いザーメンびゅーびゅーって注いでもらうのが一番美味しいんですけど♡うふふっ♡」 耳元でそんなことを囁かれると、彼女が相手なら命がけでもセックスしたいとすら思ってしまうから怖い。 本当に、エレナさんが優しい?サキュバスで良かった……。 「はぁい、それではご主人様のおちんぽ、お口で味わせていただきますね♡」 彼女の細い指先が反り返った肉棒を手繰り寄せると、期待からその手の中で竿が震えた。 「いただきまぁす♡」 エレナさんはお行儀よく挨拶するとその先端に唇を寄せ、メイドらしく丁寧な物腰で、ちゅっと優しく口付けた。 「ちゅっ……ちゅっ……ちゅるっ……んふっ……♡」 亀頭の先端に、何度もついばむようなキスが降り、その度にカウパーの雫を舐め啜っていく。 彼女の奉仕はとても淫靡で、そして献身的だった。 「んふっ♡ご主人様のお汁、にがしょっぱくて美味しい♡」 丁寧に、情熱的に奉仕を続け、その間にも彼女はこちらの顔色を伺うのを忘れない。 俺の表情が快楽に歪むのを確認するとにんまりと微笑んで、エレナさんはまたこちらの股間に顔を埋めた。 「れろ……えろぉ……ちゅぅ……ちゅぱっ…・…♡」 根元からペロペロと舐め上げ、裏筋に口付けられると、腰がガクガク震える。 「あらあら、どうしましょう♡舐めても舐めても、カウパー垂れてきちゃいますね♡」 言葉とは裏腹に嬉しそうなエレナさんのぽってりした唇が亀頭の裏側に吸い付くと、べっとりと舌が裏筋に貼り付いた。 「れるれる……んふ……じゅるる……れるれるれろぉ……♡」 ねっとり這い回る舌の感触に腰が抜けそうになるほど気持ちよく、上ずった声が漏れてしまう。 早くも射精感がこみ上げてくるのを感じるが、あっさり達しては情けないので必死に堪える。 「んふふっ♡ろーれふ?ひもちーれふかぁ?んじゅるるっ♡」 舌を裏筋に這わせたまま喋られると、その刺激にすら情けない声が出てしまう。 それを肯定と受け取ったのか、エレナさんはにっこり笑いーー。 「そうですか♡それじゃもーっと気持ちよくしてあげますねぇ♡あーん♡」 その小さな口で、亀頭全体をぱっくりを咥えこんだ。 「んぶっ……んっ♡……んっ♡……んむっ……♡」 すぼめた唇をカリのエラに引っ掛けるように何度もこすり上げられ、その度にくぽくぽと品のない水音が響く。 だが彼女はそんな事もお構いなしに、溜まった恥垢をこそげ落とすかのように執拗にカリ首をねぶり回す。 「じゅぶ……じゅるるっ♡……じゅぼっ♡……ぐぽっ♡……じゅぶぶっ♡」 敏感な部分を集中して責め立てられヒィヒィと情けない声を上げてしまうが、彼女の責めが休まる事はない。 堪らず腰を引こうとするが、エレナさんに両腕でぎゅうっとしがみつかれ、がっちりホールドされてしまった。 「んふぅ♡らーめぇ♡にがしまひぇん♡んっ♡……んぐっ♡……むぐぅっ♡」 やや苦しそうな声を上げながらも、ニコニコと嬉しそうに俺のモノを喉奥まで飲み込んでいくエレナさん。 グロテスクな肉棒が艷やかな唇にねじ込まれていく光景に、ゾクゾクするような背徳感を覚える。 「んぶっ♡ぶじゅるっ♡ぐむぅ♡ん゛っ♡んん゛っ♡ぐぶっ♡んうぅ♡」 じゅぶじゅぶとよだれを泡立てながら深いストロークが繰り返される。 無意識に腰を突き出してしまうが、それすらもエレナさんは愛おしそうに受け入れてくれた。 「んごぉ♡ぐぽっ♡ん゛っ♡じゅぼっ♡ぶぼっ♡ぶぽっ♡じゅぞぞぞっ♡」 その美貌が下品に歪むのも気にせず激しくしゃぶり立てるエレナさん。 あまりの快楽に目がチカチカし、尿道を熱いものがせり上がってくる。 このまま彼女の喉奥に全てをぶちまけてしまいたくなる衝動を堪え、なんとか彼女の動きを止めようとしーー。 「んんぅっ!?」 思わず俺はエレナさんの頭をーー黒くねじれた悪魔の角を、がっしりと掴んでしまっていた。 「んん゛っ♡ん゛ぐぅ♡ぉごっ♡ふーっ♡ふーーっ♡」 その途端。彼女の喉奥がきゅうきゅうと締め付け、まるで精液を搾り取ろうとするかのように蠕動する。 慌てて肉棒を引き抜くと、彼女は開いたままの口から涎を垂れ流したまま、虚ろな目に涙を浮かべて呆けた顔をしている。 いくらサキュバスとはいえ無理をさせすぎてしまったかと謝るが、彼女はふにゃふにゃと蕩けた笑顔を浮かべた。 「もう、ご主人様ったら♡遠慮せずにそのままびゅるびゅるって射精してもよかったんですよ♡ほら、どうぞ♡」 うっとりと呟く彼女の視線の先では、涎まみれでぬらぬらと光る肉棒が必死に射精を堪えようと、ビクンビクン暴れている。 だらしなく舌を垂らしたままのエレナさんの口元に肉棒を突き出すと、彼女は嬉しそうにそれを口腔へと飲み込んでいく。 「じゅぶっ♡じゅるるるっ♡じゅぼっ♡んっ♡んっっ♡んん゛っ♡」 エレナさんの頭が短いストロークで何度も前後する。射精に追い込もうとする動きに背中から脳へとビリビリと刺激が走る。 「んっ♡んふっ♡じゅるっ♡じゅぶぶっ♡らひたくなったらぁ♡いふでもいいれふからね♡」 射精の予兆を感じ取ったエレナさんがうっとりと微笑む。 腰を突き出したくなる衝動を堪えて彼女の頭を撫でてると、肉棒を咥えこんだまま嬉しそうにごろごろと喉を鳴らした。 その刺激でまた腰がビクビクと跳ね、彼女が笑う。 「んぐっ♡ぶっ♡ぶじゅっ♡んふぅっ……♡もうれる?れひゃいまふか?んふふっ♡」 ぱっくりと亀頭を咥えこまれたまま、舌先で裏筋を執拗にねぶり回される。 「はぁい♡おひゃへー、ろぉぞぉ……♡じゅぞぞぞぞぞっ♡」 情けない声で限界を告げると、エレナさんは聖母のような慈愛に満ちた笑顔で微笑みーー。 次の瞬間、蕩けきった淫魔の顔になると、頬を窄ませ、思いっきり下品な音を立てて亀頭を吸い上げる。 その瞬間、目の前が真っ白になった。 「んぶっ!?ん゛んぅ♡ぐぶっ♡……ん゛ん゛んんんぅぅぅーーーーーーーっっっ!!!!」 びゅくんびゅくんと、彼女の喉奥に直接叩きつけるような勢いで精液をぶちまける。 今まで感じた事のないような、脳が焼ききれるような強烈な射精感がいつまでも尾を引く。 「んっ♡んっ♡んんぅっ!?ぐぶっ♡じゅるるっ♡ふーーっ♡ふーーっ♡んふふっ♡」 その勢いにエレナさんは目を白黒させつつも、吐き出される白濁を舌で包むように受け止めてくれた。 「ふふっ♡いーれふよぉ♡れーんぶ、らひきっひゃってくらひゃいねぇ♡ちゅぶっ♡ぢゅるるぅっ♡」 勢いは弱まっても、尚もとぷとぷと射精を続ける肉棒をエレナさんは舌で優しくあやし、尿道に残った汁を啜り取る。 その痒い感覚に背筋を震わせる俺は彼女の頭を両手で抱え、亀頭を彼女の口内に擦り付けるように腰を動かしてしまう。 「んぐぅ♡じゅぼぉっ♡んぶっ♡ふぅっ♡ふーーっ♡じゅぶぶぶっ♡」 目の前の美女の艷やかな舌を、まるでティッシュでオナニーの後始末をするように扱う罪悪感と、背徳感に震える。 それでも彼女は嫌な顔ひとつせず精液の最後の一雫まで丁寧に拭い取ってくれた。 「ちゅぽんっ♡ぷはぁっ♡うふふっ♡お射精、お疲れさまでした♡ぜーんぶ出ました?もう残ってないです?」 口内に精液を溜めたままで、エレナさんがニコニコと嬉しそうに問いかける。 もうさすがに一滴も残ってない。精も根も尽き果てたとはこの事か。 いままでの人生のうちでも、こんなに長く大量の射精はしたことがないのではないか。 「まあ、そんなに?でも本当、すっごいたくさん出ましたね♡ほぉら♡んぷぁっ♡」 エレナさんが粘つく音を立てながらねっとりと唇を開くと、真っ赤な舌に吐き出された白い精液がねっとり絡んでいた。 あまりに淫靡な光景に、そして彼女に自分がそれだけの精を放ったという事実に興奮し、射精したばかりの肉棒がビクンと震える。 それを見咎めたエレナさんは愉しそうにころころと笑った。 「んべぇーぇ♡ほら見てくださいご主人様♡こぉんなにどろっどろのがぼたぼたって♡私の涎と混ざってるのに全然垂れてかない♡」 エレナさんが白濁まみれの舌をだらんと垂らすと泡立った精液が重い音を立てて滴り落ち、彼女はそれをてのひらで受け止める。 涎まみれの唇から溢れる白濁液がメイド服の真っ白な手袋やエプロンにまで染みを広げていくのを、エレナさんはうっとりと見つめていた。 「うふふっ♡てのひらでぷるぷる震えて、指でつまめちゃうくらい濃くて♡思ったとおり、とっても良質な精気です♡」 幸いにして彼女のお気に召していただけたようで、エレナさんはそれはもう嬉しそうにニコニコしている。 「すんすん……くんくん……♡んふっ♡匂いも濃くて、鼻の奥までむわぁってして♡色も少し黄ばんだ綺麗な白色♡さて、お味の方はぁ……♡」 味、味……。ああ、そういえばこれ、味見って名目でしたね。あまりの気持ちよさにそんな事は全部頭から吹っ飛んでいた。 「じゅるっ♡じゅぞぞぞぞっ♡ちゅるんっ♡んーっ♡むぐむぐむぐっ♡ぶじゅぶじゅぶじゅっ♡あむっ♡んぐっ♡こくっ♡ごくんっ♡」 雰囲気だけなら貞淑エレナさんが、蕩けきった顔でじゅるじゅると精液を啜り、下品なザーメンうがいをし、それを飲み下していく。 「ぷはぁっ……♡うふふっ♡ご馳走様でした♡」 ええと、とりあえずこの場合はお粗末様でしたと言えばいいのだろうか。 だれだけ激しい射精の後だからか、全身にどっと疲れが押し寄せ、俺はその場にへたり込んでしまった。 さて……果たして俺は、俺の精気の味は、彼女のお眼鏡に適ったのだろうか。 「もちろん、合格です♡とぉっても美味しかったですよ♡ご主人様のザーメン♡ふふっ♡」 サキュバスの食事風景を見せつけられた上、そんな事を囁かれては、射精後の陰茎もまたむくむくと力を取り戻していってしまう。 「あら、あらあら♡もう、お元気なんですから♡つまみ食いのつもりでしたけど、これならお腹いっぱい頂けそうですね♡」 エレナさんが獲物に狙いを定めた肉食獣の瞳でニタァ……と唇を歪める。 いやあの、待ってください。さすがにあんな凄いの2回もされたら体力がですね……。 「あらそうですか、残念……。ああ、でも、お掃除フェラくらいはさせてくださいね?これもメイドの勤めですから♡」 なんとなくエレナさんの事がわかってきた気がする。この人、メイドの顔とサキュバスの顔を都合よく使い分けるのが上手いな? 「さあさあ、遠慮なさらずに♡ほぉら、逃げちゃ駄目ですよご主人様ぁ♡これはお掃除、お掃除ですから♡」 ホントォ!?あっ、待って、許して!?さっきイッたばっかでまだ敏感だから!! 「あーんっ……はむっ♡……んっ♡んっ♡じゅるるるるっ♡ぷぁっ♡はーい、綺麗になりました♡」 精液にまみれてベタベタだった肉棒がエレナさんの口内で丹念に舐り取られ、ちゅぽんっと卑猥な音を立てて引き抜かれた。 淫魔の唾液に濡れてテラテラと光るそれはギンギンに反り返り、ビクンビクンと暴れていた。 下半身に血が集まりすぎたか、やけに頭がクラクラするのに、ここだけ異様に力が漲っている。 「それでご主人様ぁ……♡もう一回、します……?」 とろんとした瞳で、エレナさんが問いかける。 悪魔の囁きに、俺はふらふらと頷いてしまった。 ◇◆◇ 「ああ、よかったご主人様……気がついたんですね……!」 次に気づいた時には、俺はなぜかベッドに寝かされていた。 枕元ではメイド服を身にまとって悪魔みたいな角をはやした眼鏡の女性がほっとした表情を浮かべている。 (ええと、彼女は……メイドで、サキュバスで……ああ、エレナさんだ……) なんだか体に力が入らないが、意識はだんだんはっきりしてきた。 「えっとその……ごめんなさいっ!!」 状況を把握しきれない俺に対し、必死に頭を下げるエレナさん。 なんとなく状況がわかってきた気がする。えーっと、俺あのあと気を失ってました? 「はい……本当に申し訳ございません、ご主人様……」 しゅんとしたエレナさんのしおらしい姿は、とても先ほどまで貪欲に男を貪っていたサキュバスと同一人物とは思えない。 それがなんだか面白くて、俺はつい笑ってしまった。 「な、なんですかもう……私、本当に心配したんですからね……?」 いやあ、サキュバスの相手をするのも大変なんだなぁって思って。 3回目までは覚えてるんだけど、その先の記憶がない。あれから一体どれだけ搾り取られたのか。 「んーっと、そうですねー……いち、にい、さん……」 指折り数えて思い出そうとするエレナさんが反対の手も使い出したところで乾いた笑いが漏れてしまった。 「えっと、本当は1回だけで終わるつもりだったんです……本当ですよ?ただその、私も久々だったもので……」 ついサキュバスの血を抑えきれず、張り切りすぎてしまったらしい。かわいいやつめ。 ついでに俺のアレがやたら元気だったのも、サキュバスの淫気にあてられたせいなんだとか。 「あの、ご主人様は私と契約したいと仰ってくれましたけど、こんな淫魔の私でも、本当によろしいのでしょうか……?」 エレナさんがおずおずと訊いてくる。その瞳は不安そうに揺れていた。 「私のこと、怖くないですか?恐ろしくはないでしょうか……?」 いや、むしろかわいい。 「か、かわっ……!?もう、年上をからかわないでください……!!」 優しいし、美人だし、家事も料理も上手いし、それと……えっちだし。エレナさんみたいなメイドなら大歓迎だ。 ただ、毎回こんなに精気を搾られたらさすがに身がもたないけど。 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!あれはやりすぎでしたから!本来はあんなに頂きませんから!」 良かった、まじで命がけになるかと思った。エレナさんが来てくれるならそれだけの価値はあると思うけど。 「ああもう!ほらご主人様!契約、契約の話をしましょう!!ねっ!?」 わたわたと慌てる彼女は、なぜだか大胆に開いたメイド服の胸元からなにやら古めかしい羊皮紙の巻物を取り出した。 おお、さすが悪魔。契約も本格的だ。……なんか見知らぬ言語で書かれてるけどサインして大丈夫かこれ? ◇◆◇ 「こほん、では改めまして……私は淫魔エレナ、今後ともよろしくお願いいたします、ご主人様」 そんなわけで、我が家に悪魔のメイドさんが通ってくれることになった。 流石に俺の財力と体力では(主に後者のせいだ)、毎日とはいかないけれど。 「誠心誠意、ご主人様の身の回りのお世話させていただきますので、何なりとお申し付けください」 週に二、三度でも、こんな素敵なメイドさんが居てくれるだけでどれだけ暮らしが豊かになることか。 「あっ、でもえっちな事は駄目ですからね?私はあくまでメイド、ですから」 つい先ほど、さんざん搾り取られたアレはえっちな事に入らないんだろうか……。 「もう、何を言ってるんですか♡あれは正当な労働の対価、お賃金ですよ♡お賃金♡」 なんかこれから先も上手いこと言いくるめられそうな予感しかしないが大丈夫だろうか。 それはそうとエレナさん、早速ひとつお願いがあるんですが。 「はい、なんでしょう?ご主人様」 実は俺、”ご主人様”呼びより”旦那様”って呼ばれる方が興奮するタイプのオタクなんだ……。 「…………はぁ」 彼女の口から心底呆れたようなため息が漏れた。突き刺さるような視線が痛い。 「ふふっ♡もう、仕方のない人ですねぇ……かしこまりました、旦那様♡」 スカートの裾をつまんで、恭しくお辞儀をするエレナさん。 だけどすぐになんだか可笑しくなって、二人してころころと笑い合った。 ここから、俺と彼女のーー人間と淫魔のヘンテコな主従の生活がはじまる。 それはきっと波乱と、それ以上の幸せに満ちている気がした。