お待たせしましたー……。  すいません田中さん、今日も待っててもらっちゃって……。  え……? 何で?  あの。ちょっと。田中さん……!  ……っ。  わかりました。  ……お待たせ、しました。  いえ、こちらこそ、わざわざ来て下さってすみません。  あっ……そうですね。車で話しましょう。  寒いですもんね。  え?  はは。そっか。日、月、火で三日か。  まだそれしか経ってないんですね。  元気ですよ? お陰様で、何とかやってます。  あぁ。そうなんですよ。  ほら、あの。あの電話の人と会ってたんです。  そうです。  月曜、学校サボって会いに来てほしいって頼まれちゃって。  困っちゃいますよねぇ。      え?  どうして、それを。    あぁ……あのおばあちゃんから聞いたんですね……。  そっか。なのに知らないふりするなんて、先輩ったらお人が悪いですね♪  すっかり騙されちゃった。      ううん。いいんですよ。そもそも、先に嘘ついた私が悪いんですから。  ごめんなさい。先輩。  私、あんな嫌な言い方したのに。  それでも手術の事知って、心配して来てくれたんですね。  すごく嬉しいです。  でも。    そういうの。もういいって言ったじゃありませんか。  私こういう、平気で隠し事とかする人間なんです。  先輩は検査入院の時も、すごく心配してくれてたのに。  私はその後について全然話さずに『手術なんてない』みたいな顔してた。  そんな人、無理して付き合う価値ないと思いませんか。  ……え?  違わないです。  私は。先輩とはそこまで仲いい訳じゃないし、もう、好きじゃなくなったから。  言う必要ないって思っただけですから。  それでも気になるんでしたら、今度はちゃんと本当の事を言います。  手術は成功しました。  お母さんはまだ入院してますけど、木曜日に退院するってさっき電話がありました。  だから安心して、もうお帰り下さい。  そうです。もう大丈夫なんです。だから。  え……?  もう嘘なんて、ついてません。  ……!  それは……。  ……。  たとえ先輩の想像通りだったとしても同じです。  私は電話の時も観覧車の時も、言いかけておいて、結局手術の話をしなかった。  それは。  えっ?  どうして、先輩が泣くの……。  優しすぎますよ……。  だから嫌だったんです。私。  先輩は優しいから、私が困ってるってわかったら、きっと来てくれる。  私の事別に好きじゃないのに、絶対そばに居てくれる。  私、そういうのが嫌だったんです。  だってそれじゃ、先輩はずっとご自分を犠牲にする事になる。  放っておけないから。  心配だからって。  ずっと私に付き合う事になっちゃう……。  ……え?  はは。そうでしょう?  先輩ってば、田中さんにも同じ事言われてたんですね。  そんな……。  そんなの、本当にそう言えるんですか。  ダメです。やめましょう。  せめて、もう少しちゃんと考えて下さい。  先輩は、自分の事『好きだ』って言ってた子が急にいなくなって。  ちょっと惜しくなってるだけですよ。  でなかったら私なんか。  えっ?  いきなり、何おっしゃるんですか。  そんな……あっ。  はぁ、はぁ、はぁ。  はぁ……。  ん……❤  ちゅっ。  はぁ……。  ちゅっ。  そんな事言われて、逃げる訳ないでしょ。  私だって、先輩が好きだもん……。  ちゅ。ちゅ。  『逃げなきゃキスする』なんて言われて、どこか行く訳ない。  ちゅ。  大好きだもん……❤    先輩。あなたが本当の気持ちを言ってくれたように、私も言います。  好きです。  あなたに会う前からずっと。私はあなたの事が大好きです。  ……これからは、本当の気持ちだけを言うから。  『もう好きじゃない』なんて嘘ついた事。  お母さんの手術を秘密にしてた事。  あなたを信じ切れなくて逃げようとした事、許してくれますか。  こんな私でも、あなたの彼女にしてくれますか?  ……ちゅっ。  あぁ……。  ふふ。  私が。女の子を好きな女の子だってわかっても。  こんな性格悪くて、暗い奴だって知っても。  うちが。お金きつくて、ずっとバイトしなきゃダメな位大変でも……。  それでも私の事欲しがる人なんて、いないと思ってた。  うっ。うっ。ぐすっ……。  はぁ。  はぁぁっ……。  ふふ。いるなんて。変なの❤  ちゅ。  大好きです、先輩。  ずっと……あなたのそばに、居させて下さい。  あの……先輩……。  くっつきすぎ。じゃないですか?  いや、確かにそばに居させて下さいとは言いましたけど。  にしたって。  手ぇ繋ぐか。腕組むか。どっちかだけでいいと思うんですけど……。  えっ!  やっぱダメです。  このまま行きます。このまま行きましょ?  そう、ですよね。  私、もう先輩の彼女なんだから。  ちゃんとアピールしなきゃ、ダメですよね❤  で、待ち合わせの席ってどこでしたっけ……。  とりあえず行きますか❤    そうだ、先輩。  金曜日の、電話の後ね?  私、本当に先輩の夢見たんですよ。  妄想入ってたから、恥ずかしくて言えなかったけど。  本当に先輩に会ったんです。  私と先輩がね、このフードコート歩いてて。  先輩がね。こんな風に手を繋いでくれるの。  『桐生』って私を呼んで、一緒に歩いてくれるの。  ふふ。本当になるなんて、夢みたい……。  じゃあ、行きましょっか、先輩❤    おーい! すぅちゃーん! 田中さーん!