田中さん、今日もありがとうございます。  今日、九時までだったのに……。  あ。じゃあ、私から田中さんのスマホに送りますね。  はい。送りました。  はい❤  あー。  寝てるのかな?  最近ちょっと忙しくて、帰ったら寝てる事多いんですよね。  はい! では、失礼します。  二人っきりになっちゃいましたね❤  あはっ❤ 先輩面白~い❤ 『ぴゃっ』って言った❤  ていうか。前から気になってたんですけど。  『桐生さん』って、なんか距離遠くないですか?  他の呼び方で呼んでほしいな~……❤  え。そっち?  まぁ。先輩が呼んでくれるなら『桐生』でもいいや❤  じゃあ、もっかい呼んで下さい❤  はい!  ふふふふふ❤ いいですね❤ 呼び捨て❤  あ、お母さんですか?  居ませんよ。私と二人きりです❤  あ、すいません。言ってませんでしたね。  うち、私とお母さんだけなんです。  で、その母も実は火曜から入院してまして。  あでも検査入院なんで。一週間位で終わる奴なんです。  だから、田中さんには秘密にして下さいね。  ただでさえこんな助けてもらってるのに、心配かけたくないんです。  ありがとうございます。  はは❤ そうなんですよ。  何かほんと『もう一人のお母さん』って位よくしてくれるんです。  はい。ここです。  うちのアパート、ボロくてびっくりしたかもなんですけど。  ゆっくりしてって下さいね?  え?  あ。ほら、すぅちゃんってすごいお嬢様じゃないですか。  だから、先輩もそうなのかなって……。  あ。そうなんですね。  へへ。ほんとはこの家、結構気に入ってるんです。  駅からも近いし。学校にも歩いて行けるし。  まぁ。狭いなりに、中身にもこだわってるつもりで。  ……褒めてくれて、ありがとうございます。  あ。ところでお家に連絡しました?  泊まってもらって大丈夫なんですよね?  えーっ❤ すぅちゃんちに泊まるって嘘ついたんですか❤ 悪いんだー❤  わー。アリバイ作ってもらっちゃった……❤  どうしよう……。    へぇ? 先輩のご両親はまだ私の事知らないから。  先輩は『急に名前出したらびっくりするだろうなぁ』って思って、すぅちゃんの家に行ってる事にしたんですか。  ……何だかすっごく。やましい感じですね❤  あははっ❤ ごめんなさい。冗談です❤  ……あのね。ほんとは。  一度は『いいよ』って言ってくれても。  先輩は、帰っちゃうかもなぁって思ってました。  だから、バイト終わった時、先輩から『フードコートにいる』ってメッセ来てて。  ほんとに待っててくれて、すっごく嬉しかった。  ……来てくれて、ありがとうございます。  え?  先輩、私がさっきの事、まだ怖いって思ってるから。  誰かに一緒に居てほしくて、先輩を呼んだと思ってたんですか?  ……ふう。  先輩って、ほんと優しいですよね。  困ってる人の事。ほっとけないんですもん。  ありがとうございます。私先輩のそういうとこ、だーい好きです❤  それじゃあ、先輩?   ご飯とお風呂と私。どれにします?      あははは❤ 先輩まだお腹膨らんでる~❤  お夜食、全部食べてくれましたもんね。  お気に召していただけて光栄です。  まぁ、そうですね。料理はちっちゃい頃からずっとやってるんで。  そこそこできるかな? って思ってます。  えー、嬉しい。そんなにですか?  じゃあ、先輩のお嫁さんになりたいです❤  あ。またぴゃって言った❤  私。いいお嫁さんになれそうなんですよね?  だったら、先輩のお嫁さんになりたいです。  んー?    えー? まだそんな事聞いちゃうんですか?  理由。もう、とっくにわかってくれてると思ってたんですけど?  んー。じゃあ、せっかくだからお伝えしますね。  そうですね。まずは見た目かなぁ?  私、先輩みたいな感じの人、昔から、めっちゃタイプなんです。  初めて会った時の先輩、ほんと可愛かったなぁ。  フルーツ一杯抱えて。よたよたってしてて。  なんか、森のリスさんとか、ウサギさんとか。  アライグマさんみたいで❤  あはは❤  その次に好きって思ったのは、ちゃんと約束守ってくれる所。  あの日だって『すぐ戻るから』って言って、ほんとにちゃんと戻ってきてくれた。  あのまま全部私に押し付けていなくなっちゃってもよかったのに。  そしたら、遅刻しないで済んだのに。  走って、汗だくになって戻ってきてくれましたよね。   そんな先輩見てたら。  もう『好きーっ』ってなっちゃいました。  それから、もちろんスマホの件。  あれ落とした時、私結構病んでたんですよね。  病院の帰りだったんですけど、お母さんの入院が決まって『あー。これからどうなるんだろ』って心細くて。  そんな時にスマホ落としたってなったら。  割と絶望ですよ?  でも、届けてくれた人がいた。  その時は『あー。いい人もいるんだなぁ』で終わりだと思いました。  どんな人か知りたくても、先輩みたいなお礼もらわない派の人は、連絡する術がないし。  でも、そうはならなかった。  そう。これっきりだろうなぁって思ってたのに、週明け学校行ったら、すぅちゃんが私のスマホ見てびっくりしてて。  『これ、落とさなかった?』って聞いてきて。  それで、先輩の事を教えてもらったんです。  だから私、すっごく嬉しくて。  お話、沢山聞かせてもらうようになって……。  そしたら先輩の人助け伝説、とにかく面白くて❤  会った事も話した事もないのに、どんどん好きになりました。  え?  あ。もしかしてすぅちゃんから聞きました?  へへ……そうなんです。  月曜日にお会いした時には、私、先輩がスマホの人だって知ってました。  でもあの。すぅちゃんの事、怒らないで下さいね。  私が『直接お礼を言いたいから、それまで私の事、話さないでほしい』ってお願いしてたんです。  ありがとうございます。  ごめんなさい。もっと早く私が話しかけられてれば、こうはならなかったんですけどね。  でも私、いつも失敗しちゃって……。  へへ。そうです。私。実は恥ずかしがり屋なんです。  ふふ❤ だから、月曜の朝先輩を見かけた時は『今だ!』って思って。  追いかけていったら、あんな事になってて。  あでも、あの時会ったのはほんとに偶然です。  先輩、いつもはあの道通らないですよね?  なのに居たから、びっくりしたんです。  わかってくれました?  以上が、私が先輩を大好きな理由です。  もちろん他にも沢山あるんですけど、今日はこの位で❤  じゃあ、そろそろ寝ましょっか。  先輩、今日は本当にお疲れ様でした。  電気消しますね。  うん?    ああ、大丈夫ですよ。  私、返事が欲しいとか、付き合ってほしいとか。  そう思って告ったんじゃないですから。  だから先輩は、今のままでOKです。  こうやって仲良くしてくれるだけで、私、もう満たされちゃってるんで。  えっ?  あっ……⁉  どうしよう……先輩。  あの。いいんですか? こんな事しちゃって。  私、こんなの初めてです……❤  あはははは❤  だって、初めてですから。好きな人に手ぇ握ってもらったのなんて。  ふふふふ❤  先輩の手、あったかいですね。イメージ通りです。  あの。このまま寝ても、いいですか?  ……嬉しい。  あー。今夜はすっごくよく眠れそうです。  ありがとうございます。  先輩。  おやすみなさい。