[雪城 花音]  うわぁ。お姉ちゃん、そんな事してよく無事だったねぇ。    いくらマンションの中とは言え、その広末さんって子が来なかったらどうなってた事か。  少なくとも、風邪引いてたよねぇ。  お姉ちゃんはね? 親切で優しいおじさんの厚意で、あんないいマンションに安く住まわせてもらってるんだから。  住人の自覚を持たなきゃダメだよ。  広末さんにも、ちゃんとお礼してね。教師と生徒って言うか、人と人としてさぁ。  わかったならよろしい。  で、何だっけ。柔軟剤買うんだっけ。向かいの店にしか置いてない奴。  お礼って事か。  いい心がけだね。  言葉だけじゃ足りないもんねぇ。  気に入ってくれそうな物がわかってるのは、不幸中の幸いだったよね。  だったら私その後……。  バイト先だ。ごめん。出てもいい?  ありがと。  はい、花音でーす。お疲れ様でーす。  どうしました? 今日ってバイト六時からですよね?  あ、マジですか。わかりました。  早い方がいいですよね?  わかりました。今近くなんで、四時には行けるようにします。  はい。失礼しまーす。  そう。急に休んだ子がいて、なるべく早く来てほしいんだって。  ごめんね。だからもう行くわ。  いいよいいよ。  まだコーヒー残ってるじゃん。お姉ちゃんはゆっくりしてきなよ。  そいじゃいくね。柔軟剤忘れんなよ!  またねー! ---- [タクシーの運転手]  こんにちは。どちらまで?  ああ、ガーデン逢瀬ね。はい。承知しました。  では、出発しますよ。